恐怖映画の傑作、落穂拾い
7月に下記記事を書いた。
その後、米エンターテイメント・ウィークリー誌が先日発表した「ホラー映画ベスト20」のリストなどを眺めながら、失念していた名作を幾つか想い出したので補足したい。
「シャイニング」(1980)
原作はスティーブン・キング、監督は「2001年宇宙の旅」「時計仕掛けのオレンジ」のスタンリー・キューブリック。正直言ってあまり怖くない。でも、キューブリック独特のシャープでクールな映像が素晴らしい。特に当時開発されたばかりの手ぶれ防止装置「ステディカム」を導入し、移動撮影で絶大な効果を上げている。今となってはそんなに珍しい技術ではないが、映画公開時は画期的だった。また本編で未使用だった空撮のショットが後にリドリー・スコット監督「ブレードランナー」のラストシーンに流用されたことは余りにも有名(ディレクターズ・カット版では削除された)。
「ミザリー」(1990)
こちらもスティーブン・キング原作。監督は「恋人たちの予感」「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナー。兎に角、本作でアカデミー主演女優賞を受賞したキャシー・ベイツが凄い。これこそ正にストーカーの恐怖である。
「悪魔のような女」(1955)
フランス映画。1996年にシャロン・ストーン主演でリメイクされた。原作は推理作家のボワロー&ナルスジャック(ヒッチコックの名作「めまい」の原作も彼ら)。僕はこれをミステリーと認識していたので、エンターテイメント・ウィークリー誌のリストに入っていたのを見て些か驚いた……これ以上書くとネタばれになるので、ここまで。何れにせよ傑作であることは保証する。
「シックス・センス」(1999)
これは先ず、意味不明の邦題が好きじゃない。原題は"The Sixth Sense"。つまり「六番目の知覚」である。上のポスターが示しているのは、
- 視覚
- 聴覚
- 臭覚
- 味覚
- 触覚
- The Sixth Sense
僕は本作をSFと認識していたが、これもエンターテイメント・ウィークリー誌のリストに入っていた。「レディ・イン・ザ・ウォーター」でゴールデンラズベリー賞の最悪助演男優賞および最悪監督賞をダブル受賞したM・ナイト・シャマラン監督は最早、ジョークでしか語られない存在だが(「サイン」「ヴィレッジ」「ハプニング」と、どうしようもない駄作を連発。メジャー映画会社からも見放された)、そのシャマランが生涯唯一創作し得た傑作がこれ(とは言え、1970年生まれの彼はまだまだ元気だが……)。
「悪魔のいけにえ」(1974)
本当はこれを恐怖映画のベストに加えるべきか否か、先月からずっと迷ってきた。その理由は余り僕の好みではない(It's not my taste)からである。これは生理的なものだからどうしようもない。しかし客観的に考えれば、殺人鬼の手で若者たちが理不尽にどんどん殺されていく描写は《世界最恐》と言っても差し支えなく、(R指定の)本作がホラーの歴史を塗り替えた事実は誰も否定できないだろう。その芸術性が認められ、マスターフィルムはニューヨーク近代美術館に永久保存されているという。観て気分が悪くなる人もいるだろうし、場合によっては数日間眠れない夜を過ごすはめになるかも知れない。そのことに関して僕は責任を取れない。ただ一生忘れられない強烈な体験になるであろうことは確かである。勇気のある方はお試しあれ。もし貴方の心臓が弱いのならば、止めた方がいい。これは《禁断の果実》である。
でも「決して見てはいけない」と言われると、ついつい見たくなってしまうのが人間の心理なんだよねぇ……。これはギリシャ神話に登場する竪琴の名手オルフェオとその妻エウリディーチェの物語の頃から全然変わらない真実である。
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