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2009年11月

第22回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)2009 前編

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大阪城ホールで開催された第22回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)に足を運んだ。

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金賞を受賞したのは以下の団体。

東関東代表 船橋市立舟橋高等学校(千葉)

関西代表 大阪桐蔭高等学校、京都府立京都すばる高等学校、京都橘高等学校 

東海代表 愛知県立木曽川高等学校

九州代表 精華女子高等学校(福岡)佐賀学園高等学校、熊本県立熊本工業高等学校、玉名女子高等学校(熊本) 

中でも大阪桐蔭精華女子玉名女子のパフォーマンスが抜きん出ていた。

北海道代表は1団体のみ出場し銅賞東北代表1、1。四国代表2のみ。やはり北の地域と四国の低調さが目立った。体育館は基本的に運動部優先の学校が多い。だからどうしてもマーチングの練習は屋外でする必要性が生じてくる。ゆえに豪雪地域が不利になるのは致し方ないことなのだろう。

それにしてもさすが関西九州はマーチングのメッカである。特に九州地区は代表4団体全てが金賞だったのだから凄い。今年はマーチングの名門、沖縄県立西原高等学校が九州マーチングコンテストで金賞を受賞するも、代表を逃したようである。それだけ層が厚いということなのだろう。ちなみに関西大阪府立淀川工科高等学校滝川第二高等学校(兵庫)が今年、大会規定により三出休み(三連続出場後、一回休み)だった。

また東関東地区は強豪・習志野市立習志野高等学校(千葉)と柏市立柏高等学校(千葉)が三出休みだったので、些か寂しい結果となった。

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さて、まずは金賞を受賞した地元・関西代表校から感想を書いていこう。

大阪桐蔭高等学校 演奏されたのはプロコフィエフ/バレエ音楽「三つのオレンジへの恋」~ファリャ/バレエ音楽「三角帽子」~リムスキー=コルサコフ/歌劇「サルタン皇帝の物語」。まず桐蔭はユニフォームがお洒落。そしてアンサンブルは小気味好く洗練されていた。また隊列の先頭に立つドラムメジャーのバトン捌きが鮮やかで、見惚れてしまった。

京都府立京都すばる高等学校 曲は真島俊夫/「三つのジャポニズム」よりIII.祭り。ユニフォームの黒がシック。演奏に多少荒さはあるが、お祭りらしく威勢がいいのが好印象。それから行進する隊形が奇麗だった。

京都橘高等学校 ヴァンデル=ロースト/カンタベリー・コラール~スパーク/ザ・バンドワゴン~プリマ/シング・シング・シング~J.ウィリアムズ/スウィング・スウィング・スウィングという構成。ここは部員の9割以上が女子で、オレンジのミニスカートが可愛い。旗を持つカラーガード隊が8名。特に後半のダンスは弾ける若さが眩しかった。

銀賞だった金光大阪高等学校グリエール/バレエ音楽「赤いけしの花」「青銅の騎士」)は、もう少し演奏に歯切れがある方がいい気がした。また、時々隊列の直線が歪んでいるのが気になった。

関西以外の団体の感想は後編で語る予定。

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イングロリアス・バスターズ

評価:B+

Inglourious_basterds

A級の予算とブラッド・ピットという大スターが主演ながら、B級テイストたっぷり!クエンティン・タランティーノ監督(以下タラちゃんと呼ぶ)最新作。映画公式サイトはこちら

冒頭のクレジット・タイトルからいきなりディミトリ・ティオムキン作曲「遥かなるアラモ」(ジョン・ウエイン監督・主演の映画「アラモ」1960年)が高らかに鳴り響くもんだから仰天した。

ナチス占領下のフランス。ファースト・シーンは丘の上の一軒家、洗濯物がはためく向こう側からナチスのジープがやって来る。そこへエンニオ・モリコーネがベートーヴェンの「エリーゼのために」をアレンジし、絡めた「復讐のガンマン」の音楽が流れ出すといった具合。そして復讐の物語が動き始める。第二次世界大戦を舞台にしながら、ノリは完全にマカロニ・ウエスタン

タラちゃんらしく、頭皮を剥ぐなど残酷描写の中に一匙のユーモアがふりかけられ、悪趣味になる一歩手前で踏みとどまっている。三つ子の魂百まで。血みどろの銃撃戦もあるし「レザボア・ドッグス」('92)「パルプ・フィクション」('94)の頃からこの人は少しも変わっていない。

本作のクライマックス(ヒトラー、ゲッベルスらナチス高官皆殺し計画!)は映画館。タラちゃんの映画愛が溢れ(まるでロベール・アンリコの「ラムの大通り」かフランソワ・トリュフォーの「アメリカの夜」みたい)、実に痛快なエンターテイメントに仕上がっている。傑作。

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桂よね吉、文太@繁昌亭昼席/桂雀々 三番勝負@らぶりぃ寄席

繁昌亭昼席へ。

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  • 桂さん都/強情灸
  • 笑福亭由瓶/阿弥陀池
  • 桂三扇/シルバーウェディングベル(三枝 作)
  • 紺原さん/コミックマジック
  • 桂よね吉/ふぐ鍋
  • 桂文太/八五郎出世
  • 笑福亭鶴笑/紙切り
  • 笑福亭仁扇/打飼盗人
  • 露の吉次/浮世床
  • 桂小春團治/職業病(小春團治 作)

よね吉さんの洗練された「粋」、そして文太さんの名人芸が際立っていた。江戸落語「八五郎出世」は母や兄の妹に対する情が色濃く出た噺だが、文太さんの手にかかると、くすぐりがふんだんに盛り込まれた上方版滑稽噺になっているのだからさすがである。

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鶴笑さんの紙切りは「藤娘」→「パンダ」→「お客さんの似顔絵」。手先が器用でやっぱり上手い。しかし色物で出る時はパペット落語はされないんだろうか?残念である。

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河内長野のラブリーホールで「らぶりぃ寄席/桂雀々三番勝負 その三」を聴く。

  • 桂優々/動物園
  • すずめ家すずめ/桃太郎
  • 桂雀々/田楽喰い
  • すずめ家ちゅん助/強情灸
  • 桂雀々/除夜の雪

除夜の雪」は初めて聴いた。笑える箇所が少なく、サゲが分かりにくいので演じ手が少ないのだろう(僕も耳で聴いて全く理解不能だった。帰宅しネットで調べ漸く意味が理解出来た次第)。桂米朝さんが得意とされていた噺だそうで、現在では東京の立川談春さんがされているよう(談春さんはサゲを分かり易く替えられている)。冬の噺ということで高座に掛けられたのだろうが、ちょっと雀々さんのニン(芸風、個性)に合ってないなと想った。

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アマゾン・バス

街で見かけたこんなもの。

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いざ、Amazonへ?

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ざこば 福笑 二人会@繁昌亭

還暦を迎えた(アラカンの)ざこば福笑二人会を聴きに天満天神繁昌亭へ。

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客は一階席のみ入れ、それでも7〜8割程度しか埋まらず些か淋しい興行となった。値段が高め(前売り3,500円、当日4,000円)なのと、主役の二人が一席ずつしかしないというのが影響しているのかも。この二人会は年一回の開催で、昨年の感想はこちら

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  • 桂    そうば/手水廻し
  • 笑福亭福笑/入院(福笑 作)
  • 笑福亭たま/蛸芝居
  • 桂    ざこば/薮入り

入院」は全身骨折で入院している患者をさらにいたぶるという如何にも福笑さんらしい過激なネタ。ドッカンドッカン受けていた。「私とざこば兄さんはプロレスに例えればリングの周囲に張り渡されたロープの上を歩いているような(すれすれの)ところがあるんです。でもバランス感覚はしっかり持っていて、リングの外には絶対落ちない。必ず内に落ちるんです」と。これには納得。

福笑さんは楽屋で今日の客の入りが悪いことを怒っていたそうで、弟子のたまさんからは「めんどくさい二人です」との発言も。

たまさんはある日、笑福亭仁智さんらと飲みながら《ネタがつく》(寄席では前の人がやったネタに類似したもの、同じパターンのサゲはやらないというキマリがある)ことについて真剣に議論していたそうである。そこへ月亭遊方さんが仁智さんに向かって「兄さん、僕は《人がつく》ということもあると思うんです」と熱く語り始めた。つまり寄席で痩せた人間ばっかり出るとか、デブばっかり続くとお客さんが飽きてしまう。痩せ→デブ→痩せといった具合に見た目もメリハリを付けた方が良い。さらに「坊主頭の呂竹とか円笑師匠の後に、髪の毛が頭の隅の方にちょこっとだけ残った噺家が出るというのもいかんのです!」遊方さんらしい《少しずれた発言》に場内も大笑い。本当に愛すべき人だ。

たま版「蛸芝居」はオーバー・アクションが活きていて、エキセントリックですこぶる面白かった。

薮入り」は先月、動楽亭でネタおろしされたばかり。ざこばさんは噺に登場する丁稚奉公にからめ、3年間米朝師匠宅で内弟子生活を送った想い出を語られた。お小遣いやお年玉を貰うと、米朝さんは「半分は使っていいから半分は貯金しておきないさい」と言い、預金通帳も作ってくれたそうである。しかしその通帳と印鑑が入った引き出しを知っていたざこば少年は、時々こっそりとそれを持ち出してはお金を引き出していたとか。それに気が付いた米朝さんは激怒。結局、年季が明けても貯金はほとんど残らなかったそう。米朝さんからそんな風に大切にしてもらったことへの感謝の気持ちも、恐らくこのネタをしようと決めた理由にあるのだろう。しかし噺の中で、お金を盗んだ疑いが解けて息子が言う「これが本当の藪から棒や」というサゲには納得出来ない様子で、「勉強し直してきます」と。

