The Musical 「AIDA アイーダ」
梅田芸術劇場でThe Musical 「AIDA アイーダ」を鑑賞。宝塚歌劇団が2003年7月に星組で初演した名作「王家に捧ぐ歌」を新たにリニューアルしたもの。「王家に捧ぐ歌」は2003年度の芸術祭演劇部門で優秀賞を受賞、さらに月刊「ミュージカル」誌の年間ベスト・ミュージカル第1位に輝いた。僕はこの初演時に宝塚大劇場で鑑賞し、市販されているDVDも所有している。アムネリスを演じた檀れいさんが神々しいくらいに美しかった!
この作品をより理解するためには創られた時代背景を考えておく必要があるだろう。2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが勃発。「対テロ戦争」の名の下にアメリカは10月7日からアフガニスタン空爆を開始、さらに2003年3月にはイラク侵攻に踏み切ることになる。余談だが僕は2001年8月末にニューヨークにいて、ミュージカル「プロデューサーズ」や「オペラ座の怪人」そしてディズニー版「アイーダ」(同役でトニー賞を受賞したヘザー・ヘッドリーがアイーダ、「RENT」のアダム・パスカルがラダメス)などを鑑賞、崩壊する直前の世界貿易センタービルを見た。
つまり「王家に捧ぐ歌」の《戦いは新たな戦いを生むだけ》というテーマはこうした時代の空気を反映しており、富めるエジプト=アメリカ合衆国、貧しいエチオピア=イスラム圏の国々というメタファーになっている。劇中でアイーダの兄がファラオを暗殺した直後に自害するが、これはハイジャックして世界貿易センターに突っ込んだテロリストの”ジハード”を連想させる仕掛けだ。
さて今回のThe Musical 「AIDA アイーダ」、脚本・演出:木村信司(宝塚歌劇団)、作曲・編曲・音楽監督:甲斐正人は「王家に捧ぐ歌」から続投。宝塚版でアイーダを演じた安蘭けいさんが再び同役を演じている。
元々出来の良い作品であったが、それが格段にパワー・アップ。これぞ和製ミュージカルの最高傑作!と太鼓判を押しても過言ではない。ディズニー版「アイーダ」と比べても遜色ないだろう。台本がよく練られているし音楽が劇的で美しく、心に響く。ピラミッドの三角形を組み合わせた美術(大田 創)や、被り物が印象的な衣裳(有村 淳)も特筆に値する。ただし振り付け(麻咲梨乃)は些かダサかった。日本には加藤敬二(劇団四季)とか謝珠 栄などもっと優れた振付師がいるだろうに……。
東宝版「エリザベート」の皇太子ルドルフ役でブレイクした伊礼彼方は上半身裸でムキムキの肉体美を披露。マッチョで少々おつむが足りなさそうなラダメス。イメージ的にシルヴェスター・スタローンが演じたロッキーとかランボーに近い。まあラダメスってこういう役だからそれでいいのだ。
ANZAは歌唱力があり、鋭い眼差しでクール・ビューティなアムネリスを好演。
威厳のあるファラオを堂々と演じた光枝明彦さんは、彼が劇団四季在籍中に観た「ジーザス=クライスト・スーパースター」「アスペクツ・オブ・ラブ」「夢から醒めた夢」「壁抜け男」などのことを想い出しながら懐かしく拝見した。
アモナスロ役の沢木 順さんと言えば劇団四季時代、「キャッツ」のラム・タム・タガーが印象深い。在団中に「オペラ座の怪人」タイトルロールを観ておきたかったなぁとちょっぴり後悔。
劇団四季が大阪で日本初演したディズニー版「アイーダ」は情けないことにカラオケ上演だったが、勿論今回の公演は生オーケストラの演奏付き(指揮は大阪市音楽団とのコンビでお馴染みの牧村邦彦さん)。やっぱり舞台は生に限る。
(上の写真は宝塚雪組のトップスター・水 夏希さんから届けられた胡蝶蘭)
平日夜にもかかわらず会場は大入り満席、最後は客席総立ちのスタンディングオベーションとなった。
なお、The Musical 「AIDA アイーダ」は12月10日にDVDが発売される予定だそうである。必見。
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