恋のため息 -バロック・シンギング-
日曜日の昼下がり、帝国ホテル近くにあるOPAアートコート(ギャラリー)で開催されたコンサート(ワオンレコード主催)を聴いた。
小林木綿(こばやし ゆう) ソプラノ/櫻田 亨 アーチリュートという組み合わせ。
曲目は16世紀から17世紀に掛けてのイタリアの音楽で、
- カッチーニ/甘いため息
- モンテヴェルディ/あなたの眼差しが
- モンテヴェルディ/ああ、倒れる
- ピッチニーニ/トッカータ20番
- メリー/カプリッチョ「偉大なマティアス」&コレンテ「王妃」
- モンテヴェルディ/生きることをやめてしまおう
- モンテヴェルディ/なんと甘い苦痛が
- ディンディア/私が悲しめば
- フレスコバルディ/こんなに僕を侮辱していいのかい
- メールラ/それはとんでもない思い違いというものだ
- フレスコバルディ/トッカータ&カンツォーネ「ヴィットーリア」
- フレスコバルディ/十字架の下のマグダラのマリア
- フェッラーリ/宗教カンタータ この鋭い茨のとげは
青字がリュート・ソロ。アンコールはランベールによるフランス歌曲だった。
櫻田さんからリュートという楽器は元々イスラム圏の楽器ウードが起源で、それがヨーロッパに伝わり宮廷音楽として洗練されたものがリュート、中国に渡り改良されたものが琵琶であるというお話があった。
今回演奏された楽器は2本ずつ張られたガット弦が13コースあるもの。これはオール・イタリアン・プログラムに合わせた仕様で、フランスものだとまた違った楽器が必要になってくるのだそう。
小林木綿さんは1996年ブルージュ国際古楽コンクール第2位入賞。これは声楽家としては最高位だそう。澄み渡るイノセントな歌声に魅了された。ホール(サロンと呼んだ方が相応しいかも知れない)も良く響き、残響が豊か。まるで小さな教会で音楽を聴いているかのよう。
ルネサンス期からバロック期にかけてのイタリア歌曲は純朴な恋の歌、そして敬虔な祈りの歌など何れも魅力的で、すっと心に沁みる。匂い立つばかりの美しさを誇る「なんと甘い苦痛が」やフレスコバルディも良かったし、特に木綿さんが大切に歌っておられるという「この鋭い茨のとげは」は心の奥底まで届き、魂が震えるような感銘を受けた。
また、当日配布された小林英夫さんによる歌詞対訳が磨き抜かれた日本語で書かれていて素晴らしかった。その小林さんも会場に聴きに来られていた。
木綿さんは未だリリースしたCDがないそうである。実に残念な話だ。また聴きたいと切に望む。
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