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2009年12月20日 (日)

玉木宏・上野樹里 主演/映画「のだめカンタービレ 最終楽章」前編

評価:B+ (ただし、テレビ・シリーズを未見の人が愉しめるかどうかは保証の限りではない)

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映画の中でオーケストラが登場する作品のうち、特に印象に残ったものを想い出してみた。

名指揮者レオポルド・ストコフスキーが本人役で大活躍する「オーケストラの少女」(1937)、群馬交響楽団をモデルにした「ここに泉あり」(1955)、ピアノ協奏曲《宿命》が哀切に響く「砂の器」(1974)、ジョルジュ・ドンがエッフェル塔を背景に踊る「愛と哀しみのボレロ」(1981)、そして今年公開されたばかりの「クララ・シューマン 愛の協奏曲」。「のだめカンタービレ 最終楽章」はそれらに決して引けをとらない、出色の音楽映画である(考えてみれば「愛と哀しみのボレロ」は「のだめ」でも演奏されるラヴェル/ボレロベートーヴェン/交響曲第7番が重要な役割を果たす)。

公式サイトはこちら

No1

まず映画冒頭、飯森範親/のだめオーケストラが演奏するベートーヴェン/交響曲第7番の演奏が素晴らしい。ヴィブラートを抑えたピリオド奏法で音楽が弾み、躍動する。

「のだめカンタービレ」のタイトルが、ウィーン楽友協会大ホール(黄金のホール)を背景に浮かび上がった瞬間は背筋がゾクゾクッとした。

玉木宏の指揮ぶりも飯森さんからの指導を受けてテレビ版より更に進化し、スタイリッシュで格好いい。

そしてなりより特筆すべきが”のだめ”を演じる上野樹里。彼女のコメディエンヌとしての魅力が爆発。何と愉快でチャーミングなヒロイン像だろう!彼女のピアノを吹き替えているラン・ランの演奏も疾走感と切れがあり、文句なし。

武内英樹の演出はテレビ・シリーズから冴えていたが、映画でも絶好調。なによりリアリズムに近づこうとはせず、漫画の表現そのままを実写でやろうとするその大胆な試みに好感が持てる。そしてそれは概ね成功している。外国人キャストの台詞が、全員日本語に吹き替えられているのが面白い。

特に”のだめ”の妄想「変態の森」の場面がシュールで凄い。CGアニメのキャラクターが洪水のように出現し、狂騒の場と化す。僕は今敏 監督のアニメーション映画「パプリカ」のことを想い出した。そのワンダーランドへの入り口が、世界遺産モン・サン=ミッシェルの窓というアイディアも大いに気に入った。

千秋が常任指揮者になったフランスの「ル・マルレ・オーケストラ」で木管楽器のフランス式バソンを、機能面で勝るドイツ式ファゴットに切り替えるかどうか論争になるシーンが興味深い。今でも頑なにウィンナホルンに拘るウィーン・フィルを彷彿とさせるエピソードである。

嗚呼、後編の公開が今から待ち遠しい!

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コメント

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投稿: 日本インターネット映画大賞 | 2009年12月21日 (月) 09時38分

雅哉さん、こんばんは
この数日同じような行動パターンでした(笑)

この映画2時間ほどでしたよね、展開がテンポよく、アニメやCGを巧みに使って飽きさせず、2時間があっと言うまでした。
事情をかかえたオケメン達が頑張ってるシーンでのニムロッドには泣けました。
シュトレーゼマンのあの発言は意味深でしたよね?

投稿: jupiter | 2009年12月21日 (月) 22時42分

jupiterさん、こんばんは。

そうそう、本文では書かなかったけれど、ニムロッド(エルガー/「エニグマ変奏曲」より)が流れるシーンは本当に感動的でした。ここだけの話ですけど、想わず涙が零れちゃいました。

それからjupiterさんが飯森さんの指揮するベートーヴェンの7番にどういう感想を持たれたのか、是非お伺いしたいです!

投稿: 雅哉 | 2009年12月22日 (火) 00時45分

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「のだめカンタービレ 最終楽章 前編 」★★★★☆オススメ 上野樹里 、 玉木宏出演 武内英樹監督、121分 、 2009年12月19日:公開                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 「のだめ(上野樹里)はパリで学園生活をし、 相変わらずのはじけっぷりだ、 前編の主役は千秋(玉木宏)で、 伝統はあるものの崩壊寸前の オーケストラ(マルレ・オケ)の指揮者に就... [続きを読む]

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