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「春のめざめ」と現代ブロードウェイ・ミュージカル論

ブロードウェイ・ミュージカルが衰退して久しい。

自国の作品がパワー・ダウンする中、1980年代から90年代に掛けてブロードウェイでは「キャッツ」「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などロンドン(ウエストエンド)ミュージカルが席巻した。

そしてロンドンが息切れをし始めた90年代後半から21世紀にかけて、2つの大きな潮流が生まれた。トニー賞ミュージカル作品賞を受賞したものをそれらに分類してみよう。

  1. 映画の焼き直し(メジャー系)…「ライオンキング」(1998)「プロデューサーズ」(2001)「モダン・ミリー」(2002)「ヘアスプレー」(2003)「ビリー・エリオット(リトル・ダンサー)」(2009)
  2. オフ・ブロードウェイからオンに進出してきたインディーズ系…「レント」(1996)「アベニューQ」(2004)「ジャージー・ボーイズ」(2006)「春のめざめ」(2007)「イン・ザ・ハイツ/In the Heights」(2008)

メジャーの企画力が衰えリメイクに走り、また独立プロダクション(インディーズ)が元気なのはハリウッド映画の現状も全く同じである。

そして恐らく今後、第3の潮流としてウィーン・ミュージカル(「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」)や和製ミュージカル(例えば三谷幸喜の「オケピ!」「TALK LIKE SINGING」など)がブロードウェイに進出する時代もそう遠くはない将来に実現するだろう。

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前置きはそれくらいにして、自由劇場で観劇した劇団四季による「春のめざめ」の感想を書こう。トニー賞8部門受賞作である。

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兎に角、余りにも素晴らしい作品でぶっ飛んだ。ミュージカルを観ながら心が震え、胸高鳴る想いがしたのは「オペラ座の怪人」を初めて観た日以来かも知れない。

舞台は19世紀末のドイツ。厳格で子供たちを抑圧しようとする大人たち、それに対して思春期を迎え、息が詰まりそうな生活に反発し、もがいてもがいて爆発寸前の少年少女たち。その緊張感がスリリング。大人たちの態度は、後のナチス・ドイツをいやがうえにも連想させ怖ろしい。熱くて躍動感ある音楽も文句なしにいい。そして照明の美しさ!当然トニー賞では最優秀ミュージカル台本賞、楽曲賞、照明デザイン賞を受賞している。

歌うのはもっぱら子供たち。歌詞が弾けてヒリヒリ痛い。一方、《大人の男性》《大人の女性》という役名で男女一人ずつが様々な役柄を演じる。学校の先生、ピアノ教師、両親、牧師、等々。台詞だけのその無名性がステレオタイプな社会を象徴する。

舞台上両脇にステージシートがあり、そこで一般観客がミュージカルを間近で体感出来るのも嬉しい。役者もそこに混じり、舞台を行き来する。ライヴならではの醍醐味である。

劇団四季の若いパワー炸裂である。恐らく出ている役者の平均年齢は20代前半だろう。僕が20年位前に観た四季の「ウエストサイド物語」「コーラスライン」の頃から考えると、全体としてのレベルは歌唱力・ダンス力ともに飛躍的に向上し、隔世の感がある。

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メルヒオール:柿澤勇人(はやと)、21歳。イケメンである。既に「ミュージカル界のプリンス」「劇団四季の貴公子」などと呼ばれ、話題沸騰だ。写真はこちら!しっかり歌えるし、これは久々に四季から途轍もない大スターが出現したなと目を見張った。はっきり書いちゃうけど井上芳雄くんも彼の前では霞んじゃう。僕の隣で観劇していた若い女性がカーテンコールで「かっこいい!こっち向いて!!」 と叫んでいたのも頷ける。

ただ日本の演劇界にとって不幸なのは、美人で歌って踊れる女の子は皆、宝塚歌劇を目指してしまうことにある。だから男優と比較して劇団四季の女優のレベルは劣る。これはもう、致し方のない事実である。

ベンドラ:林 香純(かすみ)、20歳。容姿のことは不問に付す。でもプロの女優なんだから、せめてもっと痩せた方がいい。それから四季独特の発声法(母音法)が不自然で耳障りだったが、歌はさすがに上手かった。

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東京公演は終了したがいずれそのうち関西でも公演があるだろう。その時は是非もう一度観たい。ただし、四季お得意のカラオケ上演でないならば。東京公演では7名のミュージシャンが舞台の上で生演奏を披露した。やっぱりミュージカルは音楽もライヴでなくちゃ!演劇が映像(コピー)では味気ないのと同じこと。是非そのことを劇団は肝に銘じて頂きたい。

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