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2009年12月

繁昌亭昼席(12/28)

繁昌亭へ。

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  • 桂雀太/饅頭怖い -半ば-
  • 笑福亭扇平/替り目
  • 月亭遊方/飯店エキサイティング(遊方 作)
  • 旭堂小二三/水戸黄門漫遊記〜牛盗人(講談)
  • 桂米平/正月丁稚
  • 笑福亭銀瓶/七段目
  • 桂米八/曲独楽
  • 笑福亭岐代松/時うどん
  • 林家染弥/癪の合薬(やかんなめ)
  • 笑福亭福笑/幻の財宝(福笑 作)

扇平さんと岐代松さんは喋るリズムが単調で眠たくなるが、その点雀太さんは良かった。

七段目」は吉朝一門(吉弥、よね吉)の口演を聴き馴染んでいると、どうしても銀瓶さんは聴き劣りがする。芝居噺以外のネタを演って欲しかった。

飯店エキサイティング」は《よしもと上方落語をよろしく!》DVDで試聴した時よりも、生の方が断然面白かった。これぞ、寄席に通う醍醐味である。

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雀々、文珍、文三、たま/最近聴いた落語会から

12月26日(土)は「よしもと上方落語をよろしく!DVD発売記念落語会」を聴きに、ヨシモト∞ホールへ。カメラが入り、今回の公演も来年の春頃DVDで発売される予定だそう。

  • 桂   三四郎/道具屋
  • 笑福亭たま/ショート落語+火焔太鼓
  • 桂     文三/時うどん
  • 笑福亭たま/オチを先に言う落語+くっしゃみ講釈
  • 桂      文三/崇徳院

たまさんによると(自信がある)1軍のショート落語は発売されたDVDに収録されたので、今回披露するのは1.5軍だとか。それでも初めて聴くものが多く、爆笑の連続だった。オチを先に言う落語では「(8代目)笑福亭松鶴襲名」ネタが最高に可笑しかった。「火焔太鼓」は独自のくすぐりが満載され、登場人物のエキセントリックさが愉しい。

しかしこの日の白眉は何と言っても文三さんだった。さすがベテランの上手さ、貫禄を見せつけた。もう登場しただけで客席をパーッと笑顔にしてしまうあのオーラは一体、何なんだろう?文三さんは何時も明るく、機嫌良い。しかし恐らくその《機嫌良さ》も芸のうちなのだろう。文三さんが今まで「繁昌亭大賞」の対象になっていないのが、僕には不思議でならない。

12月27日(日)大阪厚生年金会館芸術ホールで「桂文珍 独演会」。

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  • 桂   楽珍/ふぐ鍋
  • 桂  文珍/老楽風呂(文珍 作)
  • 内海英華/女道楽
  • 桂   文珍/御神酒徳利
  • 桂   文珍/蔵丁稚

御神酒徳利」は江戸落語。三遊亭圓生(六代目)が宮中に於いて昭和天皇の前で口演したというお目出度い噺。

特に文珍さんの新作「老楽風呂」が良かった。時事ネタや風刺も上手くブレンドされ、「老い」についての心境がしみじみと滲み出る作品であった。

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続いて、千里中央駅近く、A&Hホール「桂雀々 落語のひろば」へ。

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  • 桂    優々/動物園
  • 桂こごろう/阿弥陀池
  • 桂    雀々/喧嘩息子
  • 桂    三象/憧れのカントリーライフ(三枝 作)
  • 桂    雀々/くやみ

こごろうさんは久しぶりに聴いたが、リズム感が心地良い。

雀々さんはマクラで米朝一門の"若旦那"こと、米團治さんの話題に触れた。彼が「立ち切れ線香」を口演している時、そのヒロイン”小糸”(こいと)と、「三枚起請」の”小輝”(こてる)がごっちゃになって、最後は「何で(三味線を)終いまで弾ぃてくれへんねん、”こてと”〜!!」と叫んだとか、「はてなの茶碗」で”茶金(ちゃきん)さん”と言うべき所を”砂金ちゃん”と言い間違えたとかいったエピソードで盛り上がった。

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2009年、印象の残ったコンサート&コンクールの名演を振り返る

まず今年僕が聴いた演奏会のベストテンを順不同で列挙する。各々のタイトルをクリックすればレビューに飛ぶ。なお、ジャンルはクラシック・古楽・吹奏楽が中心である。

中野振一郎さんが演奏するパーセルのCDは見事レコード・アカデミー賞に輝き、児玉宏さんのブルックナーは平成21年度文化庁芸術祭「大賞」を受賞した。関西は元気だ。延原武春さんと大フィルの共演も大成功を収め、来年度はこのコンビで《古典派シリーズ》全3回(ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン)が企画されるに至った。これは大いに期待したい。ベートーヴェンが不得手な大植英次さんには今後、最も得意とするロマン派以降の音楽(但し、ブルックナーを除く)に専念して貰えばいい。音楽監督がオールマイティである必要はない(朝比奈だってマーラーやショスタコーヴィチは苦手だった)。適材適所、それが一番だ。

更にコンサート・ベスト20(NEXT 10)を。

普門館で聴いた全日本吹奏楽コンクール(高校の部)の名演ベスト3は、

  • 丸谷明夫/淀川工科高等学校「ダフニスとクロエ」
  • 梅田隆司/大阪桐蔭高等学校「カルミナ・ブラーナ」
  • 石田修一/柏市立柏高等学校「マン・オン・ザ・ムーン」(清水大輔)

大阪城ホールにおける全日本マーチング・コンテスト(高校以上の部)のベスト・パフォーマンスは、

  • 精華女子高等学校吹奏楽部
  • 玉名女子高等学校吹奏楽部

であった。詳しくは「第57回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて《前編》」「 〃 《後編》」「第22回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)《後編》」をお読み下さい。

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戦場でワルツを

評価:D

アカデミー外国語映画賞にノミネートされたイスラエルのアニメーション映画。公式サイトはこちら

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1982年にレバノンで起こったパレスチナ難民大虐殺を題材にしている。これは日本の「火垂るの墓」でも感じたことだが、リアルで過酷な現実をわざわざアニメーションの手法で語る意味って何?という疑問を最後まで拭えなかった(それに本作は最後の虐殺シーンでドキュメンタリー映像に切り替わる。だったら端から実写でやれや)。

それからナチスに迫害されたユダヤ人が、イスラエル建国後はパレスチナ人を虐げているというテーマは、天才・手塚治虫が漫画「アドルフに告ぐ」(1983-85連載)で既に描いている。今更、時代遅れである。

アニメのキャラクターに魅力がない。それからセル画とCGの融合が上手く機能しておらず、違和感ありまくり。お粗末!

ご存じの通り、今世界でCGアニメーションに関してはピクサーのひとり勝ちであり、セル画については(スタジオジブリなど)日本の技術が突出してる。結局「戦場でワルツを」は、イスラエルの実力の低さを露呈する作品に過ぎなかった。

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2009年映画個人賞はこの人に!

独断と偏見で選ぶ個人賞を発表する。作品名をクリックすれば、各々のレビューに飛ぶ。

監督賞:クエンティン・タランティーノ「イングロリアス・バスターズ
 J・J・エイブラムス「スター・トレック
主演女優賞:ペ・ドゥナ「空気人形
 上野樹里「のだめカンタービレ 最終楽章
主演男優賞:浅野忠信「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~
 ミッキー・ローク「レスラー
助演女優賞:深田恭子「ヤッターマン
助演男優賞:クリストフ・ヴァルツ「イングロリアス・バスターズ
オリジナル脚本賞:ミーガン・ホリー「サンシャイン・クリーニング
脚色賞(原作あり):田中陽造「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~
作曲賞:マイケル・ジアッチーノ「スター・トレック」「カールじいさんの空飛ぶ家
歌曲賞:A・R・ラフマーン/Jai Ho「スラムドッグ・ミリオネア
撮影賞:リー・ピンビン「空気人形
美術賞:種田陽平「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~
衣装デザイン賞:アン・ロス「ジュリー&ジュリア
編集賞:ムン・セギョン「母なる証明
特殊視覚効果賞:「アバター
音響・音響効果賞:「アバター
メイクアップ賞:「ヘルボーイ/ゴールデンアーミー
ここまでよく頑張ったで賞:渡辺謙「沈まぬ太陽

最低脚本賞:君塚良一「誰も守ってくれない
最低監督賞:君塚良一「誰も守ってくれない

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2009年映画ベスト35選

2009年にスクリーンで観た映画のベスト35を選出した。順位は敢えて書いていないが、気に入った順に挙げている。

映画のタイトルをクリックすると、各々のレビューに飛ぶ。ちなみに昨年のベスト作品はこちら

そして今年のワースト・ワンは文句なし、「誰も守ってくれない」にトドメを刺す。何度でも書く。これをアカデミー外国語映画賞の日本代表として出品するのは、我が国の恥である。

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スリラー/サスペンス映画、オールタイム・ベスト30+α

以前、

という記事を書いて好評を博した。そこでリクエストもあり、今回はスリラー/サスペンスを取り上げることにした。

まずは”サスペンスの神様”に敬意を表して、アルフレッド・ヒッチコック監督特集から。

めまい」1958年、アメリカ
Vertigo
言わずと知れた、ヒッチコックの最高傑作。ソウル・バスによるタイトルデザイン、バーナード・ハーマンの音楽などいずれもパーフェクトである。またヒッチコックと撮影監督ロバート・バークスがこの映画で生み出した「逆ズーム」は絶大な効果をもたらした。

疑惑の影」1942年、アメリカ
Shadowofadoubt
ヒッチコックが得意とする、平凡な日常に忍び寄る恐怖。スリリングな映画である。明るい「メリー・ウィドウ」ワルツが不気味に響く。またヒロインを演じた清純派女優テレサ・ライトは僕のお気に入り。アカデミー作品賞を受賞した「我等の生涯の最良の年」(1946)の彼女も良かったし、カルトな名作「ある日どこかで」(1980)に登場した時は可愛らしいおばあちゃんになっていた。

北北西に進路をとれ」1959年、アメリカ
North_by_northwest
泣く子も黙るヒッチコック絶頂期の傑作中の傑作。サスペンスとユーモアの按配(匙加減)が絶妙。観ずに死ねるか!

