天使と悪魔
評価:B
今から3年前、映画「ダ・ヴィンチ・コード」について僕が書いたレビューはこちら。この時の評価はD。しかし、今回のシリーズ第2弾は息もつかせぬジェットコースター・ムービーに仕上がっており、前作より遥かに面白くなった。ヴァチカンの観光映画としても愉しめる。
映画公式サイトはこちら。
カメルレンゴを演じたユアン・マクレガーがとにかく良い。原作を読んだ時点で僕のイメージ・キャストはキアヌ・リーブスだったのだけれど、マクレガーもはまり役。彼の全出演作の中でもベストではなかろうか?
そしてヴァチカン最年長の枢機卿を演じるアーミン・ミュラー=スタールがさすがの威厳があって素晴らしい。
主人公のラングドン教授は原作で《ハリス・ツイードを着たハリソン・フォード》と描写されているが、「ダ・ヴィンチ・コード」のトム・ハンクスはそれとはかけ離れており、心底がっかりした。ところが今回その違和感は不思議となかった。目が慣れてきたせいもあるだろうし、人生に疲れた知識人という雰囲気がいかにも大学教授らしくて悪くなかった。
「天使と悪魔」は「ダ・ヴィンチ・コード」ほど内容がややこしくなく、一直線に物語が進んでいくので元々映画に向いていたのだろう。タイムリミット・サスペンスという点でもドキドキワクワクする要素がたっぷりある。ロン・ハワード(「ビューティフル・マインド」でアカデミー監督賞受賞)の演出は前作より断然スピード感があり、冴えている。
そして特筆すべきはハンス・ジマー(「バックドラフト」「ライオン・キング」)による音楽の充実振り。久々にジマーが《本気》で仕事したという印象を受けた。ジョシュア・ベルのソロ・ヴァイオリンをフィーチャーしたテーマが格調高く美しい。またグレゴリア聖歌を彷彿とさせる重厚な合唱も聴き応えあり。一部ゴブリンの「サスペリア」風なのも、なんだかイタリア的で愉快だ。
シリーズ第3弾"The Lost Symbol"(旧題「ソロモンの鍵」)はダン・ブラウンの小説が今年9月に出版予定だが、既にソニー・ピクチャーズが映画化権を獲得したらしい。こちらも大いに期待したい。
| 固定リンク | 0
「Cinema Paradiso」カテゴリの記事
- クラシック通が読み解く映画「TAR/ター」(帝王カラヤン vs. バーンスタインとか)(2023.05.27)
- A24とNetflixの躍進が目立ったアカデミー賞授賞式 2023を振り返る(2023.03.15)
- 2023年 アカデミー賞大予想!(2023.03.12)
- デイミアン・チャゼル監督「バビロン」は「ラ・ラ・ランド」を露悪趣味に歪曲した映画(2023.03.10)
- イニシェリン島の精霊(2023.03.08)
コメント
前作は見なかったんですが・・・
今回の映画に対するヴァチカンの反応が面白いですね。
「ダ・ヴィンチ・コード」に対しては反カトリックという立場でしたが、「天使と悪魔」については「宗教的に無害」というコメントを出しています。エンターテインメントとして認定したということでしょう。
CGを使ったとはいえ、一部はセットでよくあのヴァチカンのサンピエトロ広場やサンピエトロ大聖堂を再現したなというのも見ものでした。
突っ込みどころといえば、次期ローマ教皇の被選挙権って枢機卿に限らず全ての男性のカトリック信徒にあるんだけどなー、カメルレンゴじゃなぜダメなの?って思ったことぐらいかな。
面白かったので、前作見てみることにします(駄作でも)。
投稿: ぽんぽこやま | 2009年5月24日 (日) 01時30分
ぽんぽこやまさん、「ダ・ヴィンチ・コード」は《イエスの末裔は生きている!》という話ですから、カトリック教会が我慢ならないと敵視するのは当然だと想いますよ。その点「天使と悪魔」はヴァチカンが舞台の単なるエンターテイメントですから。
原作は「天使と悪魔」→「ダ・ヴィンチ・コード」という順に執筆されているので、そういう順番でご覧になるのは全く問題ないんじゃないでしょうか?
投稿: 雅哉 | 2009年5月24日 (日) 08時03分