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2009年8月

大阪クラシック 2009 開幕!/熱狂の日、4年目へ

大植英次プロデュース「大阪クラシック」は今年で4年目を迎えた。第1回は7日間で50公演。2年目が60公演、3年目が65公演。そして今回何と!100公演へと増殖した。1年目は1日で8公演全部廻るという芸当が出来たものだが、もはやスケジュールも重なっているし、瞬間移動の能力でもない限り物理的に不可能である。

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上の写真は朝8時、《第1公演》の整理券を貰うために市役所玄関前までずらっと並ぶ人々の列。先頭の若い女性はなんと、A.M.5時に到着したとか。

その《第1公演》は三菱東京UFJ銀行・大阪東銀ビルで大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団のメンバー+大阪音楽大学+相愛大学。大フィルと共演したのは初年と3年目が相愛大学の学生オケで、2年目が大阪音楽大学のみだったから、この2つが合同演奏するのは初めてだろう。

昨年及び一昨年、大植さんは会場を提供した三菱東京UFJ銀行に感謝の言葉を述べた後、「僕もここに口座を開設します!」と仰っていたが、今年は「口座を開きました!」とカードを見せた。

平松市長も登場。

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「時々市民の方々から声を掛けられるんです。『平松さん、(財政が破綻した)大阪の市長になって何もいいことがないでしょう』と」ここで会場から笑い。「でもそんなことはありません。この《大阪クラシック》があるじゃないですか!」やんややんやの大喝采。

ここで大植さんから市長へ、恒例となったネクタイのプレゼント。「賄賂じゃありませんから!」今年は《水都大阪2009》プロジェクトにちなみ、水色のネクタイが贈られた。

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曲目は、

  • メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」
  • チャイコフスキー/組曲「くるみ割り人形」より”行進曲”、"金平糖の踊り”、”ロシアの踊り(トレパック)”、”あし笛の踊り”、”花のワルツ”

今年のテーマは"B"。まずフェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ(Bartholdy)という名前と、大植さんがプロとして初めて聴衆の前で指揮したのがこの序曲で、初心(Beginning)に帰るという意味が込められているのだそう。チャイコフスキーはバレエ(Ballet)音楽ということで。

フィンガルの洞窟」は冒頭の弦のうねりから海の情景が目に浮かび、しなやかでデリケートな表情が魅力的。色彩豊かなパレットで鮮やかに描かれていく。

スリムになって指揮台での動きが敏捷になった大植さん、「くるみ割り人形」ではまたまたジャンプも飛び出した。強弱のニュアンスを大切にした音楽は生き生きと弾み、軽やかで華やかな舞を舞った。

アンコールはノリノリの”トレパック”が繰り返され、聴衆も手拍子で参加した。

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《第5公演》は同じ場所で管楽器の演奏。開場前に並んでいると大植さんが現れて、列の一人ひとりと握手を交わされた。600席の会場は大入り満員。

  • ペーツェル/金管五重奏のための「40のソナタ」より4曲
  • プーランク/フランス組曲

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ペーツェルはTp 2+Tb 3という編成。「今年のテーマとの関連は全員がB管ということで」

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プーランクはそれにオーボエ2、バスーン2、パーカッション、チェンバロが加わった。大変珍しい曲で、これを生で聴く機会は今後一生ないかも知れない。16世紀フランスの作曲家クロード・ジェルヴェーズの舞曲を基にプーランクがアレンジしたもの。旋律は古(いにしえ)の味わいがあって、和声は近代20世紀の響き。時代を超えた握手。こういった作品が聴けるもの大阪クラシックの愉しみである。

《第6公演》は相愛学園本町講堂にて。

  • フンメル/ピアノ五重奏

フンメルはベートーヴェンと同時代の作曲家。劇的な音楽で、ピアノ(浅川晶子)があたかも協奏曲のように大活躍する。これを聴く機会も滅多にないことなので貴重な体験をさせてもらった。

《第9公演》は三菱東京UFJ銀行に戻り、フルート四重奏。約8割の入り。

  • クーラウ/グランド・カルテット
  • カステレード/「笛吹(たち)の休日」〜第4楽章「軽快な笛吹き」

クーラウ(1786-1832)はかつてベートーヴェン(ここでBが登場)と会い、即興のカノンを交換したことがあるそうだ。しかし火災に遭い、楽譜は焼失してしまった。第1、2楽章は大フィル主席の野津臣貴博さんが1stで榎田雅祥さんが4th、第3、4楽章はそのパートが交代となった。アンサンブルの愉しさを満喫。

《第10公演》はカフェ・ド・ラ・ペ。満席。

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  • メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲 第1番
  • シューベルト/楽興の時(アンコール)

メンデルスゾーンが書いたメロディアスなこの楽曲は昔からとても好きだ。中西朋子さんのヴァイオリン、石田聖子さんのチェロが力強く雄弁に鳴り、生で聴く醍醐味を味わった。

《第13公演》は相愛学園本町講堂で、

  • ベートーヴェン/弦楽四重奏 第6番

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佐久間聡一さんのヴァイオリンは切れがあり、畳み掛けるような気迫があって素晴らしい。それをヴェテランのビオラ奏者、岩井英樹さんがしっかりと受け止める。往年のアルバン・ベルク弦楽四重奏団を彷彿とさせる演奏だった。大阪クラシックを機会に結成され今年で3年目。岩井さんによると、同じメンバーで11月にコンサートが企画されているそうだ。

さて、この日唯一の有料(500円)でチケットが即日完売した《第14公演》長原幸太さんのソロ(無伴奏)ヴァイオリンで会場はザ・フェニックスホール。

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  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番
  • イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番
  • 松下 功/マントラ
  • ミルシテイン/パガニーニアーナ

ガット弦を張ったピリオド楽器でバッハを弾くのが当たり前になった現代、スチール弦のモダン楽器でこの大作曲家に挑むのは大変勇気がいる事である。特に問題となるのがヴィブラートをどう掛けるかという難題である。

ロマン派以降の奏法で無自覚に弾いてしまうと、厚化粧の下品なバッハに成り下がる。その典型例が先日、大フィル定期に登場したクリストフ・バラーティである(その時の僕の感想はこちら)。逆にノン・ビブラートを貫くと、スチール弦特有の金属的響きが耳障りとなる。結論から言えば、長原さんのバッハはヴィブラートが過剰になることなく絶妙な匙加減であった。お見事!昔の彼の演奏は攻撃的でギスギスしたところがあったが、最近はその尖った角が取れて丸みを帯びてきた。響きが柔らかくなり、そこに音楽家としての成熟が感じられる。

イザイのソナタはバッハ/パルティータ 第3番の引用から始まる。ここらが今回のプログラムの妙である。そして全楽章にグレゴリオ聖歌「怒りの日」が登場。ダイナミックな熱演だった。

マントラ」では譜面台が5つ用意され、それが客席方向から見て逆V字に配置される。その頂点からスタートし、ソリストが譜面台をジグザグに移動しながら(最後は中央で)演奏するというユニークなスタイル。移動するごとにリズムが変化し、テンポ・アップする。東洋的響きがあり、すこぶる面白い。

長原さんによると昨冬、大フィル企画営業室長の今田さんと飲んでいて「大阪クラシック初日のトリでフェニックスホールを押さえました。長原さん、是非パガニーニ/24の奇想曲全曲を演って下さい!」と言われ、その時は酒の勢いで「いいよ」と言ってしまったとか。しかし準備が間に合わず、プログラムが変更になったのでその代わり最後に「パガニーニアーナ」をしますと。パガニーニの様々な曲が投入された超絶技巧の小品。実に聴き応えのある演奏会だった。

大植さんがこの《第14公演》を最初から最後まで聴いておられ、長原さんが退場された後、聴衆から温かい拍手を浴びていた。正に大植さんあっての大阪クラシックだから。

こうして熱狂の日、第1日目の夜は更けていった。

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大阪クラシック!

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携帯電話から送信。詳しくは後ほど。

 

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大植英次のシンフォニック・ダンス!/青少年のためのコンサート2009

NHK大阪ホールで大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)による「青少年のためのコンサート」を聴いた。

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昨年(ザ・シンフォニーホール)、および一昨年(NHK大阪ホール)の感想は下記。

この模様は例年通りNHKによりテレビ収録され、後日放送される予定。

今回の目玉は何と言っても「シンフォニック・ダンス」これに尽きる。この曲と大植さんの因縁については、昨年2月に書いた記事で詳しく語った。

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曲目は、

  • ドヴォルザーク/スラブ舞曲 第1番
  • シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
  • サン=サーンス/死の舞踏
  • ブラームス/ハンガリー舞曲 第5番
  • ピアソラ/バンドネオン協奏曲より第3楽章
  • ハチャトゥリアン/バレエ音楽「ガイーヌ」より“剣の舞”
  • チャイコフスキー/組曲「くるみ割り人形」より“花のワルツ”
  • バーンスタイン/ミュージカル「ウエストサイド物語」より“シンフォニック・ダンス”

冒頭から、ダイエットしてスリムになった大植さんの身のこなしの軽やかさに驚かされる。腕をブンブン振り回し元気一杯、指揮台でジャンプする場面もあり、往年のレナード・バーンスタインの勇姿を想い起こさせた。持病の首は大丈夫なのかと、見ているこちらがハラハラする位。ベートーヴェン・チクルスや定期でラフマニノフの交響曲を取り上げた頃の、直立不動で精彩を欠いていた様子とはまるで別人だ。

最近の大植さんの音楽表現が《レオポルド・ストコフスキー化》しているということについては何度か書いた。今回その傾向が顕著だったのが狂詩曲「スペイン」。 ピッツィカートの箇所で「ここまでテンポを落とすか?」と驚かせ、その直後に「ここまで加速するか!?」と唖然とさせる。全く予断を許さない演奏。すこぶる面白い。テンポが動かない演奏を好む方なら拒否反応を起こすかも知れないが、僕はこの伸縮自在の意表を突くスタイルを断固支持する。

死の舞踏」は長原さんの調弦を変えたヴァイオリン・ソロ(持ち換え)が大活躍。死神はヴィブラートと共に現れる。

以前は先鋭で攻撃的だった長原さんの音色も、最近ふくよかさを増した。

ピアソラは大植さんの弾力性に富む躍動するリズムが良かった。バンドネオン独奏は三浦一馬さん。1990年生まれの19歳。10歳のときこの楽器と出会ってアルゼンチンに渡り、ネストル・マルコーニに師事した。国際ピアソラコンクールで日本人初、史上最年少で準優勝を果たしたという期待の新星である。

剣の舞」は木琴を大阪市内の中高生10人が演奏(女子9、男子1)。大植さんは手加減するのかと思いきや、フルスロットルで全力疾走!大迫力のスリリングなハチャトゥリアンとなった。生徒たちも全員しっかり食い付いて来て、NHKアナウンサーの「演奏中、大植さんの指揮をしっかり見てましたね」というインタビューに対し、女の子が「凄く緊張してたんですが、(大植さんの顔を見ていると)ほぐれました」と答え、会場は笑の渦に巻き込まれた。

