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京都の旅/大植英次のチャイコフスキー

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団により年一回開催されている京都特別演奏会を聴きに往った。

演奏会は午後7時なので折角大阪から足を運ぶのだからと有給をとり、昼間はぶらり京都をひとり歩きをすることにした。

で、何処に往こうかと考えた挙句、やはり僕にとってここは「怪奇大作戦/京都買います」(実相寺昭雄 監督の最高傑作!)の街なので、ロケ地を訪ねることにした。

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上の写真は東福寺の方丈庭園である。

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方丈から通天橋の眺め。新緑の美しさは、さながら「楓(かえで)の海」。紅葉の時期はさぞかし絶景であろう。

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今度は逆に通天橋から方丈を見る。なお、方丈庭園の入場料400円、通天橋は別料金でさらに400円。うむむ……

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この回廊を嘗て、「京都買います」の牧(岸田森)と美弥子が歩いた。

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次に訪ねたのが世界文化遺産となった下鴨神社。ここは京都としては珍しく入場無料である。

現在、僕がお気に入りの作家に森見登美彦(「夜は短し歩けよ乙女」で山本周五郎賞受賞、公式ブログは→こちら)がいる。彼の小説「有頂天家族」に下鴨神社やその参道「糺(ただす)の森」が登場し、読んでいて無性にこの森の雰囲気を味わいたくなったのである。深閑として厳かな雰囲気があり、なかなか素敵であった。

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さて、いよいよ京都コンサートホールに到着である。

曲目は、

  • スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
  • シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
  • チャイコフスキー/交響曲 第5番

独奏は大フィル首席コンサートマスターの長原幸太さん。夫人も聴きに来ていたようだ(大植さんが客席の彼女に向かって呼びかけ、手を振る一幕もあり)。よって今回はゲスト・コンサートマスターとして新日本フィルのソロ・コンマス崔 文洙さん(公式サイトはこちら)が招聘された。チャイコフスキーで長原さんは1st.ヴァイオリン最後尾で演奏した。

スメタナシベリウスは通常の配置、プログラム後半のチャイコフスキーは大植さんがベートーヴェンやブラームスでする対向配置(コントラバスはオケ最後方に横一列)だった。

軽快なスメタナの後、演奏されたシベリウスのコンチェルトは昨年一月の定期で聴いている。しかしこの時は、独奏のサラ・チャンがあっけらかんとした明るい音色で作品世界をぶち壊にした。彼女に対して「もう二度と日本に来なくていいよ」と本気で想ったくらいである。長原さんは大フィルのコンマスに就任した当初からこの曲を演りたいと希望していたそうで、入魂の演奏だった。力強く研ぎ澄まされた音色、作品が持つ固有の仄暗さも兼ね備え、申し分なし。それにピッタリと寄り添う大植さんのサポートも万全であった。

さて、休憩後はお待ちかねのチャイコフスキーである。このコンビによる交響曲 第6番「悲愴」は僕が生で聴いた内、最高の名演であったという気持ちは今も変わりない。

ムラヴィンスキーの下、レニングラード・フィルの首席コンサートマスターを務めたヴィクトル・リーバーマン(リベルマン)は1990年代に亡命し、後にアムステルダム・コンセルトヘボウに入団した。そのリーバーマンから大植さんはチャイコフスキーを演奏する時の秘訣を直伝されたそうだ。

大植さんによる交響曲第5番は2006年の大フィル定期および梅田芸術劇場の演奏会でも取り上げられたが、残念のことに僕はたまたま都合が悪く聴き逃してしまった。だから今回、漸く念願を果たしたという感慨が深い。

先日のブラームス/交響曲第3番でも感じたことなのだが、このチャイコフスキーも極めて自由度が高いものだった。

第1楽章、序奏部の「運命の動機」は沈鬱で、凍てつくシベリアの雪原を想わせる。そして主部の第1主題に入るとその風景が次第に変化し始める。あたかも雪解けと共に流氷がゆっくりと動き出すかのようだ。そして第2主題のカンタービレ。大地が、そして生き物たちが伸び伸びと生を謳歌する。《溜め》が効いていて、テンポの変化は目まぐるしい。強弱も極端なくらいついており、押しては返す波のような音楽。ニュアンスに富み、デフォルメされたチャイコフスキーの姿がそこにはあった。

また、第3楽章のワルツの何と弾けていることだろう!指揮台の大植さんも生き生きとして躍動感があり、本当に愉しそうだ。

そして第4楽章。序奏では「運命の動機」が長調になり、あたかも勝利の凱旋のように力強い行進を見せる。そして主部に入ると猛烈な加速が掛かり音楽は猪突猛進、疾風怒濤の展開となる。CDを含めこの4楽章がこれほど速いのは正に前代未聞である。

壮絶な演奏だった。京都の聴衆が熱狂したことは言うまでもない。「やり過ぎだ」という意見もあるだろう。しかし僕はこの破天荒な面白さを断固支持する。チャイコフスキーはこれくらいやっていい。

アンコールは長原さんのソロでマスネ/タイスの瞑想曲。実はこれ、彼にはナイショで準備されていて、不意打ちの出し物だったそうだ。曲名を聞いて驚いた長原さん、仲が良い2nd.Vn.トップの佐久間さんに対して「騙しやがったな」と怒るポーズ。でも譜面台が用意されると大植さんに「暗譜で大丈夫」とアピール。今回のプログラムにはハープが用意されていなかったので、ハープのアルペジオ(分散和音)は一部のヴィオラとチェロによるピチカートに置き換えられた。

実に愉快で、中身の濃い演奏会であった。

 記事関連blog紹介:(同じ演奏会を聴かれた方の感想)

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コメント

充実の京都の一日を過ごされたのですね!
本当に素晴らしい身震いのするような演奏でしたね。
演奏後のスピーチとサプライズ
大植さんは京都の人のハートも鷲づかみされたのではないでしょうか。
とはいうものの、大阪の顔も一杯でした。
休憩で知り合いにバッタリあって、その方が大フィルの事務方と通じてらして教えてもらったのですが
監督は医師のレシピでダイエットされてるそうです。
だから病気ではなく、身軽で元気でいらっしゃるそうです、安心しました。
私は6番のことすっかり忘れてました(≧m≦)(あんな感動的な大阪クラシックのトリだったのに・・・とんだ健忘症ですねぇ)
最終楽章のトリックの話が面白くて、即スコアを買ってピアノで検証したのでした。
あの時の好演も蘇ってきました
また記事リンクさせて下さい。
それから有田さんのリサイタルも行かれたと思いますので、そちらもアップされたらお願いします。

投稿: jupiter | 2009年4月23日 (木) 12時08分

jupiterさん、コメントおよびリンクの件ありがとうございます!

大植さんは痩せられてから体の動きが軽やかとなり絶好調ですね。音楽がより柔軟となり躍動感が増しました。

有田さんの記事もこれから書かなければなりません。

投稿: 雅哉 | 2009年4月23日 (木) 18時41分

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