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2009年4月 2日 (木)

画期的音楽教育システム「エル・システマ」とシモン・ボリバル・ユースオーケストラ

4/4(土)23時30分からNHK BS-hiで「エル・システマ~ベネズエラ 音楽教育で未来を築く~」という番組が放送される。

音楽教育システム「エル・システマ」は南アメリカ北部に位置するベネズエラ・ボリバル共和国で施行されている。経済学者で文化大臣を務めたこともあるホセ・アントニオ・アブレウ博士が1975年が創設、現在では約30万人が参加している。2歳半からプログラムは開始され、楽器は無償で提供される。子供たちは学校の放課後4時間を練習に当て、それが週5日行われるスケジュールとなっている。元々の趣旨としては貧困と治安悪化に喘ぐ社会の中で、子供たちを薬物中毒や犯罪に手を染めることから守ることが目的であった。

ベネズエラ(人口2,600万人)には220もの青少年オーケストラがあり、児童オーケストラ→青少年オケ→選抜オケへと進むシステムとなっている。その頂点に立つのがシモン・ボリバル・ユースオーケストラと指揮者のグスターボ・ドゥダメル(現在28歳)。このコンビはドイツ・グラモフォンからCDデビューを果たした(ちなみに日本のオケでドイツ・グラモフォンからCDを出しているのはオーケストラ・アンサンブル金沢だけである)。ドゥダメルは既にベルリン・フィルの指揮台に立ち、今年夏のザルツブルク音楽祭ではウィーン・フィルを指揮する予定である。同じく「エル・システマ」の申し子、コントラバス奏者のエディクソン・ルイースは17歳という史上最年少でベルリン・フィルに入団した。

昨年末ドゥダメル/シモン・ボリバル・ユースオーケストラの演奏会が東京であり、NHKにより放送された。途轍もない演奏であった。弦についてはまだ日本の音楽家の方が勝っていると想うが、管楽器は完敗である。あっという間に日本はベネズエラに追い抜かれてしまった。それに弦の音は楽器の値段に左右されるので、シモン・ボリバルの連中が日本の音楽家が所有する楽器を手にしたら、勝負はもう分からない。

戦後60年、日本は優秀な指揮者や弦楽奏者たちを沢山、世界に送り出してきた。これは桐朋学園の齋藤秀雄の音楽教育(齋藤メソッド)に寄るところが大きい。

小澤征爾、秋山和慶、尾高忠明、井上道義、小松一彦、児玉宏、大植英次〜これらの指揮者はみな齊籐秀雄の門下生である。

ここ20-30年、世界的に活躍する指揮者や弦楽奏者は桐朋学園出身者が多く、東京藝術大学を圧倒している。その理由の一つは1979年以降、国立大学に共通一次試験(現在の大学入試センター試験)が導入され音楽以外の学力を求められるようになったこと、そして東京藝術大学には齊籐秀雄がいなかったことが考えられる。

「弦の国」と呼ばれるほど、(ベルリン・フィルを含む)世界中のオーケストラに日本の弦楽奏者たちが在籍しているが、管楽器はからきし弱い。これは齋藤秀雄があくまでチェロ奏者・指揮者であり、その教育理論が管楽器奏者には通用しなかった為ではないかと想像する。

プロとして活躍するヴァイオリニストやチェリストの大半は幼少期から楽器を手にしている。しかし日本では高校生の時から木管楽器を始めた人でもNHK交響楽団の主席奏者になれるというのが現状である。日本の管楽器レベルを上げるためには、子供の頃からの音楽教育が如何に大切であるかを「エル・システマ」は私たちに語りかけているのである。

日本がベネズエラから学ぶべき事は多い。

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コメント

こんにちは。
ドゥダメル×SBYOB、たまたま見た芸術劇場でやられてしまい(笑)、ドキュメンタリーDVDの「プロミス・オブ・ミュージック」も買いました!
音楽の面だけじゃなくて他にもいろいろとすごく興味深い内容でした。放送されるのは、これとはまた違うものなのでしょうね。残念ながらBS-hiは見れないのですが。地上派でも放送して欲しいなぁ。

投稿: みなみ虫 | 2009年4月 2日 (木) 12時48分

みなみ虫さん、コメントありがとうございます。

放送されるドキュメンタリーはドイツ・ユーロアーツ社とNHKの国際共同製作です。いずれ地上波でも放送されるでしょう。

ラテンアメリカでは既に23カ国が「エル・システマ」を導入。米国ロサンゼルスではこれを参考にした「カリフォルニア・システマ」を立ち上げました。ヨーロッパでもドイツ、スコットランド、イタリア、スペインなどで「エル・システマ」パイロットプログラムを開始しています。日本も急がなくては。

投稿: 雅哉 | 2009年4月 2日 (木) 17時26分

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