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2009年6月19日 (金)

宝塚月組「エリザベート」そして、歴代ベスト・キャスト考

宝塚大劇場で、月組(再演)によるミュージカル「エリザベート」を鑑賞。6月18日(木)15時公演。平日昼なのに1階席後方は立ち見がずらり。しかも2列びっしり!さすが人気演目、恐るべし。

宝塚版、ウィーン版(来日公演)、東宝版など僕が生の舞台で観たエリザベートおよびトート(死神)の役者はこれで9人目、ビデオ・DVDを含めると12人目となる。まあそれだけ思い入れのある作品である。

そこで宝塚版に限定し、現時点でのベスト・キャストなども考えながら今回の感想を語っていこう。

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エリザベート(シシィ)は凪七瑠海(なぎな るうみ)さん。2003年に第89期生として歌劇団に入団した男役ホープである。男役がシシィを演じるのは瀬奈じゅんさん(05年月組)に次いで2人目。

僕は基本的に男役がシシィを演じることに反対である。そうでなくても娘役が輝ける作品が宝塚には少ないのに、「エリザベート」まで奪わないでほしい。それが正直な気持ちだ。

瀬奈さんのシシィも酷かった。まず彼女の声域はアルトなので、高い声が出ない。それから普段男役をやっていると、所作にどうしてもその癖が出てしまう(背も高いし、ニューハーフの様に見えたりする)。瀬奈さんの場合、歩くときのドレス捌きの雑なこと!もう、目を覆いたくなった。

その点、凪七さんのシシィは及第点だったと想う。丸顔で可愛らしいし、立ち振る舞いも女性的。しっかり高音域も出ていた。

ちなみに、僕にとってエリザベート役のオールタイム・ベストは、第1位:花總まり(96年雪組、宙組)、第2位:白羽ゆり(07年雪組)となる。

トート役の瀬奈じゅんさんは、以前から《そつがない男役》だと想っていた。とりたてて欠点もなければ、逆に強烈な魅力もない。そういう意味において、今回も安心して観られる安定感があった。ただ、やはり高い声が出ないので「最後のダンス」は音を下げて歌っていたけれど。

トートのオールタイム・ベストはダンス力と歌唱力を兼ね備えている点で、姿月あさと(宙組)と春野寿美礼(花組)を推す。

皇帝フランツ・ヨーゼフの霧矢大夢きりやん)は演技力と歌の巧さで魅了した。フランツの孤独、憂愁の佇まい、そしてその優しさをシシィに理解してもらえないことの苦悩。そういったものを余すところなく表現していた。 

オールタイム・ベストはきりやんと、稔 幸(星組)で決まり。

暗殺者ルイジ・ルキーニの龍 真咲さんはビジュアル的に格好よく、中々良かった。ただ歌と演技は《いっぱいいっぱい》という感じがした。なんだか余裕がないのだ。

オールタイムでは第1位:轟 悠(96年雪組、凄みがあった)、第2位:霧矢大夢(05年月組)。

皇太后ゾフィーの城咲あいさんはとにかく若すぎた。本人の責任ではないが明らかにミス・キャスト。城咲さんは86期生、一方フランツ役のきりやんが80期生だから、この2人がどう考えても母と息子に見えない。最後まで違和感が付きまとった。

ベスト・ゾフィーは貫禄(意地悪さ)、そして歌唱力で出雲 綾(星組、宙組)。

皇太子ルドルフは役替わりだが、僕が観た日は明日海りおさん。美貌の男役で歌も上手く、申し分なし。

歴代で比べると朝海ひかる(宙組)、凰稀かなめ(07年雪組)、そして明日海りおの三つ巴といったところか。

また、ルドルフ(少年時代)を演じた羽桜しずくさん、そしてマダム・ヴォルフの沢希理寿さんが見事な歌唱を披露してくれたことも特筆に価する。特に少年ルドルフは月影 瞳(星組)さんと肩を並べる出来栄えだったと想う。

