第四回繁昌亭大賞受賞記念落語会
天満天神繁昌亭へ。
繁昌亭大賞は入門25年以下の中堅・若手を対象に選出される(「輝き賞」は入門10年以下)。
選考委員は次のような人々で構成される(第一回の資料に基づく)。
放送局プロデューサー、報道各紙文化部記者、演芸ライター、「奇跡の寄席」著者、天神橋筋商店連合会会長、大阪天満宮宮司、繁昌亭支配人 など
審査の方法は過酷で、24名の審査員がいつ繁昌亭に立ち寄るか分からない。だから噺家は毎回、手が抜けない。桂三枝・上方落語協会会長は「一門のバランスや年功を考えずに、客席に座ってるお客さんの反応やご自分が思った感じで選んでください」と要望されたそうである。
さて、今回の落語会の面々は、
- 桂三四郎/普請ほめ
- 桂吉の丞(第四回 輝き賞)/遊山船
- 桂三金(第三回 創作賞)/奥野君の選挙(三金 作)
- 桂文華(第四回 奨励賞)/子は鎹
- (仲入り後)表彰式
- 桂春蝶(第四回 爆笑賞)/母恋くらげ(柳家喬太郎 作)
- 笑福亭銀瓶(第四回 大賞)/立ち切れ線香
創作賞を受賞した笑福亭たまさんは東京での落語会が既に決まっていたので欠席。代わりに第三回受賞の三金さんが出演された。得意のデブネタで、「奥野君」は三金さんの本名。メタボ糖(=党)の選挙演説で扇子を何本も握り締め、マイクに見立てる演出がニクイ。
吉の丞さんは、「”輝きの丞”です」と登場。兵庫県の播磨(はりま)町で開催された農家の青年と都市部の女性、30対30のお見合いパーティ(?)で落語を披露した時の体験を面白おかしく語られた。結局2組しかカップルが生まれず、沈んだ雰囲気の中、大変やりにくかったそう。
「寒い日が続く中、せめて落語の中だけでも温かい気持ちになって頂きましょう」と吉の丞さん。「かぜうどん」か「時うどん」でもするんかいなと思いきや、天神祭りを描く夏の噺「遊山船」が始まったから意表を突かれた。客席がドッと沸く。
稽古屋の船がやってきて、その浴衣姿を見た清八が「よッ、さッても綺麗なイカリの模様!」と声をかけると、船上の女性たちが「川に落ちても流れんよぉに」と答える(仕込みの)場面で、吉の丞さんは「質に入れても流れんよぉに」と(サゲを)言ってしまった。これには驚いた。慌ててやり直したものの、痛恨のミスであった。
文華さんは江戸の人情噺。とっても退屈だったので途中、意識を失った。上方なのに何でこんなもん演るんだろう?帰り際、他の客が「もっと別のネタにして欲しかったなぁ」とぼやいているのが耳に入った。
春蝶さんの「母恋くらげ」は2008年10月に聴いている。その時は「しょーもない!」としか想わなかったのだが、今回は意外や意外、愉しめた。くらげや蛸、平目などの所作が明らかに上手くなっている。噺に生命が吹き込まれた感じ。春菜から春蝶を襲名し、その披露興行の中でネタを練り上げてきた成果なのだろう。
先日聴いた銀瓶さんの「七段目」は感心しなかったが(芝居噺はやはり吉朝一門に限る)、「立ち切れ線香」の若旦那は銀瓶さんのニンに合っていた。シュッとして正統派。爽やかな高座だった。
関連記事(「立ち切れ線香」は人情噺か?):
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コメント
落語通の方の感想は受け入れますが…
私は文華さんのファンなので、退屈と表現されたのには反感を覚えました。
(ファンですが文華さんとは何の縁もありません)
子は鎹はもともとあまり笑うところのない噺ですし、表情や仕草で笑いどころを工夫されてたので、私はとても楽しめました。
立ち切れ線香は噺そのものが中途半端で、だからどうなんだといつも感じてしまいます。
吉の丞さんの間違いも、通の方には痛恨かもしれませんが、楽しみたいだけの客には、笑いにつながってただただ面白かったです。
素人の感想を述べました。失礼をお許しください。
投稿: ふみはな | 2010年1月13日 (水) 22時02分
ふみはなさん、コメントありがとうございます。
エンターテイメントとか芸といったものは人によって受け取り方は様々ですから、僕のような意見もあればふみはなさんのような感想もある。それでいいのではないでしょうか?別に反感も覚えませんし。
映画で喩えると、アカデミー作品賞を受賞した作品が全て傑作だとは決して想いません(「ディパーテッド」とか)。各々感性が違うからこそ、人間って面白いんじゃないでしょうか。
投稿: 雅哉 | 2010年1月14日 (木) 01時28分
お返事ありがとうございます。
人それぞれの感想があるから面白いという意見には大賛成です。
でも、この日記は公開されていて不特定多数の人が見られるわけですから、雅哉さんの感想の一歩通行になっていると思うのです。
「文華さん=退屈」と思いこんでしまう人もいるかもしれません。
もう少し言葉を選んでいただけたらなあと思います。
雅哉さんが評論を生業にしておられるのならお許しください。
投稿: | 2010年1月14日 (木) 11時10分
感じたままのことを書いただけです。
ふみはなさんが仰りたいのは、褒め言葉は公にしてもよいけれど、否定的意見は認められないということですよね。そのような考え方は全く受け入れられません。
投稿: 雅哉 | 2010年1月14日 (木) 11時47分