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2009年5月 4日 (月)

どっぷり!なにわ 《オーケストラル》 ウィンズ 2009 

吹奏楽を愛するオケ奏者たちが一堂に会する、なにわ 《オーケストラル》 ウィンズNOW)大阪公演をザ・シンフォニーホールで聴いた。会場は補助席も出る盛況ぶりで、中・高生たちの熱気が漲っていた。昨年の様子は下記。

大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部の丸谷明夫先生(丸ちゃん)に加え、客演指揮者として千葉県・柏市立酒井根中学校の須藤卓眞先生が指揮台に立たれた。酒井根中学校は2006年から3年連続で全日本吹奏楽コンクール金賞を受賞。大会規定により今年はお休みにあたる。NOWの客演指揮者はレギュラーの丸ちゃん以外はコンクールが3出休みの学校の先生が選ばれるのが恒例となっている。

また昨年に引き続き、読売日本交響楽団正指揮者の下野竜也さんが、Piano担当として参加された。

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曲目は以下の通り。括弧内は指揮者を示す。(M)は丸ちゃん、(S)は須藤先生。

  • 2009年度吹奏楽コンクール課題曲全曲
  • ライニキー/セドナ (M)
  • グレンジャー/コロニアル・ソング (M)
  • アーノルド/水上の音楽 (S)
  • C.ウィリアムズ/交響組曲 (M)
  • マクベス/聖歌と祭り (M)
  • サン=サーンス/東洋と西洋 (M)
  • リード/オセロ (S)

例年のことではあるが、木管の伸びやかな音色や金管の柔らかい響きに魅了された。吹いている奏者たちが本当に愉しそうで、「音楽の歓び」が直に客席に伝わってくる。

ライニキーは明るく、カラッと晴れ渡った青空のような曲。西部劇を想わせる雄大さがある。丸ちゃんが手綱をきりりと締めた、快調なテンポ感が実に爽やか!

グレンジャーは「リンカンシャーの花束」同様、どことなく民謡調で、郷愁を誘う素敵な曲。こういう曲を振らせても丸ちゃんは上手い。感傷に流れすぎないその節度(適度な距離感)が僕は大好きだ。

C.ウィリアムズはコープランドから受け継いだモダンで洗練されたオーケストレーションが素晴らしい。特に金管群の輝かしいファンファーレには痺れる。

その弟子であるマクベスはむしろ、ミクロス・ローザ(ハンガリー出身の映画音楽作曲家。「ベン・ハー」「エル・シド」などハリウッド史劇で有名)からの影響が大きいのではないかと感じられた。「聖歌と祭り」は以前からCDで親しんできたが、生で聴いた方が断然良かった。初めてこの曲の良さが理解出来た気がした。

オセロ」も大変な名演だった。これはリードの曲の中でも「アルメニアン・ダンス」と並んで須藤先生お気に入りの曲だそうで、たっての希望で実現したそう。華やかなパレードから叙情的で美しい夜の情景まで劇的な曲想を十全に表現した、先生の想いがひしひしと伝わる入魂の指揮ぶりだった。

課題曲の内訳は、

  • I   16世紀のシャンソンによる変奏曲 (S)
  • II  コミカル★パレード (M)
  • III  ネストリアン・モニュメント (S)
  • IV マーチ「青空と太陽」 (M)
  • V  躍動する魂〜吹奏楽のための (なし)

課題曲IVではパート練習を模して各々のグループが円陣を組み、それを丸ちゃんが見回るという風景の中で演奏する《実験》が行われた。チューバ、ユーフォニアムの奏者たちはサボってトランプに興じており、丸ちゃん曰く「うちの学校にもこういう連中が必ずいるんですよ!」(ちなみに淀工ではパート練習を基本的に行わないそうだ)。

課題曲IIでは打楽器および金管が前面に出てきて木管が後ろに下がるという《実験》が行われた。伴奏のリズムばかり強調され、木管の音が引っ込んでしまい「配置を入れ替えるだけで、随分曲の印象が変わるもんだなぁ」と感心した。

課題曲Vは拍子が複雑に変化する、難解な現代音楽調だが(「楽譜を見ているだけで嫌になります。端から指揮するつもりはありません」と丸ちゃん)、NOWのメンバーは指揮者なしでもアンサンブルが乱れることなく見事に吹きこなした。

僕が一番気に入ったのは第19回朝日作曲賞を受賞した課題曲I 。鄙びた古楽的響きがあってとても美しい。歴代の課題曲にはない雰囲気があり、これは純粋に音楽として素晴らしい。保科洋/「風紋」のように後世に残る名作だろう。

そしてアンコール。

  • ヤン・ヴァンデルロースト/カンタベリー・コラール (S)
  • 山本正之/ヤッターマン Brass Rock (下野竜也!
  • 小島里美(編)/いずみたくヒット曲メドレー (M)

