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大植英次/大フィルのサン=サーンス「オルガン付き」

ザ・シンフォニーホールで大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会、二日目を聴いた。それにしても今年になってから、もうひとりのコンサートマスター:梅沢さんの姿を全くお見かけしないが、どうされたのだろう?

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曲目は、

  • パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲 第1番
  • サン=サーンス/交響曲 第3番 「オルガン付」

ヴァイオリン独奏はハンガリー・ブダペスト生まれのクリストフ・バラーティ、オルガンは室住素子さんが担当された。

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定期一日目を聴いた人たちがブログでバラーティのことを「超絶技巧」と絶賛していたので期待していたのだが、全然大したことなくてがっかりした。力強さに欠け、演奏に芯がない。(テクニックの欠如を隠すためか)終始ゆっくりめに弾き、腑抜けた印象を受けた(コンチェルトの場合、テンポに関しては指揮者よりもソリストの意向が尊重される。その有名な例がグレン・グールドとバーンスタインが共演した例の事件である。詳細は→こちら)。パガニーニは、もっとデモーニッシュに弾いてくれなくちゃ!

生前のパガニーニを聴いた人は「彼の演奏技術は悪魔に魂を売り渡した代償として手に入れたものだ」と噂し、パガニーニの死後は教会から埋葬を一時拒否され、その遺体は各地を転転とする羽目になったという。

だからこのコンチェルトは速いパッセージのダブルストップ(重音奏法)、二重フラジオレット(弦楽器で倍音を出す演奏技巧)、スピカート奏法(弓を叩くように強く弾ませる)など難易度の高い技法が多々登場するが、肝心の箇所でバラーティのテンポが落ちてしまう。この傾向は下手な奏者にありがちなこと。フラジオレットの高音域も掠れ、まともな音になっていない。

一応僕の勘違いでないことを確かめるために、帰宅してから庄司紗矢香さんがパガニーニ国際コンクールに史上最年少(16歳)で優勝した翌年、ドイツ・グラモフォンにレコーディングした同じ協奏曲 第1番のCDを聴いてみた。明らかに17歳の庄司さんの方が今日聴いたバラーティより上手い。その差は歴然としている。所詮、彼はロン=ティボー国際コンクールで2位にしかなれなかった(この年の1位はベルリン・フィルのコンサートマスターに内定した樫本大進さん)2流のヴァイオリニストに過ぎないのだなと得心した次第である。

バラーティのアンコールは、

  • イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ 第2番より第1楽章
  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番よりサラバンド

イザイは今年ヒラリー・ハーンの演奏を生で聴いたが、如何に彼女が奏でるフラジオレットの高音部が美しかったかを今日改めて思い知らされた。

バッハはヴィブラートを多用しすぎで下品。こんなお粗末なバッハ、久しぶりに聴いた。ある意味希少価値かも。

一方、プログラム後半のシンフォニーはしなやかで緊張感にも溢れ、素晴らしかった!

サン=サーンスは1853年から1858年までサンメリー教会のオルガニストとなり、1858年から1877年まではパリ・マドレーヌ教会のオルガニストとして活躍した(後任はフォーレ)。つまり、足かけ20年以上も教会に勤めていたことになる。

交響曲第3番は1886年に作曲された。第1楽章の序奏がワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」(1865年初演)を彷彿とさせるのは偶然ではないだろう。実際、サン=サーンスはワーグナーと交流があったそうだ。

この曲は2楽章形式で、どちらの楽章も《第1部》と《第2部》に分かれている。第1楽章も第2楽章も《第1部》は劇的で、仄暗い弦の音色が魅力的。一方、オルガンが初めて登場する第1楽章の《第2部》はオーケストラの奏でる和音がコラール(賛美歌)風で、どことなくエルガー/エニグマ変奏曲に通じる響きもある。調べてみるとエルガーの父親は聖ジョージ・カトリック教会のオルガニストだったそうだ。そう、つまりこの《第2部》は紛れもなく《教会音楽》なのだ!

第2楽章もオルガンが加わるのは《第2部》からで、荘厳なフーガやカノンといった《教会音楽》が展開される。つまり、いずれも《第1部》が世俗の苦悩とか情熱を描き、《第2部》は神の栄光を讃える展開となっている。そのコントラストが鮮明な名演であった。やっぱり大植さんは、19世紀以降のこういう曲を振らせると絶品である。

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コメント

先程はコメントありがとうございます。

『オルガン付き』は大植監督の真骨頂といった感じでしたし、遅いテンポも相乗効果があったように思いました。

>「彼の演奏技術は悪魔に魂を売り渡した代償として手に入れたものだ」と噂し、パガニーニの死後は教会から埋葬を一時拒否され・・・・

sign03先程雅哉さんのコメントのお返事に
パガニーニは悪魔に取りつかれたような顔で優しく穏かなサンサーンスと対照的~~そのような事書いたところでした。
パガニーニのVnコンチェルトは余り好きでなくて
余りこれまでCDでも腰を据えて聴いてませんでした・・・なんか技巧に走って面白くなくて・・・
生で聴くと醍醐味を感じましたが。

投稿: jupiter | 2009年8月 4日 (火) 01時07分

jupiterさん、コメントありがとうございます。

パガニーニのVnコンチェルトは僕も好きではありません。その理由はオケの譜面が単純で面白くないからです。パガニーニは生前、自作の出版を許可せずコンサートが終了する度に楽譜を回収していたそうです。だから初見で弾けるよう、易しいオーケストレーションにしたのでしょうね。

投稿: 雅哉 | 2009年8月 4日 (火) 12時59分

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