月なみ(^o^)九雀の日(5/13)、そして桂枝雀が愛した酒「呉春」のこと
豊中市立伝統芸能館で開催された、桂九雀さんの落語会に往く。
前回ここで九雀さんプロデュースによる噺劇(しんげき)「淀五郎」を観た時の感想はこちら。
今日のゲストは林家染左さん。自由料金制(お代は見てのお帰りに)。
- 九雀/牛ほめ
- 染左/猿後家
- 九雀/書割盗人
- 九雀/火焔太鼓
「牛ほめ」は従来の型から逸脱し、古典がより口語的になったというか現代的で親しみやすい会話にアレンジされていた。
今まで沢山の「牛ほめ」を聴いてきたが、大黒柱に空いた大きな節穴に貼るのは皆「秋葉さんのお札」だった。しかし今回は「愛宕さんのお札」だったのでちょっと吃驚。これも九雀さん独自の工夫なのかなと想い調べてみると、上方ではどうやらこの型もあるようだ(→米二さんの解説へ)。これは新たな発見だった。
染左さんは大阪大学文学部出身。阪大では近世芸能史を専攻されたとか。卒後は泉佐野市・郷土資料館で学芸員をされていたという、アカデミックな(九雀談)噺家である。「猿後家」は比較的珍しいネタだが、染左さんの口調はとても調子よく聴けた。
九雀さんの3席のうち出色の出来だったのは「火焔太鼓」。どうしてこんなに軽妙で、聴いてきて心地良いのだろうと考えてみたのだが、声のトーン(高低)やテンポ(緩急)が変化に富むこと、特に息継ぎ(ブレス)の間隔が長いことで畳み掛けるようなスピード感を獲得しているのだろうと想った。つまり九雀さんの高座は音楽的なのだ。クラリネットを演奏されることも無関係ではあるまい。この辺りが師匠の枝雀さんを彷彿とさせる特徴である。
帰宅後、僕は池田の銘酒「呉春」を呑みながらこの記事を書いている。瓶詰めされた翌日に我が家に届いたもの。谷崎潤一郎や桂枝雀が生前こよなく愛したことで余りにも有名。枝雀DVDで弟子たちが語るエピソードの中でも、何度も登場する。
同門である米二さんのエッセイにも「呉春」について触れられている→こちら。
枝雀さんはこれを「鶴呑み」という独自の方法で愉しまれていたそうだ。顔を上に向け顎と首のラインを一直線に伸ばす。のどを細めその中を酒が通過してゆくのを、ゆっくりと味わうという。
ふっくらして柔らかな味わい。酒が舌の上で《まるく、まぁ〜るく》なっているのが触感で分かる。そしてそれが、枝雀さんの生き方にも通じるものがあると感じるのは、決して僕だけではないだろう。
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コメント
染左さん、まともに大学の後輩です(学部に至るまで)。宝塚を退団した荻田浩一さんもですね。
応援せねば。
投稿: ぽんぽこやま | 2009年5月18日 (月) 10時43分
ぽんぽこやまさん、染左さんは学芸員という生活の安定を捨て、自分が昔から好きだった落語の世界に飛び込んだのですから、それは相当な覚悟だった筈です。是非彼の高座に足を運んであげて下さい。
それからオギーは宝塚歌劇を辞めたのですか?それは知らなかった!とても好きな演出家で特に「パッサージュ」は近年希に見る洗練されたショーでした。残念ではありますが、今後外部での活躍に期待したいです。
投稿: 雅哉 | 2009年5月18日 (月) 23時58分