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フランスからの便り〜秋山和慶/大阪シンフォニカー定期

ザ・シンフォニーホールで秋山和慶/大阪シンフォニカー交響楽団によるオール・フランス・プログラムを聴く。

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  • ルーセル/シンフォニエッタ
  • サン=サーンス/ピアノ協奏曲 第5番「エジプト風」
  • オネゲル/交響曲 第3番「典礼風」

秋山さんの指揮は決して情に溺れず、常に客観的に怜悧な目でスコアに対峙する姿勢を崩さない。それは後期ロマン派の音楽では物足りなさに繋がったりもするのだが、今回の19世紀末から20世紀にかけ生み出されたフランス音楽ではむしろプラスに作用していたように想う。

弦楽合奏のために書かれたルーセルの曲は先鋭で理知的な性格が際だっていた。

小山実稚恵さんをピアノ独奏に迎えたサン=サーンスは華やかで、特に速めのテンポで鮮やかに進行する第3楽章はヴィルトゥオーソ的性格が色濃く表れた、目の覚めるような演奏であった。

第二次世界大戦が終結した年に作曲されたオネゲルのシンフォニーは各々の楽章に「怒りの日」「深き淵よりわれ叫びぬ」「我らに平和を与え給え」というカトリックの典礼から採られたタイトルが付けられている。人間の苦悩、絶望から心の救済へ。第3楽章の終結部は朝の柔らかい光が差し込み、全てが許され明るい日差しの中に溶けていくような感覚に囚われた。作品の意図を的確に捉えた見事な解釈であった。

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上方落語の噺家たち/今、この二十人が面白い 第二弾!

そろそろ第四回繁昌亭大賞が発表される時期になった。そこで連動企画を。

以前、「上方落語の噺家たち/今、この十人が面白い」という記事を書いた。今回はその加筆・改訂版である。

まずは聴いておきたい、僕が一押しの噺家十人(順不同)。現在高座で落語をされない桂米朝さんは別格とする。

  • 桂春團治
  • 桂ざこば
  • 桂雀々
  • 桂よね吉
  • 月亭遊方
  • 笑福亭鶴瓶
  • 笑福亭たま
  • 桂文珍
  • 桂文太
  • 林家染二

春團治さんは、しゅっとした佇まい、そして磨き抜かれた芸。(羽織の脱ぎ方など)完璧である。ただ現在されるネタが十しかないので要注意。何度か通っているうちに必ず重複するということである。十八番は「祝いのし」「代書屋」。惜しむらくは春團治一門は弟子がパッとしないこと。

ざこばさんはもう、生きざまそのものが落語。豪快な語り口が耳に心地良い。ただ最近、時々元気がないことも。僕のお気に入りは「遊山船」「狸の化寺」

雀々さんは師匠(桂枝雀)ゆずりの身振りの大きな爆笑落語にその真髄がある。では枝雀のコピーか?と問われれば決してそんなことはなく、独自の味をくっきりと出している。今まで聴いた中で特に面白かったのは「くっしゃみ講釈」「疝気の虫」など。

よね吉さんは洗練されたスタイリッシュな高座が魅力的。なんとも華がある噺家さんだ。若い女性に大人気なのも頷ける。東西若手落語家コンペティション2008でグランドチャンピオンに輝いた。やはり吉朝一門だけに芝居噺が光る。「七段目」「蛸芝居」がお勧め。「天災」も凄く良かった。

遊方さんは繁昌亭創作賞を受賞。”高座のロックンローラー”であり、その独特のセンスにはいつも腹を抱えて笑ってしまう。僕は遊方さんの喋る《天王寺ネタ》が大好き(彼は天王寺在住)。お気に入りなのは「いとしのレイラ ~彼女のロック~」(遊方 作)「天狗の恩返し」(金山敏治 作)。

鶴瓶さんはまず日常を語る「鶴瓶噺」が面白い。そして「私落語」もノスタルジックで愛しい。お勧めは「ALWAYS -お母ちゃんの笑顔- 」「青春グラフティ松岡」

たまさんは新作の技巧派。(ある意味攻撃的とも言える)その知性が冴える。マクラで振るショート落語がユニーク。またオーバー・アクションな古典も面白い。代表的ネタは「胎児」「伝説の組長」(新作)「いらち俥」(古典)。繁昌亭輝き賞受賞。

文珍さんも古典と新作、両方いける。時事ネタの入れ方が上手い。「粗忽長屋」「地獄八景亡者戯」などを推す。

文太さんほど名人という呼び方が相応しい噺家もいないだろう。仙人のように飄々としていて味がある。どの噺でも聴き応えあるが、強いて挙げるなら贋作シリーズかな?

第二回繁昌亭大賞を受賞した染二さんは端正な芸で、周到な稽古に裏打ちされた流れるような語り口が特徴。特に「たちぎれ線香」は圧巻だった。

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さらに間違いなく上方落語の醍醐味を堪能できる十人を挙げよう(こちらも順不同)。

  • 月亭八方
  • 桂九雀
  • 桂吉弥
  • 桂吉坊
  • 笑福亭松喬
  • 笑福亭鶴笑
  • 桂三枝
  • 桂あやめ
  • 桂文三
  • 桂かい枝

八方さんは悪い男が良く似合う。「大丸屋騒動」「算段の平兵衛」は絶品。虚実の狭間にたゆたう「鉄砲勇助」も素晴らしい。

九雀さんはその明るさと、落語と演劇を融合した新しい形態《噺劇》の創造を高く評価したい。僕が苦手な人情噺もこれなら興味を持って観ることが出来る。お勧めは噺劇「蜆売り」そして超古典落語「どぜう丁稚」

NHK朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」でブレイクした吉弥さんは人気ばかりではなく、第二回繁昌亭大賞を受賞するなど実力も折り紙つき。僕は「高津の富」「七段目」「くっしゃみ講釈」が好き。ただネタおろし等、慣れてない噺はカミカミで不出来なこともある。現在38歳、まだまだ若手、発展途上の噺家さんだ。最近お弟子(弥太郎)さんを取られたよう。

吉坊さんは28歳、若いながらも既に三味線を習得し、能楽(謡や小鼓)を習うなど古典芸能に詳しく、その高座はとにかく所作が美しい!未来の大器。先日の「胴切り」にはつくづく見惚れた。繁昌亭輝き賞受賞。

松喬さんの魅力は、何とも言えない愛嬌があるところだと想う。(兵庫県出身だけど)いかにも「大阪のおっちゃん」的で”もっちゃり”している。そこがいい。大ベテランだから高座にも安定感があり、ハズレなし。今まで聴いた中では「質屋蔵」が良かった。

鶴笑さんは紙切りも上手いけれど、やっぱりパペット落語「ザ・サムライ」「義経千本桜」)にトドメを刺す。世界のKakushowここにあり!今度は是非、未体験の「立体西遊記」が見たい。繁昌亭爆笑賞受賞。

三枝さんは上方落語協会会長として繁昌亭開設に尽力し、成功に導いた立役者。上方落語に対する情熱は並々ならぬものがある。200を超える創作落語は上方の大きな財産であり、三枝さんの弟子だけではなく様々な噺家が高座に掛けている。僕が特に凄みを感じるのは「ゴルフ夜明け前」「大阪レジスタンス」

NHK「ちりとてちん」でも描かれたように、落語という芸能では女流というだけで既に大きなハンディキャップなのだが、あやめさんは新作を武器にその壁を打ち破ってきた。「義理ギリコミュニケーション」「私はおじさんにならない」など非常に生活感があって面白い。また林家染雀さんとコンビを組んだ音曲漫才・姉様キングスも秀逸。繁昌亭奨励賞受賞。

文三さんは機嫌のいい男が登場し、陽気な高座を展開するのが真骨頂。ただ声のトーンが高いので、時々耳障りに感じることがあるのが今後の課題かな(本人もそのことを気にされている様子)。今まで聴いた中で好きだったのは「動物園」「狸賽」「芋俵」

かい枝さんの武器はテンポの良さと英語落語。半年間に渡るキャンピングカーでのアメリカ横断ツアーは快挙であった。十八番は「野ざらし」"A MAN IN A HURRY"(英語落語「いらち俥」)、"EYE DOCTOR"(英語落語「犬の目」)。繁昌亭爆笑賞受賞。

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さて、今回二十人には入らなかったけれど、気になる存在を最後に何人かピック・アップ。

まず、たまさんの師匠・笑福亭福笑さん。いや〜確かに上手いし爆笑落語なんだけれど、凄く過激で新作における下ネタは強烈。その毒にやられ、引いてしまうこともしばしば。そういうのがお好きな方は是非。

枝雀さんの一番弟子・桂南光さんが名人であることを認めるのはやぶさかではない。しかし申し訳ないが、僕は南光さんのあのガラガラ声が苦手である。これはもう生理的なものなので、如何ともし難い。縁がなかったということで……。

上方に於いてネタの豊富さで文太さんと肩を並べるのが桂文我さん。こういう存在は貴重である。つい先日聴いたばかりの「妲妃のお百」は本当に良かった!

