つみきのいえ
評価:A
上映時間12分4秒。米アカデミー賞短編アニメーション賞受賞。加藤久仁生(かとう くにお)監督からの受賞後のメッセージや、本編映像の一部も掲載されている公式サイトはこちら。
さらに「つみきのいえ」に関するインタビュー記事をご紹介しておく→こちら。
加藤監督は現在31歳。鹿児島の小学生時代からマンガを描き始め、宮崎駿作品を見て育ったという。
アカデミー賞授賞式で読み上げられた"La Maison en Petits Cubes"というフランス語のタイトルが示すように、その絵柄や色彩感覚はどこかフランスのアニメーション、例えば「ベルヴィル・ランデブー」(シルヴァン・ショメ監督)を連想させるものがある。
しかしそこで描かれる内容は詩的でノスタルジックであり、くっきりと独自性を打ち出すことに成功している。切なくて心に残る珠玉の作品である。
世界が水没していくという設定は、むしろ宮崎駿監督の「未来少年コナン」のイメージに近い。そしてそれは勿論、「崖の上のポニョ」に繋がっている。
加藤監督はオスカーを受け取った壇上で"Thank you,my pencil."とスピーチした。鉛筆書きへのこだわり。これも「崖の上のポニョ」が目指したものと一致している。
今更僕が言うまでもなく、宮崎駿という人は天才である。ただ、スタジオ・ジブリの辛いところは後継者が全く育たなかったということであろう。「ハウルの動く城」では外部から細田守監督(「時をかける少女」)を招聘したが、宮崎さんとの折り合いがつかず細田さんは去っていった。
しかし僕は本作を観ながら「嗚呼、宮崎駿の遺伝子をしっかりと受け継ぐ若い世代が、こんなところで育っていたのだな」と安心感を覚えた。本当によかった。
なお、「つみきのいえ」と同じく短編賞にノミネートされたピクサーの"PRESTO"は「WALL・E/ウォーリー」の前座として映画館で観たが、ギャグがちっとも面白くなく救いようのない駄作であった(こちらの評価はD-)。
最後に、僕がお気に入りの短編アニメーション(上映時間30分以下)を列記しておく。
- 三匹の親なし子ねこ(ウォルト・ディズニー・スタジオ、アメリカ)1936
- 風車小屋のシンフォニー(ウォルト・ディズニー・スタジオ、アメリカ)1937
- 人魚(手塚治虫、日本)1964
- 霧につつまれたハリネズミ(ユーリ・ノルシュテイン、ロシア)1975
- ヴィンセント(ティム・バートン、アメリカ)1982
- ルクソーJr.(ピクサー・アニメーション・スタジオ、アメリカ)1986
- 迷宮物件 FILE538(押井守、日本)1987
- 木を植えた男(フレデリック・バック、カナダ)1987
- 大いなる河の流れ(フレデリック・バック、カナダ)1993
- ウォレスとグルミット、危機一髪!(ニック・パーク、イギリス)1995
- 老婦人とハト(シルヴァン・ショメ、フランス) 1998
- 老人と海(アレクサンドル・ベドロフ、ロシア)1999
- For the Birds(ピクサー・アニメーション・スタジオ、アメリカ)2000
- 星をかった日(宮崎駿、日本)2006
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