見知らぬ乗客」1951年、アメリカ
Strangers_on_a_train
原作はパトリシア・ハイスミス。同じく彼女が書いた小説を映画化した「太陽がいっぱい」同様、この作品の主人公に交換殺人を持ちかけるブルーノが同性愛者的イメージで描かれている。落ちたサングラスに歪んで映る、絞殺シーンが印象的。

白い恐怖」1945年、アメリカ
Spellbound

やっぱりバーグマンは綺麗やねぇ……(ため息)。幻想シーンはサルバドール・ダリが協力していることでも名高い。それからアカデミー作曲賞を受賞したミクロス・ローザのロマンティックな音楽は本当に美しい。

海外特派員」1940年、アメリカ
Foreign_correspondent

雨傘を俯瞰で撮った暗殺シーン、一つだけ逆に回る風車小屋、そして飛行機が海に突っ込むスペクタクル。映像の魔術師の面目躍如である。

レベッカ」1940年、アメリカ
Rebecca
既に死んだレベッカの影に怯える人々。全て彼女が支配している世界。僕はこの映画を観ると、没後10年経った今でも上方落語界に影響を与え続けている桂枝雀さんのことを想う。以上でヒッチコック特集は終わり。

冒険者たち」1967年、フランス
Lesaventuriers
本作は煌く海が眩しい青春映画でもある。アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラの男の友情が熱い。そしてフランソワ・ド・ルーベが作曲した、口笛の「レティシアのテーマ」!痺れるねぇ。レティシアを演じたジョアンナ・シムカスは本作により、僕らにとって永遠のアイドル(偶像)になった。

殺人の追憶」2003年、韓国
Tsuioku
紛れもなく韓国映画の金字塔。ヒリヒリとして、背筋が凍りつく大傑作。ポン・ジュノ監督恐るべし。岩代太郎の音楽も出色の出来。

オールド・ボーイ」2003年、韓国
Old
原作は日本の漫画。色々な意味で「痛い」映画だ。カンヌで本作にグランプリを与えた審査員たちは偉い!ちなみにこの年の委員長はクエンティン・タランティーノだった。だから彼の映画が苦手な人は、これも駄目かも。

L.A.コンフィデンシャル」1997年、アメリカ
La
フィルム・ノワールの傑作。原作はジェイムズ・エルロイ。エルロイが殺害された実母の未解決事件を追い、自分の半生を書いた本のタイトルが「わが母なる暗黒(My Dark Places)」なんだから凄い。その生き様そのものがノワールだ。

第三の男」1949年、イギリス
Thirdman  
この名作について、いまさら説明するまでもないだろう。光と影、白黒撮影という美の極致。アントン・カラスのツィターが高鳴る!

スピード」1994年、アメリカ
Speed
サスペンスというよりアクション映画、かもね?とにかく面白いんだから、どっちでもいいじゃない。上のポスターは「スピード2」のもの。この続編はどうしようもない駄作。

その土曜日、7時58分」2007年、アメリカ 
究極のLoser(負け犬)映画。これは悪夢だ!公開当時の僕のレビューはこちら

砂の器」1974年、日本
Suna
終盤の30分、美しくも哀しいピアノ協奏曲「宿命」が鳴り響く中、コンサートの様子(現在)に、親子の旅(過去)がフラッシュバックされるシーンの何という鮮やかさ!これこぞ映画。橋本忍、山田洋二の(共同)脚本が素晴らしい。他に松本清張原作なら「張込み」もいい。

華麗なる賭け」1968年、アメリカ
Thomascrownaffair
アカデミー賞に輝いたミッシェル・ルグランの音楽、サングラスをかけ黄色いグライダーを操縦するスティーブ・マックイーン、そしてスプリットスクリーン(分割画面)。全てがお洒落な映画。

誘拐」1997年、日本
渡哲也、永瀬正敏 主演。映画の脚本コンクール「城戸賞」受賞を受賞したシナリオが練りに練られていてミステリーとして出色の出来。東京都庁、新宿歌舞伎町などを舞台に「身代金受け渡しのテレビ中継」が展開される群集シーンに臨場感がある。

天国と地獄」1963年、日本
言わずと知れた黒沢明監督の名作。原作はエド・マクベインの「キングの身代金」。これも誘拐もの。当時まだ新人だった山崎努が鮮烈な印象を刻み込む。

野良犬」1949年、日本
Nora
これも黒沢明監督。終戦直後の東京の風俗が活き活きと描かれている。三船敏郎と志村喬の刑事コンビがいい。御託は抜きだ、とにかく観て下さい。

陸軍中野学校」1966年、日本
Nakano
日本にもスパイ映画があった!その衝撃的な面白さ。日本人はもっと増村保造監督の凄さを知るべきだ。

黒の試走車(テストカー)」1962年、日本
これも増村映画。悪い奴を描かせたらこの監督は天下一品。欲望にギラギラした人間たちが蠢く。

青の炎」2003年、日本
切ない犯罪映画、青春映画とも呼べるだろう。二宮和也、松浦亜弥主演。監督は蜷川幸雄。

マルタの鷹」1941年、アメリカ
Maltese_falcon
やっぱりハンフリー・ボガートはハードボイルドやねぇ。渋い!

刑事ジョン・ブック/目撃者」1985年、アメリカ
Witness
やっぱりこの映画の白眉は、主人公の刑事がアーミッシュの村に彷徨い込むとろろにある。現代のアメリカ合衆国にこんな暮らしをしている人々がいたとは!正にカルチャー・ショックであった。

インファナル・アフェア」(無間道)2002年、香港
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香港ノワールの最高作。ハリウッドでリメイクされた「ディパーテッド」がアカデミー作品賞・監督賞を受賞したのはご承知の通り。でも断然、オリジナル版の方がいい。

M」1931年、ドイツ
Mposter

フリッツ・ラング監督、ドイツ時代の代表作。ピーター・ローレの怪演が強烈。サイコスリラーの始祖であり、このジャンルはラングと共にアメリカに渡り、フィルム・ノワールに発展した(ユダヤ人であったラングはヒトラー政権を逃れ亡命)。ラングが戦争中の1943年にアメリカで撮った「死刑執行人もまた死す」も鬼気迫るものがある。

太陽がいっぱい」1960年、フランス・イタリア合作
Soleil
アラン・ドロンの出世作。ニーノ・ロータの音楽が切なく響く。これをゲイ映画として見直せば、作品に新たな光が当てられるだろう。

現金に体を張れ」1956年、アメリカ
Thekilling
やっぱりスタンリー・キューブリック監督は天才だね。息詰まる描写力がお見事。

ワールド・オブ・ライズ」2008年、アメリカ 
公開当時の僕のレビューはこちら

ザ・シークレット・サービス」1993年、アメリカ
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年老いたクリント・イーストウッドが走る、走る!悪役のジョン・マルコヴィッチ、そしてエンニオ・モリノーネの音楽もいい。

ダーティ・ハリー」1971年、アメリカ
Harry
刑事ものといえばこれでしょう(アカデミー作品賞を受賞した「フレンチ・コネクション」は何度観ても面白いと想わない)。クリントもあの頃は若かった。

バウンド」1996年、アメリカ
Bound
ウォシャウスキー兄弟が最も冴えていたのは、「マトリックス」シリーズじゃなくて断然こっち。中々セクシーな映画である。

激突!」1971年、アメリカ
Duel
スピルバーグの出世作(テレビ映画)。主人公を執拗に追うトラック運転手の姿を最後まで見せないのが不気味だ。後にスピルバーグはこの演出法を応用して「ジョーズ」を撮った。

ミュンヘン」2005年、アメリカ
Munich
国家を挙げての犯罪映画である。暴力に対し暴力で報復するのは、後に空しさが残るだけ……。ラストシーンで遠くに霞んで見える、世界貿易センター(World Trade Center)ビルが切ない。

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日本テレマン協会/J.S.バッハ「クリスマス・オラトリオ」

日本テレマン協会の教会音楽シリーズを聴きにカトリック夙川教会へ。

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延原武春/テレマン室内オーケストラ(モダン楽器使用)&合唱団で、

  • J.S.バッハ/クリスマス・オラトリオ(第1部-3部、5部、6部)

これは全6部から構成されるオラトリオで、本来クリスマスから顕現節(1/6)にかけての日曜・祝日に1部ずつ分けて演奏されるものである。

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大バッハの音楽は一概に言えば厳しい。「ヨハネ受難曲」には激しい怒りがあり、「マタイ受難曲」は哀しみと諦念が通奏低音のように流れている。そんな中で「クリスマス・オラトリオ」は明朗で喜びの気持ちに満ちた、祝祭の音楽である。

毎年12月25日にこの教会で「クリスマス・オラトリオ」を聴くようになって3年。そんなことを感じるようになった、今日この頃である。

演奏会の最後はクリスマス・キャロル「もろ人こぞりて」と「しずけき(きよしこの夜)」が演奏され、教会に集った聴衆も歌った。このようにして静かに夜は更けていった。

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旭堂南湖@徳徳亭

ミナミにある鯨料理「徳家」で開催されている徳徳亭 毎日寄席へ。午後3時開演、寄席(1時間)+ちょっと一杯セット(生ビール中ジョッキと鯨の刺身・唐揚)付きで木戸銭2,500円也。

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今回は旭堂南湖さんの講談を聴いた。1973年生まれの若手である。客の入りは10人くらい。

  • 鼓ヶ滝(「西行法師歌行脚」より)
  • 無筆の出世

特に怪談噺じみた怖さもある「無筆の出世」が面白かった。南湖さんの語り口の上手さもあるのだろう、物語の世界にグイグイ引き込まれた。

講釈師、見てきたように嘘を言い

講談もなかなか味わい深い。なお南湖さんは来年の春に休暇をとり、四国を歩いてお遍路参りされるとか。

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北村英治 with アロージャズオーケストラ/Hyogo Christmas Jazz Festival 2009

クリスマス・イヴの12月24日、兵庫県立芸術文化センターへ。

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ジャズ・クラリネットの第一人者・北村英治と、関西で活躍するアロージャズオーケストラの共演を聴くため。

ロビーでは日本酒(白鶴)の試飲もあった。

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大ホール(2001席)は満席。曲目は以下の通り。

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プログラム後半、「ブルー・クリスマス」(エルヴィス・プレスリーによるカヴァーが有名)と「ザ・クリスマス・ソング」(メル・トーメ作曲)はピアノ&ヴォーカルの高浜和英さんと北村英治さん二人きりのセッション。「スリップド・ディスク」(ベニー・グッドマン)、「ムーングロウ」(映画「ピクニック」のテーマ)になるとアロージャズからドラムスとベースが加わり、カルテットになった。色々なJAZZの形態が愉しめる構成だった。

生誕100年を迎えたベニー・グッドマンを中心に、グレン・ミラー、デューク・エリントン楽団の十八番など1920年代後半(大恐慌の時代)から1940年代(第二次世界大戦)にかけてのスウィング・ジャズの名曲が綺羅星のごとく演奏された。丁度この頃は、アメリカ文学で言えばスコット・フィッツジェラルド(「グレート・ギャツビー」「ベンジャミン・バトン」)やアーネスト・ヘミングウェイ(「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」)ら、いわゆるロスト・ジェネレーション(失われた世代)の作家たちが活躍した時代に一致する。"The Jazz Age"とも呼ばれ、ジャズの黄金期だった。

今回のコンサートを聴いて、この時代の音楽の豊穣さに圧倒される想いがした。

ロックンロールが台頭する1950年代後半になると若者の興味はそちらに移行し、JAZZは衰退の一途を辿る。

ビー・パップ・スタイルの行き詰まりを打開すべく、1960年代に入ると「モダン・ジャズ理論の拘束からの開放」「既成観念の否定」を謳ったフリー・ジャズが登場する。それはある意味このジャンルを徹底的に破壊する行為であった。そしてJAZZは完全に大衆の支持を失うことになる(マニア化)。

