バッハの遺言/バッハ・オルガン作品連続演奏会
いずみホールへ。
バッハ・アルヒーフ・ライプツィヒ(ドイツ)の協力で展開している演奏会シリーズの第6回目を聴く。
今回登場したのはアメリカからやって来たジェイムズ・ディヴィット・クリスティとジョン・フィニー。クリスティは小沢征爾/ボストン交響楽団と共にそのオルガニストとして来日して以来、20年ぶりだそうである。
演奏されたのは未完の遺作「フーガの技法」。最後はバッハが死の床で口述したとされるコラール《あなたの御座の前へといま私は歩む》がそれを補うために弾かれた。
日本一、音響のいいいずみホールは天からオルガンの重低音が客席に降り注ぐ。正に音のシャワーである。これは絶対に家庭のステレオでは味わえない、未曾有の体験である。
バッハの音楽は荘厳である。そこに人間的感情は一切介入しない。ここが古典派やロマン派の作曲家と全く異なる点である。
芸術監督の磯山 雅さんがコンサートの前に仰っていたが「フーガの技法」は数学的・幾何学的技巧が高度に駆使された作品であり、その主観を排した絶対的客観性によりバッハはひたすら神の世界を目指したのであろう。余りの崇高さに畏怖の念さえ覚えた。
未完の終曲「四重フーガ」はBACHの名前を音形化した主題が提示されたところで筆が絶えている。それはあたかも遺言書に署名を刻印したようで、戦慄を禁じえなかった。バッハは見事に自分の人生を完結したのである。
次回は7/14(水)19:00より。スウェーデンからオルガン奏者ハンス・ファギウスがやって来る。
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