入門10年以内の若手で注目株なのが露の団姫(まるこ)さん、23歳。彼女はしっかりしていて口跡が良い。将来がとても愉しみな噺家だ。

この企画は今後もやっていく予定です。

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教会音楽シリーズ/日本テレマン協会「メサイア」ドイツ語版

兵庫県のカトリック夙川教会聖堂へ。

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延原武春/テレマン室内オーケストラ・合唱団ヘンデル/オラトリオ「メサイア」を聴くためである。

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会場はびっしり満席。立ち見の人もいた。原曲は英語で書かれているが、今回はドイツ語で歌われた。日本語訳は正面にスライドで表示される。

バロック楽器が使用され、ピッチはA(ラ音)=415Hz。つまりモダン・ピッチ(A=442前後)より約半音低い。1stVn.-2ndVn.-Va.-Vc.-Cb.の人数が2-2-1-1-1という小編成。しかし教会という狭い空間だから決して物足りなくはない。すっきりとした響きで小気味好い。やはり古楽は大ホールではなく、こんな場所で聴きたい。

アンコールは「ハレルヤ・コーラス」。こちらは英語版で、聴衆の中にも一緒に歌う人々がちらほらいた。

12月25日PM 6:30からは同じ場所でバッハ/クリスマス・オラトリオが演奏される。詳細はこちら

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映画「パンドラの匣」

評価:B+

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太宰治 生誕100年だそうである。だから「ヴィヨンの妻」やこの「パンドラの匣」などが今年、相次いで映画化された。映画公式サイトはこちら

何と言っても映画に流れる空気感がいい。ちゃんと昭和20年代の匂いがして、虚構の中のリアリティが感じられる。冒頭、桶に溜められた水の鏡が映し出す風景から一気に魅了され、僕はこの作品に恋をした。

川上未映子の凛とした佇まい、天真爛漫な笑顔が魅力的な仲里依紗が素晴らしい。主人公を演じる染谷将太もききりとして好感が持てる。なお、川上未映子は作家としても活躍しており、「乳と卵」で芥川賞を受賞している。

音楽はジャズ・ミュージシャンの菊地成孔。一曲の間にどんどん転調していく様はまるでミッシェル・ルグラン(「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」)みたい!そのモダニズムがちゃんとこの作品に似合っているのだから不思議だ。これこそが、太宰が作品の中で目指した「軽み」(現代の言葉に置き換えるなら「ポップさ」)なのかも知れない。


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下野竜也のブルックナー/PAC定期

本当はロシアのピアニスト、イェフィム・ブロンフマンを聴く予定だったのだが、彼が新型インフルエンザ感染のため急遽来日中止となったため、別の演奏会に足を運ぶこととなった。

阪急電車で西宮北口へ。

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兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)定期演奏会を聴く。

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指揮:下野竜也、ヴァイオリン:ニコラ・ベネデッティで、

  • グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲
  • ブルックナー/交響曲第7番

1904年に作曲されたグラズノフコンチェルトは古色蒼然としたスタイル。甘くてロマンティック。ただ締まりがないというか構成力に欠けるというか、散漫な印象を受けた。お世辞にも名曲とは言えない。同じ20世紀に書かれたヴァイオリン協奏曲なら僕は断然、エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルトを推す。

ベネデッティのヴァイオリンは中々、美音だった。アンコールはバッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータからサラバンド

僕はブルックナー/交響曲第7番を聴くと、ルキノ・ヴィスコンティ監督の絢爛豪華なカラー映画「夏の嵐」(1954、イタリア)のことを想い出す。

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下野さんは若い頃、大阪フィルハーモニー交響楽団の指揮研究員として朝比奈隆の薫陶を受けた。だからどんなブルックナーを聴かせてくれるのか愉しみにしていた。

第1、第2楽章は通常よりもゆったりとしたテンポで、息の長い旋律を歌う。悠久の時が流れ、朝比奈隆のブルックナーを彷彿とさせる。ただ若いPACのメンバーがその遅いテンポに付いていけず、緊張感が持続出来ないきらいはあった。

しかし第3楽章に入ると一転、音楽が動き始める。音符は躍動し、勢いがある。その瑞々しい表現力は第4楽章でも継続され、第3主題は重厚な金管中低音群(トロンボーン、ホルン、ワグナー・チューバ、チューバ)が強烈な印象を刻み付ける。

正直言って僕はもっと引き締まり筋肉質な児玉宏/大阪シンフォニカー交響楽団のブルックナーの方が好みだが、これはこれで聴き応えがあった。これからしばらくは下野さんのブルックナーにも注目していきたい。

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桂雀々/利久寄席

大阪・堺市にある手打ちそば・うどんの「利久」へ。店の3階にある15畳ほどの狭いスペースを利用し、隔月に開催されている利休寄席を聴くためである。木戸銭が2,000円で牡蠣そば付き(←季節により変わる)。お値打ち(名古屋弁)である。

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今回が167回目。平成元年から始まり昨年7月に20周年を迎えた。以前は桂む雀さんが世話人を担当されていたが、病に倒れたため現在は桂米平さんが引き継がれている。米平さんは繁昌亭昼席では色物・立体紙芝居を担当されている。

毎年11月は桂雀々さんが出演されるのが恒例だそう。この日はお昼に名古屋で独演会があったそうで、開演ぎりぎりに駆けつけられた。

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上の写真はお店に飾られた故・桂枝雀(雀々さんの師匠)の色紙。「萬事気嫌よく」と書かれている。

さて演目は、

  • 桂とま都/つる
  • 桂  米平/稲荷俥
  • 桂  雀々/疝気の虫

噺家は客席を縫って高座に上がる。なんとも手作りの雰囲気がある。

とま都さんは都丸さんのお弟子さん。来年、都丸さんが「塩鯛」を襲名するのに伴い、「小鯛」に改名予定との紹介があった。

米平さんは米朝師匠の文化勲章受章の話をマクラに、誰もやり手がなかった噺を米朝さんが復活させた「稲荷俥」へ。

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雀々さんは「もう僕は米朝師匠のように人間国宝とかは無理なので、天然記念人物を目指します」と。滅びかけていた上方落語を守り、育て、天皇陛下から直接勲章を授与されるに至った過程を落語「はてなの茶碗」になぞらえ、「遂に《はてなの米朝》になってしまわれました」

雀々さんの「疝気の虫」を聴くのは今年5回目。それでも聴く度にアレンジ、工夫が加わり、何度聴いてもすこぶる面白い。やっぱり雀々さんは最高!この噺には堺名物・大寺餅が登場するので、なんだか臨場感があった。落語の醍醐味を堪能した。

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フォルテピアノってご存じですか?/ハイドン&モーツァルトの楽しみ

仕事を終え音楽会に行く前に阿倍野の明治屋で一杯。ここは何とも雰囲気のある店だが、地区の再開発で移転が決まっている。きずしや、だし巻きが美味しい。だしの効いた湯豆腐もいける。

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それから歩いて「やまちゃん」でクリーミーなたこ焼きに舌鼓を打つ。今日はB級グルメの日。

さて、近鉄電車に乗り換え大阪府松原市「ゆめニティプラザ」へ。

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フォルテピアノ:高田泰治、ヴァイオリン:大谷史子延原武春/テレマン・アンサンブルの演奏で、

  • モーツァルト/ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
  • モーツァルト/きらきら星による変奏曲
  • ハイドン/ソナタ 第39番 ト長調 Hob.XVI-39
  • モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306
  • モーツァルト/ピアノ協奏曲 第12番 イ長調 K.414

アンコールは、

  • モーツァルト/ディヴェルティメント ニ長調 K.136〜第1楽章

モーツァルトの3つのディヴェルティメント(嬉遊曲)K.136-138はいずれも16歳の年にザルツブルクで書かれている。特にK.136は有名で、第1楽章はTV「のだめカンタービレ in ヨーロッパ」でも使用された。今回はガット弦が張られたクラシカル楽器による演奏。ピッチはA=430Hz(モダン楽器はA=442前後)。

きらきら星による変奏曲」はフォルテピアノ独奏。使用されたのはモーツァルトが生きていた時代、ウィーンで活躍したアントン・ヴァルターが製作した楽器のレプリカ。典雅な響き。膝レバーによる音色の変化が、また魅力的である(膝レバーの解説、写真は→こちら)。

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現在も定期的にドイツに渡り、ミュンヘン音楽大学のクリスティーネ・ショルンスハイムからフォルテピアノ&チェンバロの薫陶を受けている高田さん。本来彼の資質である端正で気品のある(貴族的な)弾き方に加え、最近では華やかなタッチがそれに花を添えるようになってきた。素晴らしいモーツァルト&ハイドンであった。

モダン楽器でヴァイオリン・ソナタを聴くと、ヴァイオリンとピアノが「対立する」(against, vs.)という印象を受けるが、フォルテピアノとクラシカル・ヴァイオリンだと「共に歩む」(walk together)とか「調和する」(be in harmony with)とかいった言葉が最も相応しい気がする。やはりモーツァルトも作曲された当時の演奏様式で聴かないと、そこから零れ落ちてしまうものが間違いなくあるのだなということを痛感した。

延原さんのお話によるとモーツァルトは依然人気があるが、ハイドンだけでコンサートのプログラムを組むとお客さんが全然来てくれないそうである。「一番人気がない作曲家って分かります?テレマンなんです」

また今回演奏されたピアノ協奏曲は今月末にNHKで映像収録され、BS「クラシック倶楽部」で放送される予定であること、さらに来年、日本初の試みとして高田さんのフォルテピアノでモーツァルト/ピアノ協奏曲全曲演奏会シリーズをする予定との発表もあった。これは実に愉しみだ。

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ポーランドの俊英アーバンスキのショスタコ10!/大フィル定期

大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会を聴きにザ・シンフォニーホールへ。

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指揮台に立ったのはポーランド生まれのクリストフ・アーバンスキ、27歳である。ピアノ独奏はペーテル・ヤブロンスキで、

  • キラル/オラワ
  • ショパン/ピアノ協奏曲 第2番
  • ショスタコーヴィチ/交響曲 第10番

現代ポーランドを代表する作曲家キラルの曲は、ミニマル・ミュージックの手法で書かれ、フィリップ・グラスやスティーヴ・ライヒ、マイケル・ナイマン、久石譲などの作風を彷彿とさせる。しかしその響きはグレツキ(悲歌のシンフォニー)に通じるものがあり、やはりポーランド人の血だなぁと想った。舞曲風で分かり易く、親しみやすい小品だった。弦楽合奏なのだが、最後は奏者全員の掛け声"HEY !"も飛び出した。まるで淀工の「カーペンターズ・フォーエバー」みたい。

