延原武春/クラシカル楽器によるベートーヴェンのピアノ協奏曲&ミサ曲
延原武春/テレマン室内管弦楽団・合唱団によるオール・ベートーヴェン・プログラムを聴いた。クラシカル楽器(古楽器)を使用した演奏である。
- 「コリオラン」序曲
- ピアノ協奏曲 第2番
- ミサ曲 ハ長調
「コリオラン」はパンチの効いた嵐の音楽。
コンチェルトのフォルテピアノ独奏は高田泰治さん。使用されたのはベートーヴェンとも交流があったナネッテ・シュトライヒャー(女性)が1820年代に製作したもの(オリジナル楽器)で、いずみホール所蔵。
フォルテピアノはモダン楽器と異なり、暴力的な大音量は出ない。優しい響きでオケの音色によく溶け合うのが、なんとも魅力的。高田さんの演奏は気品があり、特に第3楽章ロンドは踊りの雰囲気が上手く醸し出されていた。
「ミサ曲」は生まれて初めて聴いた。素朴で無骨。ベートーヴェンの不器用でありながらも、真摯な信仰心がよく表れた作品。第九を彷彿とさせる箇所が多々あり、肯定的な人間賛歌として聴き応えがある。ただ些か冗長な所もあり、この曲が滅多に演奏されないのもむべなるかなという側面があるのも確か。しかし、ピリオド・アプローチという新しい方法論によって作品に新たな光が当てられ、今後再評価が進んでいくことであろう。
古きをたずね、新しきを知る。延原武春を聴けば、時代の最先端をゆくベートーヴェンを体験することが出来る。次は12月20日(日)ザ・シンフォニーホールでの「第九deクリスマス」。詳細はこちら。
- 延原武春/日本テレマン協会《第九deクリスマス》(昨年の感想)
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コメント
いつもありがとうございます☆
《ハ長調ミサ》は、私も今回演奏することになって初めて知った曲でした。《ミサソレムニス》などに比べるとずっとシンプルで素朴な曲ですが、ハイドンやモーツァルトなどにはない新しい発想や試みがあちこちに見られてベートーヴェンらしい冒険が感じられる曲ですね。
《ミサソレムニス》はたしかベートーヴェンが聴覚を失ってからの作品で、そのためかいささか誇大妄想的というか演奏者に無理を強いるような部分が多い気がするのですが、今回の《ハ長調》はずっと穏やかな曲想ですし演奏者にも優しい(「易しい」ではなく…)曲だった気がします。交響曲の5・6番が書かれた時期と重なっていて、精神的にも安定していた時期の作品だからかも知れません。
一般に知名度が低いのはよい録音に恵まれていない所為かも知れませんね。私が聴いた中では、ヒコックスが、スタンデイジと共に設立したコレギウムムジクム90を振ったCD(クラシカル楽器使用)が比較的よかったです。今回もライヴ録音をしていましたのでひょっとしたらCD化されるかも知れませんが、お蔵入りの可能性もあります。
投稿: おすぎ | 2009年11月 4日 (水) 14時50分
おすぎ様、詳細なコメントありがとうございます。
ヒコックスって、古楽器オーケストラも振っていたんですね。知りませんでした。ヒコックスといえば、シャンドスにレコーディングしたディーリアスやヴォーン=ウィリアムズなどイギリス近代音楽のスペシャリストという印象が強かったものですから。
投稿: 雅哉 | 2009年11月 4日 (水) 18時41分