沈まぬ太陽
評価:B-
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上映時間3時間22分。途中10分間の休憩が入る。邦画で休憩があるのは、キネマ旬報ベストテンで第4位になった小林正樹監督のドキュメンタリー映画「東京裁判」(1983年、上映時間4時間37分)以来だとか。僕は「東京裁判」も映画館で観ているが、あれから26年も経ったんだ!と感慨もひとしおである。
若松節朗監督は「振り返れば奴がいる」「やまとなでしこ」「太陽と海の教室」などで知られるテレビ・ディレクター。映画は過去に「ホワイトアウト」(2000年)を撮っている。
海外ロケもあり、確かに見応えのある大作だった。しかし、予算が潤沢な長~いテレビ・ドラマを見ているような感覚が終始付きまとった。「映画を観た!」という充足感が希薄なのである。
それは小さくまとまってしまった「ホワイトアウト」の時にも感じたことなのだが、室内劇が主体の「沈まぬ太陽」ではそれ程マイナスに作用しているとは想わなかった。
退屈はしないし、映画館に足を運ぶ価値はある。ただし、これは山崎豊子の原作に責任があるのだろうが、善人と悪人の区別がはっきりし過ぎていて登場人物の描き方が類型的である。結局この作品は人間を描きたいのではなく、社会悪を抉り出したいというジャーナリスティックな視点で紡ぎ出された物語なのだろう。
役者陣は充実している。渡辺謙は作品に賭ける執念を感じさせる熱演。西村雅彦の”臆病ものの小悪党”、松雪泰子の”愛人”、木村多江の”不幸顔のアル中女”など、各々はまり役と言えるだろう。
住友紀人の音楽はとても安っぽい。それから御巣鷹山に墜落する飛行機に乗っていた男性が家族に宛てた遺書をその男性の朗読、息子の朗読と繰り返す、くどい演出はいかにもテレビ的で如何なものかと想った。
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