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2009年9月14日 (月)

枝光・雀々二人会@繁昌亭

天満天神繁昌亭での二人会。桂 枝光(文枝の弟子) vs. 桂 雀々(枝雀の弟子)。

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  • 二乗/普請ほめ
  • 枝光/紙入れ
  • 雀々/くっしゃみ講釈
  • 雀々/さくらんぼ
  • 枝光/ねずみ

枝光さんのネタはどちらも江戸落語。「紙入れ」は艶っぽい語り口でさすがの巧さ。

初代文枝(1819-1874)のエピソードも興味深かった。前座噺の「三十石」を大ネタに仕立て上げた人である。借金で困っていた文枝はこの噺を百両で質入れし、その間は高座に掛けなかったという。見かねた贔屓客が百両出して質受けしたという伝説が残っているそう。なんとも粋な話だ。

さくらんぼ」は珍品。さくらんぼの種を飲み込んだ男の頭から桜の木が生えてくるという、けったいな噺だった。雀々さんによると、上方落語を代表するネタは六十くらいしかなく、それを現役の噺家たちが取り合いしているのが現状。他の噺を虫干しのために高座に掛ける人もいるが、基本的にそういうのは「おもろないんです」と。「2階席は諦めて下さい。前3列のお客さんだけを相手に話します」それでも様々な創意工夫があり、奇想天外でたいそう愉しめた。

雀々さんは上方落語協会に所属していないので繁昌亭昼席に出られないという話から「一年ぶりですが、やっぱりここはいい小屋ですね」そして桂ざこばさんの寄席小屋《動楽亭》の話題へ。「席亭が席亭ですからあそこ(新世界=ジャンジャン横丁界隈)はアウトローな街です。平日の昼間っから人が沢山いる。地べたに寝ている人もいる」昔はそれぞれの街に寄席小屋があったらしいという話を経て「くっしゃみ講釈」へ。変幻自在のリズム感、後半の畳み掛けるような迫力。凄みさえ感じさせる高座だった。枝光さんによると生前、文枝は稽古に来た雀々さんについて「落語のために生まれてきたような男だ」と褒めていたそう。

「お日ぃさんがカーツ!!」っという師匠が得意とした体全体で表現するジェスチャーも登場。雀々さんはそこで「懐かしい、枝雀さん」とポツリ。噺の半ばくらいで僕の座席の右側から「枝雀さんそっくり」という感嘆の声が聞こえる。そして後半、講釈師がノッて喋るところで今度は左の方から「枝雀…」という呟き声が。正にその時、黄泉の国から枝雀さんが繁昌亭に降りてきて、雀々さんの横でニコニコ愉しそうに聴いているのを僕は幻視したのである。そんな奇跡の夜だった。

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