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2009年9月

2009年9月28日 (月)

大阪市音楽団/第1回 さわやかウインド・コンサート

日曜の昼下がり、プロの吹奏楽団・大阪市音楽団の「さわやかウインド・コンサート」を聴くため大阪市立住吉区民センターに足を運ぶ。

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会場は満席。キャンセル待ちのお客さんもいたようだ。

指揮は小松一彦さん。まずはスーザ「星条旗よ永遠なれ」から。カチッとしてタイト、筋肉質のマーチ。

次は真島俊夫作曲「SWEET 水都 OSAKA」。1997年「なみはや国体」の入場行進曲として大阪市から委嘱されたもの。冒頭、威勢のいいトロンボーンがミュージカル「ミュージック・マン」(メレディス・ウィルソン)の”76本のトロンボーン”を彷彿とさせる。中間部のグリッサンド(下行半音階)が中々お洒落だ。

3曲目は交響組曲「日本スケッチ」貴志康一 作/森田一浩 編)。指揮の小松さんは貴志の伝道者としても知られている。

小松さんからのお話しもあり、「貴志の曲を紹介する際に《大正デモクラシー、大正モダニズムから学ぼう!》を標語に掲げているのです」と。

大阪・船場生まれの貴志の音楽には凛としたロマンチシズムがある。「日本スケッチ」は4つに分かれている(I. 市場 II. 夜曲 III. 面 IV. 祭り)。「夜曲」は物憂い叙情に包まれ、変拍子が面白い「」はひょっとこ面で始まり、穏やかな中間部では能面が描写される。諧謔性(=おどけたユーモア)に富む。そして小松さんがブラジルで演奏した時に大変受けたという「祭り」からは生命の鼓動が聴こえる。曲の魅力を十分引き出した文句なしのパフォーマンスであった。

休憩を挟み、プログラム後半は吹奏楽のための交響的ファンタジー「ハウルの動く城」久石譲/後藤洋 編)から。これは2005年、石川県能美市立根上中学校吹奏楽部の全日本吹奏楽コンクール自由曲として編曲されたもの(北陸支部大会金賞)。様々な楽器にソロがあり、久石さんが書いた魔法の音楽を堪能。ウィンド・マシーンも登場して愉しい。森田一浩さんによる「ラピュタ」~キャッスル・イン・ザ・スカイに匹敵する名アレンジだと想ったが、ただ最後の「人生のメリーゴーランド」が短いことに不満が残った。こちらは小島里美編曲バージョンに軍配が上がる。

そしてジュピター賛歌。これはホルスト/組曲「惑星」~木星中間部のみヨハン・デ・メイが編曲したもの。デ・メイは「指輪物語」など作曲家としては素晴らしいと想うのだが、アレンジャーとしての才能に僕は以前から疑いの目を持っていた。だって「キャッツ」とか「オペラ座の怪人」とかのデ・メイ編曲版、冗長で詰まらないんだもん。そしてこのジュピター賛歌、一言で言えば「それだけかよ!!」

ハーモニーが美しい「ロンドンデリーの歌」パーシー・グレインジャー編)を経て、プログラム最後は歌劇「トゥーランドット」よりプッチーニ/後藤洋 編)。小松さんから「プッチーニの魅力は旋律の揺れにあります。ジェットコースターの動きを連想して下さい」とのお話があった。これは大滝実/埼玉栄高等学校が2006年に全日本吹奏楽コンクールで演奏し一世を風靡したものだが、その短縮版ではなく演奏会用ロング・バージョン。卓越したアレンジで一分の隙もない。荘重で荒々しい演奏。もう少しイタリア・オペラらしいカンタービレが欲しいかなという気もしたが、まあそれが小松さんの資質なのだろう。

アンコールは喜歌劇「メリー・ウィドウ」から”ヴィリアの歌”レハール/A.リード 編)、そして行進曲「秋空に」上岡洋一)。

看板に偽りなし、実に爽やかな演奏会であった。

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2009年9月27日 (日)

三度(みたび)吹奏楽の甲子園、普門館へ!

”吹奏楽の甲子園”と呼ばれる東京・普門館。

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そこに今年も全日本吹奏楽コンクール/高校の部を聴きに往くこととなった。 前半・後半の部、各々チケットをなんとか確保。発売開始10分の時点でチェックすると、既に完売していた。

今年の目玉は何と言っても藤重佳久/精華女子高等学校「華麗なる舞曲」(C.T.スミス)。昨年、同じ作曲家の「フェスティバル・ヴァリエーションズ」で普門館が興奮の坩堝と化したあの奇跡が再現されるのか?そして誰しもが期待しているのは最早伝説となった名演、宮本輝紀/洛南高等学校吹奏楽部の「華麗なる舞曲」(1992年全国大会)を遂に精華が超えるのか?ということ。

「ミス・サイゴン」(2002)「カヴァレリア・ルスティカーナ」(2007)などで一世を風靡し、21世紀の伝説を数々生み出してきた大滝実/埼玉栄高等学校が今年どんな演奏を聴かせてくれるのかも聴き逃せない。自由曲は「ポカホンタス〜アメリカン・プリンセスの伝説〜」(A.メンケン/宍倉 晃)。ポカホンタス、いいよねぇ。アカデミー主題歌賞を受賞した“カラー・オブ・ザ・ウィンド”は最高に美しい!大滝先生の神髄は歌心。今度はどんな歌を聴かせてくれるのだろう?

宇畑知樹/伊奈学園総合高等学校が挑戦する交響曲第1番「巨人」より第4楽章(G.マーラー/森田一浩)も愉しみ。吹奏楽でマーラー??弦なしで成立しうるのか。う〜ん、イメージ出来ない。是非こちらの予想を裏切って下さい。

石田修一/柏市立柏高等学校の自由曲は清水大輔さんの新曲「マン・オン・ザ・ムーン」。僕はいつも風変わりな曲で勝負する石田先生のチャレンジ精神が大好きだ。ただ今年の市柏、出演順がトップ=朝イチなんだよね。これが絶対的に不利な順番であるということは過去のデータが証明している。全日本吹奏楽コンクールここ20年間の成績を調べてみると、朝イチの出番で金賞を受賞したのはたった2校。確率たった1割である。習志野も、東海第四も、そしてあの丸谷明夫先生率いる淀工でさえ、この順番で出場した時は銀賞だった。つまり審査員が最初に記入する採点表は、比較対象がないので辛めになるということなのだろう。市柏の生徒の皆さんが、このハンディを乗り越えられることを心から期待しています。

後半の部で焦点となるのは、まだ創部3年目の原田学園鹿児島情報高等学校吹奏楽部が、遂に全国大会金賞に輝くのか?ということだろう。屋比久勲先生の手腕に注目だ。ちなみに屋比久先生が去った、福岡工業大学附属城東高等学校は今年、九州支部代表に選ばれなかった。

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2009年9月26日 (土)

延原武春/大阪フィルハーモニー交響楽団の3B!

兵庫県立芸術文化センター・大ホールで延原武春/大阪フィルハーモニー交響楽団の初共演となるコンサートを聴いた。延原さんはバロック音楽を主なレパートリーとする日本テレマン協会の代表で、昨年クラシカル楽器(古楽器)によるベートーヴェン・チクルスを敢行し、ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を授けられた。

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プログラムはドイツ3Bで固められ、曲の合間に延原さんのお話もあった。

  • J.S.バッハ/管弦楽組曲 第3番
  • ベートーヴェン/交響曲 第1番
  • ブラームス/交響曲 第1番

結論から言えば、バッハからブラームスへ時代と共に編成の大きさ、配置、奏法を変化させながら、その中に一貫した流れ(=”ドイツの伝統”と呼んでも良い)を感じさせる、目の覚めるような素晴らしい演奏会だった。

バッハでは1st Vn-2nd Vn-Va-Vc-Cbの順に6-6-5-3-3、ベートーヴェンは10-10-8-6-5、ブラームスは12-12-8-8-7という編成(延原さん曰く、「普段バッハはもっと小編成でするのですが、今回はホールが広いので増やしました」)。

弦楽器の配置はバッハが宮廷楽長を務めたケーテン時代を模したものだそうで、舞台に向かって左→右へ高音部から低音に順番に並び、バロック・ティンパニが第1ヴァイオリン(1st Vn.)の直ぐ後ろ、つまり客席に一番近い位置に置かれた。ベートーヴェンでは左→右へ1st Vn-Vc-Va-2nd Vnという古典的対向配置(ヴァイオリンが指揮台をはさんで向かい合う)でコントラバス(Cb)がチェロ(Vc)の後ろ、バロック・ティンパニがヴィオラ(Va)の後ろに配された。ブラームスは1st Vn-Va-Vc-2nd Vnの順でコントラバスはチェロの後ろ、(モダン)ティンパニは後方中央にでんと構えるといった具合。なお、第1、2楽章に出番のないトロンボーン奏者は第3楽章から登場した。

バッハベートーヴェンはノリントン/シュトゥットガルト放送交響楽団のように完全なノン・ヴィブラート=pure toneという訳にはいかないけれど、かなりヴィブラートを抑制した奏法で、バロック・ティンパニとの相乗効果もあって非常に古楽器的、端正で引き締まった響きがした。

躍動するリズム感。音尻はスッと減衰し、水捌けがいい。バッハはこの曲が本来、舞曲であることを再認識させられた。僕はアカデミー作品賞を受賞した映画「恋に落ちたシェイクスピア」の舞踏会シーンを想い出しながら愉しんだ。続くベートーヴェンは「作曲家がスコアに書いたメトロノームによる速度表記を遵守して演奏します」と延原さん。今まで大フィルで聴いた中でも最高のベートーヴェンであった。

そして休憩を挟み、瑞々しく魚がぴちぴち飛び跳ねるようなブラームス。生き生きとした息遣いがあり、しなやかに音楽が弾ける。こちらは聴き慣れたモダン奏法で、恒常的ヴィブラート(continuous vibrato)による演奏。

ブラームスはバッハの「マタイ受難曲」を指揮したことがあるそうで、交響曲第1番のティンパニの連打から始まる8分の9拍子の序奏は「マタイ」冒頭部、8分の12拍子のコラールから影響を受けているのではないかという説を延原さんは紹介された。また終楽章でアルペン・ホルンにより提示される主題はブラームスがクララ・シューマンに書き送ったバースデー・カードにそのメロディが記されていると、(音楽ジャーナリスト)寺西 肇さんがプログラムノートに解説されている。帰宅して調べてみると、カードには「高い山から、深い谷から、君に何千回も挨拶しよう」という歌詞も添えられているらしい。

