映画「スペル」
評価:B
「スペル」って「綴り」じゃないよ、「呪文」の方。でも原題は全然違っていて、"Drag Me to Hell" …つまり「私を地獄に連れてって(引きずり込んで!)」ってとこかな。オフィシャル・サイトはこちら。
サム・ライミは、本来B級映画で力を発揮する人だと想う。僕にとって彼はやはりデビュー作「死霊のはらわた」(1981)の監督であり、「XYZマーダーズ」('85)とか「ダークマン」('90)みたいな悪趣味で馬鹿馬鹿しい映画を撮っている初期の彼が好きだった。「シンプル・プラン」('98)の頃から柄にもなく作風が格調高くなってきて、大作「スパイダーマン」シリーズになると全く魅力が感じられなくなった。しかし「スパイダーマン3」でひと段落着いて、ライミが初心に帰るというか低予算でリラックスした気持ちで撮ったのが本作である。
冒頭、昔のユニバーサル映画のロゴから始まるのが何とも粋である。ヒッチコックが「裏窓」「めまい」「鳥」を撮っていた頃のものだ。ユニバーサルといえば怪奇映画。ここにも原点回帰の志向が現れている。
いや~、何なんだろうこの心地よさは!「スペル」にはB-Movieの懐かしい匂い・魅力が満載である。程よい下品さ(いかがわしさ)、チープなプロット(見え見えの伏線)、こけおどしのショッカー演出、見たこともない冴えない役者たち。クリストファー・ヤングの饒舌な音楽も凄く良かった。
考えてみればクリストファー・ヤングは清水崇監督のハリウッド進出作「THE JUON 呪怨」の音楽も担当していたが、その製作総指揮をしたのがサム・ライミだった。
本作では《B級映画の心意気》を久しぶりに堪能させてもらった。映画が終わり、場内が明るくなる直前の暗闇の中、僕は小さく呟いた。「おかえり、サム・ライミ。Welcome!」
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