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2009年7月27日 (月)

仲道郁代/ショパン 鍵盤のミステリー 第1回「天才誕生」

兵庫県立芸術文化センターで仲道郁代さんによるオール・ショパン・プログラムを聴く。4回シリーズで今回は第1回目。

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  • 幻想即興曲
  • ポロネーズ ト短調 (ショパン7歳、最初の作品)
  • ノクターン レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ
  • 12のエチュード 作品10より「革命」
  •  〃 「別れの曲」
  • アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
  • バラード 第1番 ト短調
  • 12のエチュード 作品25より第1番「エオリアンハープ」
  • 2つのポロネーズ 作品26より第1番
  • スケルツォ 第2番 変ロ短調

仲道さんのお話を交えてのコンサートだった。スライドも使用され、ショパンの生家、肖像画、自筆楽譜などが映し出され、またショパンの手紙が読み上げられたりと、その生涯を辿りながら多面的に作曲家を読み(聴き)解く構成となっており、レクチャーと呼んでも良い濃密な内容だった。仲道さんのピアノも強靭な小指を駆使して全ての音が均一にキラキラ輝き、申し分ない。ミス・タッチは皆無。(休憩20分をはさみ)素晴らしい2時間半を過ごした。

A席3,000円、B席1,000円という安価な価格設定も実に魅力的。ビバ!兵庫芸文。大ホール(2,001席)は勿論、満席。文化事業に関して、大阪が兵庫から学ぶべきことは多い。

別れの曲」を聴きながら、僕の脳裏に即座に蘇るのは大林宣彦監督の名作「さびしんぼう」(1985年、「キネマ旬報」読者選出ベストワン、第2回おおさか映画祭・作品賞 受賞)である。どこか懐かしい尾道の風景、夕焼けに映える海を行き交うフェリー、富田靖子と自転車、そして全編に流れる「別れの曲」(エンディングで富田靖子が唄う主題歌の旋律も「別れの曲」である)。この作品ほど、ショパンの音楽が持つ叙情、魂の震えを巧みに掬い上げた映画を僕は他に知らない。

ひとがひとを恋うるとき、ひとは誰でもさびしんぼうになる

さびしんぼう」の熱烈なファンサイトをご紹介しておこう→こちら

また、練習曲「エオリアンハープ」(シューマンが命名したらしい)は大林監督が同じく尾道でロケした「彼のオートバイ、彼女の島」(1986年、ヨコハマ映画祭ベストテン第3位)に登場する。これは後に「ミナミの帝王」でブレイクする竹内 力の映画デビュー作。竹内演じるバイク乗りの好青年が自分のアパートで聴いているのが「エオリアンハープ」なのである。心に残る素敵な青春映画であった。

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アンコールで演奏された前奏曲 第7番で想い出すのは中原 俊監督の映画「櫻の園」(1990年、「キネマ旬報」ベストワン、監督賞、脚本賞 受賞)。この美しくも、儚く切ない名作の全編を彩るのがフェデリコ・モンポウ(スペイン)/「ショパンの主題による変奏曲」(ピアノ独奏:熊本マリ)。その《ショパンの主題》こそ、前奏曲 第7番のことなのだ。

そんな映画の夢に浸りながら、仲道さんのピアノにうっとり耳を傾けた。

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次回は来年3月6日(土)。もう既にチケットは半分以上売れているそうである。未購入の人は急げ!

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コメント

そうです!「別れの曲」というと、「さびしんぼう」です。
「♪さよなら あなたと出会えてうれしかった」と脳内で歌っています。

投稿: ぽんぽこやま | 2009年7月27日 (月) 14時48分

ぽんぽこやまさん、賛同頂き嬉しいです。

大林作品は《ピアノ映画》とも呼ばれていますよね。「転校生」の《トロイメライ》、「ふたり」の《ノベレッテ 第1番》(以上シューマン)、「おかしなふたり」の《エリーゼのために》(ベートーヴェン)、そして「姉妹坂」の《ため息》と「時をかける少女」の《愛の夢 第3番》(以上リスト)。いずれもピアノが映画に美しい彩りを添えています。

ちなみに細田守監督によるアニメ版「時をかける少女」(これも傑作!)ではバッハ作曲《ゴルトベルク変奏曲》のピアノ・バージョンが流れ、絶大な効果を上げています。

投稿: 雅哉 | 2009年7月28日 (火) 01時10分

大林作品の中では、個人的にはちょっとやり過ぎと思った「ねらわれた学園」でも、栄光塾の場面で峰岸徹がピアノをひいていましたね、そういえば。

投稿: ぽんぽこやま | 2009年7月28日 (火) 23時21分

「ねらわれた学園」では金星人がピアノを弾き、「漂流教室」では怪獣もピアニストになります。何れも明白な失敗作ですが。

投稿: 雅哉 | 2009年7月28日 (火) 23時56分

「漂流教室」・・・見ました。ただ、この頃は大林作品という意識もほとんどなく、たまたま友人となんばに出かけて、暇があったので、時間を見たらちょうど始まる時間だったので見ただけです。記憶が薄いですね。

・・・失敗作ですよね、やっぱり・・・

投稿: ぽんぽこやま | 2009年7月29日 (水) 01時28分

「漂流教室」で最も重要なことは、この作品で初めて大林監督と作曲家の久石譲さんが組んだことです。このことが後に、「ふたり」「はるか、ノスタルジイ」といった大傑作が生まれる契機となるのですね。

投稿: 雅哉 | 2009年7月29日 (水) 12時56分

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» 7/26 仲道郁代 『ショパン 鍵盤のミステリー』 第1囘「天才誕生」 [仙丈亭日乘]
ピアノ演奏と映像、そして仲道さんの解説で、ショパンの生涯を浮き彫りにしようといふ試み。 [続きを読む]

受信: 2009年7月28日 (火) 08時05分

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