« 児玉宏/大阪シンフォニカー《ドイツ・ロマン派の秘密》 | トップページ | 二人のビッグショー/柳亭市馬×柳家喬太郎 二人会 »

2009年6月22日 (月)

アムステルダム・ルッキ・スターダスト・カルテット

ザ・シンフォニーホールで大植英次/ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニーがマーラー/交響曲第9番を演奏し、京セラドーム大阪では「3000人の吹奏楽」が開催された6月21日(日)、僕は兵庫芸術文化センター小ホールでアムステルダム・ルッキ・スターダスト・カルテット(ALSQ)のリコーダー四重奏を聴いた。本当は3公演全てに往きたかった!でもまあ「3000人の吹奏楽」は毎年あるし、大植さんのマーラーはいつの日にか大フィルでも聴けるだろう。悔いはない。

20090621175748_edited

会場はぎっしり満席。高音部(ソプラニーノ)から低音部(コントラバス・リコーダー)まで曲ごとにメンバーの役割分担がシャッフルされ、4人でステージに置かれたトータル25本のリコーダーを持ち替えて演奏した。

リコーダーは木製なので、ホルンやトロンボーンなどのように管を巻くことが出来ない。だから低音のリコーダーになるとまっすぐ背が伸びていって、仕舞には弦バスのようにエンドピンが付き、立って演奏する場面も。決して曲がらない楽器というのは見ていて潔い印象を受ける。

リーダーのダニエル・ブリュッヘンはフランツ・ブリュッヘンの甥。叔父さんもリコーダー奏者で18世紀オーケストラの指揮者として活躍、今年は新日本フィルとのハイドン・プロジェクトで話題になった。

パウル・レーンフーツはラッセル・クロウ似のイケメン。写真はこちら。彼は1997年に12人のメンバーからなるThe Royal Wind Musicを組織した(公式サイトはこちら。彼らの演奏はこちらの動画で試聴出来る)。レーンフーツALSQに1978-2001の間所属していたが、その後離脱。しかし今年カルテット結成30周年を迎えるにあたり、オリジナル・メンバーとして再び活動に加わったということだ。

さて今回の曲目は(青字が20世紀の作品)、

  • ヴィヴァルディ/協奏曲ニ短調(原曲は2つのヴァイオリンのための)
  • パレストリーナ/エレミア哀歌
  • メルーラ/カンツォン「うぐいす」
  • J.S.バッハ/フーガの技法より コントラプンクトゥス 4&9 
  • スティーヴィー・ワンダー/When shall my sorrowful sunshine slak
  • スヴェーリンク/わが青春はすでに過ぎ去り
  • ピアソラ/天使の死
  • ピアソラ/ブエノスアイレスの秋
  • ステーンホーヴェン/歌手と野生の森
  • カルディーニ/フェード・コントロール
  • タリス/イン・ノミネ
  • パーセル/シャコンヌ

ノン・ビブラートで聴くリコーダーの鄙びた音は清々しく響く。メンバー各自のスーパー・プレイもたっぷり堪能した。

面白いのは18世紀から19世紀にかけて、つまり古典派・ロマン派の時代にリコーダーの曲が全くないということだ。つまりこの時期、この楽器は一旦滅亡の危機に瀕したのである。そして20世紀後半、古楽復興運動と共に再生した。リコーダーで聴く現代音楽というのもなかなか乙な味わいがある。

スティービー・ワンダーは彼らがブリュージュ古楽コンクールで優勝したときの曲目。実は《1600年以前の音楽しか許可しない》というコンクール規定があり、「作者不詳」と偽装して演奏し、聴衆や審査員に一泡吹かせたそうだ。実に反骨精神のある4人組である。

20090621155915_edited

アンコール「エリーゼのために》のタンゴ」(パウル・ レーンフーツ編)が風変わりで面白かった。また「千の風になって」が意外とリコーダーに合っているので驚いた!これなら「千と千尋の神隠し」の《いつも何度でも》も、いけるかも知れない。

| |

« 児玉宏/大阪シンフォニカー《ドイツ・ロマン派の秘密》 | トップページ | 二人のビッグショー/柳亭市馬×柳家喬太郎 二人会 »

クラシックの悦楽」カテゴリの記事

古楽の愉しみ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、ご無沙汰しています。
ピアソラも演奏されたのですね!
両極端な選曲もおもしろいですね。

エレクトーンスーパープレーヤーの富岡ヤスヤ
この方エレクトーンのみならず、ヴォーカル、ハーモニカなどのエキスパートでもある多才な方なんですが
あるリサイタルの時間つぶしにYAMAHAのスケルトンのレコーダーを持ってきて”もののけ姫”を。
1000円程度のリコーダーなのに見事なグリッサンドを効かせて演奏されたのが絶品であった事を思い出しました。
リコーダーって本当に不思議な楽器です。
10月のモーリス・シュテーガーにも行かれますか?

マラ9ですが、私は来年には大フィルでされると信じてます。
あんな息のあった演奏を見せられては大フィルも黙ってられません(笑)

投稿: jupiter | 2009年6月29日 (月) 13時09分

jupiterさん、大植さんのマーラー9番の演奏、大阪公演と広島公演の記事を読ませて頂きました。僕もその場にいたかったです!大フィルで是非聴きたいですねぇ。

モーリス・シュテーガーは勿論、チケット購入済みです。今度はjupiterさんも行かれるんでしょう?

そうそう、それからリコーダーによるピアソラですが、さすがにアルゼンチン・タンゴは違和感がありました。やっぱりバンドネオンが欲しいですね。

投稿: 雅哉 | 2009年6月29日 (月) 23時56分

モーリス・シュテーガー,行きます!!
(実は夫がリコーダーマニアです)

投稿: jupiter | 2009年7月 2日 (木) 00時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アムステルダム・ルッキ・スターダスト・カルテット:

« 児玉宏/大阪シンフォニカー《ドイツ・ロマン派の秘密》 | トップページ | 二人のビッグショー/柳亭市馬×柳家喬太郎 二人会 »