これは20世紀にシェーンベルクの十二音技法の出現と共に、ソナタ形式と調性音楽が破壊され、聴衆にそっぽを向かれてしまったクラシック音楽にも同じことが言える。そしてジャンルは死に絶え、後には不毛な荒野だけが残った。歴史は繰り返される。

北村さんは「この時代のJAZZはSPレコードに収まるよう、3分程度の短い曲が多いのです。当時の人々は曲にあわせて踊ったので、丁度よい長さだったのでしょう。そしてその中できちんと完結している。最近の10分を越えるような演奏は延々と続くソロがあったりして、聴いてる途中で『もういいよ』というものが少なくない」と仰り、僕もその通りだなと頷いた。

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北村さんのクラリネットの音色は柔らかく、自在に歌い、スウィングする。80歳という年齢を全く感じさせない、かくしゃくとして粋なステージだった。

アロージャズは今回初めて聴いた。(小曽根真 presents)No Name Horsesほど各人のソリストとしての技量があるわけではないが、アンサンブルが非常に揃っており精度の高さに舌を巻いた。素晴らしいJazz Orchestraである。

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田辺寄席(あやめの段)、笑福亭たま(+月亭遊方)/ナイトヘッド、八方会

12月19日(土)田辺寄席へ。今回は桂あやめを「じっくりたっぷり」聴く会。

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  • 桂さろめ/平林
  • 桂あやめ/落語男(あやめ 作)
  • 桂春駒/お忘れ物承り所(三枝 作)
  • 桂文太/寄合酒
  • 桂あやめ/桜姫花菖蒲文章(あやめ 作)

平林」は東京弁で。いまひとつリズムに乗れず、さろめさんはどうもまだ自分の方向性をつかめていない様子。

文太さんはさすがの名人芸。

桜姫花菖蒲文章」は歌舞伎「桜姫東文章」を落語化した芝居噺。

特に「電車男」のパロディ「落語男」が秀逸だった。インターネットの落語コミュニティに集まる人々を面白可笑しく描き、「俺たち”落語オタク”が噺家を支えているのに、あいつらは俺たちを毛嫌いするんだ」という台詞には大笑い。いや、実際そうなんだよね。ブログなどで落語会の感想を書く人間を、噺家は非常に煙たがる。あやめさんの観察力の鋭さに脱帽。

続いて繁昌亭のレイトショー(21時40分開演)へ。

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  • 桂吉の丞/強情
  • 笑福亭たま/近日息子
  • 月亭遊方/あほーりーらぶ(遊方 作)+小咄「甘酒屋」
  • 笑福亭たま/ショート落語+刺青(たま 作)

近日息子」は怒りがどんどんエスカレートしていく様が面白い。

遊方さんの新作は、2007年のクリスマスに「できちゃったらくご!」で初演されたもの。基本的に12月にしかされないネタのようだ。アホアホ星人に侵略された人類の危機を描く。クライマックスは映画「タイタニック」の主題歌“My Heart Will Go On”が高鳴る。遊方さんの顔芸が可笑しくて、その馬鹿馬鹿しさに腹を抱えて笑った。

たまさんの準備が遅れ、中々出て来ないので急遽遊方さんがふたたび高座に上がり、「甘酒家」で急場をしのいだ(”与太郎”役はアホアホ星人が担当)。遊方さんの掲示板によると、この小咄は明大落研の必修だとか。

今回のたまさんの新作は不調。彫物師の噺で、刺青には金属が入っているとかMRIに入ると熱を帯びて火傷するとか、説明過多で理に落ちた。

12月21日(月)八方さんが所有するビルを改装して作った寄席小屋、八聖亭(はっしょうてい)へ。

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ざこばさんの動楽亭が縦長なのに対して、八聖亭は横に長いのが特徴。

  • 月亭八方/ごあいさつ
  • 月亭遊方/虚礼困惑騒動(遊方 作)
  • 月亭方正/幽霊の辻(小佐田定雄 作)
  • 月亭八方/宿屋仇

月亭方正(山崎邦正)さんの上手さに舌を巻いた。八方さんに入門して一年半。今月末には上方落語協会に入会するそう(八方さんからは「一度入ったら抜けられへんで」と釘を刺されているとか。《覚悟を決めろ》ということなのだろう)。邦正さんは本気だ。

大体、入門一年半で桂枝雀さんのネタに挑もうというのだから大胆不敵、只者ではない。座布団の上で七転八倒、オーバーアクションの高座に場内は大爆笑の渦に巻き込まれた。リズム感もいいし、芸歴20年以上のベテランに対して失礼な言い草であることは百も承知で敢えて言わせて貰うなら、「邦正さん、落語のセンスあるよ」

マクラで「今、一番人が怖いんです」というエピソードを振られたのだが、それがちゃんと「幽霊の辻」の中身にリンクしていくのだから、この新人なかなか侮れない。

八方さんの「宿屋仇」はこれが二回目。でも聴いていて実に心地良く、一瞬たりともダレることなく愉しめた。

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ジェームズ・キャメロン監督「アバター」3D字幕版

評価:A

「アバター」を観たスティーブン・スピルバーグ監督は、米ハリウッド・レポーター誌の取材に答え「『スター・ウォーズ』以来、最も刺激的で驚くべきSF映画だ」と語った。

この記事を読んで僕は「ホンマかいな!?」と半信半疑だったのだが、観てびっくりした。スピルバーグの発言には些かも誇張がなかった。これは《映像新時代》を実感させる、紛れもない傑作である。CGの登場で進化してきた映画は今、さらなる飛躍の時を迎えた。

Avatar

前夜祭の上映を観たわけだが、シネコンの心地良いシートに座り、そういえばキャメロンの「タイタニック」も公開初日にワクワクしながら観たなぁと懐かしく想い出した。1997年12月、わが古里・岡山でのことである。その映画館”テアトル岡山”は今はもう潰れ、跡地は駐車場になっている。まるで「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいな話だ。

シガニー・ウィーバーが出演し、ジェームズ・キャメロン監督、音楽がジェームズ・ホーナーとくれば、どうしても「エイリアン2」のことを誰しもが連想する。「アバター」は正に「エイリアン2」を彷彿とさせる、血湧き肉躍る《戦争映画》であった。「エイリアン2」に出てくるパワーローダー(作業機械)に良く似たマシーンも「アバター」に登場。

「アバター」の悪役、海兵隊の大佐(スティーヴン・ラング)の不死身っぷりには笑える。攻撃されても攻撃されても執拗に主人公を追いかける様は、「ターミネーター」や「エイリアン2」のノリ。すっかり忘れていたが、キャメロンはアクション映画を撮らせたら昔から天下無双のひとだった。彼の健在ぶりが嬉しい。

パンドラに棲む種族ナヴィを人間が武力で侵略しようとする姿は、北米のネイティブ・アメリカンを制圧した欧州人、あるいはマヤ文明やインカ帝国を徹底的に破壊・虐殺したスペイン人に重なる。歴史は繰り返す。《虚構の中のリアリティ》がある、素晴らしい脚本である。

そして特筆すべきは「ロード・オブ・ザ・リング」のWETAが担当した特撮。立体的な3Dで観るとCGにリアルな質感があり、もの凄い臨場感。むしろ3Dでは人間に立体感が乏しいので「アバターでの自分が現実で、車椅子生活の自分の方が夢のように思える」という主人公のモノローグに説得力を感じた。

ジェームズ・ホーナーも久しぶりに卓越した仕事をした。まあ、戦闘シーンで「エイリアン2」そっくりの音楽が流れるとか、主題歌(愛のテーマ)"I See You"のメロディが「タイタニック」の"My Heart Will Go On"によく似ているとかいうのはご愛敬。

アイマックス・シアターでドキュメンタリー映画「ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密」(2003年、上映時間45分)を観た時は、「どうしてこれをわざわざ3Dで撮ったんだろう?キャメロンはよっぽどタイタニック号が大好きなんだな」くらいにしか感想を抱かなかったのだが、今にして想えばあれは「アバター」のための試行錯誤の実験でもあったのだろう。「タイタニック」から12年。長いようで、費やされたその歳月は決して無駄ではなかったことを「アバター」は見事に証明している。

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草片のクリスマス/西洋古楽器による小演奏会

大阪市南森町のギャラリー草片(くさびら)へ。

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クリスマスの演奏会を聴くため。「待降節から降誕祭、降誕祭後までを各地の音楽で辿るひととき」と副題が付いている。客席には25人くらいが集った。

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以前ここで聴いたコンサートの感想は下記。

演奏は安宅留美子(歌/リコーダー/ルネサンスギター)、今泉仁志(歌/バウロン/フィドル)、森本英希(フルート/リコーダー)、赤坂放笛(オーボエ/オーボエダカッチャ/リコーダー)、吉竹百合子(チェンバロ)という面々。森本さんはテレマン室内オーケストラのメンバーである。

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上の写真、手前一番左の楽器がオーボエ・ダ・カッチャ(”狩のオーボエ”=イングリッシュ・ホルンの原型)、次がバロック・オーボエ、そしてリコーダーの順。その奥の椅子の上にはフラウト・トラヴェルソ=バロック・フルートが置かれている。

曲目は、

  • J.S.バッハ/カンタータ 第152番「信仰の道に歩み出よ」
  • ボリビアのキャロル「そよ風に乗って」(南米ボリビア)
  • モンセラートの朱い本より「処女母マリア」「山に輝く星」(スペイン)
  • カタロニア民謡「聖母の御子」「鳥の歌」(スペイン)
  • フランスの降誕祭(バルバドル「小さな天使」、ドラランド「トリオによるノエル」)
  • ブリテン諸島の伝承キャロル(アイルランド、イングランド民謡)

などが演奏された。

聴いたことがあるのは「鳥の歌」とイングランド民謡「三艘の船が行く」くらい。「鳥の歌」はカタロニア出身のチェリスト、パブロ・カザルスの演奏で有名だが、歌は初めて。またボリビアのキャロルは今泉さんが現地で入手し持ち帰った楽譜だそうで、日本では滅多に聴けない貴重な内容だった。

バッハのカンタータではリコーダーを担当した安宅さんの音が、他の奏者より明らかにピッチ(音程)が低くて気持ち悪かった。しかしそのほかの曲は問題なし。珍しい古楽がたくさん聴けて愉しかった。またバウロンというアイルランドの太鼓は初めて見た(→写真はこちら)。とても面白い音がした。

古(いにしえ)の響きは異次元空間に彷徨いこんだようで、映画「ある日どこかで」の主人公リチャード(クリストファー・リーヴ)が体験したこと(タイムスリップ)は正にこんな感じだったのだろうなと、ふと想った。

Somewhere

余談だが、「ある日どこかで」は来年開催される「午前10時の映画祭」の”何度見てもすごい50本”に選ばれた(詳細は→こちら)。全国25の映画館でこの伝説の名作に逢える(ニュープリント)!なんと嬉しい事だろうか。

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延原武春、中野振一郎 IN 第九 de クリスマス

ザ・シンフォニーホールへ。

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まず延原武春/テレマン室内オーケストラ・合唱団で《100人の第九》。

  • ベートーヴェン/交響曲 第9番

昨年はクラシカル(古)楽器によるベートーヴェン交響曲全曲演奏に取り組んだ延原さんだが、《100人の第九》ではモダン楽器による演奏。古楽器のボウイング(弓使い)を熟知している楽員だからちゃんとピリオド奏法で、バロック・ティンパニを使用している。ベートーヴェンの記したメトロノーム記号(速度表記)に即した解釈で、颯爽として小気味好い。少人数で余分な贅肉がそぎ落とされ、タイトな演奏。やっぱりベートーヴェンはこうでなくっちゃ!