スウェーデン生まれのピアニスト・ヤブロンスキは優しいタッチで弾き始め、決して切れがあるとかメリハリのあるとは言えないけれど、音の一粒一粒が際立ち、キラキラ輝いているような演奏だった。アンコールは繊細なショパン/マズルカ

ショスタコーヴィチ交響曲第10番は謎めいた曲である。スターリンが死去した1953年に着手されたこのシンフォニーはソロモン・ヴォルコフ著「ショスタコーヴィチの証言」によると「スターリンとその時代を描いた」ものだそうだ。しかし現在ではこの回想録の信憑性そのものが疑われており、真実は闇の中である。

また全体を通じてDmitrii SCHostakowitchのイニシャルからとったDS(Es)CHの音形(レ・ミ♭・ド・シ)が重要なモチーフ(モノグラム)として用いられている。こうして考えると、スターリンに翻弄された自己を投影しているとも解釈出来る。

ヘルベルト・フォン・カラヤンは生涯に2度、この第10番をスタジオ・レコーディングしている。しかし帝王カラヤンがショスタコーヴィチの他の交響曲を録音したことは一切ない。この理由もよく分からない。

Kara
上の写真は1969年5月29日、モスクワ音楽院大ホールにおけるカラヤンとショスタコ。この日のプログラムも第10番だった。

キラルショスタコを暗譜で振ったアーバンスキは曲を自家薬籠中のものとしており、見事な統率力でオケを引っ張った。大フィルも機動力をフルに発揮し、普段の実力以上のものを出し切っていたように見受けられた。特にシンフォニー第2楽章の疾走感は凄かった。

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映画「スペル」

評価:B

Dragmetohell

「スペル」って「綴り」じゃないよ、「呪文」の方。でも原題は全然違っていて、"Drag Me to Hell" …つまり「私を地獄に連れてって(引きずり込んで!)」ってとこかな。オフィシャル・サイトはこちら

サム・ライミは、本来B級映画で力を発揮する人だと想う。僕にとって彼はやはりデビュー作「死霊のはらわた」(1981)の監督であり、「XYZマーダーズ」('85)とか「ダークマン」('90)みたいな悪趣味で馬鹿馬鹿しい映画を撮っている初期の彼が好きだった。「シンプル・プラン」('98)の頃から柄にもなく作風が格調高くなってきて、大作「スパイダーマン」シリーズになると全く魅力が感じられなくなった。しかし「スパイダーマン3」でひと段落着いて、ライミが初心に帰るというか低予算でリラックスした気持ちで撮ったのが本作である。

冒頭、昔のユニバーサル映画のロゴから始まるのが何とも粋である。ヒッチコックが「裏窓」「めまい」「鳥」を撮っていた頃のものだ。ユニバーサルといえば怪奇映画。ここにも原点回帰の志向が現れている。

いや~、何なんだろうこの心地よさは!「スペル」にはB-Movieの懐かしい匂い・魅力が満載である。程よい下品さ(いかがわしさ)、チープなプロット(見え見えの伏線)、こけおどしのショッカー演出、見たこともない冴えない役者たち。クリストファー・ヤングの饒舌な音楽も凄く良かった。

考えてみればクリストファー・ヤングは清水崇監督のハリウッド進出作「THE JUON 呪怨」の音楽も担当していたが、その製作総指揮をしたのがサム・ライミだった。

本作では《B級映画の心意気》を久しぶりに堪能させてもらった。映画が終わり、場内が明るくなる直前の暗闇の中、僕は小さく呟いた。「おかえり、サム・ライミ。Welcome!」

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月亭遊方のゴキゲン落語会(11/17)

ワッハ上方4F展示室内にある上方亭へ。ワン・アンド・オンリー、月亭遊方さんの会。

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演目は、

  • 幕開前戯噺
  • 多国籍酒場へよぉーこそ!
  • 絶叫ドライブ〜彼女を乗せて〜(ゴキゲンバージョン)
    (以上、遊方 作)

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幕開前戯噺」(トークショー)では遊方さんの日常をあれこれと。桂米朝さんが文化勲章を受章したお祝いの会が太閤園で開催され月亭も可朝さん以下、方正(山崎邦正)さんまで駆けつけたのに、遊方さんは笑福亭福笑"祝"還暦落語会(←僕もその場にいた)の大喜利出演が既に決まっていたので行けなかったこと。結局その日はさくら水産で打ち上げし、朝までカラオケに付き合ったことなどを面白可笑しく語られた。

また所属する吉本興業が有史以来初めて落語プロジェクト・チームを立ち上げ、本腰を入れてきたことを紹介(DVDも発売される→こちら)。遊方さんは、これからの3年に勝負をかけるとの決意表明も飛び出した。

多国籍酒場へよぉーこそ!」は、とある日本語学校の向かいのバーで展開される、国籍が入り乱れた人生模様を描く(ある意味「グランド・ホテル」形式と言えるかも)。十年ほど前に遊方さんは学校講演+落語をすることになり、「人は見かけだけで判断しちゃいけない」という人権教育を盛り込んで作った噺とか。とはいえ、そんな堅苦しい要素はからきし無し。沢山の人々がガヤガヤ賑やかに登場し、カラッとした作品に仕上がっていた。

絶叫ドライブ〜彼女を乗せて〜」は免許取り立ての若い男が、彼女を誘って初ドライブする状況下に巻き起こるドタバタ(スラップスティック)・コメディ。遊方さんはゴキゲンに飛ばして絶好調。スピード感ある愉しい高座を満喫した。

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立川談春・桂文珍/京橋精選落語会

よしもとの小屋、京橋花月へ。

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桂 文珍さんがプロデュースする落語会の第一回目。満席で当日券は立ち見のみ。前回ここを訪れた時は余りの客層の悪さに閉口したが、今回は「場内飲食禁止」「途中入退場お断り」などをアナウンスしており、心地よい雰囲気で聴けた。

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  • 月亭  八光/ちりとてちん
  • 桂     文三/芋俵
  • 立川  談春/夢金
  • 笑福亭三喬/べかこ
  • 桂     文珍/らくだ

まずは文珍さんが登場し、ご挨拶。「私が仕分け人です」と。吉本興業所属の落語家だけではなく、米朝事務所、松竹芸能、無所属、そして東京の噺家も含めボーダレスで今一番輝いている人、旬な人に出演してもらえる会にしたいと趣旨説明された。今後、年二回くらいのペースを予定しているそう。「しかしセレクト・ショップの筈なのに、なぜ八光が入っているのか疑問に想われる方もいらっしゃるでしょう」ここで場内大爆笑。

その八光だが、マクラで西川きよしさんのエピソードを披露。これが実に詰まらん。ペケ×

文三さんは機嫌良いアホたちが賑やかに、陽気で愉快な一席。

東京からのゲスト、談春さんはマクラを振らず一気に噺の世界へ。この人は情景描写が卓越していてグイグイ惹き付ける力がある。雪が降りしきる深閑とした寒さが客席までしっかり伝わってきた。気迫があり絶品。僕は江戸落語は基本的にくだらないと想っているけれど、(柳家)喬太郎と談春は違う。このふたりは別格だ。

仲入りをはさみ、「松竹芸能の三喬です。今日はアウェイの仕事なので緊張しています」と開口一番。「文珍師匠のお陰でベルリンの壁が崩れました。その瓦礫に埋もれないよう頑張ります」……などと三喬さんは殊勝な発言をしながらも、噺の中で興行主が「ギャラの7割を搾取する吉本みたいなえげつないことはしないから」というくすぐりを入れたりして、中々したたかである。

トリの文珍さんもマクラ抜きで大ネタ「らくだ」へ。独自の工夫が色々あって聴き応えたっぷり。大変充実した会であった。

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AKASO 笑KASO 〜音と笑いを工事中〜

大阪・梅田のライブハウス「umeda AKASO」へ。

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ここでは初となる落語イベントが開催された。客の入りは60人くらい。

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前半の演目は、

  • 林家市楼/ちりちり(小佐田定雄 作)
  • 笑福亭笑子/腹話術
  • 桂三金/奥野君のコンパ(三金 作)
  • おしどり/音曲漫才
  • 笑福亭鶴笑/ザ・サムライ(パペット落語)

市楼さんは遣唐使の時代を舞台に、嘘を言うとちりちり鳴り出す茶がまで失敗し、讃岐に左遷されてしまう御公家さんの噺。

笑子さんの腹話術は繁昌亭では座ってやるが、今回はスタンディングで。マイケル・ジャクソンの"HEEL THE WORLD"や"BEAT IT"も飛び出した。技術は確かなのだが、まだ客のハートを掴めていない感じ。

奥野君とは三金さんの本名である。

おしどりはケンが針金アートをし、マコがアコーディオンを演奏。マコの唄うシャンソンが本格派でびっくりした。上手い。レッド・ツェッペリンの「天国への階段」ならぬ、替え歌「天六への階段」(天六=地下鉄「天神橋筋六丁目」駅)とか「ケ・セラ・セラ」など可笑しかった。最後はケンが電子楽器テルミンを持ち出し、マコのアコーディオンとピアソラの「リベルタンゴ」を演奏。この発想、センスには脱帽だ。なんて洒落たコンビなんだろう!いっぺんにファンになった。関西芸人の奥深さを知る。

Theremin

鶴笑さんは浅草・東洋館(HPはこちら)に出演する不思議な芸人さん達のエピソードをマクラに。やっぱり彼のパペット落語は最高に面白い。インターナショナルに通用する笑いである(以前はロンドンを拠点に活動)。さすが世界のKakushow !ちなみに弟子の笑子さんはシンガポールで彼の芸を見て惚れ込み、入門したそうな。

仲入り後、ゲストパーカッション奏者・中村岳さんを交え全員でパフォーマンス。工事現場を舞台に、色々な小道具で音を出しリズムを取るSTOMP(公式サイトはこちら)みたいな感じ。中々愉しいショーだった。

これで入場料2,000円+ドリンク代500円(アルコールあり)は安い。是非第2弾の企画を期待したい。

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マーチングへ行こう! 

