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2009年5月18日 (月)

岩田達宗プロデュース☆能「隅田川」/オペラ「カーリュウ・リヴァー」

世間が新型インフルエンザで大騒ぎとなっている中、大阪・いずみホールで能とオペラを堪能した。ホール・スタッフ全員がマスクを装着しているという異様な雰囲気であった。しかし会場はほぼ満席で、噺家の桂吉坊さんをお見かけした。積極的に能や狂言などとコラボレーションを行っている吉坊さんだから、その縁で観に来られたのだろう。

Izumi

「隅田川」は世阿弥の息子、元雅(もとまさ)の作。室町時代の作品である。

イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンは1956年に来日した折、「隅田川」を2回に渡り観賞したそうだ。事前に英訳を入手し万全の準備を整えた上で能楽堂に出向いたという。この作品に深い感銘を受けた彼は帰国後、オペラ「カーリュウ・リヴァー」を創作する。

因縁の深い両者を続けて観るというのは大変意義深く面白い体験だった。いずれも日本語字幕つきで分かり易かったのもありがたかった。

オペラは聖歌や修道士が登場するなどキリスト教の世界に置き換えられているが、攫われた子を探す母の嘆きという基本プロットは「隅田川」を踏襲している。少年の霊を演じるソプラノ以外は合唱を含め出演者全員が男性というのも能の精神を引き継ごうという意思が感じられる。15世紀に日本で生まれた物語が、20世紀にイギリスで新たな生命を吹き込まれたことの不思議。ブリテンはギリシャ悲劇との親和性を指摘していたそうだが、死者を訪ねて川を渡るという設定は確かにオルフェウス神話に通じるものがある。

演奏は高関 健/いずみシンフォニエッタ大阪アンサンブル。フルート、ホルン、ヴィオラ、コントラバス、ハープ、打楽器、パイプオルガンという7人編成だった。フルートは能楽の笛、そして打楽器は小鼓や大鼓を意識した響きで書かれていた。

岩田達宗の演出はシンプルでありながら的確に要所要所を押さえたもの。特に奇蹟が起こるオペラのクライマックスではいずみホールの巨大なパイプオルガンに十字架の照明をあて、荘厳な空気を醸し出し実に見事であった。

両者を比較しながら理解したことは、結局人間の営みや感情のあり方といったものは人類共通であり、優れた芸術作品はいとも容易く国境や人種、宗教、さらに時代さえも超えるんだなぁということであった。考えてみれば納棺師を描く日本映画「おくりびと」が米アカデミー賞を受賞したり、逆に僕たちがハリウッド映画にワクワクしたり、300年前に創作された古典落語で大笑い出来るのも、きっと同じこ となのだろう。

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