ド迫力!大植英次/大フィルの「カルミナ・ブラーナ」
大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会をザ・シンフォニーホールで聴いた。
- ハイドン/チェロ協奏曲 第1番
- オルフ/世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」
ハイドンのチェロ独奏はオランダ出身のピーター・ウィスペルウェイ。
ピリオド奏法しない大植さんのハイドンが聴く価値がないことは、端から分かっていた。この作曲家特有の疾風怒濤(Sturm und Drang)の雰囲気が全く醸し出されていない。20世紀的な古色蒼然たるスタイル。
むしろ独奏者の方が奏法の時代考証に敏感であった。出だしと音尻がノン・ビブラートで演奏され、聴いていて心地良い。
ソリストのアンコールは、
- J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 第1番よりサラバンド
- J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 第6番よりガヴォット
このバッハも極力ヴィブラートを排したもので、好感が持てる。後でプロフィールを見てみると、バロック・チェロの巨匠アンナー・ビルスマに師事したと書いてある。成る程と頷けた。
続く「カルミナ・ブラーナ」はソプラノ:シモーナ・サトゥロヴァ(スロバキア)、テノール:五郎部俊朗、バリトン:サイモン・ポーリー(ドイツ)、大阪フィルハーモニー合唱団+大阪すみよし少年少女合唱団という布陣。舞台上に所狭しと演奏者が並び、壮観だった。特に打楽器が7人、ピアノが2台とリズム・セクションの充実は特筆すべきであろう。
大植さんの古典は駄目だが、こういう近代の音楽、外連味(けれんみ)たっぷりの大仰な作品では水を得た魚、大見得(おおみえ)を切る千両役者としての実力を存分に発揮する。
冒頭「運命の女神よ」から聴衆は強烈なパンチを喰らう。単純な音形・リズムの執拗な反復(オスティナート)が原始的な内なる感情を呼び覚ます。合唱の発音がハッキリしていて歯切れがいい。ゆったりとしたテンポで進むかと思いきや、突如もの凄い加速で突っ走ったりして予測がつかない。そのレオポルド・ストコフスキー的”はったり”が愉しい。
この曲は生命の讃歌、人間が背負って生まれた業(ごう)に対する大らかな肯定であるということが、今回の演奏を通して理解することが出来た。つまり、「人は酒におぼれたり、異性にうつつを抜かしたりしてどうしようもない存在だけれど、それでよいのだ。我々に残された時間を、大いに愉しもうではないか!」ということ。
最後に、弱音が美しいソプラノ、柔らかい音色のバリトンが素晴らしかったことを申し添えておきたい。
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