花のワルツ」は繊細で優雅に、ニュアンスを大切にした幅広い表現力が魅力的。

さて、注目の「シンフォニック・ダンス」である。聴衆もフィンガー・スナップと「チャチャチャ」の囁き声で演奏に参加した。大フィルのアキレス腱=トランペットが相変わらず足を引っ張る箇所が散見されたが、大植さんのJAZZYなセンスが光り、大変な名演となった。兎に角、しっかりスウィングしてノリがいい。シンコペーションのリズムも効いている。「マンボ」におけるラテン的情熱の迸り、「クール」ではうだるような湿度の高さ、行き場のない閉塞感、若者たちの焦燥が巧みに描き出され、「乱闘」における叩き付けるような強打はヴェルディ/レクイエム~「怒りの日」の如く、ズシリと腹に響く。その一方でデュエット・ナンバー"Somewhere"や、マリアが歌う"I Have A Love"(私は愛している)は透明感に満ち、清浄な祈りを歌い上げる。ダイナミクス(強弱法)の変化に富み、パーフェクト。文句なし。生きてて良かった。

アンコールは、

  • コープランド/バレエ音楽「アパラチアの春」より”シンプル・ギフト”
  • 外山雄三/「管弦楽のためのラプソディ」より”八木節”

"Simple Gifts"は"The Gift to Be Simple"とも呼ばれ、元々はシェーカー派の歌曲。大植さんがオバマ大統領の就任式でも演奏されたということをコンサートで仰っていたので帰宅して調べてみると、その動画を発見→こちら!観て腰を抜かした。アレンジが「スター・ウォーズ」「E.T.」のジョン・ウィリアムズ!ヴァイオリン:イツァーク・パールマン、チェロ:ヨーヨー・マ、クラリネット:アンソニー・マクギル(メトロポリタン歌劇場の主席奏者)、ピアノ:ガブリエラ・モンテーロという超豪華メンバー。ユダヤ人(イスラエル生まれ)、中国系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、そしてベネズエラ出身者という組み合わせがいかにもアメリカらしい。

アンコールの話に戻るが、朴訥な旋律をしなやかに歌う大フィルの演奏も清々しく、とても良かった。

最後にこれから先、大植さんの指揮で是非聴きたい近代アメリカ音楽を列挙しておく(ベートーヴェンやブルックナーはもういい)。

  • コープランド/バレエ組曲「アパラチアの春」
  • コープランド/交響曲第3番
  • バーンスタイン/交響組曲「波止場」(元々は映画音楽)
  • ハワード・ハンソン/交響曲第2番「ロマンティック」

さあ、明日からはいよいよ熱狂の日々!大阪クラシック 2009の開幕である。

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桂文我/猫間川寄席(8/26)

桂文我さんが世話人を務められている玉造・猫間川寄席に足を運んだ。

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  • 桂  さん都/強情灸
  • 桂   紅雀/いらちの愛宕詣り
  • 桂   文我/莨の火
  • 笑福亭生喬/笠碁
  • 桂   文我/南瓜屋政談

猫間川寄席初登場となるさん都さん。名前の《さん=三》には重要な意味があり、「師匠の都丸が次のような大きな舞台で落語を演じられるような噺家になりなさいという願いを込めて名付けて下さいました。まず一番目が大阪・松竹座。二つ目が京都・南座。そして三つ目が……ここ、さんくすホールです!」やんややんやの大喝采。「今日でその目標の一つを達成することが出来ました」

笠碁」と「南瓜屋政談」はいずれも元々は江戸落語。「南瓜屋政談」は江戸で「唐茄子屋政談」と呼ばれ、中身は人情噺+お裁き。江戸版は柳家三三さんで、また上方版も桂文太さんにより「南京屋裁き」 という演題名で聴いたことがある。

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文我さんがマクラで師匠である故・桂枝雀さんの想い出を語られ、それがとても印象深かったのでここに書きとめておきたい。

枝雀さんは1981年のむ雀さん入門以降、長らく弟子を取っていなかった。その時期に、各地で枝雀さんの独演会があるごとにやって来た若い女性がいたそうである。毎回リュックを背負ってやって来た彼女は、熱心に弟子入り志願を繰り返した。しかし、む雀さんを最後に弟子を取らないと決めていた枝雀さんは「女のお方が上方落語をするのは大変な困難を伴いますし、上方伝統芸能にも義太夫とか女性がやれる道もございます。あんさん、どうぞ他をお探しなさい」 と言われたそうである。ある日、香川県大川郡大内町(現・東かがわ市、徳島県境に接する位置にある)の落語会にも現れた彼女に対し、枝雀さんはその言葉を繰り返した。開演を待たずに田舎の畦道をとぼとぼと肩を落として帰っていく彼女を見送りながら、枝雀さんは文我さんにポツリとこう言ったそうだ。「今度あのお方が来たら、弟子に取ろう。仕方がない、ここまで追いかけて来たんだから」……しかし、その日を最後に彼女は二度と現れなかった。

それからしばらくして紅雀さん(滋賀県出身)が青森県・弘前市の落語会に現れ入門志願し、1995年にそれが認められることになる。枝雀さんにとって14年ぶりの、そして最後の弟子となった。弘前で紅雀さんの顔を見た瞬間、文我さんは「うちの師匠は彼を弟子を取るだろう」と直感したそうである。

まこと縁(えにし)とは人智の及ばぬ摩訶不思議なものであり、運命の女神は時として残酷であることを実感させるエピソードである。

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イタリアよりロレンツォ・ギエルミ登場/バッハ・オルガン作品シリーズ@いずみホール

いずみホールでバッハ・オルガン作品連続演奏会Vol. 5を聴いた。

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いずみホール音楽ディレクターで国立音楽大学教授の磯山 雅さんのお話もあり、ドイツ・アルヒーフ・ライプツィヒ所長のクリストフ・ヴォルフ氏の推薦で毎回異なるオルガニストが来日する。以前このシリーズを聴いた感想は下記。

今回は「ライプツィヒの巨匠バッハ」という副題が付けられ、ライプツィヒ時代の作品が取り上げられた。現在ミラノの聖シンプリチアーノ教会のオルガニストを務めるロレンツォ・ギエルミが登場。

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プログラムは「前奏曲とフーガ ホ短調 BWV548」のプレリュードで始まり、最後はフーガで締めくくられ、その間にコラールを並べるという構成。また休憩後の後半冒頭は「幻想曲とフーガ ハ短調 BWV547」も演奏された。これはバッハが生前オルガン・コンサートを行った時の配列に倣ったものとなっている。

前奏曲やフーガは格調高く峻厳と聳え、音の大伽藍を現前する。その一方で、コラールはよりシンプルで穏やかに響き、安らかな信仰心を奏でる。大変聴き応えのある充実した内容であった。オルガンの多彩な音色に魅了された。またギエルミのテクニックが素晴らしく、鈴木雅明、トン・コープマンなど含め、僕が今まで実演を聴いたオルガニストの中で最高のパフォーマンスであった。

アンコールで演奏されたスカルラッティ(イタリア)のソナタは軽やかで、まるで鳥の囀りのようで良かった。

アントン・ブルックナー、セザール・フランク、カミーユ・サン=サーンス、ガブリエル・フォーレらは教会のオルガニストだった。またエドワード・エルガーの父親もオルガニストだった。だから彼らの作品には明らかに教会音楽の響きが刻印されている。バッハのオルガン作品を知らなければ、19世紀近代ヨーロッパの音楽も理解出来ない。そういう想いをいっそう強くした。

次回は2010年1月14日(木)。「フーガの技法」が取り上げられ、アメリカを代表するオルガニスト、ジェイムズ・デイヴィッド・クリスティが登場する。

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関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《後編》

この記事は関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《前編》と併せてお読み下さい。

ではまず《大学の部》の感想から。

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和歌山大学銅賞)が演奏したマッキー/「翡翠」より I. 雨あがりに… II. 焔の如く輝きは昨年、全日本吹奏楽コンクールでおかやま山陽高等学校の演奏を聴いた(その時の感想はこちら)。I. は静謐な叙情があり、II. は一転動的で、内から湧き上がる生命力に満ちている。リズムが斬新なレッドライン・タンゴといい、先鋭でスタイリッシュな曲を書く大好きなコンポーザーである。指揮者の飯森範親さん(6月に大阪市音楽団の定期演奏会に登場され、映画「おくりびと」への出演や「のだめカンタービレ」で玉木宏の指揮指導をされたりと八面六臂の活躍をされている)も、マッキーのことを自身のブログで絶賛されている(→こちら!)ただ現在までに全日本吹奏楽コンクールで彼の曲を取り上げた団体は5つあるが、金賞は出ていない(2、3)。どうも審査員受けはよくないようだ。

近畿大学・代表)の課題曲は細部が克明に描かれ、Vを取り上げた団体の中では(職場・一般を含め)ピカイチだった。自由曲はハルフテル/第一旋法によるティエントと皇帝の戦い。クリストバル・ハルフテル(1930- )はスペインの作曲家。第一旋法についての詳細はこちら。こういう知らない作曲家の音楽を聴けるというのもコンクールの魅力の一つである。真に重厚な演奏で、不協和音が鮮明に響き、混沌の海に沈まないのがさすがであった。文句なし!

