下野竜也のブルックナー/PAC定期
本当はロシアのピアニスト、イェフィム・ブロンフマンを聴く予定だったのだが、彼が新型インフルエンザ感染のため急遽来日中止となったため、別の演奏会に足を運ぶこととなった。
阪急電車で西宮北口へ。
兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)定期演奏会を聴く。
指揮:下野竜也、ヴァイオリン:ニコラ・ベネデッティで、
- グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲
- ブルックナー/交響曲第7番
1904年に作曲されたグラズノフのコンチェルトは古色蒼然としたスタイル。甘くてロマンティック。ただ締まりがないというか構成力に欠けるというか、散漫な印象を受けた。お世辞にも名曲とは言えない。同じ20世紀に書かれたヴァイオリン協奏曲なら僕は断然、エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルトを推す。
ベネデッティのヴァイオリンは中々、美音だった。アンコールはバッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータからサラバンド。
僕はブルックナー/交響曲第7番を聴くと、ルキノ・ヴィスコンティ監督の絢爛豪華なカラー映画「夏の嵐」(1954、イタリア)のことを想い出す。
下野さんは若い頃、大阪フィルハーモニー交響楽団の指揮研究員として朝比奈隆の薫陶を受けた。だからどんなブルックナーを聴かせてくれるのか愉しみにしていた。
第1、第2楽章は通常よりもゆったりとしたテンポで、息の長い旋律を歌う。悠久の時が流れ、朝比奈隆のブルックナーを彷彿とさせる。ただ若いPACのメンバーがその遅いテンポに付いていけず、緊張感が持続出来ないきらいはあった。
しかし第3楽章に入ると一転、音楽が動き始める。音符は躍動し、勢いがある。その瑞々しい表現力は第4楽章でも継続され、第3主題は重厚な金管中低音群(トロンボーン、ホルン、ワグナー・チューバ、チューバ)が強烈な印象を刻み付ける。
正直言って僕はもっと引き締まり筋肉質な児玉宏/大阪シンフォニカー交響楽団のブルックナーの方が好みだが、これはこれで聴き応えがあった。これからしばらくは下野さんのブルックナーにも注目していきたい。
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