成る程、このシンフォニーは《運命との葛藤から勝利へ》というベートーヴェンの生み出した近代的構築性で成立しており、第4楽章に弦楽合奏で奏でられる第1主題は明らかに「歓喜の歌」(第九)との関連がある。さらに「田園」交響曲の終楽章を彷彿とさせる箇所も散見される。しかしその中に、バッハに対する畏敬の念とか、クララへの憧憬も密やかに籠められていたのだという事実に初めて気付かされた。これは大きな収穫であった。

僕は第4楽章でアルペン・ホルンの響きを聴く度に、目の前のもやもやした霧が晴れていき実に清々しい気分になるのだけれど、それは一体何故なのか?と長年不思議に感じていた。しかし、それが今回ストンと腑に落ちたのである。

また第2楽章で日本初演となる初稿(初演の1年後に改訂され出版)が採用されたのも興味深かった。構成が全然違う!次にこの旋律が来るだろうという予想がことごとく外れる。でも違和感はない。

アンコールは再びバッハ/管弦楽組曲 第3番から「G線上のアリア」。しかしプログラム前半のように速いテンポによる古楽器的ですっきりした解釈ではなく、ヴィブラートをたっぷり掛け、ゆったりとタメを効かせたモダン演奏。その両者の対比もすこぶる面白かった。

 関連ブログ紹介:
 ・ burleskeのクラシックブログ(同じ演奏会を聴かれた感想)

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2009年9月25日 (金)

旅の終わりに/小岩井農場

旅の最終日、秋田から岩手県の小岩井農場に足を伸ばした。

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新鮮な牛乳やヨーグルト、アイスクリームなどに舌鼓を打つ。

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有名な一本桜。花をつけた姿はこちら。遠く岩手山が雲に覆われていたのが些か残念だった。ここを訪れたときの感動を宮沢賢治は「春と修羅」に収められた「小岩井農場」という詩に綴っている。

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2009年9月24日 (木)

乳頭温泉/鶴の湯

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秋田といえばここ、秘湯の中の秘湯である。

乳白色の泉質、囲炉裏での夕飯、ランプの宿。気持ちいぃ〜!

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秋田の旅/ 四日目

秋田の旅/<br />
 四日目
玉川温泉・自然研究路。

ここはさながら地獄の光景。

強酸性の湯、噴出する硫黄の臭いが凄まじい。

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2009年9月23日 (水)

男鹿温泉郷/ 雄山閣

男鹿温泉郷/<br />
 雄山閣
三日目の宿、なまはげの露天風呂。間欠的に勢いよく噴出する温泉にびっくり!

宿に着く前に立ち寄った、なまはげ館も面白かった。実演があったり、様々なお面が陳列されていたり。風土とか、伝統の継承とかいったことを考えさせられた。

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夜は創作和太鼓「なまはげ郷神楽」を鑑賞。パワフルで熱いステージに痺れた。

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秋田の旅/ 三日目

秋田の旅/<br />
 三日目
八望台の秋桜畑から日本海を見下ろす。

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山を渡る風が心地よい。

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2009年9月22日 (火)

強首温泉/樅峰苑

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二日目に泊まった、日本秘湯を守る会の宿。

強首温泉/<br />
 樅峰苑

温泉の含む鉄分と、檜風呂の薫りが渾然一体となり、何とも言えない味がある。

夕飯に出た、川がにの味噌に熱燗の酒を注いで飲む、あの美味さ!絶品であった。

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秋田の旅/ 二日目

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廃校となった小学校、「潟分校」にて。

秋田の旅/<br />
 二日目

昭和の風景。どこか懐かしい。

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2009年9月21日 (月)

夏瀬温泉「都わすれ」

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一日目の宿。都会の喧騒を離れ、身心共に癒される。

夏瀬温泉「都わすれ」

夜の星がいっぱい。その存在さえ、すっかり忘れていた自分に気付く。

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秋田の旅/ 一日目

秋田の旅/<br />
 一日目
いま、秋田に来ている。

角館で、「となりのトトロ」等スタジオジブリの背景画を担当されてきた男鹿和雄さんの美術展を鑑賞。ここ地元のご出身だそうだ。

幼い頃の想い出がいっぱい詰まった、素敵な作品群だった。

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2009年9月20日 (日)

NEC古楽レクチャー/バッハからブラームスへ~延原武春、大フィルとの初共演を大いに語る

大阪倶楽部で開催されたNEC古楽レクチャーを聴く。

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講師は日本テレマン協会代表で、日本で初の試みとなる古楽器によるベートーヴェン・チクルスを成功させた延原武春さんと、音楽評論家でバロック・ヴァイオリン奏者でもある寺西 肇さん。タイトルが「時系列に見るドイツ音楽解釈 ~原点的アプローチと3B~」

会場にはチェンバロとフォルテピアノ(モーツァルトの時代に相当)が置かれ、高田泰治さんの演奏を交えて講演が行われた。

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演奏された曲目は、

  • J.S.バッハ/半音階的幻想曲とフーガ(両楽器の弾き比べあり)
  • ハイドン/ピアノ・ソナタ

レクチャーの方は、まずメンゲンベルクが1939年にアムステルダムで指揮した「マタイ受難曲」のCDが掛けられる。ナチス・ドイツがオランダを侵略する直前の録音で、冒頭から聴衆の啜り泣きが聞こえると噂される伝説的演奏。とにかく現在では考えられないくらいテンポが遅い!

そしてリヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団が1958年に録音した「マタイ」の歴史的名盤。これを生で聴いた延原さんの感想、「良かったけれど、長かった」リヒターは大バッハが生前カントル(音楽監督)を務めていたライプツィヒ聖トーマス教会のオルガニストだったが、ドイツが東西に分裂。社会主義統一党の支配に反発した彼はカントル就任要請を断り、西ドイツ(ミュンヘン)に活動の本拠を移したことが解説された。

続いてヨゼフ・メルティン/ウィーン室内管弦楽団のメンバーが演奏する「ブランデンブルク協奏曲」1950年の録音。なんとニコラウス・アーノンクールがチェロを、グスタフ・レオンハルト(チェンバロ奏者)がヴィオラ・ダ・ガンバを演奏している。まだモダン楽器による、穏やかな演奏である。

次にアーノンクールが50年後の2000年に、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス録音した古楽器による「マタイ受難曲」が流れる。テンポがメンゲンベルクの2倍くらい速く、弾むようにリズミカル。延原さんから「横の流れ(旋律)を重視するバッハ→低音からの縦系(リズム)を大切にするスタイルへの転換」というお話があった。

最後はアメリカの音楽学者ジョシュア・リフキンが、One Voice Per Part (各声楽パートを1人ずつで歌う)を提唱しそれを実践したジョン・バット指揮ダンディン・コンソート&プレーヤーズの「マタイ受難曲」 (2007年録音)が紹介された。「今の古楽は何でもあり」「チャレンジ精神でどんどんする」「一番大切なのはリーダーの方向性」という会話が交わされる。延原さんは「バッハの生きた時代、確かにOne Voice Per Partという方式で歌われたこともあるでしょうが、そればかりじゃないでしょう。僕は合唱による厚みのある響きの方が好き」と言えば、寺西さんが「そうですか、僕はこのやり方も嫌いじゃないんです。ごめんなさい」と応酬する場面もあった。

休憩を挟んでレクチャー後半は延原/日本テレマン協会がバロック音楽に取り組んできた歩みについて振り返られた。ロンドンにおけるエリオット・ガーディナーとの出会い、1983年アンナー・ビルスマ(バロック・チェリスト)との共演。古楽器演奏に取り組もうとしていた時期、クリストファー・ホグウッドからバロック・ヴァイオリンの名手サイモン・スタンデイジを紹介されたこと(1987年頃)。当初、テレマン協会内でも古楽派(A=ラの音=415Hz)とモダン派(A=440Hz)に別れていて、絶対音感を身についている奏者は半音低いバロック楽器の調弦に耐えられず、辞めていったこと等々。

クラシカル楽器によるベートーヴェンの演奏は本当は避けたかった。何故なら弦楽器はともかく、管楽器の演奏が極めて難しいから。しかし次第に気が変わってきたのはオリジナル楽器は弦と管の音が良く溶け込みバランスが良いから。モダン楽器は管が鳴りすぎる、と延原さん。

寺西さんは「スタンデイジから言われたことは『ベートーヴェンでは先弓を使いなさい』と。バロック・ボウで弓の先を使うと折れてしまう。あるいは力が伝わらないので音にムラが出来る。しかしベートーヴェンの頃からは弓が長くなり重心が中心に移動、音が平均化して鳴るようになりました」

ロジャー・ノリントンの話も登場。古楽器オーケストラであるロンドン・クラシカル・プレイヤーズを指揮していた当初、彼は"rare vibrato"(控えめのヴィブラート)と言っていたのに、いつの間にかその主張が"non-vibrato"(ヴィブラートの排除=ピュア・トーン)に変っていったこと、最近は活動の拠点をモダン・オーケストラに移行し、"non-vibrato"をドヴォルザーク、チャイコフスキー、ブルックナー、マーラーの時代にまで広げ、実践している。保守的なドイツにおいて、シュトゥットガルト放送交響楽団が彼を主席指揮者として迎え入れた事は画期的事件であったことなどが語られた。

そして9月25日に兵庫芸文で延原さんが大阪フィルハーモニー交響楽団と初共演し、ブラームス/交響曲第1番に挑戦することに話題が移る。寺西さんからブラームスの部屋にはクラヴィコードがあったという事実が紹介され、後から付け加えられた第1楽章の序奏にはバッハ、特に「マタイ受難曲」への想いがあったのではないかと指摘される。「”古楽で何かやってきた人”=延原さんが、大フィルを振るというのはエポック・メイキングなこと。今回、第2楽章では初稿の楽譜が使用されますが、これは恐らく日本初演の筈です」

延原さんによるとコンサートマスターは日本フィルハーモニー交響楽団の木野雅之さんが務められるとのこと。バッハ、ベートーヴェン、ブラームスで各々配置と編成を替える予定で、ボウイングなど色々書き込みをした楽譜を既に大フィル側に送っているそうだ。3日間のリハーサルで奏法を徹底することは不可能なので「ヴィブラートは少なめが希望なのですが、もう好きなようにして下さいと言ってあります」「ブラームスのシンフォニーに込められたバッハへの憧れ、シューマン夫妻への想いを大切にしたい」と締めくくられた。

なかなか面白い演奏会になりそうである。当日は大フィル弦楽奏者の左手(ヴィブラート)に注目!

