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2009年6月16日 (火)

金 聖響/オーケストラ・アンサンブル金沢のベートーヴェン

6月14日(日)、ザ・シンフォニーホールで金 聖響/オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のベートーヴェン・チクルス(第2回)を聴いた。

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曲目は、

  • バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲
  • 交響曲 第8番
  • 交響曲 第7番

聖響さんは大阪センチュリー交響楽団専任指揮者(2003-2006)在任中からピリオド(ノン・ビブラート)奏法を実践してこられた。僕はこのコンビの演奏会に一度だけ足を運んだことがあるが、正直言ってレベルの低いオケがノン・ビブラートで演奏すると余計下手にしか聴こえず、「まるでアマチュアが演奏しているみたいだ」と呆れたものだ。

しかし実力の点でOEKに問題はない(ただ現時点ではOEKより大阪フィルハーモニー交響楽団の方が上手いと僕は確信している。特にOEKはホルンが頼りない。まあ、大フィルのホルンもピッチに問題があるのだが……)。

今回のベートーヴェンも勿論ピリオド奏法。バロック・ティンパニを使用し、それ以外はモダン楽器。ただし、フルートは通常の銀管ではなく、2本ともモダン木製フルートが使用された。小編成による対向配置、コントラバスは正面最後列に並ぶ(ちなみに聖響さんはテレビ朝日「題名のない音楽会」に先日出演されたときも、同じスタイルでベートーヴェン/交響曲 第5番を指揮された)。また第7番では第1,3,4楽章の反復記号は全て敢行された。

スコアに記されたメトロノーム(速度)記号に近い快調なテンポで、軽やかで颯爽としたベートーヴェン。聖響さんの指揮ぶり同様に、スマートでクールな演奏だったと言っても良いだろう。それが長所でもあり、そして逆に短所ともなっている。

アーノンクール、ノリントン、ブリュッヘン、鈴木秀美など古楽オーケストラの指揮者たちは鋭角的アクセントを強調し、ある意味激しいアプローチをするが、聖響さんはむしろ淡白な印象を受ける。ベートーヴェンの苦悩とか、音楽と格闘する姿はそこにはない。そういうものを求める聴衆には物足りなく感じるだろう。

ただ第8シンフォニーは元々、飄々とした音楽だし、第7番はダンス・ミュージックである(ワーグナーは「舞踏の聖化」と評した)。だから聖響さんの資質がこれらの曲に良く似合っていたのではないだろうか?特に躍動する第7番の第4楽章は絶品だった。曲が終わるとブラボーの嵐。それも納得のいく演奏だった。

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ピリオド奏法によるアンコールのメヌエットも清々しくてとても良かった。

嘗て同じプログラムで聴いた大植英次/大フィルのベートーヴェン・チクルスは、絶えずビブラートをかけた、テンポの遅い鈍重な演奏で心底がっかりした。

あれに比べれば、聖響/OEKのアプローチを僕は断固支持する。

さて、大フィルは9/25に兵庫芸文で日本テレマン協会代表の延原武春さんを指揮者に迎え、バッハ・ベートーヴェン・ブラームスを演奏する。これが初共演となる。延原さんはベートーヴェンの指示したメトロノーム記号を遵守し、昨年はクラシカル楽器で日本初となる交響曲全曲の連続演奏会を成し遂げた(その功績が高く評価され、ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受賞)。また2006年に延原さんはオーケストラ・アンサンブル金沢定期演奏会にも登場し、ベートーヴェンの第7番を指揮されている。

果たして大フィルは遂にピリオド奏法でベートーヴェンに挑むのか?それはスチール弦のまま?それともガット弦で?(1950年頃まで日本のどのオケもガット弦を張っていた)そしてバロック・ティンパニは使用するのか?等、どこまでこのオケが故・朝比奈隆の影から逃れることが出来るのか、今から興味は尽きない。勿論僕も聴きに行く予定である。

 関連記事:(今まで実演で聴いたベト7の中で最高の名演)

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コメント

こんにちは。
わたしも行ってました。
自分が行ったコンサートの感想をこちらで読むのは、なんだか答え合わせのようでいつもドキドキするのですが(笑)、今回も納得でした。
「スマートでクールだけど淡白。」
どっちも大好きな曲なのに、いまいちガンガン来なかった(笑)のは、自分の体調が悪いせいかもなぁとも思ってうまく言語化できずにいたんですが、なるほどそうですね!
でもほんとに第4楽章はすごかったですね。

ところでホルンはどこでも大変なのですね...(笑)。

投稿: みなみ虫 | 2009年6月17日 (水) 14時11分

みなみ虫さん、お久し振りです。

僕の感想に賛同頂けて嬉しいです。薄味で、まるで水彩画のようなベートーヴェンでしたね。

ホルンについてですが、これは日本の金管奏者全体の水準が弦楽器に比べて低いので、致し方ないところではあります(日本人の世界的トランペット奏者とかホルン奏者とか、聞いたことないでしょう?)。だから日本でもベネズエラの音楽教育システム「エル・システマ」を取り入れるべきだというのが僕の持論です。

ところでみなみ虫さんは兵庫芸文で開催される延原/大フィルの演奏会は行かれませんか?先日テレマン協会のマンスリー・コンサートで、延原さんが「ブラームス/交響曲第1番は初稿の楽譜を用い、原典に忠実な演奏を目指す」と仰っていました。中々面白そうですよ。

それから来年度の大阪シンフォニカー/名曲コンサートで、僕が一押しの指揮者・児玉宏さんがベートーヴェンの「英雄」を披露されます。これはゆめゆめ、お聴き逃しなりませんよう。

投稿: 雅哉 | 2009年6月17日 (水) 19時13分

管楽器は、欧米人に比べて肺活量が...とかそういう問題もないんでしょうか?いや、なんとなく(笑)。「エル・システマ」、素晴らしいですよね。箱とか道とかじゃなくて、こう言う事にもっとお金を使うべきだと思います。が、今の状況じゃ難しそうですね。

延原/大フィルのチラシは見ていたんですが、何故かちゃんとチェックしてませんでした!ベートーヴェンもやるんですね!最近ブラームスもよく聴いているので、気になって来ましたよ。帰りにチケット買おうかしら。大阪シンフォニカーも、覚えておきます(笑)。ちなみに今わたしが合唱で通っている(^^;第九の本番も大阪シンフォニカーさんで、指揮は寺岡清高さんです。実はどちらも聴いたことがないんですが、どんな第九になるのか楽しみです。その前に、ベートーヴェンに申し訳なくならないように、練習しないといけませんが...(笑)。すみません、余談でした。

投稿: みなみ虫 | 2009年6月18日 (木) 09時51分

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