吉朝一門会@繁昌亭
天満天神繁昌亭では初めて開催された、故・桂 吉朝一門会を聴いた。弟子七人が勢ぞろい。若手の人気噺家が多いだけに女性客が七割以上という、落語会では珍しい光景だった。補助席、立ち見も出てその殆どが女性。
- あさ吉/書割盗人
- 吉弥/ふぐ鍋
- 吉坊/七度狐
- よね吉/青菜
- 吉の丞/がまの油
- 全員/長唄「五郎」
冒頭、いきなり筆頭弟子のあさ吉さんが登場したのには驚いた。「トリは嫌だ、前座でいい」と言い、こういう順番になった模様。そごう劇場で開催された落語会の後、南光さんとどちらが美味しいふぐ鍋を作るか競争したことをマクラに。南光さんは最後の雑炊に白子を入れ、カルボナーラ風味に。でもネタは「ふぐ鍋」ではなく何故か「書割盗人」??あさ吉さんらしい、ゆる〜い雰囲気がいい感じ。
二番弟子の吉弥さんは前を受け、「それじゃ、僕が『ふぐ鍋』をします」と言って出てきたそう。それに対しあさ吉さん、「いいパスで繋いだだろ?」と。調子よく明るい高座が展開された。
次に吉坊さんが登場する前、吉弥さんが見台と膝隠しを持って再登場。高座に設置して、座布団をひっくり返し位置のズレがないか入念にチェック。「よしっ」と手を打って退場。各席から笑いが漏れる。
兄弟子に準備をして貰い「やりにくいですね」と吉坊さん。「七度狐」は「摑んだ狐の尾をぐっと引っ張ったら……」で退場。お囃子が流れ、交代で直ちに登場したしん吉さん。サゲ「畑の大根抜いとった」の一言だけで、袖から「中入り!」の声と共に幕。
中入り後トップバッターのよね吉さん(三番弟子)、「もう時効でしょう」と、出演したNHK朝の連ドラ「ちりとてちん」秘話から。時代設定を考えヘアメイクさんからギバちゃん(柳葉敏郎)ヘアと、もみ上げのテクノカットを要求され、本職の落語があるからと断固拒否したそう。するとメイクさんとの関係が悪化、高座で汗をかいても他の役者さん、例えば貫地谷しほりとは違って誰も汗を拭きに来てくれなかったとか。遂に見かねたカメラマンが「よね吉さんの汗、何とかしてあげて下さい!」と叫んだそう。本題「青菜」は最初に日本家屋についての丁寧な描写があり、それが効いて非常に涼感のある高座となった。
サゲの手前でお囃子が流れ交代で出てきたのがしん吉さん。またまた「べ、…弁慶」の一言で下がる。
続いて登場した吉の丞さん、「(吉朝最後の弟子の)僕がトリなんていじめですよ!最初よね吉兄さんは長唄の出番があるから『今日は落語はちょっと』とか言っていたんですよ。それが延々35分。もたれ(トリの一つ前の出番)は15分までやろ!」と袖を向いて怒る(後で吉弥さんからも「よね吉独演会かいな」と突っ込みが入る)。気を取り直した吉の丞さん、「ドキュメントざこば」(←吉弥命名)を披露。酔っ払った桂ざこばさんが言う無茶苦茶に客席は大笑い。
こうして無理矢理七人が高座に上がった後、長唄「五郎」は三味線:吉坊+大川貴子、謡:よね吉、笛:あさ吉、鼓:吉弥、太鼓:しん吉、立方(たちかた=舞):佐ん吉、後見:吉之丞が担当。13分ばかり。いやぁ、皆さん多芸で驚いた。特に佐ん吉くんの所作の美しさには惚れ惚れした。一門でこんな事が出来るなんてすごい!これで前売り2,000円(発売日10分で完売)は安すぎる。とっても愉しくて、お腹いっぱいの会でした。
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