 クラシック音楽ファンというのは概ね、偏狭な趣味の持ち主である。例えばオーケストラは聴くが、室内楽とかオペラは全く聴かないという人が多い。またモーツァルトからマーラーの時代までは聴くけれど、バッハ以前、あるいは20世紀以降の作品は敬遠するというのが8割方の態度である。まして「吹奏楽なんか」、絶対に聴かない。この世の中には美しい音楽がもっともっと沢山あるのに、本当に勿体ない話である。

吹奏楽ファンというのも実に不思議(不可解)な人々である。東京佼成やシエナ、大阪市音楽団などプロの演奏会や吹奏楽コンクールには足を運ぶけれど、マーチングは観ないという輩が少なからずいるのである。僕にはこの態度が全く理解が出来ない。

吹奏楽(ウィンド・オーケストラ)というのは実は歪な編成である。20世紀よりも前にこの編成で書かれた作品が殆どないということが、なによりの証拠である。ではどうして今日まで発展してきたのか?それはこのジャンルが軍楽隊の行進曲から派生してきたことと無関係ではない(弦楽器は屋外の行進には全く向かない)。つまりマーチングこそ吹奏楽の原点、神髄なのである。

マーチングは観て愉しい、聴いて愉しい素敵なジャンルである。是非もっと多くの人々にこの魅力を体感して欲しいと願う。

さて、来たる11月29日に大阪城ホールで全日本マーチングコンテストが開催される。選りすぐりの団体が全国から集う。チケット入手方法など詳細は→こちら

どんな雰囲気かお知りになりたい方は、僕が以前書いた見聞録をご覧頂きたい。

さあ、マーチングへ行こう!

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宮川彬良/大阪市音楽Dahhhhn! 定期演奏会

大阪市音楽団の第99回定期演奏会を聴きにザ・シンフォニーホールへ。指揮は宮川彬良さん(以下、親しみを込めて”アキラ”と呼ばせて頂く)、待望の定期登場である。

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2年前にこのコンビによる演奏を、同ホールで聴いた時のレビューはこちら

アキラといえばアンサンブル・ベガ大阪フィル・ポップスのコンサートなどでもお馴染みだが、愉快なトークに定評がある(子供たちにも大人気)。しかし今回はその得意の話術を封印し、マイクなしで指揮台に臨んだ。それだけでもこの演奏会に賭ける意気込みがひしひしと伝わってくる。

Akira

曲目は、

  • 宮川彬良/生業(ナリワイ)世界初演
    I. 上昇思考
    II. 発明の母
    III. 易(Fortune-telling)〜生業
  • 吹奏楽のためのソナタ「ブラック・ジャック」
    I. 血と、汗と、涙と・・・
    II. 命
    III. 生きて生きて息る
  • バーンスタイン(ラヴェンダー編)/ミュージカル「ウエスト・サイド物語」からシンフォニック・ダンス
  • W.C.ハンディ(グレイ、バーゲット編)/セントルイス・ブルース・マーチ

市音のメンバーが登場すると、いつもとは異なり全身黒ずくめで、ブラック・ジャックを意識したような服装だった。

プログラムに掲載されたメッセージの中でアキラは、シャンソン「愛の讃歌」「サン・トワ・マミー」「ラストダンスは私に」やミュージカル「ジーザス・クライスト=スーパースター」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」の訳詩で有名な作詞家・岩谷時子さんの自伝の書き出しを引用している。

私は作詞をすることを生業として参りました…

この凛とした言葉に惹かれたことが、「生業」作曲の動機となったそうである。

I. は威勢が良くて、まるで西部劇のよう。僕はアーロン・コープランドのバレエ音楽「ビリー・ザ・キッド」「ロデオ」やエルマー・バーンスタインの「荒野の七人」を連想した。打楽器が活躍するII. は一転、和の音楽。霧に覆われた山々、どこか遠くから木挽歌が聞こえてくる…そんな情景を思い浮かべた。宮崎駿監督の「もののけ姫」の世界。そしてIII. は一転、賑やかな祭りの情景。そこには黒沢明監督の映画「七人の侍」(1954)で早坂文雄が作曲した”麦刈りの音楽”に近いものが感じられた。西洋と和の音楽の融合。半世紀前に早坂が目指したものがしっかりと今、宮川彬良に受け継がれている。そのことがしっかりと伝わってくる素晴らしい作品であった(黒澤はジョン・フォード監督の西部劇の手法を日本の時代劇に持ち込んだ。それが再び海を渡り、ハリウッドで「荒野の七人」になった)。

ブラックジャック第1楽章は転調のないソナタ。これについてアキラは「ソナタという西洋の様式美に、モノトーンの日本の魂が注入されたような感覚です」と語っている。厳粛な響きで、僕にはまるで教会音楽のように聴こえた。ゼネラル・パウゼ(総休止)があるところも非常にブルックナー的(教会の残響時間を考慮した手法)だ。第2楽章は儚く切ない哀歌。グレツキ/悲歌のシンフォニー(交響曲 第3番)とか、生後半年で亡くなった娘を追悼するバーンズ/交響曲第3番”ナタリーのために”(次回市音定期で演奏される予定)を彷彿とさせる楽曲。第3楽章は変拍子に富み、生命の鼓動が聞こえてくる。躍動感溢れ、前の楽章のテーマも回想されて締めくくりに相応しい。アキラのシリアスな面が伺える、格調高いシンフォニーであった。

休憩を挟みプログラム後半に登場した楽員は、シルバー系のベストを着ていた。

実は「シンフォニック・ダンス」は既に佐渡裕/シエナ・ウインド・オーケストラを聴いたことがあり、それが余りにも鈍重で詰まらない演奏だったものだから、「吹奏楽でこの曲を聴いても仕方がない」と高を括っていた。

ところが!!である。宮川彬良/市音の演奏は全く別物で腰を抜かした。指揮者のセンスが全然違う。本家本元であるレナード・バーンスタインが残した2種のレコーディングを含め、僕は今までこれだけ《踊る!シンフォニック・ダンス》を聴いたことがない。アキラのリズム感は抜群であった。「マンボ」はもうノリノリ!その熱気はグスターボ・ドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラに匹敵すると言っても過言ではない。「クール」では切れのあるスウィングが聴ける。「ランブル(乱闘)」の場面になると、金管の咆哮が凄まじい。そして終曲"Somewhere"の透明でイノセントな響きが、なんと美しいことだろう!もう陶酔してしまった。むしろこの"Somewhere"には弦楽器(あのイライラするヴィブラート)が要らないんじゃないかと想ったくらいであった。

正に圧倒的名演であった。ここで初めてマイクが登場。そしてそれと共にジャケットがボロボロになった映画「ウエストサイド物語」のサントラ・レコードも。このLPはアキラが10歳の時に父・宮川 泰(「宇宙戦艦ヤマト」「ゲバゲバ90分!」の作曲家)から買い与えられたものだそう。「それから擦り切れるくらい何度も何度も聴きました。その曲を今回初めて指揮する機会を得て、感無量です」と。

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アンコールの「マツケンサンバII」は2年前にも同じコンビで聴いた。しかしその時よりもアンサンブルはより緻密に、金管の響きはより輝かしく進化していたので驚いた。やはりこの間に何度も綿密なリハーサルと本番が繰り返された成果が、しっかり音として結実しているのであろう。

この感動的コンサートは同時にライヴ・レコーディングされているので、いずれCDとして発売されるだろう。ご期待いただきたい。ただ少し気になるのは、「シンフォニック・ダンス」で市音にしては珍しくホルン・ソロに痛恨のミスがあったことである。あのまま商品化するのは、いくらなんでもまずいだろう。多分ゲネプロ(直前のリハーサル)も録音しているだろうから、修正(編集)は可能な筈だ。その点フォンテックさん、よろしくお願いしますよ!