京都橘大学金賞)は伸びやかで、学生らしく爽やかな演奏。自由曲はレハール(鈴木英史 編)/喜歌劇「微笑みの国」セレクション。何度も書いているが僕は鈴木さん編曲による、一連のオペレッタ編曲シリーズが大好きだ。洗練されていて軽快。ある時はウキウキするようで、また別の箇所ではロマンティックでメルヘンの芳香が漂ったりと内容が豊か。世界広しといえど、こういう曲を捌かせたら鈴木さんの右に出るものはいない(ただし、鈴木版「トゥーランドット」は×)。

立命館大学、代表)の課題曲Vは明晰な演奏で、アインザッツ(タテ)や最後の足踏みもよく揃っていた。自由曲はR.シュトラウス(森田一浩 編)/「アルプス交響曲」より。森田さんのアレンジは宇畑知樹/伊奈学園吹奏楽部が委嘱し、2003年に全日本吹奏楽コンクールで初演したもの(金賞受賞)。父親がホルン奏者だったシュトラウスの曲はホルンが肝心要。その核となる楽器が雄弁に鳴っていたし、金管セクションの輝かしいファンファーレが魅力的。木管は緻密で、アルプスの壮大な風景が目の前にパノラマのように展開していった。嵐の場面でサンダーマシーンやウィンドマシーンの使用も見ていて愉しい。正にスペクタクル!なお、「アルプス交響曲」は来年2月に大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団が定期演奏会で取り上げる予定。詳細はこちら

関西学院大学金賞)の自由曲はマスカーニ(宍倉晃 編)/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より。このアレンジは2年前、普門館で大滝実/埼玉栄高等学校の圧倒的名演に打ちのめされた(当時の感想はこちら金賞受賞校のうち、審査の点数も1位だった)。それと比較すると関西学院の演奏は”歌心”が足りず、どうしても聴き劣りがした。埼玉栄は実際に生徒が歌う場面があったり、舞台裏からのトランペットのソロがあったりと様々な仕掛けがあったが、今回それらがなかったのも物足りなかった。

さて特別演奏、森島洋一/大津シンフォニックバンドの曲目は、

  • オスターリング/サンダークレスト
  • 八木澤教司/「優位な曲線」~ヴァシリー・カンディンスキーに寄せて

エリック・オスターリング(1926-2005)はアメリカの作曲家で、今回演奏されたのは1964年に発表されたコンサート・マーチ。40年以上も前の作品なのに、とても洒落た行進曲である。いいねぇ。

八木澤さんの曲は作曲家本人が解説されているのでこちらをどうぞ。絵画シリーズの一つだそうである。

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カンディンスキー(1866-1944)はモスクワ生まれの画家で抽象絵画の創始者とされている。著書に「点と線から面へ」等がある。

優位な曲線」はポリフォニックな響きで、多面的魅力を備えた素晴らしい作品。複雑な曲線(=旋律)が入り乱れ、絡み合い、次第に面(=ハーモニー)を形成していく過程、その雰囲気を巧みに音で描き出す。もともと音楽は抽象的芸術だから、カンディンスキーの世界によく似合う。長生淳さんが作曲した「わけの分からない音楽」とは雲泥の差。やはり選曲のセンスというのは重要である。

今年から全日本吹奏楽コンクール《一般・職場の部》の出場人数は、1団体に付き上限65人までというルールが新たに加わった。昨年全国大会で金賞を受賞した土気シビックウィンドオーケストラ(東関東-千葉県代表)は今年から吹奏楽コンクールに出場しないことに決めたという話を聞いたが、この新しい規定が原因なのだろうか?今回、大津シンフォニックバンドの特別演奏は明らかに65人を上回る団員がステージに上がり、「大人数でもこれだけ精密な演奏が出来るんだ」ということを堂々と示 してくれた。兎に角そのサウンドの厚み(音圧)が凄かった。それは全日本吹奏楽連盟に対する静かな抗議であるように僕には感じられた。

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関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《前編》

8月23日(日)、尼崎市総合文化センターで開催された関西吹奏楽コンクール《職場・一般の部》《大学の部》を聴いた。

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感想を書く前に、まずお断りをしておきたい。僕はプロに対しては感じたまま辛辣な意見を時に書くけれど、アマチュアに対しては悪口を書かないということを基本ルールとしている。しかしコンクールに関してはその限りではない。

「みんな頑張っているのだから、酷いことを書かないで!」というご意見を何度か頂いた。成る程、アマチュアなのだから「頑張っている」ことだけで評価されるべきだという価値観も当然あるだろう。しかし、他と比較・審査されランク付けされるのがコンクールの本質だと僕は想う。

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なお、今年3出休み(全国大会3回連続出場した翌年はコンクールに出場できない)のため特別演奏が予定されていた龍谷大学吹奏楽部はインフルエンザのため辞退した。

《職場・一般の部》17団体、《大学の部》9団体、そして特別演奏(3出休み)の大津シンフォニックバンドと総計27団体の演奏全て聴いた(×持ち時間各12分 = 約5時間半)。その中から特に印象に残ったところを書いていこう。

昨年のコンクールの鬼門は課題曲 I 「ブライアンの休日」であったということは既に書いた。今年の場合もどうやら課題曲 I 「16世紀のシャンソンによる変奏曲」がそれに該当するようだ。聴いた全団体のうち、課題曲 I を選んだのは2団体のみ。そしてその何れも金賞を受賞出来ず。来週開催される《高校の部》においても、淀工、天理高等学校など昨年の代表高は課題曲 I を回避している。

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西宮市吹奏楽団金賞)の課題曲は各フレーズの処理が絶妙で、音楽の流れが良かった。ピッチもよく合っていた。自由曲はヒナステラ(仲田守 編)/バレエ組曲「エスタンシア」より。そう、今を時めくグスターボ・ドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラが最も得意としているラテン(アルゼンチン)の作曲家である。リズムが面白いのだけれど、終幕の踊り(マランボ)は些か大人しく、こぢんまりまとまってしまった。南国の熱気が感じられない。この曲はもっと弾けた方がいい。だってシモン・ボリバルがアンコールでする時は全員が立ち上がり、踊り狂いながら演奏するのだから(動画はこちら!)。ただコンクールという性質上、そういうノリは難しいだろう。つまり関西代表に選ばれなかったのは選曲に問題があったからではないだろうか?

創価学会関西吹奏楽団・代表)は昨年、まさかのダメ金賞を受賞するも代表には選ばれず)だったが、今回は順当な結果となった。課題曲のマーチはテンポが揺らがず手堅く。自由曲はリスト(田村文生 編)/バッハの名による幻想曲とフーガ。指揮は伊勢敏之さん。全体の見通しがよく、透明度の高い演奏だった。ここは昔からホルンが最強のバンドということで有名だが、今年もその咆哮が凄かった。コンクールでのパフォーマンスだけで評価するなら、兵庫芸術文化センター管弦楽団や、大フィルを含む在阪オケのどこよりもホルン・パートの実力はこちらが上だろう(ただしプロは本番前4日間で仕上げてくるが、アマチュアの場合、1曲を練習する期間が4ヶ月以上もある。だから単純に比較出来ないことも事実である)。伊勢さんは四条畷学園高等学校も指導されており、そちらも昨年はダメだったが、さて今年はどうだろう?

宝塚市吹奏楽団、代表)の課題曲はリズム処理がバッチリだった。自由曲は高 昌帥(こう ちゃんす)/ウインドオーケストラのためのマインドスケープ。オーボエとサックスのソロが抜群に美しかった。それから終盤のフルート・アンサンブルの素晴らしさも特筆に値する。文句なしの関西代表であった。

尼崎市吹奏楽団、代表)はさすがにアンサンブルの精度が高かった。指揮者は辻井清幸さん(大阪音楽大学名誉教授。現在出版されている「大阪俗謡による幻想曲」スコアの校訂者でもある) 。課題曲は遅めのテンポ。強弱のメリハリはあるが、楷書的で面白みがない。自由曲はスパーク/ア ウィークエンド イン ニューヨーク。飯森範親/大阪市音楽団の演奏で既に聴いたことがある(その時のレビューはこちら)。辻井さんの解釈は《生真面目なジャズ》で、どうも躍動感がない。コンクールというものは演奏が正確無比ならそれでO.K.なのかも知れないけれど……

三木ウィンドフィルハーモニー)の課題曲は速めのテンポで快調。自由曲は長生淳/レミニサンス。ごめんなさい、僕は正直こういった曲の良さが皆目分からない。アンサンブルという点では縦と横がしっかり揃っていたんじゃないかな。

曲の魅力が理解出来ないということで言えば、まちかね山吹奏楽団銀賞)が演奏したドス/シダスとか、Rits Wind Orchestra土賞)のアッペルモント/アイヴァンホーも同様。聴いてて詰まらない。シダスは2005年に宝塚市吹奏楽団が、2008年には近畿大学吹奏楽部が全日本吹奏楽コンクールで演奏しているのだが、そこそこの人気があるのは何故だろう?

箕面市青少年吹奏楽団)が選んだ自由曲、天野正道/交響曲第9番「海のオーロラ」よりで感じたことは、天野さんは「GR」もそうなのだけれど、美しい旋律が次から次へと登場し、聴いていて刹那的には心地良い。しかし構成に脈略がなく、散漫で統一感に欠ける。これがこの作曲家の欠点だと僕は想う。

大住シンフォニックバンド銀賞)の自由曲、櫛田胅之扶(くしだてつのすけ)/一休禅師〜いま宿花知徳の道へ〜は作曲家が得意とする京都を舞台にした作品だけに、魅力的な楽曲だった。たおやかな旋律、竹林を抜ける風、涼やかな鈴の音色。稲穂の揺らぎ、お寺のわび・さび(侘・寂)。そんな要素がギュッと詰まっていた。

M's Sound Factory銀賞)の自由曲はバーンズ/交響曲第3番より第1・3・4楽章。特に第3楽章、生後半年で亡くなった娘に捧げられた”ナタリーのために"は絶品。澄み切った哀しみに満ちた、限りなく美しい音楽である。

あと、心に残る演奏を聴かせてくれたのが奈良のセントシンディアンサンブル銅賞)。先ず登場した瞬間にオレンジ色のジャケットが目を惹いた。福島秀行さんの指揮ぶりは例えば伊勢さんとか淀工の丸谷先生のようにイン・テンポを守るカチッとしたものではなく、自由度が高い。団員の自主性を尊重しているように見受けられる。そして踊るように指揮台でよく動く。課題曲は瞬発力があり、まるで少女がスキップするような情景が目に浮かんだ。強弱のコントラストも鮮明。自由曲はオキャロラン(建部知弘 編)/ケルト民謡による組曲第2番「オキャロランの花束」より。ターロック・オキャロラン(1670-1738)はアイルランド生まれの盲目のハープ奏者・作曲家。鄙びた雰囲気で民族色豊かな曲の数々に彩られ、とてもチャーミングな花束だった。生き生きとリズムが弾み、太鼓の響きがリバーダンスを連想させる。そしてオーボエとソプラノ・サックスがバグバイプの音色にも似た雰囲気を醸し出し、音楽をする歓びが客席に伝わってきた。

長くなったのでとりあえずこの辺で。《大学の部》と大津シンフォニックバンドの感想は《後編》にてお届けする予定。

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《再掲》丸谷明夫×下野竜也ふたたび/全ての吹奏楽ファンよ、大阪に集え!

昨年、指揮者の下野竜也さんと淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部の丸谷明夫先生(丸ちゃん)がタッグを組み、大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏で吹奏楽ファンに向け《スペシャルライブ》が行われ大入り満席だった。

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その様子は下記記事に詳しくレポートした。

そして今年、奇跡の夜が再び大阪に訪れる!