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2009年9月19日 (土)

映画「クララ・シューマン 愛の協奏曲」 ~ブラームスをめぐって

評価:B-

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原題は"Geliebte Clara"、「愛しの人、クララ」といったところだろうか。テアトル梅田にて鑑賞(大阪は単館上映)。公式サイトはこちら

大作曲家ロベルト・シューマンの妻で、名ピアニストでもあったクララを主人公に、ヨハネス・ブラームスとの交流を絡めて描く音楽映画。ドイツ・フランス・ハンガリーの合作。監督・脚本はヘルマ・サンダース=ブラームス(女性)。名前から分かる通り、ブラームス家の末裔である。シナリオ作りにあたり様々な資料を読み、ロベルトとクララのひ孫にも取材したという。

ヨハネス・ブラームスを演じる役者(マリック・ジディ)がイイ男過ぎるのではないかとか、ヨハネスとクララの関係を美化しているのではないかとか、突っ込み所は色々ある。しかしそれはまあ、ご愛嬌。ブラームスは逆立ち歩きが得意だとか、シューマンがアヘン中毒だったとか、交響曲 第3番「ライン」初演時に幻聴に悩んでいたロベルトに代わりクララがリハーサルで指揮、本番でもふたりが二人羽織のようにして指揮するエピソードなど初めて知ることが多く、すこぶる面白い。クラシック音楽(浪漫派)ファンなら必見。

ロベルトがデュッセルドルフの音楽監督に招聘された1950年(その翌年に「ライン」初演)を軸に物語は展開する。ブラームスがシューマン家を訪れるのが1953年。この時、彼は20歳。クララ・シューマンは34歳だった。実際にクララが相当な美人であったことを予備知識として知っておくと、映画をさらに一層愉しめるだろう。

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これが結婚当時の肖像画。クララの父フリードリヒ・ヴィークは娘に対する独占欲が強く、ロベルトとの交際を禁止、クララのコンサートでふたりを中傷するビラを配ったりして激しい妨害工作を行った。結局クララとロベルトはフリードリヒを相手取って裁判を起こし、勝訴する(このエピソードは映画には出てこない)。

Schumann

上の写真が1950年に撮影されたロベルトとクララ・シューマン。

映画はクララが演奏するシューマン/ピアノ協奏曲(1846年初演)を若き日のブラームスが聴いているところから始まり、ロベルトの死後、今度はクララがブラームス/ピアノ協奏曲 第1番(1859年初演)を弾いているのを目に薄っすら涙を浮かべながら聴いているブラームスの姿で幕を閉じる。

ブラームスは生涯独身を通した。僕は本作を観ながら、彼の音楽が(20年掛けて作曲した交響曲 第1番を唯一の例外として)常に憂愁と諦念に彩られているのは、ブラームスが(決して結ばれることはない)クララを愛し続けたことに理由があるのではないかという気が、ふとした。

全体として映画の出来は良いが、時代考証に一部疑問を感じた。まずオーケストラのチェロ全てにエンドピンが付いていたこと。バロック・チェリスト鈴木秀美さんの著書によると、エンドピンが一般化するのは19世紀末とのこと。また、オケの弦楽奏者たちが恒常的ヴィブラート(continuous vibrato)を掛けて演奏しているのも明らかにおかしい。ヴァイオリンにおけるヴィブラート技法を確立したのはイザイ(1858-1931)であると言われており、ロベルト・シューマン(1810-1856)の時代よりも後である。

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2009年9月18日 (金)

東欧の響き/大阪フィルハーモニー交響楽団 定期

大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会を聴く。客演指揮者はヤクブ・フルシャ、1981年チェコ生まれ。まだ20代である。

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曲目は、

  • スーク/組曲「おとぎ話」
  • アルチュニアン/トランペット協奏曲
  • ドヴォルザーク/交響曲 第7番

チェコの作曲家ドヴォルザークスーク(ドヴォルザークの娘と結婚。名ヴァイオリニスト、ヨゼフ・スークの祖父)に挟まれて、アルメニアのアルチュニアンが演奏されるという構成。

スークは非常に分かりやすく、大人のメルヘンを感じさせる佳作。ポルカはボヘミアの民族色が濃い。やっぱりこういう毛色の変わった《未知との遭遇》は愉しい。

フルシャの指揮は明晰で、手綱を引き締めるべきところはきりりと締め、歌うべきところはしっかりと歌わせる。ドヴォルザークも勢いと生命力に満ち溢れた、文句の付けようがないパフォーマンスだった。

アルチュニアン(1920- )はアルメニア民謡独特の節回し、野性的(ある意味粗野な)リズムの特徴が作品に反映されており、やはり同郷のハチャトゥリアンを彷彿とさせる。トランペットのために書かれた名曲中の名曲である。独奏はドイツからやって来たマティアス・ヘフス。アメリカのトランペッター(例えば元ボストン交響楽団首席トランペット奏者で映画「7月4日に生まれて」やアテネ五輪のファンファーレ"Summon the Heroes"でソロを担当したティモシー・モリソン)のように明るく輝かしい音色ではなく、もっとくすんだ、いぶし銀の響きがする。成る程、これがヨーロッパの味なのかと感心することしきり。

ヘフスのアンコールはルーマニア(ロマ)の作曲家ディニクの「ホラ・スタッカート」。オーケストラ伴奏付き。爽快なテンポでかっ飛ばし、超絶技巧を披露。聴衆を圧倒した。

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2009年9月17日 (木)

フルートの新星現る!/大阪シンフォニカー交響楽団 定期

大阪シンフォニカー交響楽団の定期演奏会に足を運んだ。指揮は大友直人さん。

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  • ヴォーン=ウィリアムズ/タリスの主題による幻想曲
  • モーツァルト/フルート協奏曲 第2番
  • エルガー/交響曲 第2番

タリスの主題による変奏曲」は透明感があり、清冽な演奏。大友さんの知的センスが光る。弦が2つに別れ、第2群の9名(1st.Vn. 2, 2nd.Vn 2, Va 2, Vc 2, Cb 1)が最後列横一列に並び、前方の第1群と対話する。真に美しい音楽である。

エルガーは第1楽章第1主題がいきなり今まで聴いたことがないくらい超高速のテンポでびっくりした。バルビローリの慈愛に満ちた表現やプレビンのソフト・タッチとは全く異なり、金管がR.シュトラウスの如く吼え、嵐のように激しいエルガー。まあそれが曲にとって相応しいかどうかは置いておいて、こんな解釈も可能なんだと目から鱗、刺激的で面白い演奏だった。

しかし今回の演奏会の白眉は何と言ってもフルート協奏曲であろう。新村理々愛、15歳、現在中学三年生。途轍もない才能である。軽やかに指が動き、縦横無尽に音符が天翔る。高音から低音までムラなく、伸びやかにホールに鳴り渡る。ノン・ヴィブラートから超高速ヴィブラートまで変幻自在、ブレス・コントロールが絶妙。2009年8月、日本フルート・コンベンション・コンクールで史上最年少優勝。現在、工藤重典さんに師事しているらしいが既に工藤さんレベルの実力を備えている(2年前の彼女が演奏する動画を発見→こちら)。

僕は今年、第7回神戸国際フルートコンクール入賞者の演奏を聴いたが(感想はこちら)、新村さんがもし出場していたならば確実に上位に食い込んでいただろう。4年後に開催されるこれか、あるいはジャン=ピエール・ランパル・フルートコンクールなど大舞台で、彼女は近い将来優勝するに違いない。

モーツァルトのカデンツァが今まで聴いたことがないものだったので驚いた。調べてみると案の定、彼女の自作らしいことが判明(→こちらのブログ記事より)。末恐ろしい少女である。

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2009年9月16日 (水)

天満天神繁昌亭 三周年特別興行

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9月15日、繁昌亭がオープンして丁度3年を迎えた。その記念興行(夜の部)に足を運ぶ。

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  • 笑福亭たま/ショート落語+動物園
  • 桂よね吉/狸賽
  • 桂九雀/どぜう丁稚(米沢彦八 原作/荻田清 脚色)
  • 露の都/天麩羅(都 作)
  • 爆笑歌舞伎「忠臣蔵お軽勘平道行」
  • 内海英華/女道楽
  • 桂春之輔 /ぜんざい公社
  • 桂ざこば/ざっこばらん(四方山噺)

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たまさんのショート落語は定期的な実験落語会"NIGHT HEAD"で毎回新作が発表されるが、今回は中でも選り抜きの傑作が連打され、爆笑に次ぐ爆笑だった。

よね吉という噺家はどうしてこんなに華があるのだろうと驚嘆しつつ、あっという間の高座だった。登場するや客席から「待ってました!」「たっぷり!」の掛け声。凄い人気である。「狸賽(たぬさい)」はもう聴き厭たネタだが、彼が演じると生き生きとして新鮮に聴けるのだから不思議だ。生まれ持ったセンスの成せる技なのだろうか?