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プログラム後半は、

  • テレマン/3本のトランペットとティンパニのための協奏曲
  • パーセル/Oのラウンド”アブデルアーザー”
  • パーセル/組曲 第1番よりメヌエット
  • ヘンデル/組曲 ニ短調よりサラバンド
  • ヘンデル/オラトリオ「メサイア」よりピファ(田園風序曲)
  • モーツァルト/ホルン協奏曲 第1番 第1楽章
  • ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲「四季」より”冬”第2・3楽章
  • J.S.バッハ/コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
  • ハイドン/オラトリオ「四季」より”冬”終曲
  • 賛美歌「もろ人こぞりて」「神の御子は今宵しも」「荒野の果てに」
  • 「きよしこの夜」(アンコール)

今年はヘンリー・パーセル生誕350年、ヘンデル没後250年、ハイドン没後200年という記念の年だった。その割りに、演奏される機会は少なかったけれど(クラシック音楽も商売だから、集客を望めない作曲家に対して演奏家は冷たいのである。しかし来年はショパンで儲けようと、皆てぐすね引いて待っている)。

パーセル2曲とヘンデルの組曲は中野振一郎さんのチェンバロ独奏。切れ味鋭く畳み掛けるような、鮮やかな演奏だった。なお今年リリースされた中野さんのCD「パーセル作品集」は見事2009年度レコード・アカデミー賞に輝いた→詳細はこちら

モーツァルトのホルン・ソロは木山明子さん、ヴィヴァルディのヴァイオリン・ソロ(およびコンサート・ミストレス)は浅井咲乃さん。どちらも日本テレマン協会のメンバーである。一陣のそよ風が吹き抜ける、軽やかで清々しい演奏であった。

午後2時開演で、終わってみれば4時47分。たっぷり年末気分を堪能させてもらった。

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玉木宏・上野樹里 主演/映画「のだめカンタービレ 最終楽章」前編

評価:B+ (ただし、テレビ・シリーズを未見の人が愉しめるかどうかは保証の限りではない)

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映画の中でオーケストラが登場する作品のうち、特に印象に残ったものを想い出してみた。

名指揮者レオポルド・ストコフスキーが本人役で大活躍する「オーケストラの少女」(1937)、群馬交響楽団をモデルにした「ここに泉あり」(1955)、ピアノ協奏曲《宿命》が哀切に響く「砂の器」(1974)、ジョルジュ・ドンがエッフェル塔を背景に踊る「愛と哀しみのボレロ」(1981)、そして今年公開されたばかりの「クララ・シューマン 愛の協奏曲」。「のだめカンタービレ 最終楽章」はそれらに決して引けをとらない、出色の音楽映画である(考えてみれば「愛と哀しみのボレロ」は「のだめ」でも演奏されるラヴェル/ボレロベートーヴェン/交響曲第7番が重要な役割を果たす)。

公式サイトはこちら

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まず映画冒頭、飯森範親/のだめオーケストラが演奏するベートーヴェン/交響曲第7番の演奏が素晴らしい。ヴィブラートを抑えたピリオド奏法で音楽が弾み、躍動する。

「のだめカンタービレ」のタイトルが、ウィーン楽友協会大ホール(黄金のホール)を背景に浮かび上がった瞬間は背筋がゾクゾクッとした。

玉木宏の指揮ぶりも飯森さんからの指導を受けてテレビ版より更に進化し、スタイリッシュで格好いい。

そしてなりより特筆すべきが”のだめ”を演じる上野樹里。彼女のコメディエンヌとしての魅力が爆発。何と愉快でチャーミングなヒロイン像だろう!彼女のピアノを吹き替えているラン・ランの演奏も疾走感と切れがあり、文句なし。

武内英樹の演出はテレビ・シリーズから冴えていたが、映画でも絶好調。なによりリアリズムに近づこうとはせず、漫画の表現そのままを実写でやろうとするその大胆な試みに好感が持てる。そしてそれは概ね成功している。外国人キャストの台詞が、全員日本語に吹き替えられているのが面白い。

特に”のだめ”の妄想「変態の森」の場面がシュールで凄い。CGアニメのキャラクターが洪水のように出現し、狂騒の場と化す。僕は今敏 監督のアニメーション映画「パプリカ」のことを想い出した。そのワンダーランドへの入り口が、世界遺産モン・サン=ミッシェルの窓というアイディアも大いに気に入った。

千秋が常任指揮者になったフランスの「ル・マルレ・オーケストラ」で木管楽器のフランス式バソンを、機能面で勝るドイツ式ファゴットに切り替えるかどうか論争になるシーンが興味深い。今でも頑なにウィンナホルンに拘るウィーン・フィルを彷彿とさせるエピソードである。

嗚呼、後編の公開が今から待ち遠しい!

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丸谷明夫×下野竜也/吹奏楽とオーケストラ、夢の饗宴!

ザ・シンフォニーホールへ。下野竜也/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)が吹奏楽にまつわる曲を演奏するスペシャルライブ。サクソフォン独奏が平野公祟、司会が大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部顧問の丸谷明夫先生(丸ちゃん)。昨年のスペシャルライブの様子はこちらの記事に書いた。

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今回のプログラムは、

  • J.F.ワーグナー/行進曲「双頭の鷲の旗の下に」
  • アーノルド/管弦楽組曲「第6の幸福をもたらす宿」
  • グラズノフ/サクソフォン協奏曲
  • A.リード(中原達彦編曲)/エル・カミーノ・レアル(管弦楽版)
  • シベリウス/アンダンテ・フェスティーヴォ
  • ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲

客席は9割以上埋まる盛況ぶり。高校生の姿が多い。ステージに登場した下野さん、ますますハンプティ・ダンプティに似てきたなと想った。

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双頭の鷲の旗の下に」は僕も中学生の時、吹奏楽部で演奏したことがある。この曲を耳にするのはそれ以来だが、考えてみればオーケストラ版は初体験だった。いかにもオーストリア=ハンガリー帝国の軍隊行進曲らしく重厚な雰囲気で始まるが、下野/大フィルは中間部をふくよかに伸び伸びと歌う。嗚呼、マーチを聴いた!という爽やかな満足感があった。

第6の幸福をもたらす宿」はイングリッド・バーグマン主演の映画音楽(1958)。瀬尾宗利さんの編曲により吹奏楽コンクールで火が点いた。まことにロマンティックな名曲である。

「オーケストラよりも、我々吹奏楽の方でしばしば演奏されている曲です」と丸ちゃん。「これを機会にアーノルドがもっと日本で聴かれるようになればいいですね」

第1曲「ロンドン前奏曲」の冒頭はゆったりとしたテンポで開始され、中国への旅立ちを壮大に描く。第2曲「ロマンティックな間奏曲」は榎田さんのフルート、近藤さんのチェロ・ソロが美しい。そして第3曲「ハッピー・エンディング」はピッコロによる行進曲が次第に加速し、愛のテーマが登場するや下野さんは畳み掛けるようにオケを焚き付け、音楽がうねる。文句なしの演奏だった。

「映画の一場面を想い出しますねぇ」と丸ちゃん。「観たことないですけれど」に会場は大爆笑。

次にグラズノフのコンチェルト。オケは弦楽器のみ。平野さんのサックスは歌い方が演歌みたいで、余り馴染めなかった。ピッチ(音程)が少し低いところから吹き始め、尻上がりに合わせる奏法なのである。僕はやはり須川展也さんが奏でる、明瞭で澄んだ音の方が断然好きだ。ソリスト・アンコールはオケの伴奏付きで、

  • ラフマニノフ/ヴォーカリーズ

休憩を挟み「エル・カミーノ・レアル」管弦楽版が初披露された。ファンダンゴなどスペインの音楽なので弦楽器によく似合う。むしろ吹奏楽のオリジナル版より良いんじゃないかと想った。「ドサクサに紛れて今後もラテン特集などでこの曲を取り上げたい」と下野さん。その指揮ぶりは勢いがあって情熱的。大フィルの好演もあり、この曲の持ち味が遺憾なく発揮されていた。

シベリウスは「吹奏楽ファンの人に弦の魅力を知ってほしい」と下野さん。元々は弦楽四重奏曲で、作曲者自身の手で弦楽合奏とティンパニ用に編曲された。とはいえティンパニが登場するのは最後たった3小節のみ。大フィルが誇る弦楽セクションの技が光る。

ダフニスとクロエ」は幻想的な第1曲「夜明け」に始まり、たおやかな第2曲「パントマイム」を経て熱狂の第3曲「全員の踊り」へ。下野さんは激しい指揮ぶりで、大フィルもそれに喰らい付き、引き離されることなく期待に応えた。ワンダーランドへの扉が開き、ラヴェルの魔術的オーケストレーションが浮き彫りにされる結果となった。

盛大な拍手の中、下野さんは「燕尾服がキツイので指揮を交代し、アンコールは丸谷先生にお願いします!」と、

  • ホルスト/「吹奏楽のための第1組曲」からマーチ(管弦楽編曲版)

この曲は淀工が演奏したこともあるし、なにわ《オーケストラル》ウィンズ第1回目のコンサートでも丸ちゃんが指揮した。速いテンポで引き締まった痛快な演奏であった。こうして夢のような、素敵な一夜は終わりを告げた。

なお、来年以降このスペシャルライブで僕が是非取り上げてほしいと想う楽曲を次に列記しておく。

  • 保科 洋/風紋(管弦楽版)
  • 大栗 裕/大阪俗謡による幻想曲
  • ハワード・ハンソン/ディエス・ナタリス
  • カレル・フサ/プラハのための音楽1968

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4番目のアマゾン・バス

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イエローもあった!