Maru

2009年12月18日(金)ザ・シンフォニーホール。19時開演。下野竜也/大フィル、司会は丸ちゃん。曲目は、

  • J.F.ワーグナー/行進曲「双頭の鷲の旗の下に」
  • アーノルド/管弦楽組曲「第六の幸福をもたらす宿」
  • グラズノフ/サクソフォン協奏曲(独奏:平野公祟)
  • A.リード(中原達彦 編)/エル・カミーノ・レアル(管弦楽版)
  • シベリウス/アンダンテ・フェスティーヴォ
  • ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲

チケットの購入はチケットぴあ(Pコード:327-806)あるいは、大阪フィル・チケットセンター(Tel: 06-6656-4890)へ。

いやぁ、何が嬉しいって「題名のない音楽会」の吹奏楽人気ランキングでもトップテン入りを果たした甘美でロマンティックな大傑作「第六の幸福をもたらす宿」が聴けることだろう。元々は、イングリッド・バーグマン主演の映画音楽である。

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考えてみたらこれだけ足繁くコンサートに通っているのに、アーノルドのオーケストラ曲を生で聴くチャンスは今まで皆無に等しかった。たとえ東京に住んでいても「第六の幸福をもたらす宿」オケ版を聴いたことがある人なんて、殆どいないのでは?

昨年の《スペシャルライブ》は淀工の日程に合わせ、普門館で行われた全日本吹奏楽コンクール(金賞受賞)の直後、10月23日に開催された。今年は12月。これは恐らく、11月29日に開催される全日本マーチングコンテストの会場が今年から大阪城ホールになるため、関西吹奏楽連盟理事長でもある丸ちゃんがそれまで多忙を極めスケジュールが空かないためではないかと推察する(全日本吹奏楽コンクール 高校の部は10月25日)。ちなみに来年の淀工グリーンコンサートは1月16日(土)17日(日)に計4回、ザ・シンフォニーホールで開催される。

ここ5年くらい、どうして大フィルは「大阪俗謡による幻想曲」を頑なに演奏しようとしないのか?とか、下野さんは九州交響楽団とのコンサートでカレル・フサ/「プラハ1968年のための音楽」を取り上げられたのだから、大阪でも是非して欲しいとか不満がないわけではない。しかし、それでも今から12月が待ち遠しくて仕方がない!

下野さん、是非いつの日か保科洋「風紋」管弦楽版も取り上げてくださいね!

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ジェームズ・キャメロン監督「アバター:Avatar」特別3D映像公開イベント体験記

アカデミー賞で作品賞・監督賞など全11部門を制した「タイタニック」から12年。「エイリアン2」「ターミネーター2」などで一世を風靡したジェームズ・キャメロン監督の最新作は久しぶりのSF大作「アバター」である。

Avatar

その驚異の映像が8月21日に世界60ヶ国で同時解禁となり、日本ではTOHOシネマズの全国7劇場(六本木、川崎、横浜、名古屋、梅田、なんば、久山)と「新宿バルト9」限定で特別3D映像公開イベント開催された。僕は梅田TOHOシネマズでそれを体感してきた。

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キャメロンと撮影監督ビンス・ペイスにより共同開発されたフュージョン3Dカメラシステム(Fusion 3D Camera System)による映像で、3Dメガネをかけて鑑賞する仕組み。この技術は既にドキュメンタリー映画「ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密」で使用されている(僕は天保山にあるサントリーミュージアム/アイマックスシアターで観た)。

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上映時間約20分。吹き替えではなく、日本語字幕が浮き上がってくる映像だった。

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従来のびっくり箱のように飛び出す3Dというよりはむしろ、奥行きのある映像を愉しむという感じかな。特にCGの映像は効果的だが、実写の人間は立体感が余り感じられない。この程度ならむしろ、3Dメガネが煩わしいので2D(平面)映像で十分という気がした。

特撮は「ロード・オブ・ザ・リング」のWETAが担当しているので映像は確かに凄い。アバターやクリーチャー、戦闘ヘリの質感が克明で、コンピューターによる《作り物》という気がしない。アカデミー視覚効果賞くらいは獲れるのではないだろうか。ただアバターのデザインが洗練されていないし、恋愛があったりとストーリーとしては《微妙》かな?キャメロンの系譜としては「エイリアン2」「ターミネーター2」の質的高みにまで届かず、せいぜい「アビス」レベルにとどまる可能性もあるのではという気がした(「アビス」も特撮だけは素晴らしかった)。上映が終わり場内が明るくなったときの観客の反応も、興奮しているというよりはむしろ、「こんなものか」と戸惑っているような雰囲気だった。

音楽は「エイリアン2」「タイタニック」のジェームズ・ホーナー。まだポスト・プロダクション(編集作業)中なのでオーケストラによるサウンド・トラック用レコーディングは行われていないらしく、シンセサイザー(電子音)?による擬似オーケストラ・サウンドであった。

なお、予告編はこちらから見ることが出来る。

映画本編の公開は12月18日より。

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桂吉弥の新お仕事です in 繁昌亭(8/20)

天満天神繁昌亭で桂 吉弥さんの落語会。

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演目は、

  • さん都/二人癖
  • 吉 弥/天王寺詣り
  • まん我/恐妻(「船弁慶」前半部)
  • 吉  弥/親子茶屋

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天王寺詣り」は雀三郎さんに稽古をつけて貰ったのだとか。決して面白いネタではないが、吉弥さんはこの噺の持つ雰囲気が味があって好きなのだそう。僕が「天王寺詣り」を聴くのはこれが5人目なのだが、思い入れがあるせいか熱がこもっていて、彼の高座が一番良かった。

親子茶屋」は今年の4月7日、東京・紀伊国屋サザンシアターの「柳家三三、桂吉弥ふたり会」でネタ下ろしされたもの。恐らく大阪では初披露なのでは?これは米團治さんから稽古を受けたそう。僕は過去に春團治さんや文太さんの「親子茶屋」を聴いていて、それらと比較すると優等生的というかピントがボケた印象を受け、途中ウトウト眠たくなった。

ここ一年半くらい吉弥さんを集中的に聴いてきた。最近漸く分かってきたのは、繁昌亭大賞を受賞したとはいえ彼は今年11月で入門15年目を迎える若手であり、まだまだ発展途上だということ。考えてみたら当たり前のことなのだけれど。

吉弥さんのやり慣れたネタ、例えば「ちりとてちん」「七段目」「高津の富」「くっしゃみ講釈」などでは空恐ろしいくらいの実力を発揮し、圧巻の高座を聴かせてくれるのだけれど、ネタ下ろししたばかりの噺ではそれ程でもなかったりする。つまりムラがあるのだ。だから今から10年後、あるいは20年後に彼の「親子茶屋」を聴いたらきっと今とはぜんぜん違ったものになっていることだろう。その日を愉しみに待ちたいと想う。

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上の写真は終演後、お見送りに出てきた吉弥さんを取り囲む聴衆の群れである。

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月亭遊方のゴキゲン落語会/「親分の謝罪」「いとしのレイラ ~彼女のロック~」

ワッハ上方・小演芸場にて月亭遊方さんの落語会を聴く。

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大入り満員。補助椅子が会場に収まりきらず、通路にはみ出して聴く人もあるほど。

演目は、

  • 幕開前戯噺(遊方の日常あれこれ)
  • 親分の謝罪(遊方 作)
  • いとしのレイラ ~彼女のロック~(遊方 作)

幕開前戯噺では、のりピーの話題、遊方さん得意の天王寺(ホームレス)ネタ、自身のヅラ疑惑(アンケートに書かれていたそう)などで大いに盛り上がる。幼い頃から癖毛が強く「頭ラーメン」と呼ばれていたとか。端から会場の高揚感は頂点に。

親分の謝罪」は永六輔さんのエピソードを元に書かれたもの。使用許可を得るべく手紙を出したところ、数日で丁寧な返信が届いたとのこと。新幹線グリーン車にて、携帯で迷惑電話をする男の噺。「できちゃった落語」で初演し、今回が2回目。マルクス兄弟のドタバタ(slapstick)・コメディ映画を彷彿とさせる面白さがあった。

いとしのレイラ ~彼女のロック~」は心斎橋CLUB QUATTRO(クラブクアトロ)で開催された初の独演会<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>月亭遊方 独演会情報</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>(1998/02/11)で初演されたもの。遊方さんによれば、これを切っ掛けに創作落語でやっていけるという自信を持った思い入れ深い作品だそうだ。以下、遊方さんの公式サイトから作品解説の引用。

レイラと名のる女によって、ひとつのバンドが変わろうとしている。「ロックとは何ぞや」。その答えがここにある?!

いやぁ、腹を抱えて笑った。人間の弱さ、愚かさが愛おしい。特に遊方さんがギターを抱えて歌う場面は歌詞が可笑しくて、もう最高!

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ゴキゲン落語会はこれが30回目。過去は毎回ゲストがあったが、リニューアルされ遊方さん"ワン・アンド・オンリー"に。それでも時間が押して、撤収しなければならない21時30分を過ぎるくらい盛り沢山の内容だった。遊方さん一人で十分愉しい。是非このまま突っ走って下さい!

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「らくごのご」復活!/桂ざこば一門会

天満天神繁昌亭で桂ざこば一門会を聴く。

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幕が上がると出演者五人が横一列で勢揃い。挨拶が終わり、ざこばさんが「好きなテレビ番組をそっちから順番に言っていって」そこでひろばさんが「鶴瓶の家族に乾杯」ですと答えると、ひろばさんを睨みつけたざこばさん、「ほしたら鶴瓶の弟子になったらよかったやないか!」と吠える。ここで聴衆は大爆笑。ちなみに鶴瓶さんが上方落語協会の副会長に選ばれたとき、ざこばさんは鶴瓶さんに向かって「よりによって、なんでお前が副会長やねん!」と怒っていたそうだ(このエピソードは鶴瓶さんのライブで聞いた)。

そしてざこばさん、今日は「らくごのご」をしますと。一門の人たちも寝耳に水だったようだ(テレビ「ざこば・鶴瓶らくごのご」について、詳しくはウィキペディアをご覧あれ→こちら)。この番組は放送中に僕も何度か見たが、鶴瓶さんがそつなく三題噺をこなしオチまで鮮やかに決めるのに対して、ざこばさんは毎回四苦八苦して、今にも泣き出しそうになることもしばしば。どうして自分の首を絞めるようなことをもう一度やろうというのかと、ざこばさんの発言に吃驚した。

客席からお題を募り、最終的に《酒井法子》《ぶれる》《襲名》に決まった。

即興で三題話に挑戦するのは二人。前座のとま都さんは今回が一門会初参加で繁昌亭も初めて。可愛そうだからと免除に。そこでざこばさん、「オレはトリやる!最後に古典でビシッと決めんと」と逃げてしまい、「後の三人でくじを引け」…お題が書かれた三枚の色紙を裏返しにして《酒井法子》を引いた人がすることになった。先ず決まったのが都丸さん。ざこばさんはさらにシャッフルして、残りの二人に引かせた。表に返すと《ぶれる》と《襲名》。つまり、ざこばさんの手元に《酒井法子》が残ったのである!結局、言い出しっぺがやる羽目に。

  • ざこば、都 丸、都んぼ、ひろば、とま都/ご挨拶
  • とま都/子ほめ
  • 都 丸/三題噺
  • ざこば/三題噺
  • ひろば/はてなの茶碗
  • 都んぼ/遊山船

都丸さんもざこばさんの三題噺も途中で上下(かみしも)が逆になるし、もうグダグダ。困り果てた二人の様子に、会場はバカ受け。「早く降りろという空気をビシビシ感じます」とざこばさん。客席から拍手。「ここで拍手が起こるっちゅうことは……そういうことやねんな」と肩を落とす。「でもサゲを言わないと降りられへん。(客席から笑い)う〜ん、『ごめんなさい』と頭をサゲる」でなんとか無事、終了した。

中入り後に登場したひろばさん、「ざこば師匠からお客さんにしっかり謝っといてと伝言されました。落ち込んだ師匠はもう先に飲みに行ってしまわれました」「ボロボロの師匠方の後だと、とても気が楽です」

続いて都んぼさん、「都丸師匠からも、お客さんに謝っといてと言われました」

しきりに反省されていたお二人だが、観客の立場としては大変貴重な体験をさせて頂いた。ベテランが困り果てている姿を見て笑うという趣向は、サディスティックな面白さがある。むしろ若手が三題噺をしても、これほど盛り上がらなかったのではなかろうか?

