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2009年7月 1日 (水)

雑感/イギリス近代音楽に寄せて 

これは前の記事、秋山和慶/大フィル「ベルシャザールの饗宴」の続きである。

ヘンリー・パーセルが生きた17世紀、イギリスは素晴らしい作曲家を輩出したが、18-19世紀の古典派からロマン派の時代にかけてイギリス音楽は暗黒期が続いた。

ところが19世紀末から20世紀に至るとホルストディーリアスエルガーヴォーン=ウィリアムズブリテンウォルトンアーノルドら優れた作曲家が綺羅星のごとく登場する。

しかし残念なことにホルスト「惑星」、エルガー「威風堂々」など極一部の例外を除き、彼らの曲が日本のオーケストラで取り上げられることは殆どない。

これは日本に限らずアメリカやヨーロッパ大陸でも同様なことが言えるだろう。フランスのオケやベルリン・フィル、ウィーン・フィル等がエルガーヴォーン=ウィリアムズの交響曲を演奏したという話は余り耳にしない。イギリス近代音楽(特にシンフォニー)は英国オーケストラの専売特許のようになってしまっている。

マルコム・アーノルドの9つある交響曲などは日本のオケに完全無視されている代わりに、むしろ全日本吹奏楽コンクールで演奏されることが多い。アーノルドが作曲したロマンティックな映画音楽の傑作「第六の幸福をもたらす宿」も吹奏楽のアレンジ(瀬尾宗利 編)で人気に火がつき、テレビ朝日「題名のない音楽会」の視聴者投票ランキングでは堂々第8位に入選した。

Arnold

ところで、夏になると無性にディーリアスの音詩(tone poem)が聴きたくなる。だから秋山和慶/大阪フィルハーモニー交響楽団で「春初めてのカッコウを聞いて」「川面の夏の夜」が聴けたのはとても嬉しかった。しかし、悲しいかな演奏会で聴けるディーリアスはこれらか「ブリッグの定期市(イギリス狂詩曲)」くらいに限られている。今回の大フィル定期では折角合唱団も出演したのだから、バリトン独唱と合唱による「海流」とか、あるいは「日没の歌」「高い丘の歌」などディーリアスの(オーケストラ伴奏による)合唱曲も聴きたかった!そうそう、それから僕は美しい旋律に満ちた歌劇「村のロミオとジュリエット」がとても好きだ(劇中オーケストラ単独で演奏される「楽園への道」がことに有名)。日本でなんとか上演されないものだろうか?

僕がウォルトンの音楽を初めて聴いたのは中学生の時。ジョン・ウィリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラのLPレコードに収録されていた戴冠式行進曲「宝石と王のつえ」であった。エリザベスII世(現女王)の戴冠式のために書かれた曲である。エルガーの「威風堂々」を彷彿とさせる高貴なファンファーレ、気高い曲調に魅了された。そしてその後、高校生の時にスタンリー・ブラック/ロンドン・フェスティバル管弦楽団のレコードで映画「スピットファイア」〜前奏曲とフーガを聴いて、完全にノック・アウトされた。

Spitfire

他にウォルトンが映画のために書いた作品ではローレンス・オリヴィエ監督・主演「ハムレット」の葬送行進曲も素晴らしい。ウォルトンはイギリス以外で未だに過小評価されている作曲家だと想う。彼の交響曲第1番や2番なども、もっと世界中で演奏されていい。

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