大植英次/大フィルのロマンティック・ブラームス!
大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会を聴いた。
プログラムは、
- ブラームス/交響曲 第3番
- バーンスタイン/組曲「キャンディード」(C.Harmon 編)
- ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
大植さんは痩せてスリムになった体で軽快に動いていた。アクションも大きく、元気一杯!
大植/大フィルによる「火の鳥」の感想は既に昨年聴いている(下記記事)。受けた印象に大きな変化はないので、ここでは敢えて繰り返さない。大植さんのストラヴィンスキーは文句なしに素晴らしい。
- 大植英次/青少年のためのコンサート(「火の鳥」あり)
「キャンディード」はバーンスタイン直伝であり、悪かろう筈がない。この組曲はそもそも、大植さんの為に編纂さらたものらしい(ただし、レニー本人の手でアレンジされたものではない)。
雄弁でかつこの曲特有の諧謔(ユーモア)、パロディ精神に富む演奏。弾むようなワルツから、終曲"Make Our Garden Grow"の祈りにも似た、崇高な盛り上がりに至るまで申し分ない。
「キャンディード」と「火の鳥」は通常配置。一方、プログラム前半のブラームスは対向配置(1st.Vn.と2nd.Vn.が指揮台をはさみ左右で向かい合う)であった。コントラバスはオケの後方、横一列にずらりと並ぶ。しばしば省略される第1楽章提示部の繰り返しは敢行された。また、第2楽章から第4楽章までアタッカで(楽章間に休みを置かず、切れ目なく)演奏された。
大植さんのブラームスはあくまで《新古典派》の作曲家としてではなく、《浪漫派》の音楽として描かれる。例えば第1楽章、これほど極端なまでに緩急の変化に富み、恣意的にテンポを動かすブラームスは珍しいだろう。この方法論には賛否両論あってしかるべきであるが、僕は第3交響曲に関しては違和感が無かった。何故ならベートーヴェンを意識して20年かけて創作した(骨組みのしっかりした)第1番とは異なり、比較的短期間で書かれた後期の第3番はブラームスの私的心情の吐露があるからである。そこにはメランコリーが感じられ、黄昏時の憂愁の美しさがある。
たっぷり歌う大植さんの解釈は特に第3楽章で遺憾なく本領が発揮された。あくまでエレガント。そして、その響きは絹のように滑らか。大フィルが誇る優秀な弦楽セクションの真骨頂である。
ただし、第1楽章および第4楽章終結部のホルンのピッチが(いつものことながら)全く合っていなかったことは真に残念であった。
関連記事:(ブラームス/交響曲第1番の感想)
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コメント
こんばんは、記事拝見しました。
ブラ3、良かったですよね。これを聴いてしまうと、この路線でのブラ4を是非聴きたくなってしまいますが・・・・大植さん、リターンマッチをいつかやってくださるのでしょうかねえ?
投稿: ぐすたふ | 2009年4月18日 (土) 01時44分
ぐすたふさん、コメントありがとうございます。
ブラームスの第1番が全く良くなかったので、「大植さんの3B(ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー)は聴く価値がない」とまで書いたこともありました。でも第3番は意外といけました。これなら第4番も期待出来ます(ベートーヴェンについては全交響曲を聴いて詰まらなかったので前言を撤回するつもりはありません)。
第4番も聴いてみたいですね。そしてやはり大植さんの急病で幻の演奏会となったマーラーの9番も。僕は今度のハノーファーを聴きに行けないので尚更です。
投稿: 雅哉 | 2009年4月18日 (土) 07時12分
4番の弾き振りの際のインタビューをTVでみたのですが、長原さんは社交辞令かもしれませんが
『監督のもとに練習し、演奏は既に作り上げられたので、僕はただ羊飼いのように導いただけです。』
みたいな内容のことを言われました。
だから4番も素晴らしいような気が・・・もう一度聞きたいですね。
『ブラームスだったのでなんとかなった、これがマーラーとかの作品なら複雑で無理だった』
ともおしゃってました。
マーラーの9番、私は広島での公演も聞くつもりです。
故郷へのNDRの最後の凱旋ですから、特別な演奏会になるのではないかと思うのです。
投稿: jupiter | 2009年4月19日 (日) 22時39分
jupiterさん、
指揮者不在のまま演奏した、ブラームス/交響曲第4番は確かに凄い演奏でした。是非今度は大植さんの指揮で聴いてみたいものです。
マーラーの9番、広島でもするのですか。5番のような異常に遅いテンポは恐らく選択されないだろうと僕は想っています。
投稿: 雅哉 | 2009年4月19日 (日) 23時52分