ざこばさん、都丸さん、これに懲りず、また「らくごのご」にチャレンジして下さいね!

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桂雀々落語のひろば Vol.40

8月16日(日)、大阪モノレール・千里中央駅に直結した千里朝日阪急ビル4F A&Hホールで桂雀々さんの落語会を聴く。この会は今年で16年目、ちょど40回を迎えたそうである。

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  • 優々/子ほめ
  • 春菜/御先祖様(春蝶 作)
  • 雀々/疝気(せんき)の虫
  • 文三/崇徳院
  • 雀々/どうらんの幸助

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春菜さんは8月30日(総選挙の日!)に亡き父親の名跡”春蝶”を襲名するが、そのあいさつに笑福亭仁鶴さんの家を訪れると、黒紋付に袴で迎えられたそう。お膳が用意され、そこには白のかまぼこ、白天然祝鯛、いくらと大根(白なます)など目出度い品々が並び、仁鶴さんから「春蝶さんは志半ばで倒れられました。貴方はその遺志を継ぎ、お父さんの見果てぬ夢の続きを追ってあげて下さい」と激賞され、号泣したとのこと。仁鶴邸を後にして次に訪れたのが桂ざこば邸。呼び鈴を押すとラフな格好で出てきたざこばさん、「おう、まあ入れや」……春菜さんが正座して口上を述べはじめると、「ややこしいことはもうええから、串カツでも食いに行こうや」そして飲むこと8時間半!(←噺家の語ることなので、話半分に聞いておいた方がいいかも)まるで落語みたいな人だ。いかにもざこばさんらしいエピソードに腹を抱えて笑った。勿論、会場も大受け。

文三さんはダイエット前はコンビニの「小倉マーガリン」が大好きで、朝食としてそれを3個(=計1600Kcal !)平らげた上にカツカレーにも手を出していたとか。どんなものか帰って調べてみると、こちらのサイトに写真を見つけた。こ、これは凄い!文三さんの「崇徳院」はいつもの賑やかな調子で気のいい”熊五郎”を演じ、明るく愉しい高座であった。

雀々さんはサンケイホールブリーゼで開催される独演会で掛ける「地獄八景亡者戯2009」の予告から。噺の中で酒井法子のことに触れないわけにはいかない、「のりピー」が「らりピー」になったとか、「蒼いうさぎ」ならぬ「白いけむり」だとか。先日亡くなったばかりのマイケル・ジャクソンをどこで出そう、山城新伍さんを登場させたら生々しくなるな、とか舌好調!

疝気の虫」のマクラは沖縄・小浜島にあるリゾート・ホテル「はいぶるむし」(前・ヤマハリゾート)での落語会のエピソード。集まったお客さんは「ジジババババババババ…」ばかり。そのリズミカルな口調が心地よい。

どうらんの幸助」はやはりどこか、師匠の枝雀さんを彷彿とさせるところがあった(枝雀版「胴乱の幸助」DVDが今、手元にある)。ただ枝雀さんが怜悧な分析に基づき緻密な計算でコントロールされた高座であるのに対し、雀々さんはむしろ勢いで一気呵成に魅せる芸という気がする。弟子たちは師匠から芯となるものを受け継ぎつつ、それぞれ独自の道を歩んでいる。噺家さんから言わせたら多分、「そんなの当たり前」のことなんだろうな。

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「崖の上のポニョ」全米興行成績ランキング第9位に

ディズニーの配給で8月14日に北米公開された「崖の上のポニョ」が週末興行成績ランキングで第9位にランクインした。詳細は→こちら

これは日本映画として初めてトップテン入りを果たした「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」(約3000の映画館で公開)以来の快挙。

「ポニョ」の上映館数は927であり、トップテンに入った映画のうち最も少ない数である(「G.I.ジョー」なんか4007館)。つまり、1館あたりの観客動員数に換算すると、もっと上位にくることになる。8月17日現在、Yahoo ! Moviesユーザー評価の平均もA-。大変好評である。これもディズニー(およびピクサー)のチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるジョン・ラセターの献身的努力のおかげと言えるだろう。

今年の7月24日、カリフォルニア州サンディエゴで開催された「コミックコンベンション(コミコン)」における次の写真を見てほしい→こちら!写真、宮崎駿監督の向かって右に立っているのがジョン・ラセター。何と嬉しそうな笑顔であろうか(宮さんの左がロン・クレメンツとジョン・マスカー。「リトル・マーメイド」「アラジン」を共同で監督し、今年末は新作"The Princess and the Frog"の公開を控えている)。コミコンのパネル・ディスカッションに登場した宮さんは「ジョン・ラセターさんとの友情で、ここにやって来ることができました」と観客に挨拶、それに対し司会のラセターは「宮崎さんの隣にいられてうれしい!」と子供のようにはしゃいでいたとか。

ラセターさん、ありがとう。

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保科洋「風紋」管弦楽版 初演!/保科アカデミー室内管弦楽団

8月15日(土)、保科アカデミー室内管弦楽団”アンサンブル=ハルモニア”創立15周年記念特別演奏会を岡山シンフォニーホールで聴いた。

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作曲家・保科 洋さんは40年以上に渡り、岡山大学交響楽団の常任指揮者としてオーケストラを育ててこられた。その教え子たちが、秋山 隆さんを中心として結成したのが保科アカデミー室内管弦楽団である。殆どが社会人のアマチュア・オーケストラだが、一部現役大学生も参加している。

今回の指揮は秋山 隆さん(プログラム前半)と保科 洋さん(「悲愴」およびアンコール)。お二人とも暗譜であった。

曲目は、

  • 保科 洋/「風紋」(原典版)管弦楽版 初演
  • 保科 洋/管弦楽のための変奏曲
  • チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
  • (アンコール)保科 洋/管弦楽のための「懐想譜」  

「風紋」は1987年の全日本吹奏楽コンクール課題曲。今でも絶大な人気を誇り、つい先日放送されたテレビ朝日「題名のない音楽会」の吹奏楽曲人気ランキングでは第5位にランクインした(この曲が演奏された故だろうか、岡山シンフォニーホールには中高生らしき集団が20人くらい詰めかけていた)。課題曲なので5分程度に収まるようカットされていたものを、当時のスケッチを元に改訂されたのが1999年の原典版(original version)。それがさらに管弦楽用に書き直されて今回の初演となった。演奏時間は約8分。

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僕は吹奏楽オリジナル版の「風紋」が大好きなのだが、ヴィオラ・チェロ・コントラバスによる風のうねりに乗って、ヴァイオリンがたおやかな主題を奏でる冒頭部からオーケストラ・バージョンも一気に魅了された。何と美しい音楽であろうか!元々オーケストラのために書かれたのではないかと錯覚するくらい耳に馴染み、心に沁みた。これは今後プロのオーケストラの重要なレパートリーとしても定着していくだろう、いや、そうなってもらわなければ困る。

保科 洋という作曲家は日本の楽壇において、今まで不当な評価しか受けてこなかったように想う。その理由を僕なりに考えてみると、

  1. 調性音楽を守ってきたその姿勢が、シェーンベルクの十二音技法発明以降、調性を否定した音楽が主流となった20世紀において「古めかしい作風」と見なされたこと。
  2. 主にアマチュアの学生たちを主体に活動され、しかも岡山という地方都市であったため、日本の文化的中心地=東京にまでその成果が伝わりにくかったこと(ザルツブルクのモーツァルトや、ボン生まれのベートーヴェンだって、大都会のウィーンに出てきた)。

等が挙げられるだろう。しかしエーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルトやニーノ・ロータの音楽が再評価され、調性音楽の復権が顕著になっている現在、保科 洋も”再発見”されるべき作曲家であると僕は確信する。

管弦楽のための変奏曲は1998年に岡山大学交響楽団定期演奏会のために書き下ろされたもの(初演の指揮も秋山 隆さん)。その翌年、大阪市音楽団によるCD「保科洋作品集」のために吹奏楽版も編作された。テーマと5つの変奏、そして終曲から成る(吹奏楽版は第2変奏をカット)。保科さんの親友である兼田 敏さん(現在は原田学園鹿児島情報高等学校を指揮されている屋比久 勲先生が十八番にされている「吹奏楽のためのパッサカリア」が何と言っても有名)への哀歌として作曲された。終曲はあたかも”葬送行進曲"のように荘重に響く。僕はプロコフィエフ/バレエ音楽「ロミオとジュリエット」〜”ティボルトの死”とか、ウォルトン/映画音楽「ハムレット」の葬送行進曲などを連想しながら聴いた。

オーケストラに関しては特に弦の音色が素晴らしかった。秋山さんの指揮も明晰で、特に「風紋」の序奏部ではppからpまで強弱の微妙な違いが鮮明に耳に聞き取れる、繊細な演奏であった。

保科 洋さんが指揮する「悲愴」は昨年末、大阪のザ・シンフォニーホールで岡山大学交響楽団による演奏を聴いたが、その時は正直言って学生オケにこの曲は荷が重すぎると僕には感じられた。特に第4楽章は作曲家の絶望から虚無感に至る”慟哭の音楽”である。死とは無縁の青春まっただ中に生きる若い彼らに、この世界を描くことは到底無理な話であり、これがアマチュア・オーケストラの限界なのかなと想った。

しかし今回、保科アカデミー室内管弦楽団の演奏を聴いて、相当異なる印象を受けたので驚いた。ちゃんと第4楽章で《孤独》、《生きることの哀しみ》、《死の受容》といったもろもろの感情が伝わってきたのである。それは楽員の技術的高さと共に、彼らが今まで培ってきた人生の喜怒哀楽がしっかりとそこに反映されているからではないかという気がした。大変聴き応えのある「悲愴」であった。