いずみたくヒット曲メドレー」の内訳は(見上げてごらん夜の星を/いい湯だな/女ひとり/ふれあい/手のひらを太陽に/夜明けの歌)。

ヤッターマン」では下野さんがなんと!トンズラーの扮装で飛び出してきてノリノリで指揮をした。そして大阪シンフォニカー交響楽団クラリネット奏者・原田美英子さんがドロンジョになって登場、そのままの格好で「いずみたく」も吹かれた。

何とも贅沢で愉快な3時間。僕はここ3年連続でNOWの演奏会に足を運んだが、今年が一番中身が充実していて最高だった。

まもなく東京公演が始まる。関東の方は決してお聴き逃しないよう。さあ、今すぐ東京芸術劇場へ!

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コメント

こんばんは
今年初めて行きましたが、本当に充実した3時間でした。
とにかく演者全員が本当に楽しいそうで、笑顔が絶えず見ていて気持ちよかった!!
プロの楽団のみなさんが心はすっかり若い頃の『ブラバン青年』に戻った感じで・・・それでいて演奏は一流!そんな感じでした。
いつも大フィルで素晴らしいソロを聴かせてくれる金井さんですが、目立つ出番は正直少ないですよね、
でもこの演奏会では常にリーダーシップを取られて、本領発揮~~めちゃくちゃエンジョイされてましたね。
ホルンの村上さんも茶目っ気爆発、久々に聴けた加瀬さんの美しいソロ演奏・・下野さんの逃げ足の速さにも大笑いしました。
ホルンでトップを演奏されていたのはどなたですか?

夫は古楽器が趣味なので『16世紀のシャンソン・・・』に心酔してました、ルネッサンス音楽の美しさを感じたのでしょう。
私はリードの音楽がドラマティックで好きです。
短かったですが、セドナも大河のテーマ音楽のような感動でした。

投稿: jupiter | 2009年5月 5日 (火) 01時44分

おはようございます。鯉太郎です。拝見していると、よだれが出るような、ラインアップです。またその品々を美味しそうに開設される雅哉さんの筆に、まいってます。

投稿: 鯉太郎 | 2009年5月 5日 (火) 07時21分

jupiterさん、気に入っていただけたようで僕まで嬉しいです。

ホルン上手かったですね〜。ロングトーンで消えていくところでもピッチをちゃんと合わせていました。トップは(クラの金井さん以外)曲によって入れ替わったと想うので、よく分かりません。それからフルートは広島交響楽団・中村めぐみさんのソロがめちゃくちゃ綺麗だった!

仰るように今回の曲の中では「16世紀のシャンソン…」と「オセロ」が白眉だったと想います。

今度jupiterさんが聴かれる吹奏楽の演奏会は大阪市音楽団の定期ですね。こちらも大いに期待して下さい!物凄いものが聴けますから。

投稿: 雅哉 | 2009年5月 5日 (火) 09時13分

鯉太郎さん、この演奏会はライヴCDが発売されますので是非お聴き下さいね。初回盤は特典として課題曲を収録したボーナスCDが付きます。

投稿: 雅哉 | 2009年5月 5日 (火) 09時18分

こんばんは。

私も2年ぶりに行きました。
やっぱり「なにわ」はいいですね!
改めてよさを感じました。

恒例のラストのボール投げ、
雅哉さんはゲットされましたか?
私は今年初めてゲットしました。

2008年の感想も当ブログ内でご紹介させていただきました。
その節はありがとうございました。

投稿: ごいんきょ | 2009年5月 5日 (火) 21時17分

ごいんきょ様、コメントありがとうございます。

ボール投げは客席中央よりやや後方だったため(ボールの大半が届かず)受け取れませんでした。だから来年は、もう少し前の席にしようかなと想った次第です。

投稿: 雅哉 | 2009年5月 5日 (火) 22時59分

今年もありがとうございました。
こちらも、すばらしい音に囲まれて、お互いの出す音で会話のように音楽をやりとりできる環境に、とても幸せな5日間でした。
東京での実験はさらにバージョンアップしてましたよ。
木管低音&コントラバスは、ポテチでお茶会始めたり、トランペットは腹筋、打楽器は腕立て伏せをパート練習でやる、という昔の中高で普通だった懐かしい風景が。(笑)
こういうことを真剣に遊んで笑い転げながら、最高の音を目指して集中できる、改めてなにわって最高!

投稿: ふーじー | 2009年5月 8日 (金) 17時44分

ふーじーさん、コメントありがとうございます。

今年のCDも勿論購入させて頂きますし、来年も愉しみにしております。大阪公演は瞬く間に完売してしまいますので、皆さんのご都合がつけば2回公演にされても良いくらいではないかと愚考する次第です。

投稿: 雅哉 | 2009年5月 9日 (土) 00時49分

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