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ゲイの大作曲家たち

チャイコフスキーが同性愛者だったことは余りにも有名である。詳しくは下記記事で触れた。

イギリスの作家E・M・フォースターが1913年に執筆した小説「モーリス」でもチャイコフスキーがゲイであることに言及されている。

この事実を知っておかなければ、彼が死の直前に発表した交響曲 第6番「悲愴」で語ろうとしたこと、その切実な想いを理解することは絶対に出来ないだろうと僕は確信する。

またモーリス・ラヴェルの疑惑に関しては下記に書いた。

先日、METライブビューイング(公式サイトはこちら)で世界配信されたメトロポリタン歌劇場のベンジャミン・ブリテン/歌劇「ピーター・グライムズ」(1945年初演)を観た。既にDVDも発売中。噂には聞いていたが、凄まじい傑作だった。僕は今までブリテンのオペラ「ベニスに死す」「カーリュー・リヴァー」などを観てきたが、それらを遥かに凌ぐ文字通り最高傑作と言えるだろう。その暗いタッチなど、スティーブン・ソンドハイムのミュージカル「スウィーニー・トッド」(1979年初演)との強い親和性も感じられた。またスコットランド出身のドナルド・ラニクルズの指揮ぶりが鬼気迫るものがあり、大変な名演であった。 

その「ピーター・グライムズ」の幕間にイギリスからの中継があり、このオペラや「ベニスに死す」「ねじの回転」「カーリュー・リヴァー」「戦争レクイエム」等を初演したテノール歌手ピーター・ピアーズとブリテンが”生涯のパートナー”であり、一緒に暮らしていたことが紹介された。ここで僕は初めてブリテンがゲイであったことを知った。二人のお墓が仲良く並んでいる映像も登場、それは中々麗しい情景であった。

考えてみれば「ベニスに死す」を映画化したイタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督はバイセクシャルだったし(アラン・ドロンやヘルムート・バーガーを寵愛した)、これをブリテンがオペラにしアッシェンバッハ役をピアーズが演じたということにヒントが隠されていたのだなぁと今更ながら気がついた。

それにしても問題だと想うのは、ブリテン作品が収録されたCDの解説書やコンサートでのプログラム・ノートにこの事実が一切記載されていないことである。チャイコフスキーの例を挙げるまでもなく、作曲家の生涯と人となりを知ることは、その作品を深く理解する上で必要不可欠なことである。村上春樹の著書によると、フランシス・プーランクは「私の音楽は、私がホモ・セクシュアルであることを抜きにしては成立しない」と語っていたという。もっとこの国がオープン・マインドになることを僕は願う。

さて、レナード・バーンスタインはバイセクシャルだったのか?というのも非常に興味のあるテーマなのだが、残念ながらそろそろお時間が来たようです。今日はこれにて。

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笑福亭福笑"祝"還暦落語会@繁昌亭

笑福亭福笑さんの還暦を祝う落語会へ。

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  • 笑福亭たま
  • 笑福亭鶴二
  • 笑福亭鶴笑
  • 姉様キングズ(桂あやめ・林家染雀)
  • 笑福亭松枝
  • 大喜利
  • 笑福亭伯枝
  • 笑福亭岐代松
  • 笑福亭福笑

K02

特別な会ということもあり、ほとんどの人が落語をしないという事態に。

たまさんは入門時の思い出や、福笑師匠とカラオケに行くと選曲にどれくらい気を使うかなど爆笑トーク。そして、「もう後3分しかありませんが落語をします」と「いらち俥」へ。客が人力俥に乗るところまで。

鶴笑さんはでんぐり返しした格好のまま「宝船」を紙切り。馬鹿馬鹿しくて面白い。ただ、出来ればパペット落語が聴きたかったなぁ~。

姉様キングズあやめさんがバラライカ、染雀さんが三味線を持ち音曲漫才。小唄、都々逸、阿呆陀羅経などを披露。のりピーや鳩山首相、その夫人も飛び出し、賑やかで愉しい。初体験だけれど、すごく良かった。

松枝さんは弟子部屋で福笑さんと過ごした日々を回顧し、”フーテンの福笑”とか”ドブネズミの福笑”と呼ばれていたことなどを語られた。たった8ヶ月で年季明けした(通常は3年)というエピソードには会場が沸いた。それからおもむろに「替り目」へ。これは酔っ払いの演技が余り上手くないなと想った。

大喜利は林家小染(司会)、桂三風、月亭遊方、桂三金、笑福亭たま、旭堂南湖というメンバー。

福笑さんは久しぶりに高座に掛けるというという自作ネタ「マラソンマン」。「鷺とり」でお馴染みのはめもの(お囃子)「韋駄天」が下座から入り、俄(にわか=宴席、遊郭などで行われた即興寸劇)をしたり、「兵庫船」の謎かけが登場したりとそのセンスが光る。即興もあったみたいで、色々なバリエーションが試みられる噺だなと想った。ニワトリの真似が最高に可笑しかった!

なお、たまさんのブログによると、この日は打ち上げの後カラオケに繰り出し朝5時まで歌ったそうな。なんちゅう還暦やねん!

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桂文我・宗助/二人会

ワッハホールで開催された桂文我さん(枝雀の弟子)と桂宗助さん(米朝の弟子)の二人会へ。

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  • 雀五郎/子ほめ
  • 宗助/足上がり
  • 文我/妲妃のお百
  • 文我・宗助/ネタあれこれ(対談)
  • 文我/茶の湯
  • 宗助/らくだ

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妲妃(だっき)のお百」は2005年に亡くなった桂文紅の遺品から、その師匠である文團治の書き残した筋書きが見つかり、それを元に文我さんが再構成したもの。東京では立川談志が講談から落語に起こし、文我さんもアドバイスを受けたそう。詳しくはこちら。これは怪談噺で、今まで僕が聴いた文我さんの口演の中でもずば抜けて面白かった。凄みを感じた。ただ時間の関係で、これから盛り上がるぞという一番いい所で切られたのが残念。もっと続きが聴きたかった!やはりこういう埋もれた作品を発掘する噺家は貴重である。「算段の平兵衛」「はてなの茶碗」「地獄八景亡者戯」だって、桂米朝がいたからこそ復活した噺なのだから。

宗助さんは米朝ゆずりの端正な芸で聴き応えがある。ただ、上方落語協会に所属されてないのが実に惜しい。やはり繁昌亭に出られないというのは、大きいことだと僕は想う。

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アイリッシュ・フルート&ハープ/アイルランドの風

日曜日の昼下がり、兵庫県立美術館ギャラリー棟1Fアトリエへ。

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ここで守安 功(アイリッシュ・フルート、ホイッスル)、守安雅子(アイリッシュ・ハープ、コンサーティーナ)、グローニャ・ハンブリー(アイリッシュ・ハープ)のコンサートが開催された。

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僕が興味を抱いたきっかけは今年の夏、関西吹奏楽コンクールで福島秀行/セントシンディアンサンブルの演奏するオキャロラン(建部知弘 編)/ケルト民謡による組曲第2番「オキャロランの花束」を耳にし、たちまちその素朴で美しい旋律の虜になったから。

ターロック・オキャロラン(1670-1738)は「アイルランド最後の吟遊詩人」とも呼ばれる盲目のハープ奏者・作曲家。アイルランド各地を放浪し、生涯に200以上の曲を遺した。僕は是非、彼の音楽をアイリッシュ・フルート&ハープで聴いてみたいと想ったのである。

グローニャ・ハンブリーさんはアイリッシュ・ハープの第一人者。完璧なテクニックの持ち主。この楽器はオーケストラで使用されるハープみたいに華やかで”ごっつい”音はしないけれど、飾り気がなくイノセントな響きがして実にチャーミングだった。昔は金属弦を使用していたが、現在はカーボン弦で演奏されるとの解説があった。また彼女はコンサーティーナ(六角形の小型アコーディオン)の名手でもあり、十代の頃オール・アイルランド音楽コンクールのチャンピオンになったこともあるそうだ。ピアソラでお馴染みのバンドネオンに近い形をした楽器で、それをさらに軽量化した感じ。

守安夫妻は年間の三分の一をアイルランドで過ごし、現在は世界初の試みとなるオキャロラン全作品録音プロジェクトに取り組んでおられる。

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今回のプログラムは、

  • 会うは楽しい、別れはつらい(アイルランド舞曲)
  • 小雨のそぼ降る朝(デニス・ヘンプソン)
  • ホーンパイプ
  • ダニエル・ケリー(オキャロラン)
  • オキャロランはおかみさんと喧嘩した(オキャロラン)
  • カウンティ・クレア
  • シングル・ジグ(ウィリー・クランシー)
  • イニシア島"Inisheer"(トマス・ウォルシュ)
  • チャーリー王子(スコットランド民謡)
  • 庭の千草(フルート:宮尾紀子、歌:保阪藍子
  • ミッキー・フィンに捧げるラメント(ビル・フィン)
  • ブラーニーへの旅路(オキャロラン)
  • ブラーニー城への巡礼(アイルランド民謡)
  • オキャロラン協奏曲(オキャロラン)
  • ウォーラー夫人(オキャロラン)
  • 夏の終わり(フィル・カニンガム)
  • マハラ・マウンティンズ(マーティ・ヘイジ)
  • ダニー・ボーイ(歌:中尾敦子
  • 小さい妖精、大きい妖精(オキャロラン)
  • 盲目の王様(作者不詳)

ほか。

"Inisheer"(Inis Oirr)はダブリン出身のThomas Walshというアコーディオン奏者が、アラン諸島の一番小さな島、イニシア島に旅した時の印象を書き留めた島唄だそう。

また1745年のイギリスとの戦いをモチーフにしたスコットランド民謡「チャーリー王子のエディンバラへの最後の一瞥」および、それがアイルランドに渡りマーチに生まれ変わった曲が両方演奏され、興味深かった。

映画「タイタニック」3等船室でのアイリッシュ・パーティで流れたダンス音楽も良かった!