保科さんの解釈も岡大オケの時より更に熱を帯び、勢いがあった。特に第1楽章展開部では余りの激しい指揮ぶりにタクトが吹っ飛んでしまうという、微笑ましいハプニングも。学生オケの時は手加減していた音楽表現を、このオーケストラではより自由自在に出来るという歓び、信頼で結ばれた師弟の絆がそこに感じられた。

アンコールの「懐想譜」は兵庫教育大学定年退官に際し、同大学吹奏楽部との懐かしい想い出を振り返りながら作曲されたもの。まるでディーリアスのTone Poem(音詩)のような、優しくてどこか懐かしい音楽である。この曲はYou Tubeで動画が見れる→こちら!指揮は秋山さん。今回アンコールで指揮されたのは作曲家本人である。

また30ページの分厚いプログラムと共に、保科さんが執筆された20ページに及ぶ冊子「楽曲分析と演奏解釈 ~「悲愴」「風紋」を例として~」が付いてきた。

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「のだめカンタービレ」の用語で言えば、《アナリーゼ》といったところだろうか。とても高度なことが書かれていて、含蓄のある音楽論となっている。吹奏楽をする人にとっても「風紋」を演奏する上で、とても参考になるだろう。

今回のコンサートと同一プログラムで、すみだトリフォニーホールにおいて東京公演が8月29日(土)に開催されるとこのこと。東京公演に関する公式サイトは→こちら

 記事関連blog紹介:(同じ演奏会を聴かれた方の感想)

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「崖の上のポニョ」全米公開と、ジョン・ラセターの憂鬱

宮崎 駿監督の「崖の上のポニョ」がディズニーの配給により8月14日に全米公開された。上映館数はこれまでの宮崎アニメで最多となる927館。

英語版の吹き替えは宗介の父親が「ボーン・アルティメイタム」のマット・デイモン、ポニョの母が「エリザベス」「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」のケイト・ブランシェット、父親が「シンドラーのリスト」「スター・ウォーズ エピソード1」「バットマン・ビギンズ」のリーアム・ニーソンと超豪華である。はっきり言って日本語版の所ジョージなんか最悪だったから、むしろアメリカ版の方が良いかも。ブルーレイは北米版を買おっと。

Ponyo

アメリカ主要紙の評価は軒並み高い→こちら。ニューヨーク・タイムズがAで、低くてもBまで(ちなみに僕の評価はA+。公開当時のレビューはこちら)。

有名な映画評論家Roger Evertのレビューは手放しの絶賛である。以下一部引用してみよう。

This poetic, visually breathtaking work by the greatest of all animators has such deep charm that adults and children will both be touched.
(全てのアニメーターの中でも最も偉大な人物の手で創作された、この詩的で視覚的に息を呑むような仕事は深い魅力を持ち、大人も子供も感動することだろう)

Miyazaki is known as the god of American animators, and Disney has supplied “Ponyo” with an A-list cast of vocal talents.The English-language version has been adapted by John Lasseter and, believe me, he did it for love, not money.
(宮崎駿はアメリカのアニメーターの間で神として崇拝されており、ディズニーは「ポニョ」に対してAクラスの声優陣を配した。英語版はジョン・ラセターの手で製作され…そして僕を信じて欲しい…彼はお金のためではなく、愛ゆえにそれを成し遂げたのである)

「崖の上のポニョ」はきっと来年のアカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされるだろう。現在、ディズニー(およびピクサー・アニメーション・スタジオ)のチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるジョン・ラセターにとっては頭が痛い話である。なぜならピクサーの新作、「カールじいさんの空飛ぶ家」(公式サイトはこちら)とオスカー対決をしなければならないからである。

ディズニーに復帰する前からピクサーの監督兼、製作チームのトップを長年務めてきたラセターは熱烈な宮崎アニメ・ファンである。最初、完成したばかりの「ルパン三世 カリオストロの城」を観て魅了された彼は1980年代から宮さんと交流を深め、「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」の北米公開に尽力してきた(英語吹き替え版はピクサーが担当)。そしてその友情の記録は「ラセターさん、ありがとう」という一本のDVDとなった。

Lasseter

「カールじいさんの空飛ぶ家」についてのインタビューで、ラセターは「すべてのピクサー作品が宮崎作品へのオマージュ」であると断言し、宮崎アニメを参考にして静かな場面を大切に「カールじいさん」の物語を組み立てたと語っている。

ラセターは「千と千尋の神隠し」や「ハウルの動く城」がアメリカで公開された年、ピクサーの新作を発表せず、アカデミー賞での直接対決を避けてきた。自ら監督した「カーズ」の時なんか、わざわざ公開を翌年に延期したくらいである。これはピクサーが賞を欲しいからしたことではない。敬愛する宮崎作品と競うということは彼にとって耐え難いからである。

しかし今やディズニーのトップにまでなってしまった以上、もうそういうわけにはいかない。ディズニーは年末に、音楽に溢れたセル画アニメーションの復活を高らかに宣言する新作"The Princess and the Frog"(オフィシャルサイトはこちら、予告編はこちら)の公開を控えている。予告編を観る限り、こちらも大変力の入った素晴らしい作品に仕上がっているようだ。

来年のアカデミー賞は「カールじいさんの空飛ぶ家」、"The Princess and the Frog"そして「崖の上のポニョ」というディズニーが配給する3作品が三つ巴の闘いを繰り広げることになるだろう。どれが受賞してもラセターにとっては嬉しいような、心が痛むような、複雑な心境なのではないだろうか?

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  • 魔法にかけられて(アイズナー前ディズニー会長によるセル・アニメーション撤退宣言からアイズナー退陣に至る経緯を詳しく記載)

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桂枝雀生誕70年記念落語会@サンケイホールブリーゼ

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8月13日は故・桂枝雀さんの誕生日。生きていれば70歳になるこの日、サンケイホールブリーゼで落語会があった。

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演目は、《昼の部》

  • 桂 紅雀/七度狐
  • 桂 雀松/マキシム・ド・ぜんざい(小佐田定雄 作)
  • 桂 南光/あくびの稽古
  • 笑福亭松之助/軒づけ
  • 桂 枝雀/道具屋(ビデオ出演)
  • お誕生会(想い出語る座談会)/イーディス・ハンソン、ざこば、南光、雀松、米團治、紅雀

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《夜の部》

  • 桂 紅雀/普請ほめ
  • 桂 雀三郎/ちしゃ医者
  • 桂 ざこば/厩火事
  • 桂 三枝/誕生日(三枝 作)
  • 桂 枝雀/時うどん(ビデオ出演)
  • お誕生会(想い出語る座談会)/三枝、ざこば、南光、雀三郎、米團治、紅雀

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紅雀さんの「七度狐」は《べちょたれ雑炊》の逸話がカットされ、「普請ほめ」は「牛ほめ」に至る手前で簡潔に終了。軽妙で、聴いていて心地良い。

雀松さんは気象予報士の資格を持っておられるそうで、落語会にも客席を笑いで暖かくしようとする高座からの空気と、客席の冷めた空気とが衝突する《前線》が「この辺り(と指し示す)」にあるというマクラが面白かった。会場には「マキシム・ド・ぜんざい」の作者である小佐田定雄さんの姿もあった。なお、小佐田さんは枝雀さんが演じた「ロボットしずかちゃん」(初演は英語落語)「幽霊の辻」「雨乞い源兵衛」「貧乏神」「茶漬えんま」の作者でもある。

雀三郎さんは相変わらず歯切れ、テンポが悪く全く笑えず。どうも僕はこの人の高座を好きになれない。

南光さんは巧みな話術で聴衆を魅了。《欠伸指南》をする先生の飄々とした雰囲気が愉しい。

三枝さんの「誕生日」は以前から聴きたかった噺。落語会の性質上、これが来るんじゃないかと実は期待していた(演目は事前に発表されず)。いやぁ、予想を上回る完成度の高さで大満足。

明石家さんまさんの師匠、松之助さんは今回初めて聴いた。現在84歳。プールに通い、ブログもされている(→楽悟家 松ちゃん「年齢なし記」)。高座への足取りはしっっかりされていて、実に若々しい。人生はまだまだ長い、と僕も元気をもらった。

それにしても出囃子《昼まま》とともに、ビデオで登場した枝雀さんの高座はやはり凄かった。特に「道具屋」はホールが怒涛のような笑いの渦に巻き込まれ、揺れんばかりだった。今まで何百席も落語を生で聴いてきたが、笑いのエネルギーがこれほどまでに沸騰し、爆発する様は正に未曾有の体験。枝雀という人は不世出の天才だったのだなぁと、今更ながら当たり前のことを再認識した次第である。

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座談会では当初、枝雀さんの師匠で人間国宝の桂米朝さんが出演される予定だったが、脳幹梗塞で現在入院中。よって、息子の米團治さんが代役を務められた(米朝さんは病室で会話も可能で、お元気だそうだが、今月一杯は休養されるとのこと)。

《昼の部》では先ず司会の南光さんが和歌山在住で枝雀さんと交流が深かったイーディス・ハンソンさんを紹介。ハンソンさんが椅子に腰掛ける。続いて登場したざこばさんは会場に頭を下げた後、ハンソンさんの後ろを廻って隣に着席。その後から登場した米團治さん、ハンソンさんとざこばさんの前を横切る。すかさずざこばさん、「前を通るか!」と一喝。南光さんが「和気藹々とした雰囲気が漂っています」と絶妙なフォロー??場内は大笑い。これで学習したのか米團治さん、《夜の部》ではざこばさんの後ろを通り着席した。これをジッと見ていたざこばさん、「また前を通ったら、蹴飛ばしたろか!と思てた」と。

ハンソンさんは枝雀落語の魅力について問われると、「吸われてしまう、引き込まれてしまうところ」だと仰り、とても印象的だった。

稽古の虫だった枝雀さん、ざこばさんが「兄ちゃん、何でそないに稽古が好きなんか?」と訊ねると、「稽古は嫌いやけれど、舞台に出るのが怖いから稽古をするねん」と答えが返ってきたそうだ。

三枝さんやざこばさん、そしてお弟子さんたちの証言が続く。客席に落語が受けていなくても、舞台袖で聴いている枝雀さんだけはワッハハと豪快に笑ってくれた。でも時に、「自分とはセンスちゃうなぁ!」と言って、ふといなくなってしまうこともあったという。考えの読めない不思議な人だったようだ。

また南光さんが最近発見されたばかりの”お宝”映像を見せて下さった。枝雀さんが27歳の時(まだ髪の毛がフサフサ!!)、朝日放送「きょうの世紀、あすの世紀」というテレビ番組(白黒)の中で披露した新作落語「20世紀」。舞台となるのは20世紀が始まったばかりの明治34年。「20世紀はどうなるでしょう?」「死なない薬が発明されるだろうな」と会話が続く。「もうこの世が嫌になって死にたくなったらどうします?首を吊りますか?」「そしたら機械が縄をプツンと切ってしまうな」「じゃぁ川に飛び込みますか?」……何だか枝雀さんの最後を連想させるようで、切なくなった。若い頃からこんなことを考えていたんだなぁ。