どぜう丁稚」は9月12日、御霊神社で開催された「超古典落語の会」でお披露目されたネタ。梅花女子大学の荻田清教授が古い小咄のうち、今でも上演可能なものを発掘し、再構成したもの。勿論、繁昌亭初登場となる。

九雀さんは仏教の五戒(不殺生戒・不偸盗戒・不邪淫戒・不妄語戒・不飲酒戒)について触れ、「噺家は出囃子の太鼓(牛の皮)や三味線(猫や犬の皮)のために動物を殺生し(不殺生戒)、先人のネタを盗み(不偸盗戒)、嘘八百を並べ(不妄語戒)、女性を騙し(不邪淫戒)、打ち上げで一杯(不飲酒戒)。これぞ落語戒(会)です」と。語り口の巧さが光る。特に食べることが戒められているどじょうを和尚が口にするかどうか躊躇いつつ、その美味しさに抗えない葛藤=人間の業(ごう)を見事に演じ切られたのには唸った。

さんは取り留めのないみやこ噺から創作落語「天麩羅」へ。僕は、いわゆる”大阪のおばちゃん”トークが苦手だ。

「忠臣蔵お軽勘平道行」は「仮名手本忠臣蔵」から道行旅路の花聟(みちゆきたびじのはなむこ)のくだりを。口上が春之輔で、配役は勘平:桂三枝 お軽:林家染丸 鷺坂伴内:月亭八方 伴内の手勢:染二、文三、生喬、染左ほか。なんとも豪華キャストである。染丸さんの所作の美しさ、三枝さんのぎこちなさ、そしてノリノリの八方さんと実に愉しく見応えあり。

ざこばさんは「一文笛」(米朝 作)を予定されていたようなのだが、海外旅行のトラブルなど雑談が盛り上がり、「もう、落語に入れる雰囲気じゃないから(演らなくても)構わんでしょう!」と。些か残念ではあったが、ざこば版「一文笛」は以前聴いたことがあるので、まあいいか。その存在自体が落語みたいな人だから。「彦八まつり」の泥酔騒動といい、ざこばさんのことを《全身噺家》と評しても過言ではないだろう。

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2009年9月15日 (火)

鈴木秀美/洋館に響くバッハ

大正時代の洋館建築・大阪倶楽部4階ホールで開催された鈴木秀美によるJ.S.バッハを聴く。

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秀美さんは神戸市出身。言わずと知れた世界的バロック・チェリストである。日本人として初めてオリジナル楽器による「バッハ/無伴奏チェロ組曲」全曲をレ コーディングし、2005年に再録音のCDをリリースした際には「レコード芸術」誌・特選盤に選出されている。また最近ではオーケストラ・リベラ・クラシカ を結成し、指揮者としても活躍されている(公式サイトはこちら)。

今回の曲目は、

  • 無伴奏チェロ組曲 第1番
  • 無伴奏チェロ組曲 第4番
  • 無伴奏チェロ組曲 第5番
  • 無伴奏チェロ組曲 第3番~サラバンド(アンコール)

プログラムに記された秀美さんの言葉を引用しよう。

人が何かを語りかけているようなバッハの無伴奏作品は本来、サロンのような場所でこそ、その語り口や声色、言葉遣いの妙が聴き取れます。大ホールでは味わえない親密で緻密な時間をどうぞこの機会にお楽しみ下さい。

スチール弦を張ったモダン楽器が金属を研磨するような冷たく澄んだ音(pure tone)がするのに対し、倍音を多く含むガット弦のバロック・チェロは木彫りの芳香と温もりがある。

秀美さんのチェロは力強く動的である。そしてこの組曲が踊りの音楽であることを思い起こさせる。森を駆け抜ける微風のように爽快で、美しい音色が五臓六腑に染み渡る演奏だった。

第1番と4番がイタリア趣味で書かれているのに対し、第5番はフランス趣味で書かれているそうだ。またアルマンドで登場する付点のリズムは《威厳》とか《栄光》を示し、それはベートーヴェンの時代まで脈々と受け継がれていったという秀美さんによる解説もあった。

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やはりバッハの無伴奏はバロック・チェロかヴィオロンチェオ・ダ・スパッラの演奏に限るなという想いを強くした夜だった。

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2009年9月14日 (月)

枝光・雀々二人会@繁昌亭

天満天神繁昌亭での二人会。桂 枝光(文枝の弟子) vs. 桂 雀々(枝雀の弟子)。

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  • 二乗/普請ほめ
  • 枝光/紙入れ
  • 雀々/くっしゃみ講釈
  • 雀々/さくらんぼ
  • 枝光/ねずみ

枝光さんのネタはどちらも江戸落語。「紙入れ」は艶っぽい語り口でさすがの巧さ。

初代文枝(1819-1874)のエピソードも興味深かった。前座噺の「三十石」を大ネタに仕立て上げた人である。借金で困っていた文枝はこの噺を百両で質入れし、その間は高座に掛けなかったという。見かねた贔屓客が百両出して質受けしたという伝説が残っているそう。なんとも粋な話だ。

さくらんぼ」は珍品。さくらんぼの種を飲み込んだ男の頭から桜の木が生えてくるという、けったいな噺だった。雀々さんによると、上方落語を代表するネタは六十くらいしかなく、それを現役の噺家たちが取り合いしているのが現状。他の噺を虫干しのために高座に掛ける人もいるが、基本的にそういうのは「おもろないんです」と。「2階席は諦めて下さい。前3列のお客さんだけを相手に話します」それでも様々な創意工夫があり、奇想天外でたいそう愉しめた。

雀々さんは上方落語協会に所属していないので繁昌亭昼席に出られないという話から「一年ぶりですが、やっぱりここはいい小屋ですね」そして桂ざこばさんの寄席小屋《動楽亭》の話題へ。「席亭が席亭ですからあそこ(新世界=ジャンジャン横丁界隈)はアウトローな街です。平日の昼間っから人が沢山いる。地べたに寝ている人もいる」昔はそれぞれの街に寄席小屋があったらしいという話を経て「くっしゃみ講釈」へ。変幻自在のリズム感、後半の畳み掛けるような迫力。凄みさえ感じさせる高座だった。枝光さんによると生前、文枝は稽古に来た雀々さんについて「落語のために生まれてきたような男だ」と褒めていたそう。

「お日ぃさんがカーツ!!」っという師匠が得意とした体全体で表現するジェスチャーも登場。雀々さんはそこで「懐かしい、枝雀さん」とポツリ。噺の半ばくらいで僕の座席の右側から「枝雀さんそっくり」という感嘆の声が聞こえる。そして後半、講釈師がノッて喋るところで今度は左の方から「枝雀…」という呟き声が。正にその時、黄泉の国から枝雀さんが繁昌亭に降りてきて、雀々さんの横でニコニコ愉しそうに聴いているのを僕は幻視したのである。そんな奇跡の夜だった。

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2009年9月13日 (日)

吉朝一門会@繁昌亭

天満天神繁昌亭では初めて開催された、故・桂 吉朝一門会を聴いた。弟子七人が勢ぞろい。若手の人気噺家が多いだけに女性客が七割以上という、落語会では珍しい光景だった。補助席、立ち見も出てその殆どが女性。

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  • あさ吉/書割盗人
  • 吉弥/ふぐ鍋
  • 吉坊/七度狐
  • よね吉/青菜
  • 吉の丞/がまの油
  • 全員/長唄「五郎」

冒頭、いきなり筆頭弟子のあさ吉さんが登場したのには驚いた。「トリは嫌だ、前座でいい」と言い、こういう順番になった模様。そごう劇場で開催された落語会の後、南光さんとどちらが美味しいふぐ鍋を作るか競争したことをマクラに。南光さんは最後の雑炊に白子を入れ、カルボナーラ風味に。でもネタは「ふぐ鍋」ではなく何故か「書割盗人」??あさ吉さんらしい、ゆる〜い雰囲気がいい感じ。

二番弟子の吉弥さんは前を受け、「それじゃ、僕が『ふぐ鍋』をします」と言って出てきたそう。それに対しあさ吉さん、「いいパスで繋いだだろ?」と。調子よく明るい高座が展開された。

次に吉坊さんが登場する前、吉弥さんが見台と膝隠しを持って再登場。高座に設置して、座布団をひっくり返し位置のズレがないか入念にチェック。「よしっ」と手を打って退場。各席から笑いが漏れる。

兄弟子に準備をして貰い「やりにくいですね」と吉坊さん。「七度狐」は「摑んだ狐の尾をぐっと引っ張ったら……」で退場。お囃子が流れ、交代で直ちに登場したしん吉さん。サゲ「畑の大根抜いとった」の一言だけで、袖から「中入り!」の声と共に幕。

中入り後トップバッターのよね吉さん(三番弟子)、「もう時効でしょう」と、出演したNHK朝の連ドラ「ちりとてちん」秘話から。時代設定を考えヘアメイクさんからギバちゃん(柳葉敏郎)ヘアと、もみ上げのテクノカットを要求され、本職の落語があるからと断固拒否したそう。するとメイクさんとの関係が悪化、高座で汗をかいても他の役者さん、例えば貫地谷しほりとは違って誰も汗を拭きに来てくれなかったとか。遂に見かねたカメラマンが「よね吉さんの汗、何とかしてあげて下さい!」と叫んだそう。本題「青菜」は最初に日本家屋についての丁寧な描写があり、それが効いて非常に涼感のある高座となった。

サゲの手前でお囃子が流れ交代で出てきたのがしん吉さん。またまた「べ、…弁慶」の一言で下がる。

続いて登場した吉の丞さん、「(吉朝最後の弟子の)僕がトリなんていじめですよ!最初よね吉兄さんは長唄の出番があるから『今日は落語はちょっと』とか言っていたんですよ。それが延々35分。もたれ(トリの一つ前の出番)は15分までやろ!」と袖を向いて怒る(後で吉弥さんからも「よね吉独演会かいな」と突っ込みが入る)。気を取り直した吉の丞さん、「ドキュメントざこば」(←吉弥命名)を披露。酔っ払った桂ざこばさんが言う無茶苦茶に客席は大笑い。

こうして無理矢理七人が高座に上がった後、長唄「五郎」は三味線:吉坊+大川貴子、謡:よね吉、笛:あさ吉、鼓:吉弥、太鼓:しん吉、立方(たちかた=舞):佐ん吉、後見:吉之丞が担当13分ばかり。いやぁ、皆さん多芸で驚いた。特に佐ん吉くんの所作の美しさには惚れ惚れした。一門でこんな事が出来るなんてすごい!これで前売り2,000円(発売日10分で完売)は安すぎる。とっても愉しくて、お腹いっぱいの会でした。

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2009年9月12日 (土)

南極料理人

評価:B

Nannan

公式サイトはこちら

「登場する料理が美味しそうな映画に外れはない」とはよく言われることである。その代表例が1987年のデンマーク映画「バベットの晩餐会」(米アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞)であり、2006年度「キネマ旬報」日本映画ベスト・テン第9位に輝いた「かもめ食堂」も挙げられるだろう。そしてこの「南極料理人」も例外ではない。

兎に角、南極基地の食材の豊かさには驚かされた(原作者の西村淳は実際に海上保安官として南極観測隊に参加している)。折角の伊勢海老を隊員たちの希望で巨大なエビフライにしてしまう場面は大笑い。