さらにハープのソロで300年前の作曲家であるトマス・カラランと、現代の作曲家であるパトリック・デイビーの「牧師さんの住む家」が続けて演奏された。時を越えた握手。しかし、その底に流れるものは一貫しており、違和感はない。

ブラーニーへの旅路」もハープ・ソロ。守安 功さんが現在、アイルランドの全ての音楽の中で一番好きな曲だそう。「ブラーニー城への巡礼」では守安さんが縦笛2本を口にくわえ演奏。とても愉しい。

オキャロラン協奏曲」はハンブリーさんの師であるジャネット・ハービソンの編曲。イタリア・バロック音楽からの影響が濃厚だとハンブリーさんから解説があった。また「ウォーラー夫人」では守安さんが「イタリア85%、アイルランド15%の曲」と紹介された。

アンコールで演奏された「盲目の王様」は17世紀の曲で、ハンブリーさんのお気に入りだとのこと。

初めて聴いたアイリッシュ・フルートは風の音や雑音までも演奏技巧に取り入れ、イタリア・フランス・ドイツで発展したフルート(フラウト・トラヴェルソ)よりも、むしろ日本の篠笛や尺八に近いなぁと感じた。

考えてみれば、アイルランド民謡「ダニー・ボーイ(ロンドンデリーの歌)」や「庭の千草(夏の名残のバラ)」、スコットランド民謡「蛍の光」「アニーローリー」等、どこか懐かしく郷愁を感じさせる歌の数々は日本でも昔から親しまれてきた。我々の琴線に触れる、何かがあるのだろう。音楽に国境はないーそんなことを改めて考えさせられた、ひと時であった。

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サイドウェイズ

評価:D

映画公式サイトはこちら。アカデミー脚色賞を受賞したアレクサンダー・ペイン監督の映画「サイドウェイ」(原題Sideways, 2004)を日本人キャストでリメイク。

2001年以降公開された作品のうち、Loser(負け犬)を主人公にした傑作を5つ挙げろと言われれば、僕は躊躇なく「サイドウェイ」「リトル・ミス・サンシャイン」「その土曜日、7時58分」「レスラー」「サンシャイン・クリーニング」(←それぞれのタイトルをクリックすると、公開当時僕が書いたレビューに飛ぶ)を選ぶ。これらが全てアメリカ映画だというのが面白い。それは恐らく、アメリカの社会構造と無関係ではないのだろう(日本でトレーラー生活を送っている人なんていないしね)。

さてこのリメイク版だが、一番問題なのは主な登場人物4人に"人生の負け犬"(Loser)感が欠けていることにある。オリジナルにはじわじわと滲み出してくるような哀感があり、それが独特の味わいとなっていたのに。日本人が演じることにも無理がある。日本の酒蔵めぐりに置き換えればいいのに、オリジナル同様カリフォルニア州ナパ・バレーでワイナリーをめぐる物語のままとなっており、設定が余りにも不自然だ。

歯の浮くような台詞の数々も勘弁してもらいたい。そんな格好つけるなよ、小日向さん。全然似合ってないぜ。つまり上杉隆之の脚色が屑なのである。

結論、オリジナル版だけ観れば十分。リメイクは無用の長物だった。

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桂吉弥×茂山宗彦/落語と狂言

大阪府羽曳野市「LICはびきの」で開催された落語と狂言の会へ。

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NHK朝ドラ「ちりとてちん」でブレイクした桂吉弥さん(38歳、'93年入門)と茂山宗彦さん(34歳、初舞台は4歳)とのコラボレーション。

  • 桂吉の丞/落語「時うどん」
  • 桂  吉弥/落語「狐芝居」
  • 吉弥×宗彦/座談会 (聞き手:小佐田定雄)
  • 茂山宗彦、逸平、七五三/狂言「萩大名」

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狐芝居」は落語作家の小佐田さんが1983年に創作したもので桂雀松さんが初演。それを聴いた吉弥さんの師匠・吉朝が「私もやりたい」と。芝居噺は吉朝一門の十八番だからさすが見応え十分。それに吉弥さんはマクラの構成(話の運び方)が上手いなと改めて感心した。つい先日、所属する噺家が200人を超えた上方落語協会の中で、年齢を上から数えて168番目になるそう。「まだまだ若手、上が詰まっております」

高座はホール中央にでんと構えるパイプオルガンの前に置かれ、小佐田さんが「上等なお仏壇」の前で喋っているみたいだと表現されたのが可笑しかった。

狂言という芸能は今回初めて観た。難解なのかと思いきや、結構台詞の意味も分かったし、面白かった。笑いのセンスは落語に近いものを感じた。衣装が豪華、宗彦さんはスケールの大きな演技で舞台映えがした。ただ予想とは異なり、お囃子(笛や鼓)が一切入らなかったのがちょっと物足りなかったかな。

萩大名」は来年京都において吉弥・よね吉・米二という面々で演じられる予定だそうで、吉弥さんは現在狂言の稽古中とか。その会ではなんと、宗彦さんが落語を披露するらしい。

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動楽亭・昼席(11/5)

ジャンジャン横丁近くマンションの2階、桂ざこばさんが席亭を勤められる動楽亭へ。

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木戸銭2,000円也。客の入りは40人弱といったところ。

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  • 米市/子ほめ
  • しん吉/時うどん
  • あさ吉/鹿政談
  • 雀松/蛸芝居
  • 九雀/孝行糖
  • ざこば/へっつい幽霊

米市さんは米團治さんの1番弟子(入門して約1年)。噺家になる前は不動産屋で働いていて、その時になんとあさ吉さんが現在住んでいるマンションを世話したのだそう。

しん吉さんは岐阜の学校での落語会の話をマクラに。教師も生徒も全員マスクをしていて、笑っているのかどうかさえ定かではなかったとか。

料理が得意なあさ吉さんは同期(入門)の雀喜(じゃっき)さんを自宅に招き、《うにカルボナーラ》を振舞ったエピソードを披露(→あさ吉さんのブログへ)。「うわ、これ美味しいわ!レストラン開いて客に出せるで」と雀喜さん。「そんなことあらへんよ」「いや、ほんまや!僕なら800円は出す」「800円って……」その中途半端さに会場は大爆笑。

さらにあさ吉さん、プロになった今でも高座ではすごく緊張し、「一か八か」みたいなところがあるという話も可笑しかった。まだ駆け出しの頃、「阿弥陀池」を高座にかけたとき頭が真っ白になり、たった一分半で降りた(本人曰く、「自爆した」)こともあるそう。

続いて登場した雀松さん、「いやぁ、癒し系の高座でした。傍で聴いていてハラハラドキドキ。でもそれが彼の個性となり、味が出てくるんですねぇ」これには多くの人々が頷いていた。

九雀さんは「動楽亭が出来て、のべ約300席の噺が掛けられましたが、まだ登場していない珍しいものを」と「孝行糖」へ。陽気で賑やか、愉しい高座だった。

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ざこばさんは若い頃、寝坊してしくじったことをマクラに。出番に遅刻し先輩の芸人さんから叱られて、泣いて謝るものの、翌日また朝起きられずに叱られて……。本当にこの人は、生き様そのものが落語だなと想った。

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母なる証明

評価:A-

掛け値なしの傑作。評価にマイナスが付いたのは、単に物語(後味の苦さ)が僕の好みではなかったという些細な理由である。来年に開催される米アカデミー外国語映画賞の韓国代表に選ばれている。英語タイトルはシンプルに"Mother"。映画公式サイトはこちら

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ウォンビン兵役後初の映画出演ということで話題になっているが、そんなことはどうでもいい。

監督はポン・ジュノ。僕は以前から彼のことを天才だと何度も書いてきた。現在、世界で最も信頼する映画作家である。デビュー作「ほえる犬は噛まない」とキネマ旬報ベストテンで第2位に輝いた「殺人の追憶」(評価:AA)について5年前に僕が上梓したレビューはこちら。そして監督第3作「グエムル-漢江の怪物-」(キネマ旬報ベストテン第3位)のレビューはこちら

ポン・ジュノの映画は自然描写が素晴らしい。例えば本作でも激しく降る雨、大木が強風に揺れる情景、ブラックホールのようにポッカリと口をあけた暗闇の恐怖などが強烈な印象として残る。”自然現象にまで演技をさせる”という点で、僕は彼のことを”韓国の黒澤明”と呼んでいる。

冒頭、枯野の中を歩いてくる年老いた母親。突如、彼女は静かに踊りだす。そこから観客はポン・ジュノの世界に一気に引き込まれる。そして冒頭のシーンが映画終盤に再現され、我々は本当の意味を知る。張りめぐらされた伏線が最後に回収されてゆく、練りに練られた脚本がお見事。鮮烈なラストシーンは正に衝撃的であった。人として生まれたことの絶望、子供を守ることを宿命として定められた母親の哀しみ・狂気が胸を抉る。まるでギリシャ悲劇のようだ!

また映画の随所に散りばめられたユーモアのセンスがいい。これは「殺人の追憶」にも共通する特徴で、シリアスな内容の緩和剤として効果的に機能している。

「箪笥」「グエムル」などで卓越した仕事をしたイ・ビョンウのギターをフィーチャーした音楽が哀愁を漂わせ、深い余韻を残す。

韓国は米アカデミー外国語映画賞にノミネートすら一度もされたことがないという不名誉な記録が続いている(日本は「羅生門」「地獄門」「宮本武蔵」「おく りびと」で4回受賞。他にも「たそがれ清兵衛」など11回ノミネートされている)。「殺人の追憶」や「オールドボーイ」がもし代表に選ばれていれば可能性はあったのに、代わりに出品されたのは「プライベート・ライアン」のパクリ「ブラザーフッド」('04)や「トンマッコルへようこそ」('05)だった。しか し、今年は違う。選考委員は本物を選んだ。遂に韓国初のアカデミー賞ノミネートが現実のものとなるかも知れない。本作はポン・ジュノの「天才の証明」とも呼べるだろう。

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ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜

評価:A

これぞ映画!文句なし、本年度邦画のベスト・ワン。

映画公式サイトはこちら。モントリオール世界映画祭で監督賞を受賞。

しかしどうして来年の米アカデミー賞外国映画部門・日本代表として本作が選出されなかったのか、全く理解に苦しむ(選ばれたのは「誰も守ってくれない」)。

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この映画を観ながら感じたのは巨匠・成瀬巳喜男 監督の名作、例えば「浮雲」('55)や「女が階段を上る時」('60)との類似性である。浅野忠信が演じる《救いようのないダメ男》は、まるで前述した成瀬映画における森雅之ではないか。そしてその男に尽くす女、松たか子はデコちゃんこと、高峰秀子そっくりである。さらに終戦直後という時代設定も「浮雲」と共通している。

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種田陽平の美術セットが素晴らしい。当時の雰囲気が良く出ている。そしてそれもまた、成瀬映画に欠かせない美術監督:中古智の仕事を思い起こさせるものだった。

