北村英治 with アロージャズオーケストラ/Hyogo Christmas Jazz Festival 2009
クリスマス・イヴの12月24日、兵庫県立芸術文化センターへ。
ジャズ・クラリネットの第一人者・北村英治と、関西で活躍するアロージャズオーケストラの共演を聴くため。
ロビーでは日本酒(白鶴)の試飲もあった。
大ホール(2001席)は満席。曲目は以下の通り。
プログラム後半、「ブルー・クリスマス」(エルヴィス・プレスリーによるカヴァーが有名)と「ザ・クリスマス・ソング」(メル・トーメ作曲)はピアノ&ヴォーカルの高浜和英さんと北村英治さん二人きりのセッション。「スリップド・ディスク」(ベニー・グッドマン)、「ムーングロウ」(映画「ピクニック」のテーマ)になるとアロージャズからドラムスとベースが加わり、カルテットになった。色々なJAZZの形態が愉しめる構成だった。
生誕100年を迎えたベニー・グッドマンを中心に、グレン・ミラー、デューク・エリントン楽団の十八番など1920年代後半(大恐慌の時代)から1940年代(第二次世界大戦)にかけてのスウィング・ジャズの名曲が綺羅星のごとく演奏された。丁度この頃は、アメリカ文学で言えばスコット・フィッツジェラルド(「グレート・ギャツビー」「ベンジャミン・バトン」)やアーネスト・ヘミングウェイ(「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」)ら、いわゆるロスト・ジェネレーション(失われた世代)の作家たちが活躍した時代に一致する。"The Jazz Age"とも呼ばれ、ジャズの黄金期だった。
今回のコンサートを聴いて、この時代の音楽の豊穣さに圧倒される想いがした。
ロックンロールが台頭する1950年代後半になると若者の興味はそちらに移行し、JAZZは衰退の一途を辿る。
ビー・パップ・スタイルの行き詰まりを打開すべく、1960年代に入ると「モダン・ジャズ理論の拘束からの開放」「既成観念の否定」を謳ったフリー・ジャズが登場する。それはある意味このジャンルを徹底的に破壊する行為であった。そしてJAZZは完全に大衆の支持を失うことになる(マニア化)。
これは20世紀にシェーンベルクの十二音技法の出現と共に、ソナタ形式と調性音楽が破壊され、聴衆にそっぽを向かれてしまったクラシック音楽にも同じことが言える。そしてジャンルは死に絶え、後には不毛な荒野だけが残った。歴史は繰り返される。
北村さんは「この時代のJAZZはSPレコードに収まるよう、3分程度の短い曲が多いのです。当時の人々は曲にあわせて踊ったので、丁度よい長さだったのでしょう。そしてその中できちんと完結している。最近の10分を越えるような演奏は延々と続くソロがあったりして、聴いてる途中で『もういいよ』というものが少なくない」と仰り、僕もその通りだなと頷いた。
北村さんのクラリネットの音色は柔らかく、自在に歌い、スウィングする。80歳という年齢を全く感じさせない、かくしゃくとして粋なステージだった。
アロージャズは今回初めて聴いた。(小曽根真 presents)No Name Horsesほど各人のソリストとしての技量があるわけではないが、アンサンブルが非常に揃っており精度の高さに舌を巻いた。素晴らしいJazz Orchestraである。
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