桂吉弥の新お仕事です。&福笑と異常な仲間たち
天満天神繁昌亭にて。
4月1日(水)「桂吉弥の新お仕事です。」
- 桂 そうば/ろくろ首
- 桂 吉弥/花筏
- 桂よね吉/天災
- 桂 吉弥/ねずみ
事前に発表されていた演目は《ねずみ》だけであった。
登場した吉弥さんが藤原紀香の離婚について触れ、「美人薄命と申しますが…」ときた瞬間、僕は「あちゃー、これは《短命》に進めるためのマクラ(前振り)かいな」と想った。既に吉弥さんの《短命》は2回聴いている。
続けて吉弥さん、「…と、通常はここで《短命》に入るのですが、『またか!』という表情をされたお客さんが何人もいらっしゃるので、別のをやります」と、初めて聴く《花筏》になった。こういう客席との駆け引きこそ、ライヴならではの醍醐味であろう。
また吉弥さんは東京で開催される柳家三三さんとの「ふたり会」で《親子茶屋》をネタおろしされるそうで、米團治さんから稽古を受けたとか。それを聞いた吉の丞さん(吉弥さんの弟弟子)、「え!兄さん、あの方から何か学ぶことがありますか!?」……「ちゃんと、吉の丞が言うたとネットに書いてくださいね」とは吉弥さんの弁。
《ねずみ》は東京の(三代目)桂三木助が浪曲師の広沢菊春と意気投合し、《加賀の千代》と交換にネタを譲ってもらって脚色したもの。昭和31年に初演された。これを上方で三木助から直伝されたのが、先日亡くなられた露の五郎兵衛さん。また最近では桂文我さんや桂梅団治さんも口演されているようである。舞台は備前岡山・池田家の城下町に移植され、西大寺の「はだか祭り」も登場、吉弥さんは《おえりゃあせん》と(唯一覚えたという)岡山弁を連発され、中々愉しかった。
今回一番凄みを感じたのがよね吉さん。《天災》は吉弥さん(94年入門)とよね吉さん(95年入門)の師匠である桂吉朝の高座をDVDで鑑賞したことがあるが、よね吉さんは既に師匠を上回る出来であった。後妻で揉める《ねずみ》の前に、先妻で揉める《天災》を持ってくるセンスも抜群だ。着物の趣味が良いし、彼の高座は艶があって華やか。そして口跡はエッジが効いていて、切れ味抜群。さすが「東西若手落語家コンペティション」でグランドチャンピオンの栄冠に輝いただけのことはある。吉弥さんが彼のことに言及するときも、「こいつには負けられない」という強烈なライバル意識がひしひしと感じられた。兄弟弟子で競い合い、切磋琢磨することは二人にとって決して損にはならないだろう。
4月2日(木)「福笑と異常な仲間たち」
- 笑福亭たま/胎児(たまよね 作→詳細はこちら)
- メグマリコ/メス動物園
- 笑福亭福笑/ちしゃ医者
- メグマリコ/昭和の歌(物真似)
- 笑福亭福笑/憧れの甲子園(福笑 作)
たまさんはお腹の中にいる双子の胎児が対話するというシュールなネタ。座布団の上で逆立ち(?)し胎児の格好をしたり、解いた帯をへその緒に見立てたりと着眼点が流石である。
《メス動物園》は、落語《動物園》の登場人物を全員女性に替えたもの。途中メグマリコさんが着物を脱ぐと、下から豹柄の衣装が登場する仕掛けもあって意表を突いた。
福笑さんは強烈な下ネタの古典より、新作《憧れの甲子園》の方が面白かった。高校野球の監督が一升瓶を手に、酔いが回って呂律が怪しくなると共に、次第に選手に絡み出す情景描写が秀逸。これぞ当に笑福亭のお家芸だと膝を打った。
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