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2009年3月16日 (月)

PACオケ定期に神尾真由子 現る!

兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)定期演奏会を聴いた。曲目は、

  • ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲
  • ブラームス/ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲
  • チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」

指揮はロシア、サンクトペテルブルク生まれのアレクサンドル・ドミトリエフ。独奏はVn.:神尾真由子、Vc.:山上ジョアン薫

神尾さんのコンサートを僕が以前聴いた感想は下記。

山上さんは神奈川・逗子の生まれ。2歳の時、家族と共にカナダに渡り、3歳の時よりチェロを始めた。現在カナダ国籍。2003年、カナダ政府より1696年製ストラディヴァリウス (愛称「ボンジュール」)を貸与されたそうだ。

Pac

今回コンサートマスターを務めたのは豊嶋泰嗣さん。九州交響楽団と新日本フィルのコンサートマスターも兼任されている。久石譲さんとのコラボでも有名(例えば「崖の上のポニョ」イメージアルバムでVn.ソロを担当)。

また、ヴィオラのゲスト・トップ・プレイヤーは「アンサンブル・ベガ」や「いずみシンフォニエッタ大阪」のメンバー・馬渕昌子さんで、チェロのトップは東京交響楽団首席奏者・西谷牧人さん(以前PACオケのコアメンバー)だった。

はっきり言って「悲愴」は凡演。退屈で途中、何度も睡魔に襲われた。大阪フィルハーモニー交響楽団と比較するとPACオケはやはり弦が弱い。絶望と慟哭、そして虚無に至る過程を弦楽器が奏でなければならない第4楽章なんか、音が切実に響かない。弦高管低の大フィルと、全く対照的である。まあ、PACは年齢制限がある若いオケだけに仕方ないか……。

一方、ブラームスドッペルコンチェルト(二重協奏曲)はもう、文句なしに素晴らしかった!

まず山上さんのチェロが第一音から烈火の如くを放つ。彼女の荒々しい鼻息や唸り声まで耳に届いてきた。これを聴いた瞬間、《の人》ジャクリーヌ・デュ・プレの奏でる音色がまざまざと僕の脳裏に蘇ってきた。

前から書いているように神尾さんも熱いヴァイオリニストなので、まるで火の玉火の玉が空中でぶつかり合い、融合し、さらに巨大な火の玉になったかのような壮絶なコンチェルト。「もの凄いものを聴いた」というのが率直な感想である。

張り詰めた緊迫感で、《いっぱいいっぱい》弾いているかのような山上さんに対して、神尾さんは大人の余裕すら感じさせる堂々たる演奏だった。以前と比べても、彼女固有の資質である激しいパッションに、さらに女性らしい柔らかさ・ふくよかさが加味されたような印象を覚えた。神尾真由子は日々着実に進化している!そのことを確信させる鮮烈なパフォーマンスであった。ドミトリエフ/PACオケもきりりと引き締まったアンサンブルで、好サポート。

ブラームスという人は、ベートーヴェンを意識し20年かけて書いた交響曲第1番を唯一の例外として、寂寞とした諦念、メランコリックな作風の作曲家だと僕は想っている。特に交響曲第4番やクラリネット五重奏、クラリネット・ソナタなど後期の作品にその特徴は顕著である。

しかし今回聴いたドッペルコンチェルトは交響曲第4番の後に作曲されたにもかかわらず、そんな淋しさは微塵も感じさせなかった。むしろ前向きで生命力に溢れた音楽のように響いた。これは何より神尾さんと山上さんの若い力、桁外れの才能の賜物だろう。本当はこのチケットを購入した後、神戸国際フルートコンクール開催を記念したエマニュエル・パユの演奏会が同じ日にあることを知りショックを受けたのだが、結果的にPACの定期を聴いて良かったと心から満足して帰途についた。

最後に繰り返しになるのだが、今の神尾さんで僕が是非聴いてみたいのはエーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲だということを強調して、締めくくりとしたい。

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