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映画「のだめカンタービレ 最終楽章」への期待

玉木宏上野樹里が主演する映画「のだめカンタービレ」が今週末より公開される。

クラシック・ファンにとって何よりも愉しみなのが、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサート会場としてもお馴染みの、ウィーン楽友協会大ホール(黄金のホール)が登場することであろう。写真はこちら!ここで映画のロケが行われるのは史上初のことである。僕も一度だけ、このホールでコンサートを聴いたことがある。その豪華な内装に興奮したものだった。

映画に流れる音楽を全面的に指揮するのが飯森範親さん。飯森さんと「のだめ」の関係については下記記事に書いた。

ウィーン楽友協会大ホールでのロケにも飯森さんは立ち合われている。

飯森さんが普段、演奏会でモーツァルトやベートーヴェンを指揮される時はピリオド(ノン・ヴィブラート)奏法を選択される。

さて、黄金のホールに響き渡るベートーヴェン/交響曲 第7番は果たして、ノン・ヴィブラートなのか!?この点が注目される。

また映画で上野演じる”のだめ”が演奏するピアノ演奏の吹き替えを、なんと中国NO.1のピアニスト、ラン・ランが担当するという。こちらも大いに期待したい。

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なにわ《オーケストラル》ウィンズへのリクエスト

さて明日は、ザ・シンフォニーホールで丸谷明夫(丸ちゃん)×下野竜也/大阪フィルハーモニー交響楽団によるスペシャルライブ(吹奏楽とオーケストラ、夢の饗宴)が開催される。昨年の模様はこちらに書いた。丸ちゃんは言わずと知れた大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部の先生である。

ところで大フィルの主席クラリネット奏者・金井信之さんは、プロのオケ奏者が年一回集い、吹奏楽を演奏するなにわ《オーケストラル》ウィンズ(=NOW、公式サイトはこちら)の代表を務められており、毎年丸ちゃんと、ゲストとして招かれる中・高校吹奏楽部の先生がその指揮台に立つ。下野さんもピアノ&チェレスタ担当でNOWに参加されている。

そこでこの機会に、ひとつ僕の夢を語っておきたい。いつの日にかNOWの演奏会でジェイムズ・バーンズ作曲の「アルヴァマー序曲」を取り上げて欲しいのである。

この曲は1981年カンザス州ウィチタ地区の中学生選抜バンドと地区の指揮者ロバート・ロウェルのために書かれたもの。今でも多くの人々から愛されており、テレビ朝日「題名のない音楽界」の《吹奏楽の歴史(2)人気曲ベスト10》という番組で堂々第2位にランクインした(1位:ディスコ・キッド、3位:アルメニアンダンス パート1)。この番組には丸ちゃんも出演し、「今でもしばしば中学校のコンクール自由曲に選ばれる割に、この曲には名演が少ないんです」とコメントした。その後で佐渡裕/シエナ・ウインド・オーケストラが演奏したのだが、これがテンポの遅いもっさりした凡演で心底がっかりした。

ならば、丸ちゃん/NOWでこの曲の決定版を聴かせて欲しい!そう熱望する次第である。

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クリスマスに観たい映画

お勧め映画は下記記事にまとめているので、興味のある人はクリックしてみて下さいね。

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三度(みたび)のアマゾン・バス

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おっ、今度はオレンジか。

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一体、何色あるんだろう?

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ジュリー&ジュリア

評価:B

Juliejulia

これは女性映画である。Women Film Critics Circle Awards(女性映画批評家協会賞)でBEST MOVIE BY A WOMAN(女性が撮った最優秀映画賞) 、BEST EQUALITY OF THE SEXES(性の平等を扱った最良の作品賞)などを受賞。ちなみにBEST WOMAN STORYTELLER(Screenwriting Award)、つまり、最優秀女性脚本家賞は「サンシャイン・クリーニング」が獲った。またニューヨーク・オンライン批評家協会賞およびニューヨーク映画批評家協会賞ではメリル・ストリープが主演女優賞を受賞。

映画公式サイトはこちら

メリル・ストリープエイミー・アダムス主演。このふたりは「ダウト~あるカトリック学校で~」でも共演しているが(両者アカデミー賞ノミネート)、「ジュリー&ジュリア」では同じ空間で演技することが全くない。つまりパリとニューヨーク、しかも50年を隔てた、正に時空を超えた女性同士の共感を描くユニークな作品(なんと実話!)である。

脚本・監督はノーラ・エフロン。僕は彼女の作品で好きなものを問われたら、真っ先に「恋人たちの予感」(When Harry Met Sally...,1989)と「めぐり逢えたら」(Sleepless in Seattle,1993)を挙げる。ただし「恋人たちの予感」は脚本のみで、監督はロブ・ライナーだけれど。

「ジュリー&ジュリア」は決してそれらと肩を並べるような傑作ではない。しかし観終わった後、心地よい余韻が残る佳作だと想う。特に料理好きの女性にお勧めしたい。

まだ《出会い系サイト》といった言葉も存在しなかった1998年、「ユー・ガット・メール」("You've Got Mail")でインターネットのメールを通して出会う男女を描いたノーラだが、本作はブログという新しいコミュニケーション・ツールが映画の中で重要な役割を果たしている。

パリ生まれの作曲家アレクサンドル・デプラ(「真珠の耳飾の少女」「ラスト、コーション」「ライラの冒険/黄金の羅針盤」「ベンジャミン・バトン」)の音楽は、今回初めてフランスらしいスコアを聴いた気がした。トレビアン!

それから髪をショートにしたエイミー・アダムスが超キュート。「魔法にかけられて」の頃から僕が大好きな女優さんだ。彼女はとても素敵な声をしているので、是非またミュージカル映画にも出演して欲しい。

それでは、ボナぺティ(どうぞ召し上がれ)!

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お菓子の国&北欧のクリスマス@兵庫芸文

兵庫県立芸術文化センターへ。

オペラ「ヘンゼルとグレーテル」の上演を控え、ロビーはお菓子の国に変身していた。

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オペラがテーマなので、お菓子の家にヘンゼルやグレーテル、そして魔女がいるのがお分かり頂けるだろうか?

さて、「北欧のクリスマス」と題された演奏会の話に移ろう。これは「世界音楽図鑑」シリーズの一つである。昨年は「炎のジプシー・ブラス」を同じ会場で聴いた。

会場内のイベントとして北欧のクリスマス☆マーケットもあり、キャンドルや焼き菓子、フィンランドのパンなども売られていた。

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まずはフィンランド北部からやってきたウッラ・ピルッティヤルヴィ(ヨイク)&フローデ・フェルハイム(ヨイク、シャーマンドラム、シンセサイザー)の演奏。ヨイクとは少数民族サーミの人々に太古から伝わる歌唱法。トナカイを呼び寄せたり自然と交信するための手段として用いられているそうである。摩訶不思議な味わい(珍味)。シャーマン(巫女・祈祷師)が絡んでいるということもあり、僕はなんとなくオーストラリアの先住民族アボリジニの音楽を連想した(アボリジニの民族楽器ディジュリドゥDidgeridooは昔から精霊と交流する祭儀で用いられてきたという)。

プログラム後半はノルウェーの国民的伝統楽器ハルダンゲル・ヴァイオリン・トリオ「ヴェルキリエン・オールスターズ」が登場。ハルダンゲル・ヴァイオリンは4本の弦の下に共鳴弦が通されていて、構造的にヴィオラ・ダモーレに近い。テンポが速くて爽快。ノン・ヴィブラートで弾きまくる。

ヴァイオリンのヴィブラート奏法はロマ(ジプシー)がヨーロッパ大陸に広めたと言われている。

さすがのロマも寒い北欧まではやって来なかったんだろうなぁ……そんなことを考えながら、彼らの音楽を愉しんだ。

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柳家さん喬×笑福亭松喬 二人会

上方(松喬)と江戸(さん喬)の競演をワッハ上方ホールで聴く。

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  • 笑福亭喬若/へっつい盗人
  • 柳家 さん喬/そば清
  • 笑福亭松喬/一人酒盛り
  • 笑福亭松喬/尻餅
  • 柳家さん喬/中村仲蔵

「一人酒盛り」松喬さんが師匠である故・笑福亭松鶴から最後に稽古を受けたてネタだそう。正確に台詞を教えてもらったのは全体の3割くらいで、残りの7割はアドリブで好きなように喋ればいいと言われたとか。「全く受けず、その日の客に合わんと思うたら、すぐ(高座から)下りてきたらええ」成る程、やっぱり落語はJAZZなんだ。

さん喬さんは今月発売された文春MOOK「今おもしろい落語家ベスト50 -523人の大アンケートによる-」で第1位に選ばれた柳家喬太郎さんの師匠。爆笑を呼ぶ喬太郎さんとは異なりさん喬さんは端正で粋な芸風で、上方で言えば桂米朝さんに近いと感じられた。

つまり昭和の爆笑王・桂枝雀が真っ当な落語で勝負する正攻法の米朝門下であったからこそ、その枠を一旦壊し再創造(Recreation)することが出来たように、喬太郎もまた、さん喬というスタンダード、ベースライン(戻ってこれる場所)があればこそ、そこから逸脱し、オフ・ビートな天才性を遺憾なく発揮出来るのだろう。そのことを今回、理解出来た気がした。

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アマゾン・バス再び

街で見かけたこんなもの。

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Amazonゆき。今度は色違い(前回はこちら)。

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宝塚宙組/カサブランカ

千秋楽を翌日に控え、宝塚大劇場で宙組公演を鑑賞。

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アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞に輝いた映画「カサブランカ」(1942)は名台詞の宝庫である。

Here's looking at you, kid.
「君の瞳に乾杯!」
Play it, Sam. Play "As Time Goes By".
「あの曲を弾いて、サム。『時の過ぎ行くままに』を」
We'll always have Paris.
「俺たちにはパリの想い出がある」
Louis, I think this is the beginning of a beautiful friendship.
「ルイ、これが俺たちの美しい友情の始まりだな」
 

男なら、一度は言ってみたい台詞の数々だ。なお、イングリット・バーグマンが言う"PLAY IT AGAIN,SAM"はウディ・アレン脚本・主演した映画「ボギー!俺も男だ」(1972)の原題にもなった。

僕がこの作品を本当に凄いと想うのは、映画が公開された時点でアメリカはドイツと交戦中であり、ナチス・ドイツは未だ負けていなかった(ヒトラーは生きていた)ことにある。そして「カサブランカ」は1998年にアメリカ映画協会(AFI)が選出した「アメリカ映画ベスト100」で第2位、2007年の再選考でも第3位に選ばれている。

今回世界で初めてミュージカル化されるにあたり、台本・演出に当たったのは宝塚歌劇団のエース、小池修一郎である。ミュージカル「エリザベート」や「モーツァルト!」の演出で知られた鬼才であり、昨年の「スカーレット・ピンパーネル」では菊田一夫演劇大賞に輝いた。

小池さんの潤色は原作を生かしながら、回想のパリの場面でカン・カンを登場させるなど宝塚らしい華やかな見せ所も盛り込み、実に見事。パリのシーンはRouge(赤)を基調とした色彩感も洗練されている。盆(回り舞台)やせり(舞台の上下機構)を駆使した場面転換は流れるようで鮮やか。さすがである。