堺雅人、生瀬勝久、きたろうらが好演。

脚本・監督は沖田修一。1977年生まれ。数本の短編映画を製作し、コンペでの受賞歴はあるが長編商業映画はこれが初めて。素晴らしい才能だ。登場人物のひとりひとりが魅力的に、よく描かれている。沢山散りばめられた伏線が最後、鮮やかに回収されていく光景は快感ですらある。

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2009年9月11日 (金)

藤城清治 光と影の世界展

京都文化博物館で開催中の「藤城清治 光と影の世界展」に行く。

藤城さんの幻想的な作風に惹かれてか、来場者は女性が殆どで大盛況。

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とにかく作品数が多くて驚いた。初期の油絵数点から、モノクロの影絵、閉店した店の為に制作されたもの、こびとシリーズ、童話つき連作、水と鏡を効果的に使って展示された作品、京都を題材にした新作など盛りだくさんである。

シンプルな意匠の初期作品から、作風がどんどん洗練され華麗に繊細に変化してゆく様も興味深い。

特に印象に残ったのは「月光の響き」、紅葉の清水寺、そして新ヤマハ銀座ビルの為に制作された壁画「リーフがそよぐシンフォニー」。サイズも大きく、ハッとするほど美しい。展示の後半にあった柳の童話も印象に残った。藤城さんの柳はほの暗く寂しくて、その幽玄の美が影絵によく似合う。

ポスターにもなったアリスの影絵は凄い人気で、売店の絵はがきなども売り切れているようだった。

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2009年9月10日 (木)

「春のめざめ」と現代ブロードウェイ・ミュージカル論

ブロードウェイ・ミュージカルが衰退して久しい。

自国の作品がパワー・ダウンする中、1980年代から90年代に掛けてブロードウェイでは「キャッツ」「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などロンドン(ウエストエンド)ミュージカルが席巻した。

そしてロンドンが息切れをし始めた90年代後半から21世紀にかけて、2つの大きな潮流が生まれた。トニー賞ミュージカル作品賞を受賞したものをそれらに分類してみよう。

  1. 映画の焼き直し(メジャー系)…「ライオンキング」(1998)「プロデューサーズ」(2001)「モダン・ミリー」(2002)「ヘアスプレー」(2003)「ビリー・エリオット(リトル・ダンサー)」(2009)
  2. オフ・ブロードウェイからオンに進出してきたインディーズ系…「レント」(1996)「アベニューQ」(2004)「ジャージー・ボーイズ」(2006)「春のめざめ」(2007)「イン・ザ・ハイツ/In the Heights」(2008)

メジャーの企画力が衰えリメイクに走り、また独立プロダクション(インディーズ)が元気なのはハリウッド映画の現状も全く同じである。

そして恐らく今後、第3の潮流としてウィーン・ミュージカル(「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」)や和製ミュージカル(例えば三谷幸喜の「オケピ!」「TALK LIKE SINGING」など)がブロードウェイに進出する時代もそう遠くはない将来に実現するだろう。

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前置きはそれくらいにして、自由劇場で観劇した劇団四季による「春のめざめ」の感想を書こう。トニー賞8部門受賞作である。

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兎に角、余りにも素晴らしい作品でぶっ飛んだ。ミュージカルを観ながら心が震え、胸高鳴る想いがしたのは「オペラ座の怪人」を初めて観た日以来かも知れない。

舞台は19世紀末のドイツ。厳格で子供たちを抑圧しようとする大人たち、それに対して思春期を迎え、息が詰まりそうな生活に反発し、もがいてもがいて爆発寸前の少年少女たち。その緊張感がスリリング。大人たちの態度は、後のナチス・ドイツをいやがうえにも連想させ怖ろしい。熱くて躍動感ある音楽も文句なしにいい。そして照明の美しさ!当然トニー賞では最優秀ミュージカル台本賞、楽曲賞、照明デザイン賞を受賞している。

歌うのはもっぱら子供たち。歌詞が弾けてヒリヒリ痛い。一方、《大人の男性》《大人の女性》という役名で男女一人ずつが様々な役柄を演じる。学校の先生、ピアノ教師、両親、牧師、等々。台詞だけのその無名性がステレオタイプな社会を象徴する。

舞台上両脇にステージシートがあり、そこで一般観客がミュージカルを間近で体感出来るのも嬉しい。役者もそこに混じり、舞台を行き来する。ライヴならではの醍醐味である。

劇団四季の若いパワー炸裂である。恐らく出ている役者の平均年齢は20代前半だろう。僕が20年位前に観た四季の「ウエストサイド物語」「コーラスライン」の頃から考えると、全体としてのレベルは歌唱力・ダンス力ともに飛躍的に向上し、隔世の感がある。

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メルヒオール:柿澤勇人(はやと)、21歳。イケメンである。既に「ミュージカル界のプリンス」「劇団四季の貴公子」などと呼ばれ、話題沸騰だ。写真はこちら!しっかり歌えるし、これは久々に四季から途轍もない大スターが出現したなと目を見張った。はっきり書いちゃうけど井上芳雄くんも彼の前では霞んじゃう。僕の隣で観劇していた若い女性がカーテンコールで「かっこいい!こっち向いて!!」 と叫んでいたのも頷ける。

ただ日本の演劇界にとって不幸なのは、美人で歌って踊れる女の子は皆、宝塚歌劇を目指してしまうことにある。だから男優と比較して劇団四季の女優のレベルは劣る。これはもう、致し方のない事実である。

ベンドラ:林 香純(かすみ)、20歳。容姿のことは不問に付す。でもプロの女優なんだから、せめてもっと痩せた方がいい。それから四季独特の発声法(母音法)が不自然で耳障りだったが、歌はさすがに上手かった。

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東京公演は終了したがいずれそのうち関西でも公演があるだろう。その時は是非もう一度観たい。ただし、四季お得意のカラオケ上演でないならば。東京公演では7名のミュージシャンが舞台の上で生演奏を披露した。やっぱりミュージカルは音楽もライヴでなくちゃ!演劇が映像(コピー)では味気ないのと同じこと。是非そのことを劇団は肝に銘じて頂きたい。

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2009年9月 9日 (水)

ブロードウェイ・ミュージカル「コーラスライン」来日公演

ミュージカル「コーラスライン」の22年ぶりとなるジャパン・ツアー公演を兵庫県立芸術文化センターで鑑賞。日本語字幕付き。

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終演後、客席から聞こえたのは「やっぱり劇団四季の『コーラスライン』より断然良かったね」という声。その通りだなと想った。ちなみに僕が四季の「コーラスライン」を観たのは今までに3回。初体験はリチャード・アッテンボロー監督の映画版(1985)が公開されるより前のことである。

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数あるブロードウェイ・ミュージカルの中でも「ウエストサイド物語」「コーラスライン」「RENT」は日本人キャストのみで演じることがきわめて難しい作品だと想う。

例えば「ウエストサイド物語」。これはイタリア系移民のジェット団と、プエルトリコからの移民であるシャーク団との対立の物語である。この両者を日本人キャストが演じてもどうしても雰囲気が出ない。片方の肌をメイクで濃い目にしたところで、違いが鮮明に分からないのである(宝塚版・四季版どちらもそうだった)。

同じことが「コーラスライン」や「RENT」にも言える。登場人物に白人もいれば黒人(アフリカ系アメリカ人)もいて、中国系、ヒスパニック(プエルトリコ人etc.)、さらにストレートともいればゲイもいる。様々なバックグラウンドを持った人々が集まってこそ、作品が内包する心の痛み、人間関係の軋みが客席まで届くのである。そういう意味において、今回の来日公演を観て初めて「コーラスライン」の真価が理解できた気がした。役者たちの歌唱力、ダンス力も申し分ない。特に圧倒的ダンス力を求められるのが演出家ザックの元恋人・キャシーである。1975年初演時にキャシーを演じたドナ・マッケニーはトニー賞でミュージカル主演女優賞を受賞している。それくらいのオーラがなければこの役を演じる資格はない。

Ch04

2006年から始まったブロードウェイ・リバイバル公演については、素晴らしいドキュメンタリー映画が昨年公開されたばかりである。

初演前に演出家のマイケル・ベネットが役者たちを集めてワークショップをする音声が残っているのには驚いた。彼らの生の声が作品に反映されている。そしてコニーのオリジナル・キャストであるバイオーク・リーがリバイバル版で振り付けを担当。そのコニー役を最終的に勝ち取るのは沖縄出身の高良結香である。欲を言えば今回の来日公演、その高良さんのコニーで観たかった!調べてみると「コーラスライン」と同時期に、高良さんは「RENT」ジャパン・ツアーのメンバーとして来日していたようである。

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「キリン一番搾り生ビール」のCMでもお馴染み"One"をはじめ、マーヴィン・ハムリッシュが作曲したナンバーはどれも素晴らしい。ただ今回観劇して1985年映画版が決定的に駄目だと想ったのは、あの名曲"What I Did for Love" (愛した日々に悔いはない)をキャシーひとりに歌わせたことである。これではまるで「ザックを愛したこと」についての個人的独白のようになってしまう。そうではないのだ。「踊りを、そしてミュージカルを愛したことは(たとえスポットライトを浴びるチャンスが永遠に来なくても)決して後悔しない」という、ダンサーたちの意志がこの歌詞には込められている。だから舞台版のように全員で歌わなければ意味がない。

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休憩なしの2時間、本当に充実して胸が熱くなるひとときであった。

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2009年9月 8日 (火)

大阪クラシック 2009 《怒濤の最終日》/そして感動のフィナーレへ!

