立川談春 25周年スペシャル独演会
今回の日本での新型インフルエンザ騒動について、ニューヨーク・タイムズ紙は次のように報道した。
Japan is also known for its paranoia of foreign diseases.(日本は海外からもたらされる病気に対して、偏執・妄想的であることでも知られている)
さて、5月23日(日)にサンケイホールブリーゼ(大阪)で立川談春さんの独演会を聴いた。
談春さんもマクラで、この過剰反応について触れられた。「そのうち、このような大きな会場での公演も禁止になり、落語会は地下に潜ってこっそりしなければならなくなるかも知れません」
いつ警察の手入れが入るかと、ビクビク怯えながら落語を聴く……まるでアメリカ禁酒法時代の闇酒場か、ナチス・ドイツ占領下のパリでレジスタンス活動をしているような感じ。そういう秘密めいた集会も、かえってスリリングで面白いかも知れない。
さて今回の演目は、
- おしくら
- 紺屋高尾
特に「紺屋高尾」が絶品だった。
僕は立川流の中で、志の輔さんの高座が大嫌いである。特にあの強引な《人情の押し売り》にはウンザリする。映画化もされた創作落語「歓喜の歌」なんか、聴きながら悶絶死するんじゃないかとさえ想った。「さあ、ここが泣き所ですよ!」とでも言わんばかりの、(長すぎる) 間の取りかたも勘弁してもらいたい。
しかし談春さんの高座にはその押しつけがましさ、くどさがない。最初にポンポン調子よく陽気に客を笑わせて、噺の中盤でしみじみと人情の綾を語る。そしてダレる直前で賑やかな軽快さに素早く切り替える。そのバランス感覚が実に見事である。江戸落語、特に人情噺に蕁麻疹が出る僕でも十分愉しめた。是非また聴きたい噺家である。
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コメント
NY Timesの記事、私もたまたま目にしていました。雀々さんの話といい、そば打ち寄席の話といい、ひどいですね。堺でO157の集団感染があったときも、今回も感染が起きた学校への中傷がひどいそうです。O157の時代以上に、ネット社会になってますしね。O157に感染した子供たちが長じてPTSDを発症しているケースがかなり多いそうです。今回も感染者を出した学校の生徒が案じられます。
京都市内で小学生が一人新型インフルエンザに感染しただけで、京都府が大学にまで一週間の休校措置をとるように要請したそうですが、京都大学は従わなかったとか。医学部のアドバイスだそうです。賢明かもしれません。医学部のある大学って意外と少ないですから。
こういう暗い話題が続いているときに、それを笑いで吹き飛ばすセンスっていいですよね。
実は、29日、仕事を昼で切り上げて、月組「エリザベート」を当日券で見てきました。時間ギリギリでかったのに、一階席真ん中より少し後ろぐらいのところで買えました。前売り状況を以前確認したときは×や△が多かったのが、ここに来て○がついている日が増えました。それを見て、当日券で行ったわけです。もしかしたら団体、特に修学旅行のキャンセルで、空きが増えたのかもしれません。喜んでばかりもいられませんね。
投稿: ぽんぽこやま | 2009年5月31日 (日) 02時32分
今回一連の狂想曲を見聞しながら新たな発見をしたのは、日本人はこれほどまでに潔癖症かつ神経質な民族であったのか!ということです。
また神戸・大阪に対する扱いを見ていると、島国根性というか、《村社会》の排他的な性格が浮き彫りにされていますよね。まあ良い経験になったと想います。関西が被った経済的ダメージは計り知れないものがありますが。
投稿: 雅哉 | 2009年5月31日 (日) 10時04分