日本人が映画版を観て些か難解に感じるのはラストシーン、 ルノー署長(クロード・レインズ)が「ヴィシー水」と表記されたミネラル・ウォーターを飲み、そのラベルに気が付いて苦々しい顔でボトルごとゴミ箱に捨てる場面である。これはフランスに出来たナチス・ドイツの傀儡・ヴィシー政権の象徴となっている。今回の舞台ではこの描写をカットし、冒頭部でヴィシー政権の解説をするよう変更されている。なかなか賢いアレンジである。

音楽は"As Time Goes By","It Had to Be You" ,"Someone to Watch Over Me"などスタンダード・ナンバーをはじめ、オリジナルの楽曲も中々いい。

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主演の大空祐飛さんは決して歌が上手くない(歴代のスターで言うなら彩輝なお大和悠河 レベル)。しかしそのスッとした立ち姿が美しく、ハッとさせられた。何というか孤独を背負って生きる男の哀愁が漂っている。男役の美学、ここに極まれり。

バーグマンが演じたイルザ役の野々すみ花さんは容姿端麗とはほど遠く、歌も×。何でこんな人がトップになれたのか全く訳が分からない。美貌の檀れい白羽ゆり退団後、娘役氷河期が続く宝塚であった……。

ラズロを演じる蘭寿とむさんは歌唱もダンスもパーフェクト。素晴らしい男役である。聞くところによると、宝塚音楽学校時代は入学から卒業まで主席を他に譲らず、歌劇団へも主席入団だったとか。

また、エトワールに抜擢された七瀬りりこさん(研3)のソプラノがとっても美しかった!これは特筆に値する。

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兎に角、宝塚版「カサブランカ」は映画版をこよなく愛する僕でも納得出来る、素晴らしい舞台である(ただし、娘役を除く)。必見。

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「カールじいさんの空飛ぶ家」3D字幕版

評価:A+

Up

ピクサー・アニメーション・スタジオの勢いは止まらない。常にクオリティの高い作品を続々と世に送り出すその姿勢は、ウォルト・ディズニーが存命中だった頃のディズニー映画を彷彿とさせる(ウォルトは1931年の「花と木」以降、ほぼ毎年アカデミー短編アニメーション賞を受賞。生涯に26個のオスカーを獲得した。これはアカデミー賞史上、最多記録である)。そしてその中身(プロット、CGで描く技術)はより洗練され、エンターテイメント性を増している。映画公式サイトはこちら

メガネの形、顎の輪郭……まず主人公の顔が宮崎駿そっくりなのに笑ってしまう。ピート・ドクター監督は一応(スタジオ・ジブリの試写室にフィルムを持参し上映した折)、スペンサー・トレイシーの顔を参考にしたと宮崎さんに語っているが、それはまあexcuse(言い訳)に過ぎないだろう。いくらなんでも本人を目の前にして「あなたをモデルにした」とは言えないわな。横からジブリの鈴木プロデューサーが「映画を観ている最中ずっと、このおじいさんは宮さんだと想っていた」と感想を述べているが、正鵠を射た発言である。

ピクサー及びディズニー・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼務するジョン・ラセターは「すべてのピクサー作品が宮崎作品へのオマージュ」であると断言している。

だから主人公が南アメリカの目的地に到着する場面で、周囲に立ち込めていた霧が晴れていくと、遠くに滝が見えてくる情景の(静の)表現法、飛行船とのチェイス()、雨雲に近づく場面(”竜の巣”)等は明らかに「天空の城ラピュタ」を彷彿とさせるし、飛行船上で駆け回るアクション・シーンで「未来少年コナン」のギガント(巨大飛行兵器)登場の回を想い出さない人間はいないだろう。

また本作は同時にアルベール・ラモリス監督のフランス映画「赤い風船」(1956)や「素晴らしい風船旅行」('60)へのオマージュにもなっている(ラモリスは1970年、「恋人たちの風」を空撮中にヘリコプターの墜落事故で亡くなった。享年45歳。如何にもらしい最後であった)。

Rouge

Rouge2

Rouge3

Ballon

「カールじいさんの空飛ぶ家」は、いきなり冒頭部分から魅了される。まず少年時代のカールとエリーの出会が描かれるのだが、ここでのエリーは饒舌で、捲し立てる様に喋る、喋る。ところが、ふたりが結婚する場面になると突然台詞なしで音楽のみのサイレント映画仕立てになり、エリーと死別するところまで一気にスケッチ風に描かれる。ここは涙なしには観られない名場面である。宮崎駿さんもこう語っている。

「実は僕、追憶のシーンだけで満足してしまいました」

前の過剰な台詞の洪水があればこそ、この演出が生きるのである。

マイケル・ジアッチーノ(「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」)の音楽も素晴らしい。テーマがディキシーランド・ジャズ風に演奏されたかと想うと、それが優雅なワルツとなり、変幻自在にメタモルフォーゼを繰り返す。彼は今年「スター・トレック」でも卓越した仕事をこなしたし、そろそろアカデミー作曲賞をあげてもいいんじゃないだろうか?

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今回は上の写真のような3Dメガネをかけて鑑賞。字幕は浮き上がったように表記され、決して見にくくはない。ピクサー初の3D作品ということで会社のロゴも、より立体的に見せる工夫が凝らされている。画面が飛び出してくる驚きはないが、CGの質感がよりリアルに感じられ、特に色とりどりの風船が舞い上がる美しさは3Dでしか味わえられない新鮮な肌触りである。お勧め!

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立川談春 25周年スペシャル独演会/大阪アンコール公演

シアター・ドラマシティにて談春さんの落語を聴く。3日間の公演があり、会場はぎっしり満席。

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今年5月、(倖田來未や浜崎あゆみのコンサートが中止になるなど)インフルエンザ騒動の渦中にあった関西で聴いた独演会(サンケイホールブリーゼ)の様子は下記。

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事前のネタ出しはなし(演目は当日のお楽しみ)。談春さんはまずマクラで、2009年生まれの子供の名前ランキングを取り上げた。女の子は以下の通り。

  1. 凛(りん)
  2. さくら
  3. 陽菜(ひな)
  4. 結愛(ゆあ)
  5. 結菜(ゆな)
  6. 美羽(みう)
  7. 結衣(ゆい)
  8. 葵(あおい)
  9. 美優(みゆ)
  10. 美咲(みさき)

「これって、子供の名前というよりは水商売などで働く女性の源氏名ですよね」という談春さんのコメントに場内が沸く。この一見何気ない雑談が、実は後で遊郭・吉原が登場する「文七元結」に繋がる伏線になっているのだから、この男、なかなか油断がならない。

また師匠の立川談志さんから「独演会ってものはな、てめえ一人で前座から二つ目真打の役割を全て引き受けるてぇことよ」と教わった想い出も披露された。

さて今回の演目は、

  • 棒鱈
  • 文七元結

何度か談春さんを聴いて気が付いたこと。前回サンケイホールブリーゼでの「おしくら」「紺屋高尾」の組み合わせでも感じたのだが、この人の滑稽噺(前半)は意外と詰まらない。だから「棒鱈」はいまひとつ。酔っ払いの演技も余り上手じゃない。こういった軽いネタでは関西にもっと面白く聴かせる芸人が沢山いるし、東京の噺家なら柳家喬太郎の方が巧みだろう。つまり談春さんのニン(個性、芸風)に合っていない。

ところが!である。「紺屋高尾」や「文七元結」など人情噺、より深刻な人間模様を描かせると談春さんは絶品である。このテリトリーでは水を得た魚、もう他の追随を許さない。木枯らしの凍てつく寒さ、霧の立ち込めた橋など情景描写が秀でていて、聴衆は一気に物語の世界へ引き込まれる。登場人物の一言一言に凄み(今まで生きてきた人生の重み)が感じられる。緩急の使い分けが変幻自在でそのリズムが心地良い。

言葉の持つ圧倒的な力、日本語の美しさに魅了された2時間半であった。最後は不覚にもボロボロ泣いてしまった。立川談春、恐るべし!

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誰も守ってくれない

評価:F

来年の米アカデミー賞外国語映画部門で日本代表としてエントリーすることが決まっている。映画公式サイトはこちら

「踊る大捜査線」シリーズの脚本を手掛けた君塚良一が脚本と監督を兼任。主演は佐藤浩市、志田未来。

加熱するマスコミ報道、ネットの悪意の描き方は自殺した脚本家・野沢尚の小説および映画「破線のマリス」(江戸川乱歩賞受賞)を彷彿とさせる。逆に言うとテーマが紋切り型・陳腐であり、そこからなんら進歩が見られない。この映画に登場する「おたく」「ネット社会」は現実から乖離している。

佐藤が演じる主人公の行動も明らかに変だ。普通、男の刑事が保護すべき少女を自宅に連れ込んだりするか??何故、婦人警官が付き添わない?これはもはや犯罪的行為である。警察が(柳葉敏郎が経営する)一般人のペンションで少女の証言を聴取しようとするのも不自然。つまり、全てがドラマを盛り上げるための《ご都合主義》に過ぎないのである。それから刑事の恋人(木村佳乃)が精神科医という設定は香港ノワール「インファナル・アフェア」(原題「無間道」、ハリウッドリメイク版は「ディパーテッド」)の模倣だろう。はっきり言う、このシナリオは屑だ。

君塚の演出も下手糞で目を背けたくなる。映画冒頭、スローモーションの垂れ流しから辟易した。煽るような佐藤の顔のクローズアップ・ショットにも反吐が出る。1930年代前半、名匠・山中貞雄監督はこう言った。「クローズアップというのは一つの映画で一ヶ所、多くても二、三ヶ所で用いるからこそ効果がある」誰か、君塚に演出の「いろは」を教えてやってくれ!音楽も安っぽくていただけない。

兎に角この映画を日本代表に選ぶなぞ愚の骨頂、国辱ものである。選考委員の目は節穴か?昨年「おくりびと」は見事、外国語映画賞に輝いたが、今年はノミネートすら、かすりもしないだろう。僕は「ヴィヨンの妻」を出品すべきだったと想うし、百歩譲って「ディア・ドクター」や「沈まぬ太陽」の方がまだ可能性があった。むしろ今年はポン・ジュノの傑作「母なる証明」を選出した韓国が、よりアカデミー賞ノミネートに近い位置にあると言えるだろう。

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マリインスキー・バレエ/白鳥の湖

兵庫県立芸術文化センターでマリインスキー・バレエ(ロシア)の「白鳥の湖」を鑑賞。観客の9割以上が女性。

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オデット/オディール:ウリヤーナ・ロパートキナ
ジークフリート:ダニーラ・コルスンツェフ
道化 : アレクセイ・ネドヴィガ
悪魔:コンスタンチン・スヴェレフ

音楽:チャイコフスキー
振付:プティパ/イワノフ(改訂:セルゲーエフ)
装置:シモン・ヴィルサラーゼ
衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨーワ
指揮 : パーヴェル・ブベリニコフ
管弦楽 : ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

中学生の頃、わが古里・岡山(倉敷市民会館)でボリショイ・バレエ団の「白鳥の湖」を観た。ガキにとってクラシック・バレエは退屈なだけだった。群舞が揃っていなくて、「”その他大勢”の踊りは大したことないな」と生意気にも想ったことを憶えている。