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会場ロビーには枝雀さんの写真や、《桂枝雀》襲名時の配りものなど貴重な品々が展示されていた。聴き応え、見応えたっぷりの一日であった。

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恐怖映画の傑作、落穂拾い

7月に下記記事を書いた。

その後、米エンターテイメント・ウィークリー誌が先日発表した「ホラー映画ベスト20」のリストなどを眺めながら、失念していた名作を幾つか想い出したので補足したい。

シャイニング」(1980)
Shining
原作はスティーブン・キング、監督は「2001年宇宙の旅」「時計仕掛けのオレンジ」のスタンリー・キューブリック。正直言ってあまり怖くない。でも、キューブリック独特のシャープでクールな映像が素晴らしい。特に当時開発されたばかりの手ぶれ防止装置「ステディカム」を導入し、移動撮影で絶大な効果を上げている。今となってはそんなに珍しい技術ではないが、映画公開時は画期的だった。また本編で未使用だった空撮のショットが後にリドリー・スコット監督「ブレードランナー」のラストシーンに流用されたことは余りにも有名(ディレクターズ・カット版では削除された)。

ミザリー」(1990)
Misery

こちらもスティーブン・キング原作。監督は「恋人たちの予感」「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナー。兎に角、本作でアカデミー主演女優賞を受賞したキャシー・ベイツが凄い。これこそ正にストーカーの恐怖である。

悪魔のような女」(1955)
Diaboliques

フランス映画。1996年にシャロン・ストーン主演でリメイクされた。原作は推理作家のボワロー&ナルスジャック(ヒッチコックの名作「めまい」の原作も彼ら)。僕はこれをミステリーと認識していたので、エンターテイメント・ウィークリー誌のリストに入っていたのを見て些か驚いた……これ以上書くとネタばれになるので、ここまで。何れにせよ傑作であることは保証する。

シックス・センス」(1999)
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これは先ず、意味不明の邦題が好きじゃない。原題は"The Sixth Sense"。つまり「六番目の知覚」である。上のポスターが示しているのは、

  1. 視覚
  2. 聴覚
  3. 臭覚
  4. 味覚
  5. 触覚
  6. The Sixth Sense

僕は本作をSFと認識していたが、これもエンターテイメント・ウィークリー誌のリストに入っていた。「レディ・イン・ザ・ウォーター」でゴールデンラズベリー賞の最悪助演男優賞および最悪監督賞をダブル受賞したM・ナイト・シャマラン監督は最早、ジョークでしか語られない存在だが(「サイン」「ヴィレッジ」「ハプニング」と、どうしようもない駄作を連発。メジャー映画会社からも見放された)、そのシャマランが生涯唯一創作し得た傑作がこれ(とは言え、1970年生まれの彼はまだまだ元気だが……)。

悪魔のいけにえ」(1974)
Texaschainsaw
本当はこれを恐怖映画のベストに加えるべきか否か、先月からずっと迷ってきた。その理由は余り僕の好みではない(It's not my taste)からである。これは生理的なものだからどうしようもない。しかし客観的に考えれば、殺人鬼の手で若者たちが理不尽にどんどん殺されていく描写は《世界最恐》と言っても差し支えなく、(R指定の)本作がホラーの歴史を塗り替えた事実は誰も否定できないだろう。その芸術性が認められ、マスターフィルムはニューヨーク近代美術館に永久保存されているという。観て気分が悪くなる人もいるだろうし、場合によっては数日間眠れない夜を過ごすはめになるかも知れない。そのことに関して僕は責任を取れない。ただ一生忘れられない強烈な体験になるであろうことは確かである。勇気のある方はお試しあれ。もし貴方の心臓が弱いのならば、止めた方がいい。これは《禁断の果実》である。

でも「決して見てはいけない」と言われると、ついつい見たくなってしまうのが人間の心理なんだよねぇ……。これはギリシャ神話に登場する竪琴の名手オルフェオとその妻エウリディーチェの物語の頃から全然変わらない真実である。

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大阪クラシック2009/大フィルがバロック楽器??これは絶対、聴き逃せない!

大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督・大植英次さんがプロデュースする大阪クラシックは今年で4年目を迎える。

大阪クラシック2009で何といっても一番注目されるのは8月31日、大阪市中央公会堂で行われる第29公演であろう。今年のテーマはBで、この公演は"Baroquers"とタイトルが付いている。

曲目は、

  • ヘンデル/コンチェルト
  • ペルゴレージ/フルート協奏曲
  • ラモー/コンセール 第3番

演奏者は以下の面々。

  • フルート:榎田雅祥
  • ヴァイオリン:長原幸太、今城朋子
  • ヴィオラ:上野博孝、吉田陽子
  • チェロ:石田聖子
  • コントラバス:池内修二
  • チェンバロ:秋山裕子

これのどこが特別なのかというと、こちらを見てほしい→大阪フィルのブログ

公式ブログに「本番はバロック楽器を使っての演奏になるようです」と書かれている。つまり、フルートは現在の銀製ではなく、木製のフラウト・トラヴェルソが使用され、弦は20世紀後半になって普及したスチール弦ではなく、羊の腸を縒って作るガット弦が張られるということ。演奏スタイルも装飾音以外はヴィブラートを極力排したものとなるだろう。

これは大フィルの歴史はじまって以来の画期的事件である。既にチケットは発売中。しかも、たった500円。詳細はこちら。ちなみにコンサートマスターである長原幸太さんのソロ・リサイタル(第14公演)は即日完売した。だから同じ長原さんが出演するこの第29公演も何時売り切れるか分からない。興味がある人は急げ!

なお、榎田雅祥さんはフラウト・トラヴェルソの名手である。榎田さんが吹くバロック・フルートを聴いた時の感想は下記。

そしてヴィオラを担当する上野博孝さんはバロック・ヴァイオリンの巨匠サイモン・スタンデイジに師事しており、嘗てテレマン・アンサンブルのコンサートマスターだった人。昨年は延原武春/テレマン室内管弦楽団が挑戦した、日本初となる古楽器によるベートーヴェン・チクルスにも参加された(当時僕が書いたレビューはこちら。この演奏会が高く評価され、延原さんは「ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章」を受賞。最近ライヴCDも発売された)。だから古楽奏法には熟知されている。この二人が主軸となって本番に向け中身を練り上げていくことになるのだろう。

そしてこの経験はきっと9月25日に兵庫芸文で延原武春さんが初めて大フィルの指揮台に立つ演奏会へと繋がっていくに違いない。その曲目は、

  • J.S.バッハ/管弦楽組曲 第3番
  • ベートーヴェン/交響曲 第1番
  • ブラームス/交響曲 第1番

延原さんによると本当はバッハも管弦楽組曲 第1番を演奏し、全て《》に揃えたかったが、大フィル側からの強い希望で第3番になったとこのこと。なぜならあの有名な「G線上のアリア」があるから(まあクラシック音楽も興行だから、致し方ないことなのかも)。また、ブラームスのシンフォニーでは、従来の第2楽章(改訂稿)ではなく、初稿の楽譜が用いられるそうだ。これは興味津々である。

延原さんと取り組む《バロック~古典派》音楽で、大フィルは果たして変貌を遂げるられるのか?古楽奏法に基づく演奏がどこまで出来るのか?そのことが今、問われようとしている。9月の兵庫芸文も聴き逃せない。

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笑福亭たま・旭堂南湖二人会/三遊亭円朝に挑む!!

動楽亭で三日連続、(噺家)笑福亭たまさんと(講談師)旭堂南湖さんの二人会。

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  • (一日目)さろめ/犬の目
  • (二日目)南青/忠僕元助(「赤穂義士外伝」より)
  • (三日目)呂竹/初天神
  • 南湖/藪井玄意 京の巻(一日目)三十石の巻(二日目)大阪の巻(三日目)
  • たま/厩火事(一日目)遊山船(二日目)代書屋(三日目)
  • 南湖/鶴殺疾刃包丁(つるころしねたばのほうちょう)一、二、三
  • たま/新景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)豊志賀の顔(一日目)エクソシスト(二日目)0106 あるいは 隗(くわい)(三日目)

のたまに対し、の南湖。その対比が心地よい。

鶴殺疾刃包丁」は明治20年、やまと新聞に連載された作品。どうやら圓朝は名義を貸しただけで、実際に演じたことはないらしい。詳細はこちら

たまさんの新作は圓朝の「真景累ヶ淵」にinspired(霊感を受けた)もの。特に除霊師が登場する「エクソシスト」がすこぶる面白かった。

遊山船」は喜六・清八のやり取り「入れへん」「入れたらや!!」という、しつこいまでの繰り返しが愉しい。

代書屋」は落ち着き払った知識人=代書屋が、最後の最後にそれまで抑えてきた感情を爆発させるところが最大の見せ場。

酒井法子が失踪(逃亡)中に始まり、逮捕後に最終回を迎えた今回の二人会、やはりのりピーの話題で大いに盛り上がった。最近急速に痩せた南湖さん。たまさん曰く、「楽屋でのテンションが妙に高くて、やたらと水を飲むんです。きっと(覚醒剤を)やっていると思います」これには場内大爆笑。後で登場した南湖さん、勿論たまさんの発言を否定。尿酸値が高くなってきたので酒を断ち、何か賞を受賞できるまで飲まずに頑張ろうという願掛けの意味もあるのだと明かされた。

鶴殺疾刃包丁」で南湖さんは「碧いうさぎ」を出囃子に登場。側室・お藤が、氏勝(河内の殿様)と一緒に仲良く覚醒剤を吸引する場面も。「藪井玄意」では藪井先生が表で泣いていた孤児を家に迎え入れると、「マンモスうれピー」「のりピーの子供かいな」

まことに充実した三日間だった。

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桂ざこば、九雀@動楽亭(8/6)

動楽亭・昼席を聴く。

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  • 吉の丞/子ほめ
  • ひろば/替わり目
  • 歌之助/はなしか入門
  • 米二/崇徳院
  • 九雀/稲荷俥
  • ざこば/お玉牛

歌之助さんのネタは、彼が歌々志時代に創作したもの。冒頭部で「道具屋」かと思いきや、それを稽古している落語家の噺で意表を突かれた。

今回一番面白かったのは九雀さん。車のオイル交換をしてもらおうと、知り合いの自動車修理工場に向かっている途中に追突されたことをマクラで話された。バンパーが破損し、そのまま修理工場へ。「そもそもオイル交換に向かっていなければ追突事故に巻き込まれなかったわけで、都合が良かったんだか悪かったんだかよく分かりません」そして人力車の噺へ。

