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2009年11月 1日 (日)

《パーセルとヘンデル》中野振一郎/チェンバロリサイタル

大阪・イシハラホールで開催された日本を代表するチェンバリスト・中野振一郎さんの演奏会を聴いた。

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このイシハラホールで中野先生のソロを聴くのも3年目になる。

今年のテーマは「パーセルとヘンデルのハープシコード音楽」。パーセルは17世紀にイギリスで活躍した作曲家。ドイツ生まれのヘンデルは18世紀にロンドンに移住し、そこで没した。なおチェンバロCembalo)はドイツ語で、英語ではハープシコードHarpsichord)となる。

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プログラム前半のパーセルは毅然として典雅、そして時に哀感が漂う。

ラウンドO「アブデルアーザー」という曲は20世紀にブリテンが「青少年のための管弦楽入門」(パーセルの主題による変奏曲とフーガ )の主題として用いた。「青少年…」は僕が小学生の頃から親しんでいるが、原曲は今回初めて聴いた。従来のイメージとは異なり、厳しい音楽だったので驚いた。いやぁ、面白い。

休憩後のヘンデルは一転、華麗。演奏されたのは歌劇「ジュリアス・シーザー」序曲(編曲者不明)や3つの組曲など。厳格なバッハの組曲と異なりヘンデルのそれは構成がゆる~い感じ。その”てきとー”さがひとつの魅力となっている。アンコールは歌劇「リナルド」からアリア2曲(W.バベル編)だった。

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使用された楽器は1730年製フレンチモデルの2段鍵盤チェンバロ「ブランシェ」。ラ音(A)を415Hzに調律したもの(現代のピアノは440Hzなので、約半音低い)。

中野先生の演奏は先鋭にしてスタイリッシュ。めくるめくスピードで指が動き、聴くものに息つく暇を与えない。これだけ研ぎ澄まされた感性を持つチェンバリストは世界広しといえど、他に例をみないだろう。関西で気軽にそれに接することが出来る至福を噛みしめた。

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コメント

こんにちは☆
私もたっぷり中野さんの世界を堪能させてもらいました!
パーセルは以前仲間とオペラや劇音楽の抜粋をやったことがありますが、旋律の作り方や和声感覚など独特の魅力を持った人で大好きな作曲家のひとりです。
私は特に組曲のアルマンドと、グラウンドの美しさに感嘆しました。
ヘンデルはおっしゃるとおり実に華麗な演奏でしたね。特に最後に演奏されたヘ短調の組曲は、内面的にも深い演奏で、中野さんのさらなる深化(進化)を感じさせられた気がします。

あれだけの演奏だったのに、またメモリアルイヤーにも関わらず大きな話題にもならずお客様の入りも今ひとつだったのが本当に残念です。
不景気の影響もあるのでしょうが、東京ならもっと古楽ファンがつめかけているはずで、関西のマーケットの小ささを痛感したことでした!
どうもありがとうございました☆

投稿: おすぎ | 2009年11月 4日 (水) 12時13分

コメントありがとうございます。

面白いのはパーセル以降、イギリス音楽は長い暗黒時代に入るということですね。20世紀になり、エルガー、ヴォーン=ウィリアムズ、ディーリアス、ブリテン、ウォルトン、アーノルドらが綺羅星の如く登場するまでこの国はクラシック音楽の歴史上、脚光を浴びることが全くなくなってしまいました。真に不思議な話です。

日本の文化の中心はあくまで東京であるー悲しいかな、これは未だに事実です。神戸生まれの鈴木雅明・秀美 兄弟も東京を拠点に活動していますが、致し方ない気もします。そんな中、関西で頑張っている日本テレマン協会は貴重な存在です!ですからこれからも僕は皆さんを応援していきたいと想っています。

投稿: 雅哉 | 2009年11月 4日 (水) 18時35分

私はイギリスの音楽に独特の魅力を感じます。特にエルガーが大好きなんですが、彼にはいつも「パーセル以降最大の」という枕詞が付きますよね。
ただ、ヘンデルはイギリスに帰化して半世紀近くロンドンで活躍しましたし、バッハの末男ヨハン・クリスチャンもロンドンで大作曲家「ジョン・クリスチャン・バック」として後半生を過ごしましたから音楽不毛の地では決してなかったと思うんです。

もちろん18~19世紀には「イギリス生まれ」の大作曲家は出ませんでしたし、「バック」の急逝からエルガーのデビューまでの約100年間はイギリス発のヒット作がほとんどなかったのも事実です。
ただこの時期のイギリスは政治的・経済的には極めて好調でしたから、ポンドの魅力につられて大陸から次々に優れた演奏家がドーバー海峡を渡ったでしょうし、世界最大の音楽の消費地であったことは間違いないでしょう。バブル期の日本に海外のオケや演奏家が群がったことと同じでしょうね。

音楽家も「人の子」ですから金と人の集まる場所に集まるのは当然ですが、かつてのロンドンがそうであったように、経済力と文化力が必ずしも比例するとは限りません。東京の盛況ぶりを横目に見ながら、上方文化の伝統とパワーを信じてこれからも頑張りたいと思います。上方落語で米朝師匠が果たされたような役割を果たせればと大それたことを考えております。
いつも温かい励ましをいただき心から感謝しております。
どうかこれからも宜しくお願い申し上げます☆

投稿: おすぎ | 2009年11月 5日 (木) 10時24分

おすぎさんは声楽の専門でいらっしゃいますから歌の話をしますと、エルガーで是非一度実演を聴いてみたいのがオラトリオ「ゲロンティアスの夢」。メゾ・ソプラノとオーケストラのための「海の絵」もいいですね。

僕はディーリアン(ディーリアスの熱狂的ファン)なので、「海流」「日没の歌」「夏の夜、水の上にて歌える」「田園詩曲」「高い丘の歌」など、何れも大好きです。でも悲しいかな、関西で生演奏を聴く機会は全くありません。

投稿: 雅哉 | 2009年11月 5日 (木) 12時20分

以前東京に住んでいた頃に入っていた合唱団ではエルガーやブリテンなどもやったんですが、最近は近現代ものはすっかりご無沙汰しています。
「ゲロンティアスの夢」はともかく「海の絵」は東京あたりだとときどきオケの定期のプログラムにのっているようです。私も是非実演を聴いてみたいです。
ディーリアスは、LP時代からバルビローリが入れている管弦楽曲集とチェロ協奏曲を愛聴していますが、恥ずかしながら声楽曲は聴いたことがないのです。ディーリアスは晩夏から晩秋にかけての夕暮れどきのイメージです。心静かに一人で味わいたい音楽ですね。
室内楽作品もきっと素敵でしょうし歌曲などもいいでしょうね。早速探して聴いてみたいと思います!

投稿: おすぎ | 2009年11月 6日 (金) 10時46分

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