高校生になり、映画館でクロード・ルルーシュ監督のフランス映画「愛と悲しみのボレロ」を観た。そしてジョルジュ・ドン20世紀バレエ団が踊る「ボレロ」(モーリス・ベジャール振付)に圧倒された。

大学の合格発表があった日、岡山市民会館でそのジョルジュ・ドンと東京バレエ団による「ボレロ」を間近で観る事が出来た。「クラシック・バレエはもう古い。これからはモダン・バレエの時代だ!」とその時に想った。

それから月日は流れ、'92年ジョルジュ・ドンはAIDSに冒され45歳の若さで亡くなった。2007年にはベジャールもこの世を去った。こうして、ひとつの時代が終わった。

だから「白鳥の湖」を生の舞台を観るのは中学生の時以来である。そして今回初めてクラシック・バレエの真価に開眼した。完璧な調和と究極の美がそこにはあった。

白鳥(「白鳥の湖」およびサン=サーンス「瀕死の白鳥」)を躍らせたらロパートキナは現在、世界一と言われている。大きく翼を羽ばたかせるときのアームス(腕のポジション)の美しさ、そのしなやかな動きに魅了された。評判通り絶品であり、心が慄いた。

白鳥の群舞も、挙げられた腕、指先まで角度、線がピタリと揃い驚嘆すべきパフォーマンスであった。ロシア人の足の長さ、八頭身のスタイルはまるでお人形さんみたいで、日本人は(いくら跳躍が高かろうと)、見た目で彼らに到底太刀打ちできないなと観念した。

また、洗練された華麗な衣装も目を惹いた。

ソヴィエト共産政権崩壊後、優れたアーチストの国外流出が相次いだロシアだが、マリインスキーは高い実力を今日までしっかりと維持して来た。これは凄いことである。やはり芸術監督であるワレリー・ゲルギエフの実力とカリスマ性あればこそ成し得た偉業なのだろう。

僕は「白鳥の湖」を観ながら、ブロードウェイ・ミュージカル「コーラスライン」でシーラが孤独で惨めだった少女時代を回想しながら歌う"At the Ballet"の歌詞を想い出した。

But everything was beautiful at the ballet.
Graceful men lift lovely girls in white.
Yes, everything was beautiful at ballet,
Hey! I was happy at the ballet.

でも、バレエの中では全てのものが美しかった。
優美な男性たちが純白の衣装を纏った愛らしい女の子たちをリフトする。
そう、バレエの中では全てが美しいかった!
私はバレエのレッスンがある時だけ幸せだった。
(日本語訳:雅哉)

A席19,500円のチケット代が、全く高いと想わなかった。「泣きたいくらいに美しい」……そんな舞台であった。

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淀工グリーンコンサート/チケット即日完売!

今年の全日本吹奏楽コンクールで計23回目、12大会連続で金賞に輝いた淀川工科高等学校吹奏楽部(淀工)の定期演奏会、グリーンコンサートは来年1月16日(土)17日(日)の2日間、ザ・シンフォニーホールで昼夜2回ずつ、計4回開催される。昨年まではフェスティバルホールで行われていたが建て替えのため会場が変更となり、入場料は1,500円から2,000円へアップされた(ちなみにザ・シンフォニーホールを1晩借りると150万円かかるそうだ。休日・昼の場合は不明)。

フェスティバルホールが約2,700席、ザ・シンフォニーホールが1,704席。つまり例年より1,000席少ない。ということは1,000×4=4,000人入場者が減ることになる。

以前、グリーンコンサートのチケット購入方法は下記に書いた。

さて、12/5はチケット発売日だった。そして、あっという間に売り切れた。アルト楽器社は13時に開店する筈なのにそれより前に店が開いており、1人で20枚も買っていた人もいたようだ。13時半には全日程完売となった。

高校吹奏楽部のコンサートチケットである。以前はこの方法で何ら問題も無かったのだろう。しかしこれほどまでの激烈な争奪戦になってしまった現状では、昨年のようにチケットぴあで販売して貰った方がいい。ぴあなら枚数制限がある。一部の人だけが買い占めてしまうような事態にはならない。

幅広い層にとって、不公平感のない販売方法を考えていただければありがたいと想う次第である。

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平成創作落語の会(12/2)

天満天神繁昌亭へ。

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  • 笑福亭たま/伝説の組長
  • 桂かい枝/丑三つタクシー
  • 桂 三風/モレパシー
  • 月亭遊方/たとえばこんな誕生日
  • 笑福亭福笑/千客萬来

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この度、第4回繁昌亭大賞の創作賞を受賞したたまさんだが、中でも「伝説の組長」は現時点での最高傑作だと想う。細部まで練りに練られてもう既に完成の域に達している。特に古典落語「お玉牛」の夜這いの場面でお馴染みのハメモノ「とっつるがん」が流れるところは「天狗裁き」のパスティーシュにもなっていて、すこぶる面白い。

怪談「丑三つタクシー」は季節外れではあるけれど、これも出来が良い。かい枝さんの作品は今度是非「ハル子とカズ子」(NHK新人演芸大賞受賞)も聴いてみたい。マクラの、上方と東京に現在併せて700人ものプロの落語家がいるという話も興味深かった。確かに仕分け人に「それは本当に必要な数なんですか!?」と問い詰められたら、ぐうの音も出ないだろう。

たとえばこんな誕生日」は誕生日に交通事故に遭う気の毒な男の噺。遊方さんの人柄が滲み出して、なんとも可笑しい。こういうの、好きだなぁ。

福笑さんの新作は、案外構成が緩くて「アイディア勝負!」的なところがあるのだけれど、それを最後まで飽きさせず爆笑ネタに仕上げるところがベテランの上手さなんだろう。

とにかく全体としてハイ・クオリティで、満足度の高い会でした。

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芸術文化支援の新展開 -関西からの発信- /狂言と落語

芸術文化振興基金二十周年を記念した講演会を聴きに国立文楽劇場へ足を運んだ。

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この基金は政府から出資された541億円と民間企業からの寄付112億円、計653億円を原資とし、その運用益を持って芸術文化活動(クラシック音楽、バレエ、文楽、歌舞伎、能楽、美術展、映画祭など)への助成に充てている。

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登壇したのは基金創設時に内閣官房長官だった塩川正十郎 氏(塩爺)、東京藝術大学音楽部教授・枝川明敬 氏、大原美術館(倉敷)理事長・大原謙一郎 氏、元大阪フィルハーモニー交響楽団事務局長・小野寺昭爾 氏、雑誌「上方芸能」編集長・広瀬依子 氏、サントリー文化財団・佐藤友美子 氏ら。

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枝川さんからは文化行政における「Arm's lengthの法則」(芸術と行政が一定の距離を保ち、援助を受けながらも、表現の自由と独立性を維持すること)のお話があった。つまり芸術家は胡坐をかいて御上に頼りきっていたのではいけないということ。

塩爺(しおじい)は老いてますます盛ん。今まで日本人は汗水流して内需拡大に努めてきたが、これからは芸術文化に親しみ心を豊かにする時代であると。まだまだ敷居が高いクラシック音楽とか歌舞伎・能などはもっと大衆と結びつくことが必要で、そのためにはボランティアの活動が重要であると力説した。日本は沢山の優秀な指揮者や演奏家を育ててきたが、その多くが海外に流出している(外国のオケには弦楽器を中心に日本人が一人か二人かは大概いる)。もっと彼らが日本で活躍できるような受け皿をという話題も出た。

パネル・ディスカッションでは現在進行中の「事業仕分け」への批判が相次ぎ、「芸術は社会インフラ(infrastructure = 生産や生活の基盤を形成する構造物)であり、クリエーションの源である。文化は人をつくり、人が国をつくる」といった話があった。大原さんからは「地方からいろいろと発信(提言)しても、東京はそれを受け取ろうとしない。大阪は地方のチャンピオンになって欲しい」との発言も。

佐藤さんは大フィルの音楽監督・大植英次さんが始めた「大阪クラシック」や佐渡 裕さんが芸術監督を務める兵庫県立芸術文化センターが行っている平日15時からの演奏会や「500円コンサート」を高く評価されていた。

またプログラムの最初に茂山千之丞茂山あきらさんらによる狂言「福の神」が上演された。その能天気さがとても愉快で、衣装が豪華なのには目を奪われた。

最後は上方落語協会会長の桂三枝さんが登場し、落語「宿題」(三枝 作)を披露された。何度聴いても笑えるし、よく出来た噺である。ちなみに3年前に繁昌亭が出来てからは上方落語協会は黒字で、助成金を一切受け取っていないそうだ。偉い!

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マチュー・デュフォー/フルート・リサイタル

ザ・フェニックスホール(大阪)へ。

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マチュー・デュフォーは1972年パリ生まれ。1997年神戸国際フルート・コンクールで2位入賞後、ダニエル・バレンボイムに招かれ99年にシカゴ交響楽団主席フルート奏者となった。さらにグスターヴォ・ドゥダメルが音楽監督に就任したばかりのロサンゼルス・フィルの主席を2009年10月から兼任することとなり、その異例の抜擢が大いに話題となっている。

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客席の8割以上が女性で、フルートの楽器ケースを持った人もちらほら見かけた。

ピアノ伴奏は志茂征彦。近代フランス音楽を中心にマルタン(スイス)、マルティヌー(チェコ)のフルート作品も取り上げられた。

  • ヴィドール/フルート組曲
  • サンカン/フルート・ソナチネ
  • メシアン/黒つぐみ
  • マルタン/フルートとピアノのためのバラード
  • マルティヌー/フルート・ソナタ
  • プーランク/フルート・ソナタ
  • ドビュッシー/シリンクス(パンの笛)アンコール、無伴奏

メシアンが初めて鳥の囀りを音楽に採り入れた「黒つぐみ」では、デュフォーがピアノの大屋根(反響板)にフルートを突っ込み、吹いた音でピアノ弦を共鳴させる手法を取り入れたりして、とても興味深かった。

プログラム後半、12音技法やジャズのイディオムを採り入れながらも調性音楽に踏みとどまり、たゆたう色彩感で旋律の可能性を広げたマルタン、独特のリズム感で躍動するマルティヌーなどが特に良かった。そして極めつけはフルートのために書かれた20世紀の最高傑作、プーランク!あまりの美しさに打ちのめされた。

余談だが、村上春樹さんの著書によるとプーランクはゲイだったらしい。彼は次のようにも言っていたそうだ。

「私の音楽は、私がホモ・セクシュアルであることを抜きにしては成立しない」

飛翔するデュフォーのフルートは高音部の澄み切った響き、低音の豊かさ、そして強音の鋭さと弱音の柔らかさに特徴があった。

内容がぎゅっと詰まり、実に聴き応えのある演奏会であった。本日、東京公演が予定されている。

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大阪フィルメンバーによる弦楽四重奏+ピアノ

11月28日(土)、兵庫芸文でピエール・アンタイのチェンバロを聴き終え梅田に戻り、阪神電車に乗り換えて野田駅で下車。遊音堂へ向かう。

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大阪フィルハーモニー交響楽団のメンバー(1st.Vn;佐久間聡一/2nd.Vn:浅井ゆきこVla:岩井英樹Vc:松隈千代恵)+深田麻実(Pf)で、

  • ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第12番
  • ブラームス/ピアノ五重奏曲

を聴くためである。木戸銭3,000円(自由席)、入りは6〜70人くらい。客席に大フィルの楽員もちらほら見かけた。

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そもそもこのメンバーによる弦楽四重奏団は「大阪クラシック」のために結成された。今年の9月に彼らの演奏を聴いた時の感想はこちら

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狭い空間なのでホールの響きは中々良かった。そして見事なアンサンブルであった。ヴァイオリンの鋭さ、緊張感をさらに煽るような気迫。そしてそれをしっかりと受け止める岩井さんのヴィオラ。ただパッションとか力強さという点で、チェロが些か物足りないのが惜しい。まあ成り立ちの経緯が「大阪クラシック」だから、致し方ないのかも知れない。気心の知れた仲間同士で室内楽をするということに意味があるのだろう。

いずれにせよ今後も継続して演奏活動を行って欲しいカルテットである。是非また聴きたい。

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ピエール・アンタイ/チェンバロ・リサイタル

フランスを代表するチェンバリスト、ピエール・アンタイの演奏を兵庫県立芸術文化センターで聴いた。「バッハへの道」と題され、バッハ(ドイツ)へと続く、様々な国のチェンバロ曲(イギリス、イタリア、フランス)がパノラマのように展開される目の覚めるようなプログラムだった。

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ステージに登場した時の彼の風貌はお洒落で洗練された、そしてちょっとすかした印象を受けた。1曲目を弾き終えた時点で拍手しようとする聴衆をパッと手で制し、続けて2曲目に入る場面もあり、中々格好よかった。では嫌な奴だったかといえばそんなことはなく、当初予定されていたプログラムに3曲追加され(赤字)、さらにアンコールを3曲も演奏してくれたのだから、見かけによらず(?)サービス精神旺盛な人だった。

  • フレスコバルディ/トッカータ 第10番
  • 作者不詳(イギリス)/アルマン
  • バード/野生の森、ファンタジア、私のネヴィル卿夫人のグランド
  • フローベルガー/トッカータ
  • L.クープラン/プレリュード(フローベルガー氏を模倣して)、アルマンド、ピエモンテーズ、クーラント、サラバンド
  • F.クープラン/ラ・フォルクレ、プレリュード 第8番、小さな皮肉屋
  • スカルラッティ/ソナタ ニ長調K511、イ長調K208、イ短調K175
  • ヘンデル/ハープシコード組曲 第2番
  • J.S.バッハ/コラール”ただ神の摂理にまかす者”、イギリス組曲 第2番

アンコールは、

  • フローベルガー/ブランロシェ氏へ捧げるトンボー(墓)
  • バッハ/半音階的幻想曲
  • ラモー/音楽の対話

アンタイは1964年パリ生まれ。巨匠グスタフ・レオンハルト(オランダ)に師事した。一時期「ラ・プテット・バンド」に所属していたことがあり、この時メンバーの一人だったバロック・チェリスト鈴木秀美さんのエッセイ「『古楽器』よさらば!」にも登場する。大御所レオンハルトを筆頭にクリストフ・ルセ中野振一郎らと並び、間違いなく世界で十指に入るチェンバロの名手である。近年は彼自身の古楽アンサンブル「ル・コンセール・フランセ」を結成し、指揮者としても活躍している。このアンサンブルはラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2009にも参加しているから、ご存知の方も多いだろう。

アンタイ氏のチェンバロは力強く、毅然とした気品があった。スピード感、切れが身上の中野先生とはまた性格が異なったスタイルだなと想った。今回使用された楽器がジャーマン2段鍵盤チェンバロ(M.Mietkeモデル)だったことが関係しているのかも知れないが、むしろ中野先生の方がフランス的で、アンタイ氏はよりドイツ寄りの印象を受けた。ちなみに中野先生もアンタイ氏と同じ'64年生まれである。中々の好敵手と呼べるかも知れない。

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第22回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)2009 後編

この記事は、第22回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)2009 前編と併せてお読み下さい。

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さて、関西以外の金賞受賞団体の感想を書いていこう。

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東関東代表 
船橋市立舟橋高等学校(千葉) 演奏されたのはハチャトゥリアン/バレエ音楽「ガイーヌ」と「スパルタクス」「スパルタクス」は生徒さんたちの歌声が美しかった。また斜めラインでの方向転換が奇麗に揃っていた。

東海代表 
愛知県立木曽川高等学校 曲は兼田敏/マーチ「ブルー・マリン」~ボック/ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」メドレー。「屋根~」はしきたり~奇跡の中の奇跡~サンライズ・サンセット~婚礼の踊り(ボトル・ダンス)などのナンバーで構成されている。後藤 洋さんの名アレンジが光る。木曽川はグリーンのユニフォームが目を惹く。きびきびした動きで、後退するステップが面白い。最後は人文字で「2009」が浮かび上がった。

九州代表 
精華女子高等学校(福岡) バグレイ/行進曲「国民の象徴」~カーナウ/セレブレーション~メリロ/ゴッド・スピードという構成。動きも音も生き生きとした躍動感があり、特に輝かしい金管の響きは圧倒的。歌あり、女子高らしく陣形でハート型を描いたりと実にキュート。最後は「SEIKA」の文字が浮かび上がる。さすが「マーチングの華」、パーフェクトな演技であった。またドラムメジャーのバトン捌きも特筆に価する。とにかくスピード、切れが抜群。バトンを空中高く放り投げても、元の位置にきっちり戻ってくる。微動だにしない。恐るべし!初参加以降、12回連続金賞受賞おめでとうございました。

佐賀学園高等学校 曲はハチャトゥリアン/バレエ音楽「ガイーヌ」より(中原達彦 編)。少々荒削りなところはあったが、ピッカピカに磨かれたシンバルに光がキラキラ反射して奇麗だった。これはきっと沖縄県立西原高等学校を参考にしているに違いない。また12人のカラーガード隊が目を惹いた。

熊本県立熊本工業高等学校 アンサンブルは端正でそつがない。曲はOdessey-Spaceと題されていた。Spaceは実質的にジョン・ウィリアムズの音楽が使用され(J.Bocook 編)、「スター・ウォーズ」~王女レイアのテーマが演奏された時は、生徒さんたちが体を斜めに傾けて左右に揺れる演技があり、とても美しかった。最後は「SPACE」という人文字の陣形を作った。

玉名女子高等学校(熊本) セントルイス・ブルース・マーチ~アメリカン・パトロール~ムーンライト・セレナーデ~スウィング・スウィング・スウィングという構成。金管の低音、いい音出ている。アンサンブルの精度が高い。クラリネット・ソロもお見事!スウィングしてのりが良い。セントルイス・ブルース・マーチでは最後に宝塚歌劇みたいに「ハイ!」という掛け声もかかり、若々しく爽やかだった。

金賞受賞団体以外で印象に残ったところは特にない。つまり、今年の全日本吹奏楽コンクールで柏市立柏高等学校吹奏楽部〈いちかし〉が銅賞になったような、前代未聞のミス・ジャッジは、こちらではなかったということだ。順当な結果であった。

表彰式の前にエキシビションプレーもあった。

まず登場したのはJAPAN CUP9連覇を達成した、箕面自由学園高等学校チアリーダー部"GOLDEN BEARS"。ピラミッド(スタンツ)を組んだり、高くジャンプして空中で回転したりと、人間離れしたパフォーマンスに大阪城ホールがどよめき、揺れた。

そしてお待ちかね!丸谷明夫先生(丸ちゃん)率いる淀川工科高等学校(淀工)の登場である。演奏されたのは、パラダイス銀河~ホップ・ステップ・ジャンプ~ARASHI(Beautiful days、One Love、Happiness、サクラ咲ケ)~3-3-7拍子~六甲おろしという、グリコン(グリーンコンサート)でいうところの「ザ・ヒットパレード」仕立て。

そのまま淀工はステージに残り、表彰式のB.G.M.も担当した。

映画のタイトルじゃないけれど、本当に「素晴らしき日曜日」だった。のびのびと演奏し、胸を張って行進する高校生の皆さんから元気を貰った。心からありがとう!また来年、大阪城ホールで会える日を愉しみにしています。

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金賞よりも大切なこと/柏市立柏高等学校吹奏楽部

ここに「金賞よりも大切なこと」と題された本がある。著者は山崎正彦さん。武蔵野音楽大学音楽教育科講師をされているそうだ。初版は2009年10月1日。出来立てのほやほやである。

これは吹奏楽の世界では知らぬもののない全日本吹奏楽コンクールの常連校、柏市立柏高等学校吹奏楽部=市柏〈いちかし〉と、そこを指導する石田修一先生の日常を描くドキュメントである。彼らのことは日本テレビ「笑ってコラえて!吹奏楽の旅」でも取り上げられたから、それでご存知の方も多いだろう。

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いわば教育論として書かれた本である。著者はプロのライターではないし、文章はお世辞にも上手いと言えない。表現がくどかったり、石田先生やその生徒たちを褒める言葉が大仰で苦笑せざるを得ない場面も多々ある。

しかしそんな書き手の不備を超え、読者に伝わってくる熱いものがあることは確かである。やはり描かれている対象が素晴らしく、輝いているからであろう。

1978年4月、開校したばかりの市立柏高等学校に新任の石田先生が赴任されてきたところからこの物語は始まる。楽器はアップライトピアノしかなく、石田先生が私物のトランペット、フルート、ギターを持ち込み吹奏楽部を立ち上げたそうだ。200人を超える部員がいる現在から考えると、隔世の感がある。

この本を読めば〈いちかし〉の生徒さんたちがどのような一年を過ごしているのか(そのスケジュール)、石田先生の指導法・教育指針はどういうものかということが手に取るようによく分かる。写真も豊富で彼らの日常が親近感を持って伝わってくる(特に等間隔で整然と並べられた十数ヶの楽器ケースには驚かされた)。一級の資料と言えるだろう。

本の中で〈赤組〉(コンクール・チーム)、〈青組〉(座奏別働チーム)、〈白組〉(マーチング・チーム)と分かれて活動していることが紹介されている。恐らくこれは淀工を指導する丸谷明夫先生の〈星組〉〈花組〉〈雪組〉に組織分けする手法を参考にしたものだろう。

学校の先生や吹奏楽指導者だけではなく、吹奏楽を愛する全ての人に読んで頂きたい素敵な本である。

なお余談だが、吹奏楽名門校の日常を映像で知りたいのなら、DVD「淀工吹奏楽日記~丸ちゃんと愉快な仲間たち~」が超オススメである。

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ものすごいボリュームで見応えたっぷり。きっと夢中になって一気に視聴する羽目になるだろう。

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