映画「ハリー・ポッターと謎のプリンス」
評価:B
原題は"HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE"つまり、「ハリー・ポッターと混血の王子」。しかし混血が差別用語に当たるとして日本では差し替えになった。
ディズニーの"THE HUNCHBACK OF NOTRE DAME"(ノートルダムのせむし男)が「ノートルダムの鐘」に変更された事例と同様である。「言葉狩り」というのは何と空しいことか……。
前作「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」のレビューはこちら。
「不死鳥の騎士団」で劇映画デビューを果たしたデヴィッド・イェーツはしっかり独自のスタイルを持つディレクターである。特に俯瞰ショットの使い方が上手い。本作ではハリーとロン、ハーマイオニーが再会する時に意表を突く仰角ショットを用いて、とても印象的な場面に仕上げている。
原作は2巻に及ぶ長尺だが、映画脚色のプロセスですっきり枝葉を刈り、大変分かり易い。
シリーズで最も出来が悪かったのがマイク・ニューウェルが監督した「炎のゴブレット」だが、イェーツが監督に抜擢されてから完全に復調した。シリーズ最高作は間違いなくアルフォンソ・キュアロン監督の美意識が隅々まで透徹した「アズカバンの囚人」。その次に来るのが「不死鳥の騎士団」と、この「謎のプリンス」と言って良いだろう。
"ハーマイオニー・グレンジャー"役のエマ・ワトソンは本当に綺麗な娘に成長した。彼女の起用は大成功であろう。それからイヴァナ・リンチ演じる《学園の不思議ちゃん》こと"ルーナ・ラブグッド"が、いい味出している。
中でも秀逸なのが《悪い魔女》ベラトリックスを演じるヘレナ・ボナム=カーター。正にはまり役。彼女がデビューしたての「眺めのいい部屋」(1985)の頃は普通の女優さんだったが、ティム・バートンと交際するようになって演じる役柄が変わってきた(大体、ふたりの最初のコラボレーションが「猿の惑星」だからね!)ミュージカル映画「スウィーニー・トッド」の"ミセス・ラヴェット"なんか最高だった。ティム・バートン最新作「アリス・イン・ワンダーランド」では"赤の女王"役。写真はこちら!こちらもまたまた愉しみである。
さて、シリーズ最終作「ハリー・ポッターと死の秘宝」は2部作として公開される。デヴィッド・イェーツが監督を続投し、現在撮影中。音楽は是非ジョン・ウィリアムズに復帰してもらい、最後を締めて欲しいというのが僕の切なる希望である。
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