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2009年8月26日 (水)

関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《後編》

この記事は関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《前編》と併せてお読み下さい。

ではまず《大学の部》の感想から。

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和歌山大学銅賞)が演奏したマッキー/「翡翠」より I. 雨あがりに… II. 焔の如く輝きは昨年、全日本吹奏楽コンクールでおかやま山陽高等学校の演奏を聴いた(その時の感想はこちら)。I. は静謐な叙情があり、II. は一転動的で、内から湧き上がる生命力に満ちている。リズムが斬新なレッドライン・タンゴといい、先鋭でスタイリッシュな曲を書く大好きなコンポーザーである。指揮者の飯森範親さん(6月に大阪市音楽団の定期演奏会に登場され、映画「おくりびと」への出演や「のだめカンタービレ」で玉木宏の指揮指導をされたりと八面六臂の活躍をされている)も、マッキーのことを自身のブログで絶賛されている(→こちら!)ただ現在までに全日本吹奏楽コンクールで彼の曲を取り上げた団体は5つあるが、金賞は出ていない(2、3)。どうも審査員受けはよくないようだ。

近畿大学・代表)の課題曲は細部が克明に描かれ、Vを取り上げた団体の中では(職場・一般を含め)ピカイチだった。自由曲はハルフテル/第一旋法によるティエントと皇帝の戦い。クリストバル・ハルフテル(1930- )はスペインの作曲家。第一旋法についての詳細はこちら。こういう知らない作曲家の音楽を聴けるというのもコンクールの魅力の一つである。真に重厚な演奏で、不協和音が鮮明に響き、混沌の海に沈まないのがさすがであった。文句なし!

京都橘大学金賞)は伸びやかで、学生らしく爽やかな演奏。自由曲はレハール(鈴木英史 編)/喜歌劇「微笑みの国」セレクション。何度も書いているが僕は鈴木さん編曲による、一連のオペレッタ編曲シリーズが大好きだ。洗練されていて軽快。ある時はウキウキするようで、また別の箇所ではロマンティックでメルヘンの芳香が漂ったりと内容が豊か。世界広しといえど、こういう曲を捌かせたら鈴木さんの右に出るものはいない(ただし、鈴木版「トゥーランドット」は×)。

立命館大学、代表)の課題曲Vは明晰な演奏で、アインザッツ(タテ)や最後の足踏みもよく揃っていた。自由曲はR.シュトラウス(森田一浩 編)/「アルプス交響曲」より。森田さんのアレンジは宇畑知樹/伊奈学園吹奏楽部が委嘱し、2003年に全日本吹奏楽コンクールで初演したもの(金賞受賞)。父親がホルン奏者だったシュトラウスの曲はホルンが肝心要。その核となる楽器が雄弁に鳴っていたし、金管セクションの輝かしいファンファーレが魅力的。木管は緻密で、アルプスの壮大な風景が目の前にパノラマのように展開していった。嵐の場面でサンダーマシーンやウィンドマシーンの使用も見ていて愉しい。正にスペクタクル!なお、「アルプス交響曲」は来年2月に大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団が定期演奏会で取り上げる予定。詳細はこちら

関西学院大学金賞)の自由曲はマスカーニ(宍倉晃 編)/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より。このアレンジは2年前、普門館で大滝実/埼玉栄高等学校の圧倒的名演に打ちのめされた(当時の感想はこちら金賞受賞校のうち、審査の点数も1位だった)。それと比較すると関西学院の演奏は”歌心”が足りず、どうしても聴き劣りがした。埼玉栄は実際に生徒が歌う場面があったり、舞台裏からのトランペットのソロがあったりと様々な仕掛けがあったが、今回それらがなかったのも物足りなかった。

さて特別演奏、森島洋一/大津シンフォニックバンドの曲目は、

  • オスターリング/サンダークレスト
  • 八木澤教司/「優位な曲線」~ヴァシリー・カンディンスキーに寄せて

エリック・オスターリング(1926-2005)はアメリカの作曲家で、今回演奏されたのは1964年に発表されたコンサート・マーチ。40年以上も前の作品なのに、とても洒落た行進曲である。いいねぇ。

八木澤さんの曲は作曲家本人が解説されているのでこちらをどうぞ。絵画シリーズの一つだそうである。

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カンディンスキー(1866-1944)はモスクワ生まれの画家で抽象絵画の創始者とされている。著書に「点と線から面へ」等がある。

優位な曲線」はポリフォニックな響きで、多面的魅力を備えた素晴らしい作品。複雑な曲線(=旋律)が入り乱れ、絡み合い、次第に面(=ハーモニー)を形成していく過程、その雰囲気を巧みに音で描き出す。もともと音楽は抽象的芸術だから、カンディンスキーの世界によく似合う。長生淳さんが作曲した「わけの分からない音楽」とは雲泥の差。やはり選曲のセンスというのは重要である。

今年から全日本吹奏楽コンクール《一般・職場の部》の出場人数は、1団体に付き上限65人までというルールが新たに加わった。昨年全国大会で金賞を受賞した土気シビックウィンドオーケストラ(東関東-千葉県代表)は今年から吹奏楽コンクールに出場しないことに決めたという話を聞いたが、この新しい規定が原因なのだろうか?今回、大津シンフォニックバンドの特別演奏は明らかに65人を上回る団員がステージに上がり、「大人数でもこれだけ精密な演奏が出来るんだ」ということを堂々と示 してくれた。兎に角そのサウンドの厚み(音圧)が凄かった。それは全日本吹奏楽連盟に対する静かな抗議であるように僕には感じられた。

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コメント

こんばんは。

大津シンフォニックバンドの特別演奏曲目の曲目解説は、こちらにもありますね。
http://www.osb.jp/dir20.html

私は森島先生の文章が大好き(吹奏楽関係の書き手の中では一番好きな方です)なので、
今年も解説が読めてうれしいです。

参考になれば幸いです。

投稿: ごいんきょ | 2009年8月29日 (土) 23時09分

ごいんきょ様

情報ありがとうございます。ところで、ごいんきょ様のお好きな作曲家、中橋愛生さんの新曲「閾下の桜樹 吹奏楽のための」を関西大会で演奏した四條畷学園高等学校は金賞を受賞しましたが、惜しくも代表を逃してしまいました。全国大会で聴きたかったですね。さて、他の支部からは勝ち上がってこれるのでしょうか?

投稿: 雅哉 | 2009年8月31日 (月) 00時16分

カヴァレリア・ルスティーカーナは埼玉栄が全国で金賞を受賞し、その後各地区でも選曲されるようになりました。
今年からコンクールでは、歌の部分はハミング以外禁止となり、また、舞台裏でのトランペット演奏も禁止になったと聞いています。
様々な仕掛けが物足りなかったのは事実でしょうが、仕方がないのではないでしょうか。

投稿: たこべい | 2009年9月22日 (火) 14時33分

ルールの変更があったのですね。たこべいさん、コメントありがとうございました。

それにしても、新たな規制は表現の幅を狭めるだけで、くだらないルールだと想います。

投稿: 雅哉 | 2009年9月24日 (木) 20時40分

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