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絶対、根岸吉太郎監督は成瀬を意識して撮ったに違いないと検索してみると、動かぬ証拠を見つけた→こちら

そうか!ということは「ヴィヨンの妻」における伊武雅刀は「浮雲」の加東大介と同じ役回りなんだ。妻を寝取られるという設定も含めて。

また、愛人の広末涼子がはまり役。しかし、この映画の白眉は何と言っても浅野忠信、彼に尽きるだろう。いやはや、これ程までにいい役者だとは今まで気が付かなかった。前にも書いた通り、《救いようのないダメ人間》を演じているのだが、成瀬映画の森雅之と決定的に異なるのは「ヴィヨンの妻」の浅野は非常にセクシーなのである。そして着物がよく似合う。もし僕が女だったら「嗚呼、この人のためなら、とことん墜ちても構わない。地獄の底までついて行く!」と覚悟を決めるに違いないくらいの説得力があった。必見。

最後に、吉松隆の静謐な音楽も傑出していたことを申し添えておく。僕は彼の5つある交響曲や管弦楽曲「朱鷺によせる哀歌」、アルト・サクソフォーンのためのサイバーバード協奏曲、ピアノ協奏曲「メモ・フローラ」等が大好きである。

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沈まぬ太陽

評価:B-

映画公式サイトはこちら

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上映時間3時間22分。途中10分間の休憩が入る。邦画で休憩があるのは、キネマ旬報ベストテンで第4位になった小林正樹監督のドキュメンタリー映画「東京裁判」(1983年、上映時間4時間37分)以来だとか。僕は「東京裁判」も映画館で観ているが、あれから26年も経ったんだ!と感慨もひとしおである。

若松節朗監督は「振り返れば奴がいる」「やまとなでしこ」「太陽と海の教室」などで知られるテレビ・ディレクター。映画は過去に「ホワイトアウト」(2000年)を撮っている。

海外ロケもあり、確かに見応えのある大作だった。しかし、予算が潤沢な長~いテレビ・ドラマを見ているような感覚が終始付きまとった。「映画を観た!」という充足感が希薄なのである。

それは小さくまとまってしまった「ホワイトアウト」の時にも感じたことなのだが、室内劇が主体の「沈まぬ太陽」ではそれ程マイナスに作用しているとは想わなかった。

退屈はしないし、映画館に足を運ぶ価値はある。ただし、これは山崎豊子の原作に責任があるのだろうが、善人と悪人の区別がはっきりし過ぎていて登場人物の描き方が類型的である。結局この作品は人間を描きたいのではなく、社会悪を抉り出したいというジャーナリスティックな視点で紡ぎ出された物語なのだろう。

役者陣は充実している。渡辺謙は作品に賭ける執念を感じさせる熱演。西村雅彦の”臆病ものの小悪党”、松雪泰子の”愛人”、木村多江の”不幸顔のアル中女”など、各々はまり役と言えるだろう。

住友紀人の音楽はとても安っぽい。それから御巣鷹山に墜落する飛行機に乗っていた男性が家族に宛てた遺書をその男性の朗読、息子の朗読と繰り返す、くどい演出はいかにもテレビ的で如何なものかと想った。

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最近聴いた落語会から

玉造・猫間川寄席@さんくすホール(10月28日)

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  • 露の団姫/太田道灌
  • 桂歌之助/七段目
  • 桂 文我/真田山
  • 桂阿か枝/祝い熨斗
  • 桂 文我/付き馬

満席。文我さんが世話人をされている会。今まで一度も演目が重複することなく、掛けられたネタがこの第46回で丁度200席に達したとのこと。「まだまだ行けます」と文我さん。

団姫(まるこ)さんはマクラで、大師匠で先日亡くなった露の五郎兵衛が創った川柳を披露。

「へそまがりの 虫を一匹 飼っている」
「ネクタイの 数見て恋の 数を知る」

う〜ん、中々粋である。さらに団姫さん、「師匠の遺品を整理していたらネクタイは4本しか出てきませんでした(場内爆笑)……もちろん嘘ですよ!」という落ちがついた。上手いっ!

ちなみに団姫さんと五郎兵衛師匠はNHK朝ドラ「ちりとてちん」最終回 ~ただいま修行中!~ のコーナーに、仲良く写真で登場した。

文太の会@高津の富亭(11月1日、14時)

  • 桂  文太/寄合酒(古典)
  • 桂  文太/八五郎出世(江戸落語)
  • 林家染左/やかん
  • 桂  文太/よもぎ餅(贋作)

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生憎の大雨。入りは30人くらい(ちなみに「九雀通信」によると、同日・同時刻に開催された動楽亭・昼席は客が4人だったそう)。文太さんの、味のある名人芸を堪能。

阪神ハートフル寄席@ピッコロシアター(11月3日、14時)

  • 笑福亭呂竹/犬の目
  • 桂      宗助/親子酒
  • 桂     米二/持参金
  • 月亭   八方/算段の平兵衛

兵庫県尼崎市へ。事前のネタ出しはなく、演目は当日のお楽しみであった。

以前から八方さんの「算段の平兵衛」に憧れていた。結婚詐欺事件のマクラが振られたときから、これはも、もしや!?と期待した。そして評判に違わぬ、圧巻の高座が展開された。算段の平兵衛は本当に悪い奴である。しかし一方で、憎めないところもある。演者は聴衆に、主人公に対する生理的嫌悪感を決して抱かせてはならない。八方さんは悪人がよく似合う。その清濁併せ呑む匙加減が絶妙で、凄みさえ感じられた。尼崎まで行ってよかった!

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銀瓶・文三 ふたり会@天満天神繁昌亭(11月3日、18時)

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  • 桂     文三/狸賽
  • 笑福亭銀瓶/崇徳院
  • 銀瓶・文三  /対談
  • 笑福亭銀瓶/豊竹屋
  • 桂     文三/くっしゃみ講釈

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文三さんの「狸賽」は情があって、しみじみ耳を傾けた。一転「くっしゃみ講釈」は機嫌よく愉しく。銀瓶さんはシュッとした高座。

この会の中で、来年は銀瓶さんが「景清」(かげきよ)を、文三さんが師匠・文枝の十八番「たちぎれ線香」に挑戦(ネタおろし)することが決まった。これは面白いことになってきた。

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フランスのバロック トリオの愉しみ/上方西洋古楽演奏会週間

少し前になるが、10月31日(土)に南森町にあるギャラリー草片で上方西洋古楽演奏会週間・最終公演を聴いた時のことを書こう。

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タイトルは「フランスのバロック トリオの愉しみ」で出演は出口かよ子、森本英希(フラウト・トラヴェルソ=バロック・フルート)、曽田健(バロック・チェロ)、亀井貴幸(テオルボ)、吉竹百合子(チェンバロ)という面々。出口、森本、曽田の3人はテレマン室内管弦楽団のメンバーでもある。

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演奏されたのは18世紀にフランスで活躍した作曲家=ドルネル、オトテール、ノド、ブラウン、フィリドール、マレらのトリオトリオとは高音部2パート+通奏低音の合わせて3パート編成を指し、 通奏低音は複数で演奏することが多いので必ずしも3人とは限らない。

客の入りは10人くらい。この演奏会の企画者・赤坂放笛さん(バロック・オーボエ奏者)は「バッハとかヴィヴァルディとか有名どころをプログラムに入れないと、集客は難しいですね」と。

それでも滅多に聴けないフランス・バロック期の作曲家の音楽が色々聴けて、愉しく寛いだ時間を過ごすことが出来た。

アンコールは赤坂さんのオーボエ・ダ・カッチャも加わり、全員でヘンデル/「水上の音楽」より3曲が演奏された。

サロン風の親密な空気の中、何だかここは大都会・大阪じゃないような、異空間に彷徨い込んだような摩訶不思議な体験であった。

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《パーセルとヘンデル》中野振一郎/チェンバロリサイタル

大阪・イシハラホールで開催された日本を代表するチェンバリスト・中野振一郎さんの演奏会を聴いた。

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このイシハラホールで中野先生のソロを聴くのも3年目になる。

今年のテーマは「パーセルとヘンデルのハープシコード音楽」。パーセルは17世紀にイギリスで活躍した作曲家。ドイツ生まれのヘンデルは18世紀にロンドンに移住し、そこで没した。なおチェンバロCembalo)はドイツ語で、英語ではハープシコードHarpsichord)となる。

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プログラム前半のパーセルは毅然として典雅、そして時に哀感が漂う。

ラウンドO「アブデルアーザー」という曲は20世紀にブリテンが「青少年のための管弦楽入門」(パーセルの主題による変奏曲とフーガ )の主題として用いた。「青少年…」は僕が小学生の頃から親しんでいるが、原曲は今回初めて聴いた。従来のイメージとは異なり、厳しい音楽だったので驚いた。いやぁ、面白い。

休憩後のヘンデルは一転、華麗。演奏されたのは歌劇「ジュリアス・シーザー」序曲(編曲者不明)や3つの組曲など。厳格なバッハの組曲と異なりヘンデルのそれは構成がゆる~い感じ。その”てきとー”さがひとつの魅力となっている。アンコールは歌劇「リナルド」からアリア2曲(W.バベル編)だった。

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使用された楽器は1730年製フレンチモデルの2段鍵盤チェンバロ「ブランシェ」。ラ音(A)を415Hzに調律したもの(現代のピアノは440Hzなので、約半音低い)。

中野先生の演奏は先鋭にしてスタイリッシュ。めくるめくスピードで指が動き、聴くものに息つく暇を与えない。これだけ研ぎ澄まされた感性を持つチェンバリストは世界広しといえど、他に例をみないだろう。関西で気軽にそれに接することが出来る至福を噛みしめた。

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