大阪市音楽団/第1回 さわやかウインド・コンサート
日曜の昼下がり、プロの吹奏楽団・大阪市音楽団の「さわやかウインド・コンサート」を聴くため大阪市立住吉区民センターに足を運ぶ。
会場は満席。キャンセル待ちのお客さんもいたようだ。
指揮は小松一彦さん。まずはスーザの「星条旗よ永遠なれ」から。カチッとしてタイト、筋肉質のマーチ。
次は真島俊夫作曲「SWEET 水都 OSAKA」。1997年「なみはや国体」の入場行進曲として大阪市から委嘱されたもの。冒頭、威勢のいいトロンボーンがミュージカル「ミュージック・マン」(メレディス・ウィルソン)の”76本のトロンボーン”を彷彿とさせる。中間部のグリッサンド(下行半音階)が中々お洒落だ。
3曲目は交響組曲「日本スケッチ」(貴志康一 作/森田一浩 編)。指揮の小松さんは貴志の伝道者としても知られている。
小松さんからのお話しもあり、「貴志の曲を紹介する際に《大正デモクラシー、大正モダニズムから学ぼう!》を標語に掲げているのです」と。
大阪・船場生まれの貴志の音楽には凛としたロマンチシズムがある。「日本スケッチ」は4つに分かれている(I. 市場 II. 夜曲 III. 面 IV. 祭り)。「夜曲」は物憂い叙情に包まれ、変拍子が面白い「面」はひょっとこ面で始まり、穏やかな中間部では能面が描写される。諧謔性(=おどけたユーモア)に富む。そして小松さんがブラジルで演奏した時に大変受けたという「祭り」からは生命の鼓動が聴こえる。曲の魅力を十分引き出した文句なしのパフォーマンスであった。
休憩を挟み、プログラム後半は吹奏楽のための交響的ファンタジー「ハウルの動く城」(久石譲/後藤洋 編)から。これは2005年、石川県能美市立根上中学校吹奏楽部の全日本吹奏楽コンクール自由曲として編曲されたもの(北陸支部大会金賞)。様々な楽器にソロがあり、久石さんが書いた魔法の音楽を堪能。ウィンド・マシーンも登場して愉しい。森田一浩さんによる「ラピュタ」~キャッスル・イン・ザ・スカイに匹敵する名アレンジだと想ったが、ただ最後の「人生のメリーゴーランド」が短いことに不満が残った。こちらは小島里美編曲バージョンに軍配が上がる。
そしてジュピター賛歌。これはホルスト/組曲「惑星」~木星の中間部のみをヨハン・デ・メイが編曲したもの。デ・メイは「指輪物語」など作曲家としては素晴らしいと想うのだが、アレンジャーとしての才能に僕は以前から疑いの目を持っていた。だって「キャッツ」とか「オペラ座の怪人」とかのデ・メイ編曲版、冗長で詰まらないんだもん。そしてこのジュピター賛歌、一言で言えば「それだけかよ!!」
ハーモニーが美しい「ロンドンデリーの歌」(パーシー・グレインジャー編)を経て、プログラム最後は歌劇「トゥーランドット」より(プッチーニ/後藤洋 編)。小松さんから「プッチーニの魅力は旋律の揺れにあります。ジェットコースターの動きを連想して下さい」とのお話があった。これは大滝実/埼玉栄高等学校が2006年に全日本吹奏楽コンクールで演奏し一世を風靡したものだが、その短縮版ではなく演奏会用ロング・バージョン。卓越したアレンジで一分の隙もない。荘重で荒々しい演奏。もう少しイタリア・オペラらしいカンタービレが欲しいかなという気もしたが、まあそれが小松さんの資質なのだろう。
アンコールは喜歌劇「メリー・ウィドウ」から”ヴィリアの歌”(レハール/A.リード 編)、そして行進曲「秋空に」(上岡洋一)。
看板に偽りなし、実に爽やかな演奏会であった。
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