大阪クラシック 2009 《2日目》/Baroquerz登場!
8月31日、大阪クラシック2日目。
《第28公演》@相愛学園本町講堂
トランペット:秋月孝之、パーカッション:堀内吉昌
曲目は、
- ジャン・バリッサ/万華鏡
- Emile De Ceuninck/Lignes rouges en oblique
バリッサはスイスの作曲家だそう。2曲目のタイトルは「赤い斜めの線」という意味らしい。1990年初演。
まずトランペットと打楽器という組み合わせが珍しい。堀内さんがヴィブラフォンや銅鑼、シンバル、ボンゴなどを叩き大活躍。「10年分くらいの仕事を今日、一気にしました」
どちらも風変わりな曲で、秋月さんも仰っていたが多分もう二度と聴く機会はないだろう。そういう出会いがあるのも大阪クラシックならではの愉しみである。
《第29公演》@大阪市中央公会堂、有料公演(500円)。
演奏はBaroquerz。「バロックをする人々」という榎田雅祥さん(Fl)による造語だそうである。Vn3,Va,Vc,Cb,Cemb,Flという8人組。「30分前に私が音楽監督に就任することが決まりました」お揃いのロゴ入りポロシャツまで用意するなど、やる気満々である。
当初、大フィルのブログではこの公演でバロック楽器を使用すると書かれていたのだが、現在の調律A音=440Hzと異なり、バロックピッチは大体415Hzで半音低い。練習の時、弦楽奏者たちから自分たちが弾いている指使いと、奏でる音のズレがどうしても違和感があって弾き辛いという声が上がったそうだ(幼少時に440Hzの絶対音感を身に着けた音楽家はピッチが低い古楽器演奏に抵抗を覚えるとバロック・チェリストである鈴木秀美さんもエッセイに書かれている)。仕方なく折衷案としてモダン楽器を使用して弓だけバロック・ボウというスタイルで今回は演奏することになったと榎田さんから断りがあった。榎田さんは数日前までバロック・フルートで練習していたのでモダンに切り替えてのフィンガリング(運指)には自信がないと仰ったが、見事に吹きこなされた。さすがに金属製を使用するのは憚れるのでと、何年も使用していなかったという木製のフルートでの演奏となった。
大フィルのコンサートマスターである長原幸太さんからバロック・ボウについての解説もあった。
- 弓が短いのでモダン奏法をしていると、弾いていて長さが足りなくなる
- 毛が少ない
- 弓の反り方が異なり、先のほうでは腕の力が伝わりにくい(つまり音が自然に減衰する)
曲目は、
- ヘンデル/2つのヴァイオリン、チェロと通奏低音の為の四重奏曲 ニ短調
- ペルゴレージ/フルート協奏曲 ト長調
- ラモー/6声のコンセール 第3番
ラモーでは榎田さんが指揮者デビューを飾られた。アンコールはこの第3楽章「タンバリン」を繰り返し、榎田さんがタンバリンを叩いて盛り上げた。
まあ演奏自体は中途半端で、《なんちゃってバロック》という感じだった。僕が気がついた問題点を幾つか挙げよう。
- バロック音楽にしてはテンポの設定が遅すぎる
- アタック、アクセントが効いていない(弾力が足りない)
- 音の減衰が不明瞭(陰影・コントラスト不足)
バッハ・コレギウム・ジャパン、オーケストラ・リベラ・クラシカ、コレギウム・ムジクム・テレマン(テレマン室内管弦楽団)らの演奏に聴き馴染んでいると、やはり彼らの方に一日の長があるなと感じた。普段モダン楽器しか弾いていない音楽家が古楽を演奏するはこれほど困難なことなのかと認識を新たにした。
しかし、積極的にバロック楽器に取り組もうとする姿勢は評価したいし、その心意気やよしとしよう。1年後のBaroquerzの進化に期待したい。
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コメント
雅哉さんこんにちは。やっぱり、そう思いましたか、Baroqers。はっきり言って、ダメ、でしたね。
来年に期待、ですかね。でも、意気込みは買いたいです。
投稿: ぐすたふ | 2009年9月 2日 (水) 07時35分
ぐすたふさん、コメントありがとうございます。
大阪クラシックで大フィルの楽員は全員ノー・ギャラで演奏しているそうなので、余り悪口は書きたくないのです。しかしこの公演は期待が大きかっただけに、残念な内容でした。
でも不甲斐ない出来であったことは、演奏者自身がよく分かっていると想います。今回は練習期間も短かったようですし、仕方ありませんね。でも意欲は十分伝わりましたから、この経験はきっと明日に繋がるだろうと信じます。
投稿: 雅哉 | 2009年9月 3日 (木) 00時00分