九雀さんの前、米二さんがされた「崇徳院」の舞台が高津神社で、「稲荷俥」も物語の発端となるのが高津宮。その流れが良かったし、軽妙で賑やかな雰囲気も愉しかった。

ざこばさんは若い頃、福笑さんとやんちゃをしたエピソードをマクラに、夜這いの噺へ。「お玉牛」は春團治さんの十八番で、米朝一門が高座に掛けるのは今回初めて聴いた。ざこばさんらしいダイナミックな独特の味があり、中々聴き応えがあった。

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露の団四郎/真夏の怪談@繁昌亭

天満天神繁昌亭にて。

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  • 露の団姫/平林
  • 露の団六/近日息子
  • 露の団四郎/青菜
  • いわみせいじ/漫画ショー
  • 露の団四郎/摂州皿屋敷

団姫(まるこ)さんは現在22歳、上方落語協会最年少の噺家である。活舌が良く、期待の若手。NHK朝ドラ「ちりとてちん」最終回では、先日亡くなった五郎兵衛大師匠と「ただいま修行中」コーナーに仲睦まじく写真で出演した。彼女は今まで何回か聴いたことがあったのだが、団四郎さんは今回お初。さすが団姫さんの師匠だけあって上手かった。

皿屋敷には江戸の「番町皿屋敷」、姫路の「播州皿屋敷」などがあるが、「摂州皿屋敷」は尼崎を舞台にしたちょっと珍しい怪談噺。怪談といえば露の一門のお家芸。その妙技を堪能した。

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日本テレマン協会/マンスリーコンサート「テレマン&バッハの夕べ」

大阪倶楽部でテレマン協会のマンスリーを聴く。

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  • テレマン/”忠実なる音楽の師”よりイントロドゥツィオーネ
  • テレマン/ヴァイオリン協奏曲 ホ長調
  • テレマン/フルートとオーボエ・ダモーレ、ヴィオラ・ダモーレの為の三重協奏曲
  • J.S.バッハ/管弦楽組曲第3番よりアリア(G線上のアリア)
  • J.S.バッハ/チェンバロと2つのリコーダーの為の協奏曲

最後の曲はブランデンブルク協奏曲第4番をバッハ自ら編曲したもの。ヴァイオリン・ソロをチェンバロに置き換え、華麗な技巧が愉しめる。チェンバロはドイツから帰国したばかりの高田泰治さん。現在チェンバロ及びフォルテピアノをミュンヘン音楽大学のクリスティーネ・ショルンスハイム(アンドレアス・シュタイアーの弟子)に師事している。以前にも増して気高く、ドイツ的堅固さを感じさせるパフォーマンスとなった。

指揮およびオーボエ・ダモーレは延原武春さん。演奏はテレマン・アンサンブルでバロック楽器が使用された。つまりガット弦が張られ、フルートは木製のフラウト・トラヴェルソ。リコーダーはフルートの森本英稀さんと出口かよ子さんが持ち替えで演奏された。原曲も良いけれど、バッハによるリコーダー・アレンジも愉しい。

ヴィオラ・ダモーレは7弦の楽器で演奏弦の下にさらに金属製の共鳴弦を5弦有する。「愛のヴィオラ」という名称通り、夜の静けさに似合う甘美な音色がとても魅力的。素敵な夏の夜のひとときを過ごした。

なお、延原さんによると9月25日に兵庫芸文で大阪フィルハーモニー交響楽団を指揮するブラームス/交響曲第1番の第2楽章は1877年の決定稿ではなく、その前年1876年に出版された初演稿を用いるとのこと(構成がかなり異なるという)。ピリオド楽器によるベートーヴェン・チクルスを日本で初めて成し遂げ、ドイツ連邦共和国より功労勲章を授けられた延原さんが、今度はブラームスでどのように新鮮な解釈を聴かせてくれるのか、とても愉しみだ。

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お笑い怪談噺の夕べ「ホンモノのユ~レイも出まぁ~す!」

天満天神繁昌亭にて二日間にわたり怪談噺を聴く。

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  • 笑福亭たま/ホスピタル(一日目)ベルゼバブの蠅(二日目)
  • 林家染雀/腕喰い(一日目)足上がり(二日目)
  • 桂  米左/猫の忠信(一日目)応挙の幽霊(二日目)
  • 旭堂南鱗/応挙と幽霊の花魁(一日目)生首の碁盤(二日目)
  • 笑福亭福笑/真田山慕情(一日目)備後屋敷(二日目)

たまさんの新作「ベルゼバブの蠅」筒井康隆的な前半はすこぶる面白いのだが、後半に違和感が残る。僕は岡山出身なので言うけれど、”岡山の山奥”に洋館はないのだが……。

米左さんは師匠である米朝さん譲りの端正な芸で聴衆を魅了した。

新作を掛けた福笑さんのくだけた、ざっくばらんな芸風も魅力的。余り上下(かみしも)を振らないスタイルもユニーク。噺の途中で場内が真っ暗になり、染雀さん演じる幽霊が客席に乱入。冷たいこんにゃくを客の首筋に押し付け、あちらこちらで悲鳴が上がる。でも後からちゃんとだし・醤油を付けて、そのこんにゃくはプレゼント。実に愉しい企画である。日本舞踊の素養があるだけに、染雀さんの所作、立ち姿が美しかった。

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サンシャイン・クリーニング

評価:B+

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Loser(負け犬)の物語である。

一般に、映画に登場するルーザーは2つの類型に分けられる。

  • タイプA…自分が敗者であることをどうしても認められず、「私は強い!」など自己暗示をかけながら偽りの世界を周囲に構築し、虚構の中に生きていく。
  • タイプB…自分のありのままの姿を受け入れ、見栄を張ったりせず、堂々と前向きに人生を歩む。

本作はタイプAだった主人公がタイプBへと少しだけ心の成長する、そんな映画である。だから必ずしもスカッとするハッピー・エンドが待っているわけではない。ちょっぴりほろ苦い味がする。でもそんなところがリアルであり、余韻の残る佳作だと僕は想う。映画公式サイトはこちら

ニュージーランド出身の女性監督、クリスティン・ジェフズがメガホンを取った。

姉妹を演じるエイミー・アダムス(「魔法にかけられて」でゴールデン・グローブ賞、「ダウト ~あるカトリックの学校で~」でアカデミー賞ノミネート)とエミリー・ブラント(「プラダを着た悪魔」でゴールデン・グローブ賞ノミネート)が素晴らしい。「リトル・ミス・サンシャイン」でアカデミー助演男優賞を受賞したアラン・アーキンがしっかり脇を固める。

「サイドウェイ」や「リトル・ミス・サンシャイン」同様、インディーズ(独立プロダクション)系の小さな映画だが、これはお勧め。

Sunshinecleaning

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桂春團治 復帰/繁昌亭昼席(8/2)

8月2日(日)に天満天神繁昌亭で昼席を聴く。

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  • 森乃石松/鉄砲勇助
  • 桂 三金/奥野君の選挙(三金 作)
  • 笑福亭遊喬/看板の一
  • AKO/マジック
  • 桂団朝/寄合酒
  • 桂春團治/祝いのし
  • 千田やすし/腹話術
  • 森乃福郎/手水廻し
  • 桂しん吉/二階借り(茶漬間男)
  • 笑福亭松喬/二人癖

7月に体調不良を訴えられ、20日間入院されていた春團治さん(79)だが、29日に退院され8月1日の姫路落語会から復帰、その翌日となった繁昌亭昼席にも無事出演された。「まだ声に張りがなく、お聴き苦しい点もあろうかと思いますが、お許し下さい」と挨拶され、十八番の「祝いのし」へ。いつも通りの凛とした佇まいで、見事な出来栄えだった。春團治さんが高座に上がられるときだけ使用される赤い毛氈も敷かれ、繁昌亭は華やいだ雰囲気に包まれた(余談だが、先日あった桂文三襲名披露興行では春團治さんの許しを受け、この毛氈を敷き文三さんがトリを務められたとか。なんとも粋な計らいである)。

奥野君」とは三金さんの本名。”メタボ党”から立候補という時事的なネタで、出色の新作。

茶漬間男」は大変珍しく、面白かった(トリの松喬さんも、繁昌亭で掛かることは滅多にない噺と言われていた)。

松喬さんは明るく軽やかな高座でさすがベテランの巧さ。なんとも愛嬌がある人だ。落語の魅力を堪能した。

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細田 守監督「サマーウォーズ」

評価:B

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細田 守監督の「時をかける少女」は途轍もない傑作アニメーションであった。公開当時の僕のレビューはこちら。なお、この「時かけ」は日本テレビ系で8月11日に地上波放送が決まっている。未見の方は是非。

その細田監督最新作が「サマーウォーズ」である。映画公式サイトはこちら

映画を観る前は、もしかすると「千と千尋の神隠し」同様、米アカデミー賞を狙えるくらいの作品に仕上がっているんじゃなかろうか?という想いが僕にはあったのだが、少し期待を膨らませ過ぎたようだ。いや、確かに良質なアニメではある。しかし残念ながら前作を越えることは出来なかった。

貞本義行(「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」)のキャラクター・デザインに全く文句はない。

「時をかける少女」で本領を発揮した美術監督の山本二三(「天空の城ラピュタ」「耳をすませば」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」)は離れ、替わりに武重洋二(「ゲド戦記」)が参加しているが、雲の表現とか山本さんはもっと凄かったのに…という口惜しさが残る。

今回は登場人物が多すぎて、確かに各々のキャラは立っているがその分、主人公とヒロインの影が薄くなってしまった。みんなで協力して敵を倒すという展開は正に"Buddy Film"(仲間が一番)であり、細田 守の"ピクサー化"が気になった(これをテーマにしてピクサー・アニメーションに敵うはずもない、ちなみに来年のアカデミー賞長編アニメーション部門は「カールじいさんの空飛ぶ家」でほぼ決まりだろう)。

電脳世界(インターネット上の仮想世界)と現実世界の闘いという設定も「攻殻機動隊」や「イノセンス」、そして細田自身が監督した「デジモンアドベンチャー」等が既にあり、些か古い。

シナリオのご都合主義も困ったものだ。武家の血筋を受け継ぐ旧家、陣内家に其々の部門のスペシャリストが偶然集っているというのは、余りにもお話が出来すぎで白けてしまう。結局、「時かけ」は筒井康隆のしっかりした原作があったのに対し、今回はオリジナル・シナリオであるいうのが両者の明暗を分けた気がする。

静と動の対比が鮮やかで、映像や演出は相変わらず素晴らしいだけに、大変惜しい作品となった。

なお、細田監督は大林宣彦監督のファンとしても知られており(金沢美術工芸大学在学中に「大林宣彦ピアノコンサート」なるものを企画し、それが縁で映画の世界に入ったという)、本作が舞台となる長野県上田市は大林監督が映画「理由」「告別」「淀川長治物語-サイナラ」等をロケした地でもある。

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