モーリス・シュテーガー/リコーダー・リサイタル
兵庫県立芸術文化センター・小ホールにて。
モーリス・シュテーガーは1971年スイス生まれ。これが初来日となる。チェンバロを演奏する北谷直樹はスイスに拠点を置き活動しており、シュテーガーと長年コンビを組む。
今回の演奏会は”ヴィヴァ!イタリア”と副題が付き、オール・イタリアン・プログラムだった。
- ヴェラチーニ/リコーダーと通奏低音のためのソナタ イ短調
- ウッチェリーニ/シンフォニア 第14番「ラ・フォスキーナ」
- ロッシ/シンフォニア 第11番「イン・エコー」
- ストラーチェ/シャコンヌに基づく即興演奏(チェンバロ独奏)
- フォンタナ/ソナタ 第2番
- デラ・チャイア/チェンバロ・ソナタ 第5番よりトッカータとカンツォーネ
- メアッリ/ソナタ「ラ・カステラ」
- コレッリ/ソナタ 第7番
- バベル/ヘンデル 歌劇「リナルド」より(チェンバロ独奏)
序曲、「私を泣かせてください」、「私は戦いたい」 - サンマルティーニ/ソナタ ト長調
特に後半の気高いコレッリ、そして美しい歌に満ちたサンマルティーニが良かった。
6本のリコーダーを取替え演奏するシュテーガーに対し、北谷さんは3台のチェンバロを弾き分けられた。
シュテーガーの演奏は軽やかで、速いパッセージでも難なく指がよく回る。また上半身の動きが大きく、グルグル体を廻したりする。それも時計回転かと思いきや、直ぐさま反時計回転に切り替わったりと面白い。全身で音楽を表現しているのである。
リコーダーの底穴を膝を上げてふさぎ、高音を出すテクニックは今回初めて見た!(運指表には"B"と表記)いやはや驚いた。
北谷さんは剛直なタッチで力強い。見事な伴奏である。僕が生で聴いた中ではトン・コープマンや鈴木雅明さんより巧い。ただ”切れ味の鋭さ”という点では中野振一郎先生の方が一枚上手かな。
リコーダーはヴィブラートをかけない"pure tone"なので音が素直にスッと心に沁み、実に爽やか。やはりバロックからベートーヴェンの時代まではこうありたい。
2006年にロジャー・ノリントンを客演指揮者に迎えたNHK交響楽団は初めてノン・ヴィブラート奏法="pure tone"に挑み、多大な成果を上げた。そして2009年9月のN響定期に登場したクリストファー・ホグウッドともまた、完全ノン・ヴィブラートでベートーヴェンを演奏した。僕はBSでこれを視聴し、N響の《本気》を感じた。ユベール・スダーンが音楽監督を務める東京交響楽団はノン・ヴィブラートが当たり前だし、新日本フィルハーモニー交響楽団もまたフランス・ブリュッヘンとのハイドン・プロジェクトやダニエル・ハーディングとのコラボでピリオド奏法に積極的に取り組んでいる。これが時代の潮流であり、最早誰も押し止めることなど出来はなしない。
コンサートの帰りに新装オープンした阪急デパートでお菓子を購入。50人以上のすごい行列で大人気。ふっくら柔らかく、美味なり。
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コメント
本当に全身を使ったアクティブな演奏ぶりにびっくりしました。
リコーダーといえば、比較的の静のイメージがあるので新鮮で
またシュテーガーさん、大変にこやかで軽快で・・・おまけにイケメンで(笑)好感度大でした。
膝で塞いで高音を出すのは、話では聞いたことがありましたが
実際私は初めて見ました!
北谷さん、チェンバロは雄弁でしたが、ちょっとばかり滑舌が悪く感じました。
投稿: jupiter | 2009年10月24日 (土) 01時31分
jupiterさんが仰る通り、「動」の演奏でしたね。
チェンバロの滑舌(切れ)の良さでは中野振一郎さんが抜群です。是非一度お聴き下さい。ちなみに10/30(金)にイシハラホールで年一度だけのリサイタルがあります。
投稿: 雅哉 | 2009年10月24日 (土) 07時34分