« 《再掲》丸谷明夫×下野竜也ふたたび/全ての吹奏楽ファンよ、大阪に集え! | トップページ | 関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《後編》 »

関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《前編》

8月23日(日)、尼崎市総合文化センターで開催された関西吹奏楽コンクール《職場・一般の部》《大学の部》を聴いた。

20090823093308_edited

感想を書く前に、まずお断りをしておきたい。僕はプロに対しては感じたまま辛辣な意見を時に書くけれど、アマチュアに対しては悪口を書かないということを基本ルールとしている。しかしコンクールに関してはその限りではない。

「みんな頑張っているのだから、酷いことを書かないで!」というご意見を何度か頂いた。成る程、アマチュアなのだから「頑張っている」ことだけで評価されるべきだという価値観も当然あるだろう。しかし、他と比較・審査されランク付けされるのがコンクールの本質だと僕は想う。

20090823133236_edited

なお、今年3出休み(全国大会3回連続出場した翌年はコンクールに出場できない)のため特別演奏が予定されていた龍谷大学吹奏楽部はインフルエンザのため辞退した。

《職場・一般の部》17団体、《大学の部》9団体、そして特別演奏(3出休み)の大津シンフォニックバンドと総計27団体の演奏全て聴いた(×持ち時間各12分 = 約5時間半)。その中から特に印象に残ったところを書いていこう。

昨年のコンクールの鬼門は課題曲 I 「ブライアンの休日」であったということは既に書いた。今年の場合もどうやら課題曲 I 「16世紀のシャンソンによる変奏曲」がそれに該当するようだ。聴いた全団体のうち、課題曲 I を選んだのは2団体のみ。そしてその何れも金賞を受賞出来ず。来週開催される《高校の部》においても、淀工、天理高等学校など昨年の代表高は課題曲 I を回避している。

20090823131328_edited

西宮市吹奏楽団金賞)の課題曲は各フレーズの処理が絶妙で、音楽の流れが良かった。ピッチもよく合っていた。自由曲はヒナステラ(仲田守 編)/バレエ組曲「エスタンシア」より。そう、今を時めくグスターボ・ドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラが最も得意としているラテン(アルゼンチン)の作曲家である。リズムが面白いのだけれど、終幕の踊り(マランボ)は些か大人しく、こぢんまりまとまってしまった。南国の熱気が感じられない。この曲はもっと弾けた方がいい。だってシモン・ボリバルがアンコールでする時は全員が立ち上がり、踊り狂いながら演奏するのだから(動画はこちら!)。ただコンクールという性質上、そういうノリは難しいだろう。つまり関西代表に選ばれなかったのは選曲に問題があったからではないだろうか?

創価学会関西吹奏楽団・代表)は昨年、まさかのダメ金賞を受賞するも代表には選ばれず)だったが、今回は順当な結果となった。課題曲のマーチはテンポが揺らがず手堅く。自由曲はリスト(田村文生 編)/バッハの名による幻想曲とフーガ。指揮は伊勢敏之さん。全体の見通しがよく、透明度の高い演奏だった。ここは昔からホルンが最強のバンドということで有名だが、今年もその咆哮が凄かった。コンクールでのパフォーマンスだけで評価するなら、兵庫芸術文化センター管弦楽団や、大フィルを含む在阪オケのどこよりもホルン・パートの実力はこちらが上だろう(ただしプロは本番前4日間で仕上げてくるが、アマチュアの場合、1曲を練習する期間が4ヶ月以上もある。だから単純に比較出来ないことも事実である)。伊勢さんは四条畷学園高等学校も指導されており、そちらも昨年はダメだったが、さて今年はどうだろう?

宝塚市吹奏楽団、代表)の課題曲はリズム処理がバッチリだった。自由曲は高 昌帥(こう ちゃんす)/ウインドオーケストラのためのマインドスケープ。オーボエとサックスのソロが抜群に美しかった。それから終盤のフルート・アンサンブルの素晴らしさも特筆に値する。文句なしの関西代表であった。

尼崎市吹奏楽団、代表)はさすがにアンサンブルの精度が高かった。指揮者は辻井清幸さん(大阪音楽大学名誉教授。現在出版されている「大阪俗謡による幻想曲」スコアの校訂者でもある) 。課題曲は遅めのテンポ。強弱のメリハリはあるが、楷書的で面白みがない。自由曲はスパーク/ア ウィークエンド イン ニューヨーク。飯森範親/大阪市音楽団の演奏で既に聴いたことがある(その時のレビューはこちら)。辻井さんの解釈は《生真面目なジャズ》で、どうも躍動感がない。コンクールというものは演奏が正確無比ならそれでO.K.なのかも知れないけれど……

三木ウィンドフィルハーモニー)の課題曲は速めのテンポで快調。自由曲は長生淳/レミニサンス。ごめんなさい、僕は正直こういった曲の良さが皆目分からない。アンサンブルという点では縦と横がしっかり揃っていたんじゃないかな。

曲の魅力が理解出来ないということで言えば、まちかね山吹奏楽団銀賞)が演奏したドス/シダスとか、Rits Wind Orchestra土賞)のアッペルモント/アイヴァンホーも同様。聴いてて詰まらない。シダスは2005年に宝塚市吹奏楽団が、2008年には近畿大学吹奏楽部が全日本吹奏楽コンクールで演奏しているのだが、そこそこの人気があるのは何故だろう?