大阪クラシック7日目、朝5時45分に起きて大阪市役所へ。最終《第100公演》の整理券を確保するためである。初日よりも列の伸びが早い。それでも指定席券を無事手に入れた。配布開始の8時過ぎには立ち見券を含め予定枚数終了。

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《第87公演》@大阪市役所正面玄関ホール、11:00-

この公演は演奏中の撮影、フラッシュも可とアナウンスされ驚いた。

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写真左からフルートの榎田雅祥さん、ヴァイオリンの佐久間聡一さん、チューバの川浪浩一さん、クラリネットの金井信之さん、そしてワーグナーテューバ(通常はホルン)の村上哲さん。

まずは皆で記念撮影。

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この企画、大阪クラシックの開催2ヶ月前にオケの練習場に張り出された日程表には「川浪さんとデュエットやりたい人、募集中!」とだけ書かれていたそうである。その呼びかけに集まったメンバーが上記面々というわけ。大フィルの楽員は給料が一律なので、たまにはチューバにも頑張ってもらい、機会均等にしようというのがこの「川浪さんを可愛がる会」の趣旨。実は前日にプラウの協奏曲を吹いてスポットライトを浴びた川浪さんは美酒に酔い、明け方の午前5時まで飲んでいたそうである。

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まず佐久間さんと川浪さんでなんと!氷川きよしの演歌。演奏が終わると、直ぐに佐久間さんは13時から《第90公演》のあるスターバックス コーヒーへと向かう。

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お次は榎田さんが登場し、バッハ/インベンション 第8番モーツァルトが8歳の時に作曲したピアノ・ソナタを演奏。

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そして村上哲さんとのデュオでスコット・ジョップリン風ラグタイムを4曲。

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最後は金井さんとピーター・シックリー/Little Suite for Winter(冬のための小さな組曲)。これは全5曲で構成され、

  1. Fantasia(幻想曲)
  2. Blues Bounce(跳ねるブルース)
  3. Lullaby(子守歌)
  4. Rondo(5拍子の輪舞曲)
  5. Traveling Music(旅の音楽)

スウィングしてJAZZY、とっても粋な曲だった。シックリーについてはP.D.Q.バッハの記事で触れた→こちら!なんだか愉快な作曲家である。

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アンコールは川浪さんが柔軟な肉体を披露しながらの「ラジオ体操」だった。

《第91公演》@大阪弁護士会館エントランス、13:30-

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曲目は、

  • バーバー/弦楽四重奏曲 第1番
  • ハイドリッヒ/《ハッピー・バースデイ》変奏曲
  • 秋元康、見岳章/川の流れのように(アンコール)

バーバーは前から生で聴きたかった曲。この第2楽章が後にアレンジされ「弦楽のためのアダージョ」になった。気高く峻厳な音楽。第2楽章は夜のしじまの如く清浄で、哀しみの深淵を静かに覗き込むような佇まいがある。凄く良かった。

そして誰もが知っている"Happy Birthday to You"のメロディを変奏曲に。ハイドン風、モーツァルト風、ドヴォルザーク風、ジョップリンを思わせるラグタイム風、ハンガリー風(チャールダーシュ)など面白い。

《第94公演》@カフェ・ド・ラ・ペ、14:30-

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原田愛(ピアノ)、佐久間聡一(ヴァイオリン)、吉田陽子(ヴィオラ)、石田聖子(チェロ)で、

  • ブラームス/ピアノ四重奏 第1番

メランコリー漂い、劇的な名曲。

佐久間さんはこの日も全部で4公演に出演。吉田さんが「佐久間君は人気者だからあっちこっちに引っ張りだこで、漸く共演出来ました」と。アンコールはサプライズで9月2日に27歳の誕生日を迎えた佐久間さんに"Happy Birthday to You"。そして吉田さんが佐久間さんにソロで1曲とリクエストし、マスネ/タイスの瞑想曲。最後は譜めくりを担当していたピアニストの林直美さんも連弾に加わり、全員でブラームス/ハンガリー舞曲 第5番。盛り沢山で愉しかった。

《第97公演》@中之島ダイビル、17:00-

邊見亜矢、川瀬礼実子(フルート)、廣澤敦子(メゾ・ソプラノ)、池村佳子(チェロ)で、

  • ルーセル/ロンサールの2つの詩(1.私の愛しいうぐいすよ 2.空、大気、風)
  • ハイドン/ロンドン・トリオ
  • J.S.バッハ/「マタイ受難曲」より(1.レスタティーヴォ 2.アリア)

こんな組み合わせを聴けるのも、大阪クラシックならではだろう。ルーセルなんて、大阪じゃ滅多に聴けない。

《第98公演》@カフェ・ド・ラ・ペ、18:00-

マウロ・イウラート(ヴァイオリン)、ジュゼッペ・マリオッティ(ピアノ)で、

  • フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調
  • エルガー/愛の挨拶(アンコール)
  • シューベルト/アヴェ・マリア(アンコール)

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このふたりはイタリア出身。ウィーン国立音楽大学で知り合い、UniDuoを結成した。正直、ピアノは日本人にもっと巧い人が沢山いるんじゃないかと想ったが、ヴァイオリンの腕は確かだった。雄弁で、よく鳴っている。

フランクのソナタは、名ヴァイオリニスト&作曲家であるイザイの結婚祝いとして作曲され、献呈されたもの。第1楽章はエレジー(悲歌)。第2楽章は情熱的(passionate)で、第3楽章は夢の中を漂うよう。そして第4楽章は思う存分、春を謳歌する。何度聴いても胸に沁みるなぁ……。

《第100公演》@三菱東京UFJ銀行 大阪東銀ビル、20:00-

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大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団(ヴァイオリン・ソロ:長原幸太)で、

  • コープランド/リンカーンの肖像
  • リムスキー=コルサコフ/シェエラザード

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リンカーンの肖像」は大阪の平松市長が登場。昨年に続きナレーションを担当された。元アナウンサーだけに熟(こな)れたもので、オーケストラとの相性も抜群。コープランドによる如何にもアメリカらしい、明快で都会的、色彩豊かなオーケストレーションも実に魅力的。

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シェエラザード」の第1楽章は音のうねりが大海の波濤を見事に表現。力強い第2楽章を経て、第3楽章は息の長い旋律をじっくりと歌う。まるで王子と王女がゆったりと踊っているかのよう。考えてみればこの曲はジーン・ケリーが監督・振り付け・主演をしたミュージカル映画「舞踏への勧誘」でも使用されていたなぁと想い出した。第4楽章はバグダッドの祭りから激烈な嵐の音楽へ怒濤の展開。そして暴君シャリアール王の怒りがシェラザードの語りで次第に鎮まっていく様子が克明に音で描かれる。大植/大フィルのコンビは万全の表現力。文句なし!

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大植さんから今年のテーマが何故"B"であったのか種明かしがあった(上の写真)。公演数の"100"という文字をバラバラにして置き換えると"B"になるというわけ。また大阪クラシック最多出演となった吉田さん(何と18公演!)に大植さんから労(ねぎら)いのBeefが贈られた。

さてアンコール。まずは星空コンサートのリハーサルで演奏されたが、本番は雨のためカットされたジョン・ウィリアムズ/「スター・ウォーズ」のテーマ。そして大阪クラシックや星空コンサートでお馴染み、「夕やけこやけ」「七つの子」「ふるさと」(山本直純 編)を大フィルをバックに会場の人々が大合唱。最後は聴衆の手拍子と共に「八木節」外山雄三/管弦楽のためのラプソディ より)で〆。

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以前聴いた大フィルの「スター・ウォーズ」と比較し、今回の演奏は遥かに上手くなっていたので驚いた。弦の音色は深みを増し、管は輝きを帯びてきた。結局この大阪クラシックというイヴェントは、市民のためのものであると同時に、大フィルの楽員にとって修練の場でもあるということなのだろう。室内楽を演奏するということは個人個人の音がしっかりと聴衆の耳に届く。だから皆、本気で練習する。大勢の人々から喜ばれれば、やる気も出る。ゆえに技術も向上する。大植英次、なかなか侮れない策士である。

O19

大阪クラシックを聴きに来た人々は初年がのべ2万2千人、2年目が2万8千人。3年目が約3万7千人だった。そして4年目の今年、大植さんの発表では5万690人に膨れ上がったそう。公演数は初年の50から倍になり、動員数は2倍をはるかに上回っているのだから凄い。

本当に愉しくて、夢のような一週間であった。大植さん、大フィルの皆さん、ありがとう!

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2009年9月 7日 (月)

大阪クラシック 2009 《6日目》/北欧のチューバ協奏曲登場!

《第80公演》@オカムラ大阪ショールーム。野津臣貴博(のづみひきろ)さんのフルートを中心としたアンサンブル。ヴァイオリンの佐久間聡一さんはこの日1日だけで4公演に出演されたようだ。

  • マックス・レーガー/セレナーデ ニ長調(Fl, Vn, Vla)
  • ロッシーニ/フルート四重奏曲 第4番(Fl, Vn, Vla, Vc)
  • 秋元康、見岳章/川の流れのように(アンコール)

ロッシーニのにこんな作品があるなんて今回初めて知った。オペラのアリアのように伸びやかな歌が魅力的。野津さん、素敵な楽曲を紹介して下さってありがとう!

《第81公演》@関電ビルディング

地下鉄での移動に時間がかかり、これを聴けたのは途中から。邊見亜矢(フルート)、大槻桃子(ヴィオラ)、今尾淑代(ハープ)で、

  • ドビュッシー/フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ
  • ビゼー/歌劇「カルメン」間奏曲(アンコール)

ドビュッシーは楽器の組み合わせが面白い。静寂の中に幻想性を秘めた作品。こういう編成のコンサートを聴ける機会は滅多にないので、大変貴重な体験をさせて頂いた。

《第84公演》@カフェ・ド・ラ・ペ

Oc11

榎田雅祥(フルート)、鈴木華重子(ピアノ)で、

  • C.P.E.バッハ/フルート・ソナタ ト長調「ハンブルク・ソナタ」
  • プーランク/フルート・ソナタ
  • タファネル/「優雅なインドの人々」による幻想曲
  • エネスコ/カンタービレとプレスト(アンコール)

榎田さんは「大阪クラシックは6日目に入り、もうヘトヘトです」と仰った。

プーランクは20世紀に生み出されたフルート・ソナタとの中でも最高傑作と評価されている。1957年にジャン=ピエール・ランパルのフルートと作曲家自身のピアノで初演された。魅力的旋律に満ち、僕も死ぬほど好き。「旅への誘い」を感じさせる叙情がある。生で聴けて本当に良かった。榎田さんは第2楽章が「シェルブールの雨傘」(1964年フランス映画)の主題曲に似ているんじゃないかと指摘された。

