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聴いておきたい吹奏楽の名曲、アレンジ編

前記事、吹奏楽の名曲《オリジナル編》に続き、今回は《アレンジ編》をお届けしよう。

アレンジャー1人につき1曲という枷を自らにはめて選んだ。アレンジャー/曲名(作曲者)の順で表記している。

  1. 岩井直溥/アフリカン・シンフォニー(マッコイ)
  2. 森田一浩/ラピュタ〜キャッスル・イン・ザ・スカイ(久石 譲)
  3. 建部知弘/「オペラ座の怪人」セレクション(ロイド=ウェバー)
  4. 瀬尾宗利/「第六の幸福をもたらす宿」(アーノルド)
  5. 後藤 洋/歌劇「トゥーランドット」より(プッチーニ)
  6. 真島俊夫/カーペンターズ・フォーエバー
  7. 鈴木英史/喜歌劇「モスクワのチェリョムーシカ」より(ショスタコーヴィチ)
  8. 宮川彬良/翼をください〜バンドと合唱のための〜(村井邦彦)
  9. 宍倉 晃/ミュージカル「ミス・サイゴン」より(C.M.シェーンベルグ)
  10. 藤田玄播/幻想曲 シルクロード(喜多郎)

アフリカン・シンフォニー」は2008年夏の甲子園(高校野球)の応援で出場55校中、50校が演奏したという。しかし一体、日本人の中でマッコイの原曲を聴いたことがある人がどれだけいるだろう?……全ては岩井直溥さんのアレンジから始まったのである。

甲子園で初めて同曲を演奏したのは智弁和歌山。朝日新聞の記事から一部引用してみよう。

アフリカンは、甲子園で智弁和歌山が初出場を果たした87年、吹奏楽部顧問の吉本英治さん(53)が市販の楽譜から編曲して応援にとり入れた。

様々な音楽を吹奏楽用に編曲した楽譜およびLPレコード(現在はCD)のシリーズ「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」第5集に岩井版アフリカン・シンフォニー」は収録されている。1977年のことである。この「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」は2009年まで脈々と続いており、現在は第37集に至る。このシリーズが吹奏楽の世界にもたらした豊穣さは計り知れない。それにしても「アフリカン・シンフォニー」、何度聴いても燃えるねぇ!お勧めの演奏は岩井直溥/東京佼成ウインド・オーケストラ(CD)か、佐渡 裕/シエナ・ウインド・オーケストラ(DVD)で。

森田さんは宇畑知樹(先生)/埼玉県立伊奈学園高等学校吹奏楽部と長年コラボレーションを続けている作曲家/編曲家。この「ラピュタ」も伊奈学園のために書かれた。数ある久石さんの編曲ものの中でも、圧倒的な完成度を誇る。もう聴くだけでその美しさに涙、涙である。これはディズニーの配給で「天空の城ラピュタ」の北米版が製作された折、久石さんが新たに書き下ろしたサウンドトラックからのハイライトとなっている。だからオリジナルにはないモティーフ(旋律)も登場する。なお、日本で発売されている「ラピュタ」DVDにも英語版が収録されているが、それとディズニー版は全くの別物である。また森田さんは久石 譲作品集(アニメ・メドレー)も手掛けられており、こちらもなかなか良い。《「天空の城ラピュタ」君をのせて~「風の谷のナウシカ」鳥の人~「紅の豚」帰らざる日々~「となりのトトロ」風のとおり道》という構成になっている。久石さんのアレンジもので他に僕が好きなのは「ハウルの動く城」~人生のメリーゴーランド小島里美/編曲)。

オペラ座の怪人」の吹奏楽用アレンジは沢山ある。大阪市音楽団がしばしば演奏しているのがポール・マーサ編曲版。しかしこれは凡庸で、退屈なこと極まりない。「指輪物語」のヨハン・デ=メイによるバージョンもあるが、演奏時間が約15分も掛かり些か冗長。それに僕が一番好きなナンバー「マスカレード」が抜けている。その不満を一気に吹き飛ばしてくれたのが建部知弘版の登場である。これは完璧!もう、他のアレンジはお役御免で良し。僕がこの決定版を初めて聴いたのは2007年4月大阪城(野外)音楽堂におけるスプリング・コンサート。演奏したのは明浄学院高等学校吹奏楽部Queenstarだった。その時点で楽譜は出版されていなかったのだけれど、そろそろ出たのかな??ちなみに調べてみると、2006年九州吹奏楽コンクールで沖縄市立山内中学校がこの建部版を演奏し、金賞を受賞している。

イギリスの作曲家マルコム・アーノルド(1921-2006)は1957年に映画「戦場にかける橋」でアカデミー作曲賞を受賞している。彼は交響曲を9曲書いているが、日本で演奏されることは皆無に等しい。しかし吹奏楽コンクールでは彼の交響曲が演奏される機会が多く、その殆どを編曲しているのが瀬尾宗利さんである。だから僕は彼のことを《アーノルドの伝道師》と呼んでいる。「第六の幸福をもたらす宿」は元々映画音楽であり、アーノルドの作品の中でもとりわけ親しみやすく、魅力的な旋律に満ちている。これはお勧め。是非一度、聴いてみて下さい。

後藤版「トゥーランドット」が全日本吹奏楽コンクール(全国大会)に初登場したのは2006年。大滝 実(先生)/埼玉栄高等学校の名演で一躍、人気曲となり現在に至る。オペラの中から「いいとこどり(大阪弁では”ええとこどり”)」し、巧みに繋いでアレンジした手腕はお見事。後藤さんは今度の大阪市音楽団定期演奏会でオリジナルの新曲(大阪市制120周年記念)を発表されるので、そちらも愉しみにしている。

真島俊夫さんは「オーメンズ・オブ・ラブ」(和泉宏隆)のアレンジも素晴らしい。「カーペンターズ・フォーエバー」は言うまでもなく丸谷明夫(丸ちゃん)/大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部のトレードマークだが、一方の「オーメンズ・オブ・ラブ」は宇畑/伊奈学園の十八番。伊奈学園のDVDでこれを初めて聴いて、深く感動した(はっきり言ってT-SQUAREの原曲よりいい)。彼らの演奏する「オーメンズ・オブ・ラブ」を生で聴くことが僕の夢である。

鈴木英史さんは喜歌劇「こうもり」セレクションと、どちらにするか迷った。鈴木さんによる一連のオペレッタ(喜歌劇)編曲ものは、他の追随を許さない極めて質の高いシリーズである。ただし、鈴木版「トゥーランドット」はいただけなかった。鈴木さんにシリアスなオペラは向いてないのかも知れない。

宮川彬良さんは本当に卓越したアレンジャーである。「翼をください」は勿論、「ゲバゲバ90分」と置き換え可。「私のお気に入り」や「ズームイン!!朝!」、「マツケンサンバII」もいいなぁ……あ、「マツケンサンバ」はオリジナルか!

宍倉版「ミス・サイゴン」は2002年の全日本吹奏楽コンクールで大滝/埼玉栄が初演。それが巻き起こした一大センセーションは最早、伝説となった。詳しくは下記。

こうして並べてみると、奇しくも日本人の手による編曲ばかりになった。それだけ日本吹奏楽のレベルは高く、プロの作曲家とアマチュアが手を取り合って発展してきたことが良く分かるのではないだろうか?

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