箕面市青少年吹奏楽団)が選んだ自由曲、天野正道/交響曲第9番「海のオーロラ」よりで感じたことは、天野さんは「GR」もそうなのだけれど、美しい旋律が次から次へと登場し、聴いていて刹那的には心地良い。しかし構成に脈略がなく、散漫で統一感に欠ける。これがこの作曲家の欠点だと僕は想う。

大住シンフォニックバンド銀賞)の自由曲、櫛田胅之扶(くしだてつのすけ)/一休禅師〜いま宿花知徳の道へ〜は作曲家が得意とする京都を舞台にした作品だけに、魅力的な楽曲だった。たおやかな旋律、竹林を抜ける風、涼やかな鈴の音色。稲穂の揺らぎ、お寺のわび・さび(侘・寂)。そんな要素がギュッと詰まっていた。

M's Sound Factory銀賞)の自由曲はバーンズ/交響曲第3番より第1・3・4楽章。特に第3楽章、生後半年で亡くなった娘に捧げられた”ナタリーのために"は絶品。澄み切った哀しみに満ちた、限りなく美しい音楽である。

あと、心に残る演奏を聴かせてくれたのが奈良のセントシンディアンサンブル銅賞)。先ず登場した瞬間にオレンジ色のジャケットが目を惹いた。福島秀行さんの指揮ぶりは例えば伊勢さんとか淀工の丸谷先生のようにイン・テンポを守るカチッとしたものではなく、自由度が高い。団員の自主性を尊重しているように見受けられる。そして踊るように指揮台でよく動く。課題曲は瞬発力があり、まるで少女がスキップするような情景が目に浮かんだ。強弱のコントラストも鮮明。自由曲はオキャロラン(建部知弘 編)/ケルト民謡による組曲第2番「オキャロランの花束」より。ターロック・オキャロラン(1670-1738)はアイルランド生まれの盲目のハープ奏者・作曲家。鄙びた雰囲気で民族色豊かな曲の数々に彩られ、とてもチャーミングな花束だった。生き生きとリズムが弾み、太鼓の響きがリバーダンスを連想させる。そしてオーボエとソプラノ・サックスがバグバイプの音色にも似た雰囲気を醸し出し、音楽をする歓びが客席に伝わってきた。

長くなったのでとりあえずこの辺で。《大学の部》と大津シンフォニックバンドの感想は《後編》にてお届けする予定。

|

« 《再掲》丸谷明夫×下野竜也ふたたび/全ての吹奏楽ファンよ、大阪に集え! | トップページ | 関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《後編》 »

吹奏楽」カテゴリの記事

コメント

雅哉さまこんばんは。ご無沙汰しています。

関西大会行かれたのですね。
雅哉さんは高校の部専門かと思っていましたので、
大学・職場・一般の部好きの私としては興味を持っていただけてうれしいです。
後半も楽しみにしていますね。

投稿: ごいんきょ | 2009年8月25日 (火) 19時52分

ごいんきょ様、コメントありがとうございます。

職場・一般の部は昨年、全国大会を聴きました。クラシック音楽の編曲ものが中心の高校の部と異なり、オリジナル曲が多いのが魅力的ですね。

そうそう、今年の関西吹奏楽コンクールは龍谷大学が聴けなくてとても残念でした。酒井格さんの新作が聴けるだろうと、とても愉しみにしていたのですが……。

投稿: 雅哉 | 2009年8月25日 (火) 21時43分

雅哉さま、お返事ありがとうございます。

オリジナル大好きな私はもっぱら大学・職場・一般の部ばかり行っています。最近は中学・高校の部でもオリジナルが増えてきてうれしい限りです。
龍谷大学はここ数ヶ月毎週のように本番があったようなので、疲れが出てしまったのかもしれませんね。
酒井格さんの新作というと龍谷大のサマーコンサートで初演された曲がありますが、こちらはかなり長い曲ですし、ステージマーチング向けの曲なので、特別演奏があってもこの曲は演奏されなかったかな、とは思います。

投稿: ごいんきょ | 2009年8月29日 (土) 23時04分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/212850/46012149

この記事へのトラックバック一覧です: 関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《前編》:

« 《再掲》丸谷明夫×下野竜也ふたたび/全ての吹奏楽ファンよ、大阪に集え! | トップページ | 関西吹奏楽コンクールを聴いて 2009 《後編》 »