優雅なるインドの人々」は元々フランス・バロック期の作曲家ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)のオペラ。それを有名なフルート奏者タファネル(1844-1908)が変奏曲にした。この曲は一度もレコーディングされたことがないそうで、神戸国際フルートコンクールで榎田さんが久しぶりに再会した恩師ウィリアム・ベネットにその理由を尋ねると「どう解釈すればいいのか解らない」と答えが返ってきたそうだ。つまりタファネルの時代様式で吹けばいいのか、バロックのスタイルで演奏すべきなのか判断に困るということらしい。榎田さんは「タファネルよりラモーの方が好き」だそうで、そちらの解釈に沿って演奏された。それまで譜めくりをしていた大フィルの中村さんがタンバリンを担当。

《第85公演》@ザ・シンフォニーホール

Oc12

井上登紀(ピッコロ&フルート)、川波浩一(チューバ)、浅川和宏(オーボエ)、長原幸太(ヴァイオリン)、篠崎 孝(ピッコロ・トランペット)のソロで、

  • ヴィヴァルディ/ピッコロ協奏曲
  • プラウ/チューバと弦楽のための協奏曲
  • J.S.バッハ/ブランデンブルク協奏曲 第2番

コンサートマスターはヴィヴァルディが佐久間さん、2曲目以降は長原さん。

ヴィヴァルディは井上さんの見事なテクニックを堪能。どこで息継ぎしているのか分からないくらい自然に音楽が流れる。特に第2楽章がとても美しい。けだし名曲。

アリルド・プラウ(Arild Plau,1920-2005)はノルウェーの作曲家。チューバ協奏曲は1990年に発表された。第1楽章《プロローグ》は内省的で心に響く。ソロVn.とチューバの対話が印象的。第2楽章《カンツォーネ》は懐かしい想い出を回顧するかのような音楽。第3楽章《フィナーレ》にはおどけたユーモアがある。現代の作品ながら小難しいところが少しもなく、この曲は大きな収穫だった。川浪さんも好演。是非また聴きたい。

大バッハは最早、古楽器演奏の専売特許の感があり、モダン楽器で聴く意義を僕は余り感じない。それでも合奏協奏曲的ダイナミックな味わいのあるこの曲は、モダンでもそこそこ愉しめた。

チェンバロを担当した大植英次さんからこの日、大阪クラシックの来場者数が4万人を超えたとの報告があった。

さて次回はいよいよ最終日、感動のフィナーレの模様を詳しくお届けする。

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2009年9月 6日 (日)

上方落語協会/彦八まつり「噺家ザ・ムービー大上映会」

9月6日(日)、兵庫芸文でコーラスラインを観た後、彦八まつりへ足を向けた。

H03

彦八まつりは毎年、上方落語協会主催により生國魂神社(いくたまさん)で行われているお祭りで、今年が19回目。桂あやめが実行委員長を務めた。

お天気に恵まれ、まるで真夏のような暑さ。会場内には鶴瓶茶屋、福笑茶屋など落語家達の名前を冠した屋台が並び、そこかしこで生ビールや軽食等を売っている。

ビールで喉を潤し、食べ物もいくつか購入。期待はしていなかったが意外にも文枝茶屋の焼きうどんがいけた。上方落語四天王のひとり、故・桂文枝が唯一、弟子にふるまった手料理だそうだ。細いうどん麺だけを炒め醤油味に仕上げ、その上に目玉焼き(サニーサイドアップをヘラで半分に畳んだもの)を乗せただけの、全く質素で単純なもの。なのに何故かいける。

また、丁稚カフェ(あやめ・遊方・染雀)では落語「青菜」に登場する”柳陰(やなぎかげ)”を出していた。みりんに焼酎を加えて作った飲み物のこと。甘ったるくてそれほど美味しいものではないが、それもまた一興。

屋台では揃いの浴衣を纏った若手落語家達が働き、高座でよく見る落語家達とすれ違う。屋台をひやかしているだけでも、愉しめる。

さて、日が暮れてお目当ての映画を観る。

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まずは伝説の無声映画「噺家王アルカリキッド」1・2の上映。桂雀三郎が昔やっていたアルカリ落語の会から立ち上がった企画。1989年製作の8mm無声映画。伊丹映画祭・グリーンリボン賞(自主製作特撮・娯楽フィルムコンテスト)銅賞受賞。主演はもちろん雀三郎でヒーローの助手が桂あやめ。それぞれ1《豚(とん)で火に入る豚の巻》を雀三郎、2《人情うどん玉兄ちゃんの巻》をあやめが活弁を担当。アングラ(underground)なノリで、いかにも手作りな味わいがあり可笑しかった。特に最高だったのは2で登場した笑福亭福笑。シャブ中でシャブ入りうどんを貪り喰う姿に笑い転げた。落語作家・小佐田定雄が女装して登場したのにも意表を突かれた。

その後、桂あやめ脚本・監督の「あなたのためならどこまでも」。8月23日にクランクイン、4日間で撮り終え前日に音入れしたばかりという出来たてのホヤホヤ。その割には非常に丁寧な仕上がりで、出来の良さにびっくりした。評価はB

主役は月亭八光が演じる噺家。一年に一度くらいしか高座に上がらないその師匠・笑福亭鶴瓶(なんとアフロヘアで登場)を上方落語協会会長にするために奔走する噺。八光の兄弟子がストリートミュージシャンとして糊口を凌ぐ月亭遊方。ギターを抱え橋の上で歌っている立ち姿が妙にはまっている。その"ダブルブッキング"という曲はあやめ作詞、遊方作曲とのこと。

邪ん気(ジャンキー)一門として登場する笑福亭福笑がまたまたアブナイ雰囲気で怪気炎を上げ、麻呂一門の師匠として雅楽を演奏しながら登場する桂米輔の浮世離れした公家言葉とか、横から主人公に嫌みな突っ込みを入れる桂九雀とか、もう大爆笑。適材適所、あやめ監督の絶妙な配役が光る。

そして最後は笑福亭福笑(with ヒロポンズ・ハイ)が歌う「上方ロックンロール」で盛り上がり幕となった。

これは落語ファンならば必見。ただ尺が1時間弱と短いためか尻切れトンボの印象が残ったのは些か残念だった。会長選挙に勝ち、高座に上がり久々に落語を披露する鶴瓶師匠のショットは最後に必要だったのではないだろうか。多分、超多忙な鶴瓶さんだから、スケジュールが取れなかったんだろう。追加撮影とかどうでしょう、あやめ監督?

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上の写真は上映後、舞台挨拶をする出演者たち。あやめ、文福、坊枝、生喬、春野恵子(東大出身の浪曲師)らの姿が見える。次回の上映は未定だが、映画上映+落語会といった形で繁昌亭でも披露したいとあやめ監督の弁。

この後、神社中央のステージでフィナーレの挨拶があった。実行委員長の桂あやめ、会長の桂三枝、副会長の笑福亭鶴瓶が登場すると会場は大いに沸いた。なお、鶴瓶さんは主演した映画「ディア・ドクター」がモントリオール国際映画祭で上映され、その舞台挨拶を現地でして帰国後直ぐに駆けつけられたようだ。

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来年の実行委員である桂ざこばも片手に酒のコップを持って舞台に上がったのだが、もうベロベロで、甲斐甲斐しく世話を焼こうとする鶴瓶との絡みが最高に可笑しかった。

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ざこばが酒を床に置こうとすると鶴瓶に「にいさん、埃が入りますからそんな所に置くのはやめとき」と言われ「人間も埃みたいなもんや!」と一喝、じゃあと酒を取り上げて他の人に持ってもらうように言うと「お前が持てばええやろ!俺の酒、持ちたないんか!」と言いたい放題。しまいには「俺の事どう思っとるんや」とキスを求める。またそれに律儀に応える鶴瓶も可笑しい。

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最後は桂三枝・上方落語協会会長にもキスを強要するざこば。嫌々応じた会長の感想、「意外とざこばさんの唇はやわらかかった」

そんなこんなで、笑いの絶えない愉快な一日であった。

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2009年9月 5日 (土)

大阪クラシック終了!

大阪クラシック終了!
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大阪クラシック100公演全ての日程が無事終わった。平松市長がナレーションを担当し、大いに盛り上がった最終公演「リンカーンの肖像」等、詳細は後日たっぷりと。

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2009年9月 4日 (金)

大阪クラシック 2009 《4日目》/あなたは誰?P.D.Q.バッハ

《第55公演》@スターバックス コーヒー、19:30-

この日はフルート、オーボエ、ファゴット、トロンボーン、ヴァイオリン、コントラバスという編成で、

  • P.D.Q.バッハ/「音楽のいけにえ」

P.D.Q.バッハとはピーター・シックリー「教授」(南ノースダコタ大学←実は架空の名)が冗談音楽を発表するために用いた偽名である。詳しくはこちらをご覧あれ。"P.D.Q."というのは「大至急(Pretty Damned Quickly)」というアメリカ人なら誰でも知っている略語なのだそう(ちなみに大バッハにはC.P.E.バッハという作曲家の次男がいる)。「音楽のいけにえ」というタイトルもヨハン・セバスチャン・バッハ/「音楽の捧げもの」を真似ており、テーマとなる旋律もそのパロディとなっている。

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上の写真でマイクを握るのはフルートの榎田さん。実はこの前、19:00からの《第54公演》 (ベートーヴェン/七重奏曲)にファゴットの宇賀神さんが出演中で、彼の到着を待っているところ。コントラバスの松村さんが窓の外を見ているのは「どうやら(道路を挟んで)向かいの相愛学園のコンサートが終了したらしい」と。楽器を抱え大急ぎで駆けつける宇賀神さん。

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曲はフーガやトリオ・ソナタ、カノンなどから構成され、最後は「最も下品な大フーガ」。フラッター・タンギング等も登場し、実に愉快な音楽だった。

各々の楽器がテーマを吹く時はその奏者が立ち上がったり、「反行カノン」ではお辞儀をし、「逆行カノン」では後ろを向いたりとビジュアル的にも皆さんサービス精神旺盛で、スタバの店内は終始笑いが絶えなかった。

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2009年9月 3日 (木)

春のめざめ@自由劇場

春のめざめ@自由劇場
現在、東京出張中!携帯電話から送信。

劇団四季でミュージカル「春のめざめ」を鑑賞。トニー賞8部門授賞。とにかく若いパワーに圧倒された。21世紀に発表された新作の中でも最高傑作。この衝撃は「ライオンキング」以来と言っても過言ではない。

