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2009年9月 9日 (水)

ブロードウェイ・ミュージカル「コーラスライン」来日公演

ミュージカル「コーラスライン」の22年ぶりとなるジャパン・ツアー公演を兵庫県立芸術文化センターで鑑賞。日本語字幕付き。

Ch02

終演後、客席から聞こえたのは「やっぱり劇団四季の『コーラスライン』より断然良かったね」という声。その通りだなと想った。ちなみに僕が四季の「コーラスライン」を観たのは今までに3回。初体験はリチャード・アッテンボロー監督の映画版(1985)が公開されるより前のことである。

Ch03

数あるブロードウェイ・ミュージカルの中でも「ウエストサイド物語」「コーラスライン」「RENT」は日本人キャストのみで演じることがきわめて難しい作品だと想う。

例えば「ウエストサイド物語」。これはイタリア系移民のジェット団と、プエルトリコからの移民であるシャーク団との対立の物語である。この両者を日本人キャストが演じてもどうしても雰囲気が出ない。片方の肌をメイクで濃い目にしたところで、違いが鮮明に分からないのである(宝塚版・四季版どちらもそうだった)。

同じことが「コーラスライン」や「RENT」にも言える。登場人物に白人もいれば黒人(アフリカ系アメリカ人)もいて、中国系、ヒスパニック(プエルトリコ人etc.)、さらにストレートともいればゲイもいる。様々なバックグラウンドを持った人々が集まってこそ、作品が内包する心の痛み、人間関係の軋みが客席まで届くのである。そういう意味において、今回の来日公演を観て初めて「コーラスライン」の真価が理解できた気がした。役者たちの歌唱力、ダンス力も申し分ない。特に圧倒的ダンス力を求められるのが演出家ザックの元恋人・キャシーである。1975年初演時にキャシーを演じたドナ・マッケニーはトニー賞でミュージカル主演女優賞を受賞している。それくらいのオーラがなければこの役を演じる資格はない。

Ch04

2006年から始まったブロードウェイ・リバイバル公演については、素晴らしいドキュメンタリー映画が昨年公開されたばかりである。

初演前に演出家のマイケル・ベネットが役者たちを集めてワークショップをする音声が残っているのには驚いた。彼らの生の声が作品に反映されている。そしてコニーのオリジナル・キャストであるバイオーク・リーがリバイバル版で振り付けを担当。そのコニー役を最終的に勝ち取るのは沖縄出身の高良結香である。欲を言えば今回の来日公演、その高良さんのコニーで観たかった!調べてみると「コーラスライン」と同時期に、高良さんは「RENT」ジャパン・ツアーのメンバーとして来日していたようである。

Ch05

「キリン一番搾り生ビール」のCMでもお馴染み"One"をはじめ、マーヴィン・ハムリッシュが作曲したナンバーはどれも素晴らしい。ただ今回観劇して1985年映画版が決定的に駄目だと想ったのは、あの名曲"What I Did for Love" (愛した日々に悔いはない)をキャシーひとりに歌わせたことである。これではまるで「ザックを愛したこと」についての個人的独白のようになってしまう。そうではないのだ。「踊りを、そしてミュージカルを愛したことは(たとえスポットライトを浴びるチャンスが永遠に来なくても)決して後悔しない」という、ダンサーたちの意志がこの歌詞には込められている。だから舞台版のように全員で歌わなければ意味がない。

Ch01   

休憩なしの2時間、本当に充実して胸が熱くなるひとときであった。

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コメント

確かにコーラスラインは、日本人キャストでは難しいですよね。
最初、出身地を日本各地に置き換えて上演することも考えたとか。
ブロードウェイでロングラン中に何度か見ましたが、オープニングでライトが点灯した時に、「あ、いろんな肌の色の人がいる!」。
劇団四季版しか見たことのない私には軽いショックでした。そしてそれが当たり前だったんですね。

あとは「ミスサイゴン」でも同じことは感じました。

投稿: ぽんぽこやま | 2009年10月11日 (日) 03時19分

「ミスサイゴン」はアジアの話なので日本人キャストに僕は違和感ありませんでした。特に市村正親さんが演じたエンジニアはオリジナル・キャストのジョナサン・プライスに匹敵するんじゃないでしょうか?

投稿: 雅哉 | 2009年10月11日 (日) 19時07分

市村さんのエンジニアは踊れるだけあって、プライスよりよかったかもしれません。

「ミスサイゴン」はほとんどアジアが舞台なのですが、クリス・エレン・ジョンといった役が微妙でした。実際米兵役を演じた俳優さんたちが見かけだけでも、と髪を染めようとしたらダメだといわれたそうで、「自衛隊みたい」と言っていたそうです。

キムとジョンの結婚パーティあたり、アジア人の中にひとりだけ西洋人がいるという構図あたりはやはり見た目が面白かったですね。

話は「コーラスライン」に戻りますが、Youtubeで四季版「コーラスライン」のCMが見られるんです。アメリカ人のコメントに「ここじゃ、コニーが中国人という設定はどうやってるのかしら?」とありました、なんとも答えようのないコメントでしたね。

投稿: ぽんぽこやま | 2009年10月12日 (月) 14時16分

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