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2009年8月29日 (土)

大植英次のシンフォニック・ダンス!/青少年のためのコンサート2009

NHK大阪ホールで大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)による「青少年のためのコンサート」を聴いた。

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昨年(ザ・シンフォニーホール)、および一昨年(NHK大阪ホール)の感想は下記。

この模様は例年通りNHKによりテレビ収録され、後日放送される予定。

今回の目玉は何と言っても「シンフォニック・ダンス」これに尽きる。この曲と大植さんの因縁については、昨年2月に書いた記事で詳しく語った。

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曲目は、

  • ドヴォルザーク/スラブ舞曲 第1番
  • シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
  • サン=サーンス/死の舞踏
  • ブラームス/ハンガリー舞曲 第5番
  • ピアソラ/バンドネオン協奏曲より第3楽章
  • ハチャトゥリアン/バレエ音楽「ガイーヌ」より“剣の舞”
  • チャイコフスキー/組曲「くるみ割り人形」より“花のワルツ”
  • バーンスタイン/ミュージカル「ウエストサイド物語」より“シンフォニック・ダンス”

冒頭から、ダイエットしてスリムになった大植さんの身のこなしの軽やかさに驚かされる。腕をブンブン振り回し元気一杯、指揮台でジャンプする場面もあり、往年のレナード・バーンスタインの勇姿を想い起こさせた。持病の首は大丈夫なのかと、見ているこちらがハラハラする位。ベートーヴェン・チクルスや定期でラフマニノフの交響曲を取り上げた頃の、直立不動で精彩を欠いていた様子とはまるで別人だ。

最近の大植さんの音楽表現が《レオポルド・ストコフスキー化》しているということについては何度か書いた。今回その傾向が顕著だったのが狂詩曲「スペイン」。 ピッツィカートの箇所で「ここまでテンポを落とすか?」と驚かせ、その直後に「ここまで加速するか!?」と唖然とさせる。全く予断を許さない演奏。すこぶる面白い。テンポが動かない演奏を好む方なら拒否反応を起こすかも知れないが、僕はこの伸縮自在の意表を突くスタイルを断固支持する。

死の舞踏」は長原さんの調弦を変えたヴァイオリン・ソロ(持ち換え)が大活躍。死神はヴィブラートと共に現れる。

以前は先鋭で攻撃的だった長原さんの音色も、最近ふくよかさを増した。

ピアソラは大植さんの弾力性に富む躍動するリズムが良かった。バンドネオン独奏は三浦一馬さん。1990年生まれの19歳。10歳のときこの楽器と出会ってアルゼンチンに渡り、ネストル・マルコーニに師事した。国際ピアソラコンクールで日本人初、史上最年少で準優勝を果たしたという期待の新星である。

剣の舞」は木琴を大阪市内の中高生10人が演奏(女子9、男子1)。大植さんは手加減するのかと思いきや、フルスロットルで全力疾走!大迫力のスリリングなハチャトゥリアンとなった。生徒たちも全員しっかり食い付いて来て、NHKアナウンサーの「演奏中、大植さんの指揮をしっかり見てましたね」というインタビューに対し、女の子が「凄く緊張してたんですが、(大植さんの顔を見ていると)ほぐれました」と答え、会場は笑の渦に巻き込まれた。

花のワルツ」は繊細で優雅に、ニュアンスを大切にした幅広い表現力が魅力的。

さて、注目の「シンフォニック・ダンス」である。聴衆もフィンガー・スナップと「チャチャチャ」の囁き声で演奏に参加した。大フィルのアキレス腱=トランペットが相変わらず足を引っ張る箇所が散見されたが、大植さんのJAZZYなセンスが光り、大変な名演となった。兎に角、しっかりスウィングしてノリがいい。シンコペーションのリズムも効いている。「マンボ」におけるラテン的情熱の迸り、「クール」ではうだるような湿度の高さ、行き場のない閉塞感、若者たちの焦燥が巧みに描き出され、「乱闘」における叩き付けるような強打はヴェルディ/レクイエム~「怒りの日」の如く、ズシリと腹に響く。その一方でデュエット・ナンバー"Somewhere"や、マリアが歌う"I Have A Love"(私は愛している)は透明感に満ち、清浄な祈りを歌い上げる。ダイナミクス(強弱法)の変化に富み、パーフェクト。文句なし。生きてて良かった。

アンコールは、

  • コープランド/バレエ音楽「アパラチアの春」より”シンプル・ギフト”
  • 外山雄三/「管弦楽のためのラプソディ」より”八木節”

"Simple Gifts"は"The Gift to Be Simple"とも呼ばれ、元々はシェーカー派の歌曲。大植さんがオバマ大統領の就任式でも演奏されたということをコンサートで仰っていたので帰宅して調べてみると、その動画を発見→こちら!観て腰を抜かした。アレンジが「スター・ウォーズ」「E.T.」のジョン・ウィリアムズ!ヴァイオリン:イツァーク・パールマン、チェロ:ヨーヨー・マ、クラリネット:アンソニー・マクギル(メトロポリタン歌劇場の主席奏者)、ピアノ:ガブリエラ・モンテーロという超豪華メンバー。ユダヤ人(イスラエル生まれ)、中国系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、そしてベネズエラ出身者という組み合わせがいかにもアメリカらしい。

アンコールの話に戻るが、朴訥な旋律をしなやかに歌う大フィルの演奏も清々しく、とても良かった。

最後にこれから先、大植さんの指揮で是非聴きたい近代アメリカ音楽を列挙しておく(ベートーヴェンやブルックナーはもういい)。

  • コープランド/バレエ組曲「アパラチアの春」
  • コープランド/交響曲第3番
  • バーンスタイン/交響組曲「波止場」(元々は映画音楽)
  • ハワード・ハンソン/交響曲第2番「ロマンティック」

さあ、明日からはいよいよ熱狂の日々!大阪クラシック 2009の開幕である。

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コメント

「緊張がほぐれました」とこたえていた子の母です。
初めて管弦楽を聞きましたが、いいですねー。耳に優しいなと思いました。
クラシックももっと気軽に聴けるようなイベントがもっと増えるとうれしいなと思います。

投稿: わっしー | 2009年10月26日 (月) 20時10分

わっしーさん、コメントありがとうございます。

お嬢さんの演奏、お上手でしたよ。なお11/3の15:05- にNHK総合でこのコンサートの模様が放送される予定です。

投稿: 雅哉 | 2009年10月26日 (月) 22時56分

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