二人のビッグショー/柳亭市馬×柳家喬太郎 二人会
6月20日(土)、大阪・トリイホールで開催された柳亭市馬さんと柳家喬太郎の二人会を聴いた。
- 笑福亭喬若/へっつい盗人
- 柳家喬太郎/転失気
- 柳亭市馬/青菜
- 柳亭市馬/山号寺号
- 柳家喬太郎/お峰殺し(「牡丹灯篭」より)
昼の部と夜の部の二公演あり、会場は立錐の余地もないくらいギュウギュウ詰めの満席。東京のみならず、関西でも大人気のお二人である。
「昔は東京の噺家が大阪に来ても蹴られたものです」と市馬さん。「蹴られる」とは落語の符丁で「噺が客に全く受けないこと」だそうである。また中入り後最初の出番は「くいつき」と言うのだとも解説された。休憩中に買い求めた弁当やお菓子を客が食べているとき上がるので、客席がザワザワして落ち着かないためやりにくい出番だそう。
市馬さんの高座はとても丁寧で端正な芸風だったが、オーソドックスすぎて僕は余り面白いと想わなかった。同じ「青菜」なら先日聴いた笑福亭たまさんの方が断然好みだ。
喬太郎さんはやはり天才肌の噺家だなぁと感嘆した。その研ぎ澄まされた感性は故・桂枝雀に相通ずるものがある。「転失気」は上方の噺家で何度も聴いたネタだが、喬太郎シェフの腕にかかると大爆笑の味付けに進化を遂げており、恐れ入った。これぞre-creation(再創造)。和尚さんの「喝っ!!」という気合の入れ方、小僧さんの「大人なんか信用できない」というこましゃくれた態度、そしてその表情。名人芸の極み。小僧さんが「スルーしちゃって下さい」と言うと、すかさず「新作か古典か、はっきりしなさい!」と切り返すセンスもさすがである。
怪談「牡丹灯篭」ではガラッと雰囲気が変わり、その語り口に凄みを感じさせた。笑いの少ない噺だが、お峰が「ところでお前さん、菜のお浸しはお上がりかい?」と言って市馬さんの「青菜」を取り込んでしまう下りは最高に可笑しかった。
《歌う噺家》市馬さんに対抗し、喬太郎さんが「失恋魔術師」(by 太田宏美)を歌うという「二人のビッグショー」の名に恥じないお楽しみあり。僕の苦手な人情噺がなかったのも良かった。是非また聴きたい。
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