大阪でパリ祭!?《フランス語で歌うシャンソン》
7月14日、パリ祭の日。仕事を終えて大阪倶楽部へ。
日本テレマン協会が主催する《フランス語で歌うシャンソン》の夕べを聴くためである。スライドによる日本語字幕付き。
まずはベルサイユ時代、バロックのシャンソン(シャンソンとはフランス語で”歌”の意味)。
- ラモー/ミューズ達の語らい(クラブサン・ソロ)
- ゲドロン/嬉しいことに、楽しいことに(宮廷シャンソン)
- ランベール/悩みがなければ恋はない(宮廷シャンソン)
- リュリ/帰っておいで、帰っておいで、愛の神達よ(オペラ・アリア)
- クープラン/羽虫(クラブサン・ソロ)
クラブサン(チェンバロ)独奏は吉田朋代さん。歌は泉 由香さん。そして通奏低音としてチェロの曽田 健さんも加わった。
第2部は近代に下り、メロディー・フランセーズ。
- ドビュッシー/星の夜
- ドビュッシー/マンドリン
- フォーレ/月あかり
- プーランク/愛の小径
歌は引き続き泉さんで、ピアノ伴奏は浜野りささんが担当された。
休憩を挟み第3部は現代シャンソン。
- イタリア古典歌曲集よりプレジー・ダムール
- 詩人の魂
- パリの屋根の下
- シャンゼリゼ通り
- パリの空の下
- 私の心はヴァイオリン(ヴァイオリン独奏:浅井咲乃)
- 幸せを売る男
- さくらんぼの実る頃
- バラ色の人生
- ラ・ボエーム
- 枯葉
後半のヴォーカルは中津洋子さんと永海 孝さんが交互に務められた。バックはジャズコンボ(ピアノ、ベース、ドラム)のストンプ in KOBEおよび、延原武春/シンフォニエッタ・TELEMANN(テレマン室内管弦楽団メンバー、弦楽六重奏)が担当。
こうやってフランス歌曲の歴史を辿っていくと、その流れが現在に至るまで脈々と続いているのだなということが良く分かる。喜び、悲しみ、愛と死。それは人生そのもの。なんと洗練され、心地よいメロディの数々であろうか!プーランクの曲なんか、いわゆる流行歌そのもののスタイルでとても親しみやすい。
20世紀の日本を代表する作曲家、武満 徹は終戦直前にリュシエンヌ・ボワイエが歌うシャンソン「聴かせてよ、愛の言葉を」を聴き、その衝撃が音楽家を志すきっかけとなった。そして後に日本語による珠玉の《うた》の数々を生み出すことになる。
「さくらんぼの実る頃」はフランスの共産主義運動パリ・コミューン(1871年に蜂起、革命政府は72日間という短命に終わる)に参加したジャン=バティスト・クレマンが、そこで出会い若くして命を落とした野戦病院付き看護婦ルイーズの想い出を綴った歌である。そしてこのシャンソンはムッソリーニが台頭した時代のイタリア・アドリア海を舞台に一匹狼のコミュニスト、ポルコ・ロッソとファシスト政権との攻防を描く宮崎駿監督の「紅の豚」の挿入歌となり、加藤登紀子が歌った。ご存知のとおり彼女は高校時代に安保デモに参加、全学連の委員長だった藤本敏夫と獄中結婚したというまさに筋金入りの人である(まぁ、大体「紅の豚」というタイトルそのものが「俺はアカで、中年の太った醜い豚だ」と世間に堂々と宣言しているのだから、さすがである)。
パリ・コミューンへの共感から文豪ヴィクトル・ユーゴーは小説「レ・ミゼラブル」を書き、それは大ヒット・ミュージカルとなって現在でも日本でしばしば上演されている(「レ・ミゼラブル」の時代背景についてはこちらに詳しい)。
ミシェル・ルグランが作曲したミュージカル映画「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」、そして舞台ミュージカル「壁抜け男」「マルグリット」などもシャンソンという大きな歴史の流れの中にある。みんな繋がっているのだ。
そんなことどもを考えながら、夏の夜のひと時を愉しんだ。
アンコールは「巴里祭(巴里恋しや)」。日本語詞がスライドに掲示され、聴衆も全員で歌った。
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