最後に、エリザベートの病院慰問の場面で登場するヴィンディッシュ嬢に関しては星組と宙組で演じた陵あきのさんが余りにも凄すぎたので、もう他の誰を観ても物足りない。ボロボロになった扇を広げ、その間から垣間見れるあの狂気の目!この背筋が凍るような瞬間を目撃するために、客席のオペラグラスが一斉に上がったという伝説が生まれたくらいである。

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コメント

ごらんになりましたか、月組エリザベート。
私は事前の予定が立てにくいので(特に宝塚は開演時間の関係で)、当日券で観劇でしたが、開幕直後に見ることができました。インフルエンザ騒ぎがまだ収まっておらず、どうも団体客のキャンセルも出たようで、開演ぎりぎりに着いたのですが、結構いい席が取れました。
今回の凪七さんは不安もあったのですが、おっしゃるとおり及第点でしたね。ただ、月組の娘役さんにチャンスを与えてあげたかったという気持ちはやはりあります。
マダム・ヴォルフの沢希さんはがんばってましたね。「娘役」さんというよりはもう「女役」さんクラスの生徒が演じることが多い中にあって、目を引いていました。まだ学年は下のほうですよね。

「エリザベート」については初演から見ているのですが、初演とそれ以後で決定的に違うのは、初演にあった緊張感でしょうか。当時日本でほとんど知られていなかったウィーンのミュージカルで、演じていた雪組の生徒たちも「これが日本で受けるんだろうか」という緊張感を持ちながらも必死でチャレンジしている様子がひしひしと伝わりました。宝塚にしては珍しく、黒地に「ウィーンミュージカル エリザベート 来年3月宝塚大劇場にて上演」という文字だけが書かれたポスターが梅田近辺で貼られていたのも記憶しています。初演開幕直後はまだ座席に余裕があったのですが、口コミで残りわずかだった座席があっという間に売れてしまいました。

ベストキャストは人それぞれで、それを言い出すときりはないのですが、初演のトート、一路さんは、ダンス力ではここに挙げられた二人には劣るものの、宝塚版エリザベートをここまでの人気作品にした立役者として功労賞をあげたいと思います。

花總エリザについていえば、初演雪組>宙組でしょうね。初演の時には、まだ荷が重すぎた感があったのですが、そのプレッシャーに負けまいとひたむきに取り組んで、結果見事に跳ね返していたのが印象的でした。宙組の時には、自覚してはいなかったとは思いますが、良くも悪くも自信がついてしまったんでしょうね。あとは厳しい言い方をすれば、二回目のエリザベートは「宝塚歌劇」というところを考えると、彼女にとっては引き際だったのではないかというのが私の意見です。

投稿: ぽんぽこやま | 2009年6月19日 (金) 20時31分

ぽんぽこやまさん、花ちゃん(花總まり)が10年以上、娘役トップに君臨し続けたことを快く想わない方が大勢いらっしゃることは十分理解出来ます。ただ僕は、娘役の場合若くしてトップになり、2-3年で退団に追い込まれてしまう宝塚のシステムもどうかと想うのです。花ちゃんの在任期間は前代未聞ではありましたが、その閉塞状態に風穴を開けたという意味で評価したいのです。

それから一路さんですが、東宝「エリザベート」では結婚するまで《私だけに》とばかりに、数年間タイトルロールを独占し続けたことはあまり感心出来ません。まあそれは「マイ・フェア・レディ」における大地真央さんにも言えることですが。「放浪記」の森光子を目指しているのでしょうか?

投稿: 雅哉 | 2009年6月19日 (金) 23時11分

レスありがとうございます。

花總さんに関してはやはり平行線をたどりそうですが、在任期間は私はさほど気にしておりません。かつて、遥くららさんあたりも長きにわたってトップを勤めた例もありますし、紫ともさん、ひびき美都さん、最近では渚あきさんのように男役トップ並の学年でトップに抜擢されて、大人の女性を見事に演じた娘役トップさんもいますので。ましてや、「ベルばら」で大プリマドンナだった初風諄さんの例もあります。

花ちゃんに関しては、リアルタイムで見たときに初演のときのほうがよかったと純粋に思っただけなんですが。

投稿: ぽんぽこやま | 2009年6月20日 (土) 00時11分

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