昨年は「夏の映画、夏の音楽」という記事を書いて、好評を博した。今年はシリーズ第2弾(?)として夏だからやっぱり怪談、恐怖映画を特集してみよう。トップテンに収まりきらなかったので、若干多めにご紹介。
- サイコ(1960)
- 恐怖の振り子(1961)
- 羊たちの沈黙(1991)
- ザ・フライ(1986)
- セブン(1995)
- エイリアン(1979)
- フランケンシュタインの花嫁(1935)
- スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師(2007)
- 白い肌に狂う鞭(1963)
- 呪怨(1999、東映Vシネマ版)
- リング(1998)
- 箪笥(2003)
- ジョーズ(1975)
- 怪猫有馬御殿(1953)
- 血を吸う薔薇(1974)
「サイコ」
ヒッチコックの編集術の凄さは映画の教科書として使用される程。特に有名な”シャワー・シーン”のモンタージュで注目すべきは、ナイフが体に刺さっているショットが全くないこと。それでも観客はヒロインがメッタ刺しにされていると錯覚されるように巧みに編集されている。またソウル・バスによる斬新なタイトルデザイン(バスは”シャワー・シーン”の絵コンテも担当)、バーナード・ハーマンが作曲した弦楽器だけによる恐怖の音楽も圧巻である。
「恐怖の振り子」
ロジャー・コーマン監督によるエドガー・アラン・ポー原作シリーズ。最後に登場する振り子の大きさに度肝を抜かれる。バーバラ・スティールの美しさも忘れがたい。主演は怪奇映画の帝王、ヴィンセント・プライス。ポー&コーマン&プライスによる「アッシャー家の惨劇」も傑作。プライスはマイケル・ジャクソンの「スリラー」でナレーションを担当している。また彼はティム・バートン監督が敬愛してやまない役者であり、処女作「ヴィンセント」とはずばり彼のこと(こちらも自らナレーションを担当)。「シザーハンズ」ではマッドサイエンティストを演じた。
「羊たちの沈黙」
一応これはミステリーなのだけれど、兎に角ハンニバル・レクターのキャラクターが強烈で一度観たら一生忘れることが出来ない。愛聴曲はグレン・グールドが弾くバッハ/ゴルトベルク変奏曲というのも怖い。レクター博士を演じたアンソニー・ホプキンスがアカデミー主演男優賞に輝いたのも大納得である。アカデミー作品賞・主演女優賞(ジョディ・フォスター)・監督賞・脚色賞も受賞。
「ザ・フライ」
僕は本作こそデヴィッド・クローネンバーグ監督の最高傑作だと想う。その切なさが良い。実はこれ、リメイクでオリジナルはヴィンセント・プライス主演「蝿男の恐怖」(1958)。また、クローネンバーグなら「ビデオ・ドローム」(1982)も素晴らしい。
ビデオを観ることの恐怖を体験するという意味で「リング」に通じるものがある。
「セブン」Se7en
想像を絶する戦慄のラスト。ケヴィン・スペイシーの静けさが不気味だ。それにしても、この頃のグアネス・パルトロウは地味で目立たない存在だった。まさかオスカー女優になろうとは!この映画がきっかけで彼女はブラッド・ピットと恋に落ちるのだが……。同じデヴィッド・フィンチャー監督の「ゾディアック」(2007)も現代の闇を描き秀逸。
「エイリアン」
SFホラーの傑作。リドリー・スコット監督のスタイリッシュで研ぎ澄まされた映像が光る。クライマックスでハワード・ハンソンが作曲した交響曲 第2番「ロマンティック」が高らかに鳴り響くのに注目!また、ジェームズ・キャメロンが監督した「エイリアン2」も名作なのだが、あちらは《戦争映画》と呼ぶべきだろう。
「フランケンシュタインの花嫁」
シリーズ一作目「フランケンシュタイン」よりこちらの方が浪漫的、濃密な雰囲気があって僕は好きだ。フランツ・ワックスマンの音楽も絶品。ちなみに、本作を監督したジェイムズ・ホエールの晩年を描く映画が「ゴッド・アンド・モンスター」(1998)で、イアン・マッケラン(「ロード・オブ・ザ・リング」の”ガンダルフ”)が演じた。
「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」
詳しいレビューはこちらに書いた。「スウィーニー・トッド/狂気のビブラート」という記事も併せてご覧下さい。グラン・ギニョール(Grand Guignol=「荒唐無稽な」「血なまぐさい」芝居)の傑作。ただし血しぶき(splatter)が苦手は人にはお勧めしない。
「白い肌に狂う鞭」
「血とバラ」(1960)に並ぶ、耽美的恐怖映画の傑作。いまや「スター・ウォーズ」の”ドゥークー伯爵”や「ロード・オブ・ザ・リング」の”サルマン”として有名なクリストファー・リーの代表作。サディスティックなドラキュラ役者としての面目躍如!監督はホラー界の巨匠マリオ・バーヴァ(ジョン・M・オールドという名前でクレジットされることもある)。バーバラ・スティールが主演した「血ぬられた墓標」(1960)も印象深い。
「呪怨」
まず東映Vシネマ版が世間を震撼させ、その後”伽椰子”と”俊雄”くんは増殖し続けた。映画版が2本出来て、そしてハリウッド版も2本。さらに……。しかし怖さという点で、やはりオリジナル版がNO.1である。映画の中では日本版「呪怨2」が一押し。
「リング」
我が郷里、岡山出身の中田秀夫監督が脚本家・高橋洋氏と組んだ、心底震え上がらせられる戦慄の映画。これから派生して「らせん」「リング2」そしてハリウッド版も2本製作された。でもやはり、第1作にとどめを刺す。中田監督のホラーとしては「女優霊」、「仄暗い水の底から」も優れている。「仄暗い水の底から」はハリウッドで「ダーク・ウォーター」というタイトルでリメイクされた。こちらの出来も良い。
「箪笥」
韓国ホラーの代表作。美しくも哀しい物語。美少女ムン・グニョンがブレイクする切っ掛けとなった。現在、ハリウッドでリメイク企画が進行中。
「ジョーズ」
本作をホラーのジャンルに入れるかどうかについては当然異論もあろう。しかし、《見えないものの恐怖》をこれ程まで巧みに演出した映画を僕は他に知らない。スティーブン・スピルバーグが撮ったテレビ映画「激突」(1971)も、同様の意味においてホラーである。
「怪猫有馬御殿」
入江たか子さん主演による《化け猫映画》の代表作。大林宣彦監督の「HOUSE ハウス」(1977)や「麗猫伝説」(1983)は本作へのオマージュである。ちなみに「麗猫伝説」はたか子さんと入江若葉さんが母娘共演をしている。
「血を吸う薔薇」
日本最高のドラキュラ役者、岸田 森からはこの一本。ポスターはおどろおどろしいが、映画の中身はそれ程じゃありません。岸田 森なら是非、怪奇大作戦 第25話「京都買います」も観てね!
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