大阪クラシック4日目のレポートは、また明日。

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2009年9月 2日 (水)

大阪クラシック 2009 《3日目》/新企画!客席参加型コンサート

《第32公演》@大阪弁護士会館

サクソフォン:西本 淳、打楽器:高鍋 歩

  • 夏田昌和/西、あるいは秋の夕べの歌
  • デュポア/サーカス・パレード

1曲目はソプラノ、2曲目はアルト・サックスでの演奏。夏田さんの曲は瞑想的で、デュポアは陽気でチンドン屋を彷彿とさせる賑やかな雰囲気。しかし最後は何だか物悲しい。

西本さんは神戸在住のソリスト。「ベルシャザールの饗宴」などで大フィルと共演している。高鍋さんは大阪市音楽団の打楽器奏者、主にティンパニを担当。日本太鼓も登場し、迫力あるバチ捌きは見応えあり。

《第35公演》@カフェ・ド・ラ・ペ

ピアノカルテット「萩原庄司」の演奏で、

  • ドヴォルザーク/ピアノ四重奏曲 変ホ長調
  • ピアソラ/リベルタンゴ(アンコール)

萩原庄司」は萩原夫妻(Pf, Vn)と庄司夫妻(Vla, Vc)のユニット。チェロの庄司 拓さんが大フィルの楽員である。ヴァイオリンの萩原合歓(はぎはらねむ)さんは調べてみると神戸市室内合奏団の楽員らしい。箕面にあるJAZZ BAR( B-flat )を活動の拠点にされているそう。ここで今年のテーマ"B"が登場。

ドヴォルザークは引用されるスラヴの民謡や民族舞曲がいい味出していて、”チェコ国民楽派”の面目躍如。聴き惚れた。また「萩原庄司」アンコールの定番というリベルタンゴがいかしたアレンジで気に入った。リズムに躍動感があり、弦を叩く奏法はピアソラに良く似合う。

《第38公演》@大阪市中央公会堂、有料公演(500円)。

O304

  • フランセ/八重奏曲
  • ベートーヴェン/交響曲第7番 第4楽章(アンコール)

こちらは《第13公演》で紹介した佐久間聡一さんを中心とした弦楽四重奏団にクラリネット、ファゴット、ホルン、コントラバスを加えた面々。マイクを握るのはホルンの村上 哲さん。

フランセに"B"は全く関係ないということで、パラソルまで引っ張り出してきて無理やり気分は"Beach"!

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いやぁ、やっぱりフランセは最高!軽妙洒脱でエスプリが効いている。《夢のきれはし》がいっぱい詰まった素敵な音楽。これが生で聴けることの至福。本当にありがとう、大フィルの皆さん。アンコールは先代(朝比奈隆)の十八番、Beethovenをこの編成で。これも大変珍しく、面白かった。

《第43公演》@スターバックス コーヒー 19:00-19:30

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  • メルカダンテ/フルート四重奏曲 イ短調
  • ビゼー/「アルルの女」よりメヌエット(アンコール)

フルート(井上登紀)、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという編成。

メルカダンテはイタリアの作曲家。短調なのに陽光が燦々と降り注ぐような明るさがあり、フルートの動きが華麗な曲。これも大阪クラシックがなければ聴く機会は一生ないだろう。そういう意味でとてもありがたい(無料だし)。演奏の面でも文句なし。

曲の途中でカフェの窓ガラスの向こう側に大植英次さん出現! 外で耳を傾けておられる。果たして聴こえるのだろうか? そこへ道路を挟んで向かいにある相愛学園での《第42公演》を終えた長原さん、佐久間さん(Vn)、篠崎さん(Tp)、川浪さん(Tb)らが合流。ニヤニヤしながら中を覗き込む。   

演奏が終わり大植さんがスタバ内に。「去年、ヴィオラの吉田さんから『大植さんが来ると、おいしいところを全部持っていかれてしまう!』と苦情が出たので、今年は大人しく外で聴いていました」「(聴衆に)みなさん、今日はどうもありがとうございます!次の《第44公演》でも何やら面白そうな企画をしているようなので、どうぞお越し下さい」

《第44公演》@大阪市中央公会堂 20:00-21:20、有料公演(500円)。

O203

フルート、オーボエ、ファゴット、クラリネット、ホルンという木管五重奏。

  • ロッシーニ/木管四重奏 (オーボエ抜き)
  • ダマーズ/木管五重奏のための主題と17の変奏曲
  • ライヒャ/五重奏曲 ハ長調 Op.91

司会進行役はフルートの榎田雅祥さん。「木管五重奏は楽器の音質がバラバラなので、どうか調和は求めないで下さい。僕の友人がこの編成の演奏を初めて聴いた時、『まるで家畜小屋だ!』と言いました」

ロッシーニは13歳の作品だそう。明朗な曲調であった。

ジャン=ミシェル・ダマーズ(1928- )はフランス人。榎田さんは2,3年前、作曲家本人に会ったことがあるそう。前衛的な現代音楽の本流に背を向け、新古典主義に基づく優美な旋律が彼の持ち味。主題は古楽的で鄙びた味わいがあり、変奏になるとJAZZ風になったりと、各々個性が異なり面白い。

ライヒャはベートーヴェンと同年、プラハに生まれた作曲家(チェコ名:レイハ)。1817年、パリ音楽院の作曲科の教授になる。榎田さんによればこの五重奏曲は学生の教育用として書かれた可能性が高く、テクニック的に非常に難しいそうである(なんと木管五重奏だけで24曲もあるらしい)。それぞれの楽器が主張し合い、スリリングで耳が離せない。吹き終わって榎田さんは一言、「もうヘトヘトです。二度とこんなプログラムは組みません」

アンコールは、

  • ウィル・オッフェルマンズ/ジャングル・ダンス(空き瓶とフルートのアンサンブルのための)

瓶の口のところに息を吹き込みフルートの様な音を出す。これがリズムを担当。榎田さんが客席にいた大植さんに呼びかけ、指揮をしてもらうことに。空き瓶を吹くのは客席から希望者を募る。9人くらいが手を挙げ舞台の上に。何と全員女性。さらにスタッフも加わる。その中には《第43公演》を終えたばかりのフルートの井上さんの姿も。少しだけ練習し、みな楽譜を真剣な眼差しで見つめながら本番。見事、誰も間違えなかった。

演奏会が終わり、立ち去る聴衆が口々に「今日は愉しかったね!」と言い合っている姿がとても印象的であった。音楽があるところに人々の笑顔がある。そんなことを感じさせてくれた夜であった。

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2009年9月 1日 (火)

大阪クラシック 2009 《2日目》/Baroquerz登場!

8月31日、大阪クラシック2日目。

《第28公演》@相愛学園本町講堂
トランペット:秋月孝之、パーカッション:堀内吉昌

O205

曲目は、

  • ジャン・バリッサ/万華鏡
  • Emile De Ceuninck/Lignes rouges en oblique

バリッサはスイスの作曲家だそう。2曲目のタイトルは「赤い斜めの線」という意味らしい。1990年初演。

まずトランペットと打楽器という組み合わせが珍しい。堀内さんがヴィブラフォンや銅鑼、シンバル、ボンゴなどを叩き大活躍。「10年分くらいの仕事を今日、一気にしました」

どちらも風変わりな曲で、秋月さんも仰っていたが多分もう二度と聴く機会はないだろう。そういう出会いがあるのも大阪クラシックならではの愉しみである。

《第29公演》@大阪市中央公会堂、有料公演(500円)。

O202

演奏はBaroquerz。「バロックをする人々」という榎田雅祥さん(Fl)による造語だそうである。Vn3,Va,Vc,Cb,Cemb,Flという8人組。「30分前に私が音楽監督に就任することが決まりました」お揃いのロゴ入りポロシャツまで用意するなど、やる気満々である。

当初、大フィルのブログではこの公演でバロック楽器を使用すると書かれていたのだが、現在の調律A音=440Hzと異なり、バロックピッチは大体415Hzで半音低い。練習の時、弦楽奏者たちから自分たちが弾いている指使いと、奏でる音のズレがどうしても違和感があって弾き辛いという声が上がったそうだ(幼少時に440Hzの絶対音感を身に着けた音楽家はピッチが低い古楽器演奏に抵抗を覚えるとバロック・チェリストである鈴木秀美さんもエッセイに書かれている)。仕方なく折衷案としてモダン楽器を使用して弓だけバロック・ボウというスタイルで今回は演奏することになったと榎田さんから断りがあった。榎田さんは数日前までバロック・フルートで練習していたのでモダンに切り替えてのフィンガリング(運指)には自信がないと仰ったが、見事に吹きこなされた。さすがに金属製を使用するのは憚れるのでと、何年も使用していなかったという木製のフルートでの演奏となった。

大フィルのコンサートマスターである長原幸太さんからバロック・ボウについての解説もあった。

  1. 弓が短いのでモダン奏法をしていると、弾いていて長さが足りなくなる
  2. 毛が少ない
  3. 弓の反り方が異なり、先のほうでは腕の力が伝わりにくい(つまり音が自然に減衰する)

曲目は、

  • ヘンデル/2つのヴァイオリン、チェロと通奏低音の為の四重奏曲 ニ短調
  • ペルゴレージ/フルート協奏曲 ト長調
  • ラモー/6声のコンセール 第3番

ラモーでは榎田さんが指揮者デビューを飾られた。アンコールはこの第3楽章「タンバリン」を繰り返し、榎田さんがタンバリンを叩いて盛り上げた。

まあ演奏自体は中途半端で、《なんちゃってバロック》という感じだった。僕が気がついた問題点を幾つか挙げよう。

  1. バロック音楽にしてはテンポの設定が遅すぎる
  2. アタック、アクセントが効いていない(弾力が足りない)
  3. 音の減衰が不明瞭(陰影・コントラスト不足)

バッハ・コレギウム・ジャパン、オーケストラ・リベラ・クラシカ、コレギウム・ムジクム・テレマン(テレマン室内管弦楽団)らの演奏に聴き馴染んでいると、やはり彼らの方に一日の長があるなと感じた。普段モダン楽器しか弾いていない音楽家が古楽を演奏するはこれほど困難なことなのかと認識を新たにした。

しかし、積極的にバロック楽器に取り組もうとする姿勢は評価したいし、その心意気やよしとしよう。1年後のBaroquerzの進化に期待したい。

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