繁昌亭 新春公演(1/2、1/3)
お正月は天満天神繁昌亭へ。連日満席で僕が観た3公演全てに立ち見客がいた。
《1月2日 第1回公演》(11時〜)
- 笑福亭笑子/狸賽
- 桂 歌之助/桃太郎
- 桂 米左/七段目
- 笑福亭智之介/(お笑い)マジック
- 桂 文太/明烏
- 露の団四郎/百面相
- 桂 枝女太/四人癖
- 笑福亭松喬/はてなの茶碗
歌之助さんの同じマクラ(地下鉄における大阪のおばちゃんの生態)を聴くのはこれで5回目くらい。いい加減うんざりした。
文太さんの「明烏」は何度聴いても愉しい。登場人物各々に愛嬌があって、憎めない連中である。
「はてなの茶碗」に登場する行商の油屋は松喬さんのニンに合っていた。いかにも大阪のおっちゃん的で、もっちゃりした味わい。”茶金さん”も風格があり、さすがベテランの巧さ。
《1月2日 第3回公演》(18時〜)
- 林家 染左/寿限無
- 桂 文三/動物園
- 笑福亭生喬/提灯屋
- 豊来家玉之助/太神楽(だいかぐら)
- 林家 染丸/豊竹屋
- 林家 染二/餅屋問答
- 月亭 八方/坊主茶屋
- 全員/住吉踊り
文三さんの「動物園」ではトラの皮を着た主人公が見物の子供に要求するのが、パンではなくてポン・デ・リング(ミスタードーナツ)に代わっていた。それから園長さんの名前が「長谷川はん」だったが、これは文三さんの師匠である文枝の本名・長谷川多持(はせがわたもつ)に由来するのだろう。ちなみに米朝一門では「池田はん」となり、これは故・桂文蝶の本名だそうである(詳細はこちら)。
「坊主茶屋」は寝ている遊女の頭を悪ふざけして剃る噺だが、八方さんが演じると何だか可愛らしい遊びに思えてくる。つまり、非常識な行為が許せる気がする(立川談志曰く、「落語とは人間の業の肯定である」)。これも芸の力なのだろう。
噺家さん達による踊りも正月らしく目出度くて、無性に愉しかった!伊勢音頭に始まり、最後はかっぽれで賑やかに。途中、八方さんの一人舞も披露された。
《1月3日 第1回公演》(11時〜)
- 桂 阿か枝/子ほめ
- 桂 よね吉/時うどん
- 桂 文華/替り目
- 笑福亭鶴笑/パペット落語「ザ!忍者」
- 桂 九雀/御公家女房(「延陽伯」小佐田定雄改作)
- 桂 三象/三象踊り
- 桂 春若/京の茶漬け
- 笑福亭福笑/大道易者(福笑 作)
最前列の8割は若い女性客。これもよね吉人気のためだろう。
そのよね吉さん、相変わらずシュッとして粋な高座。
鶴笑さんは大爆笑を呼ぶ。これぞ鶴笑ワールド、やっぱりパペット落語は最高!今回演目が「ザ!忍者」と書かれていたが、DVD「よしもと上方落語をよろしく」に収録されている「ザ・サムライ」と内容は同じ。なんて適当なんだ!←そこがいかにも鶴笑さんらしい。
九雀さんは快調なテンポで、ポンポン出てくる言葉のリズムが耳に心地よく。世の中に”勝負服”があるならば、この「御公家女房」は九雀さんにとって"勝負噺”なのだろう。兵庫芸文の「上方落語競演会」や昨年の「枝雀生誕70年記念落語会」でも高座に掛けられていた(DVD「笑う門には枝雀一門」に収録)。その噺を聴けて良かった。
上方の秘密兵器、三象踊りは藤あや子の「むらさき雨情」にのせて。会場にバカ受けで、”おひねり”が4つくらい舞台に投げ入れられていた。
福笑さんの新作もすこぶる面白かった。枝雀亡き後の上方落語界において現在唯一、ある種の狂気を感じさせる噺家である。
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コメント
いつも落語についての記事を面白く拝見しています。
「勝負噺」のことですが
九雀さんが以前ラジオでおっしゃってました。
「持ちネタの中で一番自分らしく仕上がっていて、自分の方向を決めてくれたのが御公家女房なので、常連さんには『またか』と思われるかも知れないが、ここという時は御公家女房をやります。」と。
「もしすべっても、得意玉を投げて打たれたら諦めがつく」そうです。
投稿: おたべ | 2010年1月 4日 (月) 18時33分
おたべさん、貴重な情報をありがとうございます。
恐らく多くの噺家が”勝負噺”を持っているのでしょうね。例えば阿か枝さんなら「金明竹」、よね吉さんなら「七段目」。何れもコンクールで勝ったネタです。
南光さんの場合は「あくびの稽古」なのかも知れません。生前、南光さんの「あくびの稽古」を聴いた師匠の枝雀さんは、その完成度の高さを大いに喜び「このネタはべかこ(南光の前名)に譲る」と言って、それ以降殆ど高座に掛けなくなったそうです。
投稿: 雅哉 | 2010年1月 4日 (月) 18時53分